英雄《しゅやく》になれぬ筈の槍使いと英雄《しゅやく》に至りし太陽《くろまく》   作:MOGOLOVONIO

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 長らくお待たせしてすみませんでした。

 今回は前半に、実質オリキャラな週刊クリエイトのカメラマンである周防視点を、後半に巨大構造物型(タイプ・メガストラクチャー―)(+α)の対処の一部始終をお届けします。
 期間の割に本文が6千文字未満ですが、ご了承ください。





第37話 記者魂と捕獲

 

 

  6月13日。僕と金木は、木崎湖*1の手前の森へ隠れ潜んでいる。

 

 何故そんな事をしているかというと、先ず今月5日に撮影し9日でクリエイトや動画サイトへ流した英雄・天道寺英人(同志迦具土神)の戦闘記録が大成功を収め、社内でも表彰されボーナスまで頂いた。それで有頂天になった金木と共に、次にどうするか話し合った中で、また英雄本人を狙うのは、同じネタ目当てのライバルが現れるか、自衛隊に妨害されるだろう、と止めさせて、だから少し対象を変えて英雄の敵、長野ピラーの姿を改めて撮る方針へ()()した。

 そこで、僕がルートを決めておくと金木に申し出て、機関から人間にも機械にもCEにも発見されにくい行程を用意してもらい、昨夜の内に案内しながらバイクでこの辺りへやって来た。それから木々や茂みに隠れながら望遠レンズを使い、1日かけてピラーの様子を撮影(監視)しているのだ。

 

 そんな訳で、同志迦具土神から提供されたCE発生周期予想と想定新規形状を頭に詰め込んだ上で見張っている、と。

 午前4時過ぎになって、突然長野ピラーが発光した。僕は咄嗟に金木の目を盗んで迦具土神や特高通信隊へ事前に作っていたメッセージを送ったのと同時に、初めて見るサイズの巨大CEが結晶柱から出現してきた。

 それから数分後、迦具土神からの通達を金木に勘付かれないよう読めば「監視・宣伝に於いて至極有難くも、CEが万が一北上せし場合は、配布した薬物出同行者を昏睡させてでも撤収する事を強く推奨する。」と記されていた。

 

(「……万が一、っすか。」)

 

 すると、間もなく追加の連絡が来た、のだが。

 

(「……「直径30m以上もの巨大CEが、六角柱型約1000体を引き連れて北上と確定。直ちに撤収せよ。居残り撮影を継続した場合、負傷・意識消失・死亡の際は一切の補償・手当を支給しないものとする。」……か。」)

 

 迦具土神機関は、同志の生命・生活、それに意思を、大義に背かぬ限り手厚く尊重し保障している。その上で、逃げなければ支給を行わぬという厳格と言うべきか放任と言うべきかな対応は想定の範疇にあり、そして「留まるのは違反行為である」という印象が滲み出ている通達文を読めば、少なくとも今の仕事は、機関にとって然程重要ではないらしい。

 

(「……ただ。」)

 

「凄いぞ周防!きっと、いいや必ずスプリッツァー賞だって獲れる筈さ!」

 

 年甲斐もなく燥ぐ彼を、眠らせて一緒に帰り、後で誤魔化すのは簡単だ。……けれども。

 

「間違いないっすよ、金木先輩!英雄だって、あんな怪獣みたいな奴だって拝めてるっすから!」

 

 そう返答した直後、隙を狙ってスマホに入力し送信する。

 「自己責任で待機し撮影する。御忠告感謝する。大和万歳。」と。

 

(「僕だってジャーナリストの端くれ、巨大CEの事は知りたいし、此処から届ければ同志達の助けになるかもしれないっす。後、何だかんだで……」)

 

 困った先輩だけれども、望みを叶えてやりたいから。

 

 

 そうして、巨大CEは徐々に此方へと、正確には新潟県方面へと迫って来るうちに、時刻が午前6時に達した。

 

「凄い、まさかこんな絵まで撮れるなんてっ!」

 

 そんな緊迫感が高まりつつある状況で、既に望遠レンズの不要な距離迄進んで来たCEに対し、金木は興奮に目を輝かせながらビデオカメラ向けていて。

 

「マジで大スクープっすよ!(昔の映画で、こうして撮っていたら怪獣に殺された場面あったっすよね……)」

 

 僕も同調している、かの様な態度でシャッターを切りつつ、胸下の隠しカメラから特高通信隊へ送り続けている、と。

 

(「……?振り返った先に、何だあの、光の玉は……嗚呼、ひょっとして此れが、同志迦具土神からの遣いっすね。」)

 

 前日にルートの指示が届いた際、「CEが万が一北上せし場合、迦具土神より黄金色に光る玉を、護衛の為観測地点へと送る」とも伝えられていた。けども、僕等の背後の木陰に潜んでいる其れを見ていたら……

 

(「……おっと、前を見ないと、先輩に怪しまれかねないっす。」)

 

「持ってる、やっぱり僕は持ってるなっ!3時間前にCE教徒の自殺を撮れて、今は()()()()()()()()()()のCEを記録して、そして倒しにやって来る聖剣使いの英雄すら、拝めて知らせて称えられるんだから!」

 

「マジ凄いっすよ、同志迦具土神(スクープの神)に愛されてるっすよ!俺ら歴史の目撃者っすよ!」

 

 態とらしく叫んだ僕に、先輩はニヤリと笑顔を作った。

 

「違うね、僕らは歴史を目撃するんじゃない、歴史を作るのさ。」

 

 歴史を__英雄がCEを打ち破るという華々しい物語を、本来ならば卑劣な政府の手によって闇に葬られ、誰にも知られなかったかもしれない伝説を、自分達が作り上げるのだ。

 ネットによって模造、不正していた事が露見して、失墜したマスコミの地位と力を、自分こそが復活させてマスメディアの王となるのだ__と。

 

(「……何て妄想してるっぽいっすね。」)

 

 すると先輩は、一端ビデオを置いてスマホを取り出した。

 

(「成程、写真や動画だけじゃなく、絶対に合成だと疑われないよう生放送で流すつもりっすね。まぁその方法も、機関が容認しているから止めないっすけど。」)

 

「繋がれ、繋がれよ……よし来たっ!」

 

 アンテナが立った事に歓喜の叫びを上げ、金木は素早く動画サイトの設定を初めて――

 

ガササッ。

 

「うん?今なにか通らなかったっすか?」

 

「狸か何かだろう?」

 

「いや、もっと大きかったような……」

 

「何でもいいさ、それよりスクープから目を離すなよ。」

 

(「……此れも、一応通信隊へ届いてる、っすよね。CEなら僕等の傍を素通りしない筈だし、光の玉だって変化も動作もしてないから……」)

 

 此処から少し離れた森の中を、何かが素早く走り抜けたが、先輩は気にせず設定を終えて、リアルタイム放送を開始する。

 

「皆さん、これをご覧ください、CEです、巨大なCEが長野ピラーから出現し、北に向かって移動しているのですっ!」

 

 先輩が早口で実況するのに合わせて、視聴者は徐々に増えてきている。目にした者達が、近くの友人や家族に口で伝え、或いはSNS等サイバー空間を通して宣伝しているに違いない。

 そうして10分が経過し、そろそろ巨大CEが此処からあと4km辺り迄迫りかけている頃、早朝の突発的な生放送だというのに、視聴者数は3万人を超えて尚更新し続けている。

 

「あんなビルよりも大きなCE、世界でも初めてでしょう。こんなに巨大なCEを、自衛隊は倒せるのでしょうかっ!?」

 

(「__あっ。」)

 

「いえ、自え__」

 

 即座に口を塞ぎ、薬で沈黙した先輩を抱えてバックジャンプし、直後眩い光に包まれながら後方へ引っ張られる。

 

 瞬間、一条の光線が2人分の足跡を、周辺の土壌毎消滅させてしまった。

 

 ……僕は、心も体も震えているのを、数秒遅れて自覚した。

 コンマ1秒でもズレていれば、骨すら遺ってくれるか解らぬ恐怖に。

 ……そして、今の、宙を浮いている現状からの興奮に!

 

「__は、はは、あはははっ!」

 

 同志としては幸いに、同じ記者として可哀想に、背後から抱き抱えられている先輩は、淡い煌めきを纏い地べたから両足を離して、木々の合間を縫って迅速に飛行し後退している、という一生涯どころか何百生涯繰り返しても味わえない感動の体験を、自分の所為とはいえ寝過ごしている。

 ……必要次第で置き去りにせねばならない可能性を思えば、感謝されて然るべき対応だと自認しているので、罪悪感はないけど。

 

(「回収していたビデオカメラは、既に止めておいたから……いやでも、僕のスマホはまだ撮り続けているんで、特高通信隊も見ているんすかね?」)

 

 そんな取り留めのない事を考えていたら、纏っていた光が完全に霧散し、落ち葉の敷かれた獣道へ、僕等を優しく降ろしてもらった。

 するとスマホの振動を感じて、通知を確認してみれば、僕等の現在地と活動に関する指示__「撤収を望まなければ、現地点で撮影を続行せよ。但し生放送配信は禁ずる。尚金木義男は拘束し、視覚も聴覚も塞ぐべし。」と記されていた。

 

 なので、指示通り先輩を縛ってアイマスクと耳栓を装着させ、先輩とは別にこっそり持参したビデオカメラを起動させ、丁度よい形状・大きさ・位置の岩に乗せて、さっきよりそこそこ遠い巨大CEが捉えられる様にセットし、仕事用カメラを再び構えるのだった。

 

 

>――――――――――――――――――<

 

 

 午前7時、己は白馬村上空にて、巨大CEを迎撃すべく待ち構えていた。

 

(「……さて、同志周防は無事に撮影中。原発の方は現状問題無し。後は北上中のデカブツ共以外に敵がおらぬ事を祈るのみ、か。」)

 

 深呼吸をしながら五感、それと〈エクスカリバー・ハイヴ〉のセンサーを研ぎ澄ます。

 周防は現在、ハイヴ数個に守らせつつ巨大CEへと焦点を当てて撮っている。万が一にも写されては困る事態が生じれば、あれらに発光させて隠す事にしている。

 

「……来たか。」

 

 望遠機能で数十分前から確認できていたが、敢えて常人の視力でギリギリ捕捉可能な距離に達した時点で呟いてみせる。

 

「ではいざ、浄滅せん。」

 

 毎度の如く、携えた剣へと認識力を蓄積させ、何時でも発射できる状態を整えて__

 

「緊急連絡、新型CEが糸魚川原発正面ゲートへ襲撃し、1-Aと交戦開始。」

 

「了解。己は此れより巨大CE排除にあたる。現地部隊壊滅又は原発侵入以外の報告は不要。大和万歳。」

 

 通信隊からの連絡を済ませた、その直後。

 

(「__むっ、別ルートでCEが此方へ接近中か。何方から潰すか、蜂に任せるか。」)

 

 密かに地上へと散布したハイヴの一部が、CEの動向を探知してくれた。一先ず、起爆させて排除を__

 

「__?………」

 

 瞬きを素早く3回、2秒置いて4回行い、エネルギーを溜め続けていく。

 

 そうして、色鐘・保科等が想定する、光線の射程距離ギリギリのラインへと、巨大CEが数十秒後に到達するだろう辺りに迫り__

 

「「__アヤト。」」

 

 背後から聞こえた2つの声。6年ぶりの懐かしい音質と、空気の動きから距離のついでに把握した凡その形状に、身体を翻して__

 

「__❛エクスカリバー・ストレイド❜。」

 

「「__!!??」」

 

「ほう、素晴らしい出来栄えだ。天道寺夫妻(モデル)の美麗さを、よくもまぁ忠実に再現できておる。其ればかりか反応さえ示せるとはな。」

 

 同時に光に覆われた左手を回して、軽い裏拳擬きで2体のCEが伸ばしてきた指先を掠め、そうして堕ちてゆく2体を、光線に包まれながらもエクスカリバーの望遠機能で見届けてゆく。

 

「いやはや、宗次の編み出した❛滑衝甲❜に、断熱性能を追加し、対魂魄収奪用光線限定で改造使用してみれば、圧倒的な熱量と勢いを誇る巨大CEの砲撃も、此程無力化できるとは。」

 

 尤も特化させた所為で、今の己はただの殴打や投石でさえ、身体へ直に通してしまう状態であるのだが。

 

「ふむ、光線が止むより先に、地面へ着いたか。元々高度を比較的低くして飛んでいたのだが、それにしても……」

 

 と、墜落するもCEが2体共無事に残っていた事に安堵しつつ、改めて巨大CEの方へと向き合い直す。

 

「(同志周防に附随させている蜂を、発光させておいた故観測されてはおらん筈だ。)……さて、再充填前に片付けてくれよう。」

 

 剣を高らかに掲げて発光させ、切っ先(照準)をCEのコアへ合わせて準備を整える。そして、同志周防へ撮影再開の指示を送り、大きく息を吸って……

 

「エクスゥ、カリバアァァァーーーッ!!!」

 

 黄金光の奔流を、体積約8000m³にもなる巨大CEがすっぽり覆われる程に拡げながら、光線の中心に凝縮させたエネルギーを流し込む。これでCEの外殻を貫きコアへ届かせて、壊れない程度に負荷を与えて機能停止へ追い込めば、外殻たる結晶体が崩れてゆき、覆い隠すだけで全く削れぬ程度に薄まった黄金光でも跡形も無く消滅する。そして遠方から撮影されている動画では、己が莫大な光で巨大CEを外側から浄滅している、様にしか見えないという訳だ。

 

(「……頃合いか。」)

 

 CEの中核としての機能が完全に停止したコアを、毎度の如く❛エクスカリバー・ピリオド❜で固め、また並行して光線の極一部を枝分かれさせて、真下辺りで倒れ伏す2体のCEも外殻毎封じてから、射出を終える。

 

「此方迦具土神、巨大CE迎撃完了。残したコアと、加えて指定座標の人型CE2体の回収を伝えよ。また、原発の状況報告を求む。」

 

「……あ、嗚呼、承知した。それと原発は、人型CE1体が敷地侵入前に撃破された。他のCEは一度も1体も確認されず。ただ1-A・2-Dに重傷者数十名発生、黒は居ない。事前の想定通り、要請により第12ヘリコプター隊が、柏崎市○○病院へ搬送させるべく出動された。」

 

「了解。負傷者の情報一切は帰還後確認する。大和万歳。」

 

「大和万歳。」

 

 後は密かに計3体を回収するよう連絡し、剣を振り下ろす。

 

(「蜂に索敵機能を付与するだけでも苦労するのに、更に結晶漬けまで任せるのは難しい。そうでなくとも、あの個体を確実に且つ丁寧に封じるには、エクスカリバーの光線で施す方が確実だと判断した。」)

 

 そして現時点で、あの2体以外のCEは確認されていない。

 

(「然し、原発にて重傷者多数か。人型CEと聞いたが、懸念通り近接格闘能力を備えた殺傷用CEでも現れたか?まぁ後程視聴するとして、だ。」)

 

 どうやら死者も意識不明者も、現状生じてはいないらしいが。

 

(「皆、感謝する。至急速やかに、把握しよう、労おう。」)

 

 それが、迦具土神機関の義務にして責任であり。

 

(「無碍にする様な輩に、“宿敵だ”と、“好敵手だ”と、自認する権利も資格もないのだ。」)

 

 前世と今世其々の唯一無二へと、胸を張って対峙する為に。

 

 

 

*1
長野県北西部の大町市内にある後立山連峰辺りの山中湖。遊泳場やキャンプ場、駅や温泉も存在して()()。ただ今は当然、周辺は6年前から無人の状態で、狙いはどうあれピラー・CE目当てで潜入してくる者位しか来ない。





 感想や質問に指摘等、何時でもお待ちしております。

 因みに周防は、オリジナルCEが英人の背後へ浮上し語りかけ、殴られ墜落したその間、突然自分の周りが眩い光に覆われていた為、何も見えず又ビデオカメラにもスマホにも捉えられずにいました。当然困惑しましたが、事前に「戦況の推移次第で一時的に観測・撮影不可な状況を作る」と説明されていて一応同志として疑念を抑え込んだ事、直後に巨大構造物型の討伐が行われてそちらの撮影を優先した事から、大したしこりにはなりませんでした。精々後日に迦具土神へ尋ねて、ノーコメントとの返答に仕方なく納得する位でしょう。

◯❛エクスカリバー・ストレイド❜
 ❛エクスカリバー・ヴェンデッタ❜の発動を前提にした技の1つ。幻子を通して、発動者に外部から与えられた、又は発動者から外部の対象へ与えた衝撃を自在に操作する。例えば作中にてCEに対しエクスカリバーの光を纏った拳で殴った際、外殻たる透明の結晶体には一切の負荷を加える事なく、中心部のコアだけに、機能の一時停止で留まり崩壊には至らぬ程度の絶妙な衝撃を届けた。更にその際光を付与して、墜落した時に本来CEが受ける分の落下の衝撃を、接する地面へと移してコアも外殻も無傷で済ませた。仮に宗次が❛滑衝甲❜の話を4月29日の初陣帰還後に話して、英人が把握していなかった場合、この技を開発した後にその感覚を幻子装甲へ転用して会得する事になっていただろう。
 元ネタは、生者の片腕から理想追求の果てに生まれ、改革後のスラム管理を担当した、一見天衣無縫にヒャッハーしている様で多分内心惑い足搔いていた末に、正史だと親と共に異能も膂力も捨てた武の極致へ挑んでみせた、(割と皮肉げな)厨二ネームの武闘家。


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