そして遅くなっているのにも関わらず独自解釈回と言っても過言ではないです。
果たしてまだ待ってくれてた人はいるのだろうか…
私の一日は朝のジョギングから始まる。
健康的な面を考えると個性の都合上、他の人達はもちろん下手な増強系の個性持ちよりも運動能力の高い私にとっては必要ないが、昼間の喧騒とは無縁の静けさの中、人が発する涎が出てしまうような匂いもなければ、吐き気がするほどの美味しそうな料理の匂いもしない、良くも悪くも食事のこと考えずに済むこの朝特有の澄んだ空気を体に取り込むこの行為が私の食事以外の数少ない楽しみの一つであり、転生前からのルーティンワークでもある。
ちょくちょく知り合いの中学生の女の子と一緒に走ることがあるのだが、最近は受験前なのであまり見なくなった。
その子はヒーロー科志望らしいので見かけたとしても身体づくりのため全力で走り込みをしている。
ヒーロー科志望とはいえ彼女は別に増強系の個性ではないので、普通に並走できるのだが朝から食欲をそそる彼女は目と鼻の毒になるのでしない。
街に人が増えだす前に私が住んでいるオートロック付きマンションに戻る。
我ながら割といい暮らしをしていると思う。
本当ならヴィランとして追われる身となり自身の戸籍すら役に立たないから最悪浮浪者みたいになってたかもしれないのだが、"食料"を調達していくことで裏社会で有名になっていき、少しすると裏社会のブローカーと自称する胡散臭い男と出会い、いくつか依頼をこなす代わりに新しい戸籍やまとまった額の金を貰ったおかげで、今ではまともに働かなくても十分生活を送っていけている。
そして今でもちょくちょく仕事を斡旋してもらっている。
だから今まで色んな人にスリまがいのことをしてきたが、最早ちょっとしたロールプレイと小遣い稼ぎ程度の意味しかない。
ジョギングで掻いた汗をシャワーで流し4万3280円もしたコーヒーメーカーを使ってコーヒーを淹れる。
やはりここでも原作準拠なのか紅茶や麦茶は無理だがコーヒーは問題なく飲むことができる。
そしてコーヒーが出来上がったらコーヒー片手に朝のニュースを見る。
小説を買いに駅近くの書店にきた。
私は月に数回、件のブローカーから依頼を受ける以外、実質無職だから時間を持て余している。
じゃあショッピングにでも行こうかな!とはならない。
街を歩けば吐き気を我慢しなければならない私が、わざわざそんな場所じゃないと出来ないことを趣味にするわけがない。
ならばそんな空いた時間を何に使うかと言えば読書になってしまう。
もちろん家にはテレビやゲームもあるがそれでも読書量が圧倒的に多い。
私が『エト』になる前から読書は好きだった。
私が生前通っていた高校はバイトができなかったので小遣い制だったのだが、毎月の小遣いのおよそ7割を本に使うくらい好きだった。
そんな私が『エト』になったのだ
生前は1回読んだらすぐ次の本をよんでいたが『エト』のように一冊の本を好きなシーンには付箋を貼ったりしながら2周、3周と何周も読んでいくスタイルに変えた。
それでも毎月、新作旧作問わず気になった本を相当数ネットで注文しているが、月末になると読む本が無くなる。
だから毎月、月末には来月までの繋ぎとして駅前の書店で何冊か見繕いにいく。
ちなみに、今みたいな年末だとクリスマス料理や正月のおせち料理が店頭に馬鹿みたいに並ぶので街中に匂いが充満し、余計に外に出なくなるので必然的に本を読むペースも早くなってしまう。
話が逸れたがとにかく本を補充するために書店に来た。
今回気になって買ってみたのは「マーマレードホテル」、「半沢川直行」、「ドクターゲスの胃酸」、「君の肝臓をツマミにしたい」、そして「青くて痛くて臭い」の5冊。
地雷臭のする作品ばかりだが、転生前にあった作品と名前が似ていたのでどうしても気になって買ってしまった。
レジで会計を済ませる際に店員さんに変な目で見られてしまったが私はキニシナイ…
まあ実際、地雷臭があろうが私にはあまり関係がない。
その理由の1つには私が雑食という面もあるが,それ以上に問題なのはこの世界の小説は転生前の世界の小説よりも数段階劣る。
この世界の小説が劣るというのは語弊があるかもしれない。
正しくは黎明期以降の個性がある事が当たり前となった世界の小説が劣っている。
例えばミステリー小説なんかは転生前の世界の作品だと作者が考えに考え抜いた緻密なトリックや謎を主人公と共に読者もドキドキハラハラしながは解き明かしていく事が面白いのだが、そのトリックや謎が大体個性で片付いてしまうのだ。
作中に登場する大体の犯人は、やれ個性届けを偽造しただの、やれ実はこの個性にはこんな使い道があったのだ!だの、そんな結末ばかりだ。
それにこの世界では「ハリーポッター」みたいなファンタジー作品はもう殆どなくなってしまっている。
剣や魔法を使いドラゴンや魔王を倒す。
実際には起こり得ない非現実的な世界に想いを馳せることができることこそがファンタジーの醍醐味なのだが、剣も魔法もドラゴンも個性で存在してるこの世界では人気ジャンルにはなり得ない。
更に付け加えるのならば漫画やラノベの所謂、能力ものも廃れたジャンルになっている。
だってそうだろう?みんな大好きONE PIECEで考えて欲しい。
悪魔の実は多少似た能力の実はあるものの、オンリーワンの能力を主人公や登場キャラクターが使って繰り広げるバトルが見どころの一つなのに、その能力を隣の席の奴らや母親とかが持ってるんだよ?
一気に萎えるわ。
そういったフィクションを映画やアニメにするなら、オールマイトの活躍をTVで流した方が視聴率がとれる。
実際、日曜の朝は仮面ライダーの時代は終わり人気ヒーローの解決した事件を毎週放送している。
音楽番組やスポーツの実況にはプレゼント・マイクが、料理番組にはランチラッシュ、食べ歩きをするロケ番組ではファットガムが、そしてそれら番組の合間にあるCMでも、TVを付けたらヒーローがいる。
人気のヒーローを映せば必ず視聴率が取れるので人気番組にするためのハードルが低くなっている。
だからどの番組の質も落ちている。
TVでヒーローが映ると若干犯罪の抑止になるくらいで、それ以外にこの世界の娯楽は転生前の世界より優れた面がない。
なんて世界に転生してしまったんだ。
閑話休題
書店から出たらその近くにある落ち着いた雰囲気の喫茶店に入る。
月末に本の補充をする際、毎回この喫茶店に立ち寄ってこの店のコーヒーを飲みながら買った本を読むようにしている。
まさか「青くて痛くて臭い」が18禁ヒーローミッドナイトの自伝小説だとは思いもしなかった。
内容も下手な官能小説よりやばかった。
そりゃ店員さんも引くよね。
そんな感想を抱きつつ御手洗いから帰ってくると一年前位にいつもの書店で偶然知り合った、ヤオヨロちゃんがおるではないか。
ーーー八百万sideーーー
去年私がまだ中学2年性だった頃に初めて古本屋さんに行った時に彼女と出会いました。
私はお母様とお父様のおかげで他の方々よりとても裕福な暮らしができています。
しかし、その一方で同級生の方々のように学校の帰り道にお友達とタピオカに行ったり、有名な量販店であるドンキ.オオテにも行ったことがありませんの。
いつかは行ってみたいですわ。
そんな時に私と同じく読書が趣味のお友達から私が通っている学校の最寄駅の隣の駅に読書好きの人ならば一度は行かなければ絶対に損をすると言われる古本屋があると教えてくださりました。
しかもその古本屋さんには、今ではとても珍しい黎明期前に発売されていた本がよく並ぶお店だそうなのです!
超常黎明期は比喩なしで世界が混沌と化しました。
人々は平気で殺人を犯してしまうほど法は意味を失い文明も歩みを止めたまさに「荒廃」した時代。
そんな混沌とした時代には当然娯楽小説など発売されるどころか、個性が発現した人達による差別に対する抗議活動の影響で、学校や病院などの公共機関が襲撃されました。
そしてその公共機関には図書館も含まれておりました。
更に、異能を発現させた人達を中傷するような記事を書いた新聞や本を発売した出版社も次々に襲撃されてしまいました。
そんな破壊活動のせいで黎明期と黎明期以前に発売された本の数は激減し、黎明期以降、政府や一部の好事家達が焼け残った本を回収、保存していったため、かつて全国に出版されていた普通の小説でさえ今では保存状態が悪くても10倍以上の値段がついていることがざらにあります。
そんな貴重な本が並ぶお店がどうしても気になり、休日お友達と一緒にその書店に行きました。
最近発売された本が並ぶなか、店の奥のペースに黎明期前に出版された本のペースがありました。
その中に、最近クラスで流行っている恋愛映画の原作となる小説がありました。
余命宣告されたヒロインが、主人公と出会い一緒に生活していく中で恋に落ちていくその物語は黎明期以前にも映画化され、それを個性が当たり前となった現代に合わせてリメイクした作品だったのです。
当然、私もリメイク後の映画の小説は持っておりますが、原作小説はなかなか見つからず諦めておりましたのにまさかこんな所で売ってあるなんて驚きでした。
しかし購入しようと思っておりましたが手持ちのお金では足りず、カード払いも出来ないお店で買えませんでした。
そうしてどうしようか迷っている時に今までに見たことがないほど、それこそ家のパーティでいらっしゃってくださるモデルや女優さんに引けを取らないほど綺麗な方がその本を手に取ったのです。
そう高槻さんですわ。
そして高槻さんはあろうことかその本を私に、そして私の友達が買おうとしていた本を友達に買って下さったのですわ。
最初は断ろうと思ったのですが、「最近の娘が昔の本に興味があることが嬉しいの」と言って私達にプレゼントしてくださいました。
その後、お礼にと近くにあった喫茶店に一緒に行き小説談義に花を咲かせました。
そして今、私はそんな思い出の地である喫茶店で受験勉強をしております。
プロヒーローの登竜門とも言える国立雄英高校の推薦入試に無事受かり、ヒーローではないのですが、高槻さんのように自分自身の損など顧みず見ず知らずの人にも慈愛の心を持って接することのできる、そんなヒーローになりたいのです!
「モモちゃん」
「…!た…高槻さん!?」
ふと私の名前を呼ぶ声がして顔を上げるとそこには私の憧れの高槻さんがいらっしゃいました。
思わず驚いてこの喫茶店には合わないような大きな声を出してしまいました。
「なんでここにいらっしゃるのですか?」
「ここァわたくしのホットスポットでっさぁ、本買った後なんかにたまに来るのさ。いやーモモちゃんが連れてきてくれて良かったよ」
私が偶々、高槻さんを連れてきた店を気に入ってくださって彼女の役に立てたのだととても嬉しい気持ちになりました。
「今日は内村さんといっしょ?」
「いいえ、今日は私1人ですわ」
「おおっ、珍しいこともあるもんだね"ちゃんモモ"」
ちなみに内村さんというのは、八百万家を長年支えてくれている執事、所謂じいやですわ。
私の家はとても裕福なので誘拐の被害などを心配してくれた両親がいつも護衛を付けてくれるのですが、高槻さんと初めて出会った日も私の護衛として、じいやは少し離れた位置から見守ってくださっていました。
「私、カフェで1人勉強というものをやってみたかったのですわ!」
「そ、そう…夢が叶ってよかったね」
高槻さんの顔が少し引き攣ってるように見える気がしたのですが、気のせいでしょう。
「それにしても"ちゃんモモ"にまた会えるなんてラッキーだなぁぼかァ」
「私も嬉しいですわ!」
高槻さんに会えた事、普段あだ名を呼ばれない私がそれに素敵なあだ名で呼ばれた事がとても嬉しかった。
「なにか悩n「ring ring ring ring」…。」
「あの…電話出なくてよろしいのですか?」
「あーごめんね?ちょっと席外すね」
そういうと高槻さんは一旦、電話をするために店の外へ出て行きました。
高槻さんはとても苦々しい顔をなされたのですか、嫌いな相手から電話がかかってきたのでしょうか。
少しすると高槻さんが戻ってきて、
「ごめんねー、ちゃんモモ。急な用事が出来ちゃったからもう出るね。それに勉強の邪魔しちゃってごめんね?」
「いえ、私も気分転換ができてとてもよかったです!またお会いした時はもっとお話ししましょう!」
「そうだね、じゃあ受験頑張ってね。といっても"ちゃんモモ"ならちゃんと受かるだろうけどね」
そう言って高槻さんは店を後にしました。
私は高槻さんの期待に応えられるようにと、より一層勉強に集中できました。
店を出ようとした時に、既に会計が済まされてると聞いてまた高槻さんに恩ができてしまいましたわ。
ーーーエトsideーーー
はー最悪。
タイミング悪すぎでしょ。
喫茶店に寄ってみたら発育の暴力ガールこと八百万百ちゃんがいたから、『エト』のちゃんヒナに対する喫茶店での一幕を再現しようと思ってわざわざ"ちゃんモモ"呼びしたのに、いいところで電話がかかってくるなんて。
しかもどうでもいい相手ならまだしも、仕事を斡旋してくれるブローカーからの電話だと無碍にもできないし。
一度家に帰って、『エト』の衣装に着替えて指定されたヴィラン御用達の酒場に入る。
その酒場は裏通りにあり、側から見れば寂れたスナックのような様相をしているが店主の「防諜」の個性のおかげで、機械や個性によって盗聴、盗撮ができなくなるので、後ろ暗い話をする時によく重宝される。
「ワリぃなエト、急に呼び出しちまって」
「そう思ってるなら、もう少し余裕を持って呼んで欲しいんだけど。義爛さん」
ちなみに、じいやこと内村さんはノベライズで実際に登場したキャラクターです。
ヒロアカでは効果音が英語表記が多いので電話の効果音もそうしました。