英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 今話の大部分は、前回の英人外出中&宗次と麗華のデート後に勃発した御代田町での戦闘を、その翌日夜にて英人が視聴するという形式でお届けしますので、ご了承ください。



第33話 強者の異変と弱者の停滞

 

  6月1日、やれ早いのか遅いのか水無月を迎えた日曜夜の自室。見張り担当を同志がやってくれている中、〈機械仕掛けの英雄〉としての変化と活用方法に関する報告書を提出してから、漸く昨日の戦闘を視聴にありつけた。

「さて、新型とは如何程のものか。」

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 御代田町のゴルフ場跡地にて、9クラス全員が揃ってから10分後、西方からCEの群れが迫っており、エース隊に緊張感が漂ってきた。

 とはいえ窺える限り、約500体のCEは全て六角柱型であり、正二十面体型も両刃型も未だ見ぬ特異な形状の個体も見えなかった……のだが。

 

 液晶画面を凝視してみれば、群れの最前列の中央にて、異様な六角柱が存在していた。

 外殻の形状こそは変わらぬものの、中心部の赤い輝きを放つコアが、他の個体や前例と比して2倍以上も大きかった。

 

 そして、エース隊の陣取る地点迄約500mの所で行進を止め、通常数m間隔空けて群れを成しているCE達が、蜂の巣の如く密集し始めた。やがて群れ全体が、コアの巨大な先頭個体を中心角とする扇形に変形した。

 

「伏せろっ!」

 

 第六感か経験則か、宗次が叫んだ直後、群れの最後列に赤い光が灯り、まるでバトンを渡すが如く前列へ前列へと光を繋いでゆき、その全てが先頭の六角柱の巨大コアへと収束されてゆき__

 

「__がぁっ!!??」

 

「青木っ!?」

 

 何とあの巨大コアから、此れ迄射程距離圏外であった500mもの距離を光速で駆け抜けて、エース隊最前列へ到達したのだ。

 命中したのは、盾隊最高峰の同志青木*1。群れの進軍が停まって編成し始めた時点で、盾を形成し群れの方へと構えた数秒後、放たれた光線が盾の正面へと当たり、一瞬で霧散してしまった。

 

「嘘だろっ!?やべぇ!」

 

 アラームの音は、聞く限り幻想兵器の再展開が不可能な程認識力を削がれたと思わしく、それが絶え間なく鳴り響く中、直ぐ様青木は後方へ引き下がった。それを見ていた付近の隊員が皆一様に身構えた直後。

 

「逃げろ、装甲車の陰に隠れるんだっ!」

 

「盾隊に隠れて後退だ、急げ!」

 

 先ず宗次が、次いで先山が叫び、防壁の役目を担った1期生A組第0分隊盾隊を除き、全員が慌てふためきながら装甲車を群れに対するバリケードとするかの如く、再び撃ち込まれる前に回り込めた。

 一方のCEはというと、後方から数百体分注がれていた光線の負荷に耐えられなかったのか、長距離光線を発射した巨大コア型に隣接していた六角柱のうち1体が破裂し、もう2体もコアに罅が入っている様に見えた。するとその2体は横に外れて、背後の六角柱3体が代わりを務める為か前に出て巨大コア型へと密接し、併せて更に後方のCEが移動して、と隊列を組み直していた。

 そうして最初の攻撃から十数秒経ち、再び最後列に光が灯り巨大コア型に集められてゆき、発射。

 

「ぐおっ……!」

 

 今度は第0分隊員の盾に命中し消滅、しかも幻子装甲も大幅に削られて認識力が底をついたのか、アラームだけでなく、激しい虚脱感により倒れ込んでしまった。それでも付近の仲間が引き摺り下がり、全員装甲車の陰に身を隠す事ができた。

 ところが同様の時間を掛けて隊列を組み直して発射された光線は、装甲車の横腹を容易く貫通してしまい、隊員の驚きや恐れの声があちこちで聞こえてきた。

 

(「……六角柱や正二十面体よりも発射間隔は長い、全員で突撃すれば十発も撃たれる前に接近できるだろう。」)

 

 そして白兵戦に持ち込み巨大コアを倒せば、脅威となっている超威力の狙撃は撃てなくなり、後は烏合の衆が残るのみ。だが、それ迄に生じる犠牲者、更に数も余力も減った兵達で何処迄その烏合の衆を蹴散らせるのか。

 

(「1発毎に3体の六角柱が自壊しておる。理論上延々と撃たせ続ければ何れ接近する隙もできようが。」)

 

 然し、幻子装甲を纏った状態で射抜かれても精神どころか肉体さえ消滅する程の威力を誇るのだ。遮蔽物に用いている約30台の装甲車が蜂の巣になり、隊員へ直接届く様になる方が遥かに早いだろう。

 

(「報告では死者・意識不明者無しとあったが、さて如何に攻略する?」)

 

 そして4発目の光線が3期生C組の装甲車を貫いた、その時。

 

「クロムウェルさん、俺に命を預けてくれるか。」

 

「えっ……」

 

(「ほう、となればもしや。」)

 

 クロムウェルが、グルファクシスを消して地面に伏せていた中、突然宗次に手を掴まれて、驚いて固まった。だがそれは一瞬の事、直ぐ満面の笑顔に変わって頷いた。

 

「もちろんでありますっ!」

 

「よし、行こう。」

 

 宗次がその手を引いて立ち上がり、隊列の中央に向かって駆け出した。

 

「宗次君っ!」

 

「ちょっと、危ないですよ〜!」

 

「………」

 

 後を追おうとして、小向井に掴み止められ地に伏せていた平坂に気付く事なく、2人は5発目の光線を途中の装甲車に隠れてやり過ごしつつ、1期Aの隠れ場所へ辿り着いた。

 

「麗華先輩っ!」

 

「宗次君っ!?それに彼女は、……分かった。皆と、そして君を守るためだ。この命を賭けようじゃないか。」

 

「すみません。」

 

「なに、お礼なら終わった後でたっぷりとして貰うよ。」

 

 怖気を隠す為だろうか、宗次とクロムウェルに茶目っ気に満ちたウインクを返して、好敵手の背を叩いた。

 

「愛璃。」

 

「えぇ、分かっていますわ。」

 

 隣の装甲車の陰に潜んでいた神近も応じて、グルファクシスの活用案の1つを実行すべく、互いの周囲にて身を寄せる1期Aの面々へと目配せした。

 その直後、6発目の光線が2期生の装甲車に穴を開け、それを合図とするが如く、宗次・クロムウェル・1期Aは一斉に動き出した。

 

「Come on Gullfaxi !」

 

 クロムウェルが黒馬を呼び出し、鞍に跨ったのと同時に。

 

「陸夫っ!」

 

「ちゃんと返せよ!」

 

 先山が、第2分隊員堀田陸夫(ほったりくお)に向かって叫び、アイコンタクトだけで察したのだろう、それ迄光線が装甲車を貫き届く事態に備えて形成していた〈アイアスの盾〉を即座に投げ渡されて受け取った。

 その状態で、騎手の前に乗る形でグルファクシスに跨った。一方で宗次や、運転の練習を行っていた者の1人である1期Aの同志長田達はその間、穴が空いたものの未だ使用可能な付近の装甲車へと乗車した。

 

「行くでありますよ!」

 

「頼むよ、子猫ちゃん。」

 

 先山の背中で視界が狭められているにも関わらず、クロムウェルは巧みに馬を操って群れの方へ疾走した。同時に、巨大コア型は後方の隊列を組み終えて、7発目を2人目掛けて発射し、それに合わせて。

 

「咲き誇れ、王の聖槍(ロンゴミアント)!」

 

 先山は5分きりの無敵状態となって、借り受けた盾を目前に構えた。

 クロムウェルの操縦の下黒馬が頭を下げたので、光線は馬の上を通り、先山の構える盾を貫き消滅させた。

 

(「まぁ仕方あるまい。他者の幻想兵器を用いる事は可能だが、能力を解放するのは本来の使い手にしかできない。」)

 

 例えば宗次が先山との試合にてロンゴミアントを奪って穂先を突きつけていたが、その槍が宿す特殊能力❛聖槍の加護❜は、彼女が唱える合言葉と一語一句違えず叫んだとして、決して発動されない。

 同様に、〈アイアスの盾〉には本来、『ギリシア神話』のトロイア戦争にて、城壁にも匹敵する頑丈さでヘクトールの投擲を防いだ、との逸話から遠距離攻撃に対して滅法強い盾であるが、その特性は堀田でなく先山が携える限り決して発動しない。

 

(「さて、無敵状態はどれ程保つのやら。」)

 

 先山が後ろを振り返れば、宗次達の乗車している装甲車が付かず離れずの距離を保ち追走しており、また前へ向き直った時点で群れ迄400mの所に達していた。

 

「来たまえ、彼には指一本触れさせないよ。」

 

 その呟きを聞いた直後に8発目が、今度は遮るものなく光を纏う先山に直撃した。

 

「ぐぅ……っ!」

 

 小さくも確かな唸り声が、ヘッドホンに拾われた。

 恐らく、今迄如何なる幻想兵器も六角柱や正二十面体からの光線も防いできた無敵の加護が、初めて破られようとしているのだろう。

 

「大丈夫でありますかっ!?」

 

「気にせず走り続けてくれたまえ!」

 

 最も危険な役割であるとより強く自覚しただろうに、尚先陣切って突き進む2人は、やがて残り250m地点で9発目の光線を喰らった。

 

「がはっ……!」

 

(「実弾のみならず、エネルギーや物体等を射出する星辰光に於いても、標的迄の距離が短い程空気による減退が弱まり、命中した際の威力が大きい。それはCEの光線とて同様か。」)

 

 2発も真正面から受け止めた先山の身体から、制限時間を経過した訳でもロンゴミアントを手放した訳でもないにも関わらず、❛聖槍の加護❜が解除されたらしく、纏っていた光が消失した。

 

「あと、少しだというのに……」

 

「くっ!」

 

 先山は、認識力の枯渇で意識が朦朧としているだろうに槍を構え続けていた。クロムウェルも、認識力を消耗しながら次に自分が光線を喰らうやもしれぬ緊張状態の中で黒馬を操縦するだけでも大変な筈で、されど先山を支えんと抱える体勢を取りつつ、馬を走らせており、そんな中で。

 

「宗次殿!」

 

「分かった。」

 

 クロムウェルが叫び、ヘッドホン越しに装甲車内へ届いた瞬間、車が2人の真後ろからズレた。

 そして残り100mの地点に達した時、群れの最後列に光が灯り10発目の準備が開始した。だがそれを感知したクロムウェルは、馬の(あぶみ)から足を外し、先山の身体を抱き締めながら後ろに跳んだ。

 

「ごめんであります。」

 

 謝罪の言葉を受け入れる聴覚も、聞いたとして反応するだけの意識も感情も有るかは不明だが、乗り手(使用者)が完全に離れて尚グルファクシスは駆け続け、10発目をその巨体で受けた。近距離から最大威力となっただろう赤い光が、黒馬の頭から尻迄貫通し霧散させた。

 だが、その最中地面を転がっていたクロムウェルと先山を、装甲車が追い越した。そして群れへと最接近し、11発目の準備が始められた巨大コア型の前で旋回しながら停止し、後部扉を開けて神近が唱えた。

 

「塵と化しなさい、レーヴァテインッ!」

 

 原典の神話に於いて、世界を焼き尽くす黄昏の炎とされる劫火が、密集していたCEの群れの前列を包み込んだ。これにより奴等の要の巨大コア型を中心に、30体以上もの六角柱が瞬く間に蒸発していった。

 更にそれを皮切りに、1期Aに於いて幻想兵器の攻撃性能が上位となる面子が揃って飛び出し暴れ、百体以上も撃砕していった。

 加えて光線砲撃の負荷で消滅した又は脆くなった個体もカウントすれば、残るCEは六角柱350体程度。全のエース隊なら容易く殲滅させられるものの、体力認識力共に使い果たした1期A選抜部隊の魂を全て奪うには十分な数だ。

 

 そんな彼等を、狙撃が無くなり安全の確保された本隊が到着する迄、宗次が前に立ち塞がり迎撃していった。

 取り囲む様に迫る雑兵共を相手に、宗次はただ突いて、避けて、機械の如く正確に敵を葬り続けた。まるで 氷よりも冷静に、炎よりも闘志を燃やしているかの如き武威に対し、背後の1期Aやクロムウェル(弱った獲物達)を狙うよりも単騎の守護者を恐れる様に、後退りながら密着状態からバラけていった。

 

 そうして1分後、徒歩や装甲車で駆け付けてきた本隊が、倒れ伏す者等を守る様に囲み、或いはその場から離れようとしていたCEを追撃し、或いは宗次の加勢にと正面へ突き進み__

 

(「__む、宗次めどうした?」)

 

 突然、宗次が群れの奥へ、間隔が空いてゆくCEの隙を素早く且つ巧みに通り抜けて……やがて、ドローンや隊員のヘッドホンから捕捉できなくなった__と思えば数秒後。

 

(「なっ、森から光が!?」)

 

 いきなり群れの背後にある森から、赤い光が漏れ出たのをドローンが観測し……そして、宗次が戦い始めてから2分過ぎた頃には、CEが1体も見えなくなり、エース隊は誰一人欠けることなく__宗次も木々の中から、幻子装甲の消失の証としてアラームを鳴らしながら、随分と疲れた様子で姿を見せた。

 

「よっしゃ、今日も勝ったでぇーっ!」

 

「「「うおぉぉぉーーー!!!」」」

 

 遠藤が最初に勝鬨を上げ、他の生徒達も笑顔でそれに続き叫んだ。

 一方で宗次の下へと、弓月が真っ先に駆け付けた。

 

「だ、大丈夫か宗次君!何があった!?」

 

「すみません弓月分隊長、奥の方に進み過ぎて、潜んでいたCE5体と接敵し、全て撃破するも光線を喰らってしまいました。」

 

 宗次が報告して、腕輪のアラームストップボタンを押したのが、弓月のヘッドセットから映っていた。

 

「生きていて何よりだけど、1人で勝手に突っ走らないでくれ。というかヘッドセットはどうした?」

 

「落としてしまいました。無謀な単独行動に及んでしまい申し訳ございません。」

 

「……危険なのは君も分かってる筈だけど、何かあったのか?ひょっとして、六角柱型以外が其処に?」

 

「……はい、実は5体の内1体が巨大コア型でして、幸い此方やエース隊とは()()()()()発射して、お陰であの超威力の光線を喰らうことなく倒せましたが、残り4体の六角柱型を相手取っているうちに幻子装甲を消失した次第です。」

 

「……巨大コア型を倒して油断している俺達へ呼び掛ける暇があるなら、狙撃されて被害を出す前に単独であっても討たねばならない。そう判断して動いたのか?」

 

「弁解の意図はありませんが、その通りです。」

 

「……分かった。一応俺のから今も聞かれてるだろうけど、取り敢えず後で先生方に伝えておく。宗次君も問い詰められるから覚悟しておいた方がいいよ。色々言いたい事はあるけど、先ずは、生還してくれて、本当に良かった。」

 

「此方こそ、分隊長も、そして戦場を窺う限り恐らく全員が生き残ったので、安心致しました。」

 

「……それじゃあ、俺は戻るよ。心々杏も心配だし。無理せずゆっくり来ればいいよ。」

 

「分かりました。」

 

 弓月が本隊の31分隊に戻ってから、宗次も歩き出して、御代田町へ最後に到着した装甲車にもたれて休んでおる先山とクロムウェルへ話し掛けた。

 

「先輩、無理をさせて本当にすみませんでした。それとシャロ、よく頑張った。」

 

「宗次殿もお疲れ様であります。」

 

「全く、謝らなくていいよ。……それと、言った通りお礼を貰うからね。」

 

 2人とも全快していない様子であったが、空元気で微笑みながら、先山だけ隣に一瞬だけ目を向けるも直ぐに正面へ戻った。

 

「先ずは“先輩”じゃなくて“麗華”と呼んで欲しいな。」

 

「……What?」

 

「そんな事でいいんですか?」

 

「そんな事がいいんだよ。」

 

 すると宗次は、照れ臭そうに、間を置いて口を開いた。

 

「麗華、今日はありがとう。」

 

「……うん、どういたしまして。」

 

「………」

 

 お礼を告げられて恥ずかしげに顔を逸らした宗次、普段の美男子が如き爽やかさでなく女性らしい柔らかな笑みを浮かべていた先山とは異なり、クロムウェルは嫉妬しているのか頬を膨らませていたが、土の付着した白い頬を紅くしつつ宗次の方へ僅かにすり寄った。

 

「……そ、宗次殿……、実は、体に力が入らないので、どうか抱きかかえて、運んでくれないであります、か……?」

 

「構わないよ、シャロ。」

 

「狡いよそれは。宗次君、次のお願いとして、ボクを運んで欲しいんだけど。」

 

「えっ、先ぱ……麗華も?……分かった、2人同時に背負い抱えて皆の下へ絶対に送り届けてみせる。」

 

「「……ごめん、(Sorry, )やっぱり大丈夫だよ。(であります。)」」

 

 流石に何方も、惚れた男に相手してもらいたいが無理を強いるつもりはなかったらしく、申出を断った。

 

(「やれやれ、挑戦して両手に(平均○○kgの)花を携えやり遂げる展開も観てみたかったが、珍事で体を壊されては適わんか。……それはさておき。」)

 

 男1人女2人が作り出す微笑ましい空間から、随分離れた場所にて、哀しげな様子でその方向を見詰める者が居た。

 

「宗次君……」

 

(「平坂陽向、何を思う?」)

 

 分隊からも遠ざかった位置で、ドローンの1体が捉えたのは、孤独な女の顔に浮かぶ情念。

 それは恐らく、普段露わにしている嫉妬の怒りや恨みでなく、重く寒々しい悲しみと悔しさだろうか。

 

「何で、私は……」

 

「………」

 

 彼女と先山・クロムウェルの能力値や戦績、この戦場での立ち回りの差を鑑みれば……

 

(「自分は彼女等と異なり、想い人の力でなく足手まといにしかなれず助けてやれない。……斯様な無力感でも込み上げておるのだろう。」)

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 結局、先山とクロムウェルが自力で歩けるようになってから3人揃って各クラス・分隊と合流して装甲車で帰還したが、平坂が宗次に話し掛ける事はなかった。

 一方で帰還時点での状況は、修理を要する装甲車が3台発生するも全員生還、但し約10名の認識力が限界間近であったという。

 また、宗次が弓月へ、後教職員へ報告した処に拠ると、群れの背後の森にもう1体の巨大コア型並びに密集していた六角柱型6体が、周囲の環境に擬態するかの如き色彩で潜んでいたらしい。衛星より観測した、長野ピラーから襲来してきたCEの数に丁度合致した模様だが、今後の観測・索敵体制の強化が求められよう。

 

 それと、宗次に関して驚くべき話であるが、帰還後バイタルチェックと共に幻想兵器の適性を測ってみれば、何とB+に上昇していたのだ。一方でバイタルチェックの結果は、疲労が蓄積されていたもののそれ以外に異変が見られなかったそうだ。

 

(「……そして、変換器に対し、特高の点検データを同志がP研究所に送ったとの報告を受け、今夜18時頃、己の変換器を基に作られた分析システムによる解析結果が届いた、のだが。」)

 

 曰く、「変換器の中枢である加工コアが、極めて微小ながらも変容している」「5月24日19時頃から25日8時頃迄、変換器内蔵の計測システムが停止され電波も発信されていなかった原因は、中枢装置がシステムに働きかけた所為と推測される」……であった。

 

(「己の変換器の加工コアに異変が生じているのは、感覚的にも数値的にも明らかだ。その影響も変化の速度・方向性は十分把握し制御し、また隠匿もできておるが。」)

 

 されど、宗次は如何であろうか。何ら問題なく、単純に成長の現れであればよいが、もし万が一、その精神に悪影響を及ぼすとしたら。

 

(「……まぁ、奴には3期Dや先山、保科に月夜もおる。大河原は通常業務に加えて監視と報告も上手く務めている。祖父母の教育や愛情も行き届き、空壱流槍術の教えも揺るがぬらしい。任せても構わんだろう。」)

 

 とはいえ、その一員である平坂の精神状態が不安だ。宗次と同クラスにして、遠藤の次に近しい隊員があの様では、実戦で本当に足を引っ張る恐れも考えられる。

 

(「だが、之も宗次や級友が適任だろう。対処し切れなければ、他クラス他学年の同志や、地元の親類友人知人を介して補うとするか。」)

 

 ……それに、身近で普通の弱さを有する者に芽生えし苦悩、力や正論に実績では鎮められぬ慟哭。怪物級の光狂い(己やヴァルゼライド)には不向きで、我が好敵手の真価を暴き、信頼と絆を益々強固にし得る、最良の試練と言えよう。

 兎に角、今後の対応としては。

 

(「武士の戦闘映像共有は、今迄通り特高内同志に限定しておくか。」)

 

 下手に外部へも広まり過ぎて、宗次が認識力を本人の預かり知らぬ所で急激に集める羽目になり、変換器や精神に異常をきたす、などという事態は防がねばならんのでな。

 

 

*1
青木堅吾(あおきけんご)、1期生A組第1分隊員。入学前から機関に引き込んだ同志の1人。幻想兵器は『ギリシャ神話』出典の〈イージスの盾〉。





 感想や質問に指摘等、何時でもお待ちしております。

 因みに文中で明記しませんでしたが、現地の(特高が確認できる限りでの)CEが1体も残らず倒された後群れの背後にある森へ勝手に突っ込んでから戻って来た宗次の報告を、優太の通信機越しに聞いた指揮所が(そして通信隊が機関√で)新町駐屯地の風見司令に出動要請を掛けておりました。
 そうしてエース隊が全員装甲車に乗ってその場を出発した後、戦車隊が駆け付け伏兵を警戒し、またドローンやP研究所開発のCE発見技術を用いて暫く捜索しておりましたが、結局長野ピラーから出てきたCEは、事前に衛星から観測しエース隊に撃破された分の個体数しかいなかったので、現状は問題無しと駐屯地や特高へ伝えて両者の判断の下、無事に帰還しました。

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