いつの間にかUAが10,000越えてたんですけど、これってすごいことなんですかね?
「ネフシュタンの、鎧…?」
ツナは翼が呟いた名前を復唱する。
「へぇ~…てことはあんた、この鎧の出自を知ってんだ?」
「─二年前、私の不始末で奪われたものを忘れるものか!」
鎧を着る少女に対しそう訴え、翼は二年前の事件を思い出す。
(二年前…ということは、あれはあの事件で奪われたものか!)
翼の言葉を聞いたツナがそう考える。
「去りなさい! 夢想に猛る鼓動 神楽の風に滅し散華せよ」
翼は謎の少女に刀を向け、少女も臨戦態勢をとる。
(奏を
翼は歌いながら、そう考えていた。
「やめてください翼さん!」
そんな翼に響がしがみつく。
「相手は人です!同じ人間です!」
「「
響がそう言うと、翼と少女は同じ台詞を叫ぶ。戦いたくなくても、戦わなければいけない状況をいくつも経験したことがあるツナは、響の言葉を聞いて悲しみと悔しさを抱く。
「─むしろ、あなたと気が合いそうね」
「だったら仲良くじゃれ合うかい!?」
そう言って少女が鞭状の武器をふる。翼はしがみつく響を引き剥がし攻撃を回避する。
「『わがよ誰とぞ常ならむ』と 全霊にていざ
少女は翼の攻撃を鞭で打ち払う。それを見た翼は一瞬顔をしかめるも、歌を続けながら攻撃の手を緩めない。だが少女は回避したり、鞭で防御したりして翼の攻撃をかわす。そして鞭をふるい、しゃがんだ翼の鳩尾に膝蹴りをくらわそうとした─
「
その直後、横から炎の弾が飛んでくる。それを少女が慌てて回避し、弾が飛んできた方を見ると
「俺たちがいることを忘れるな」
ツナが右手のガントレットを構えていた。それを見た少女は顔を歪める。
「─っ!お呼びではないんだよ!こいつらでも相手してな!」
そう言って懐から杖のようなものを取り出し、響とツナの近くに光を放つ。すると、響の元にはダチョウ型のノイズが、ツナの元にはそのダチョウ型に加え、大量の人型とカエル型のノイズが現れた。
「ノイズが…操られている!?」
するとダチョウ型のノイズ達が謎の液体を吹き出してくる。
ツナは難なく回避できたが、響がその液体を浴び拘束されてしまう。
「響!」
ツナは響の元に行こうとするが、ノイズの大群が道をふさぐ。
「邪魔だ!」
ツナはノイズを倒していくが、倒しても倒してもいっこうに進めない。
「その子達にかまけて、私を忘れたか!」
翼がそう言って少女に斬りかかる。
「お高くとまるな!」
そう言って少女は翼を片手で持ち上げ放り投げる。そして飛んでいった先に先回りし、翼の顔を踏みつける。
「翼!」
「のぼせ上がるな人気者!誰も彼もが構ってくれるなどと思うんじゃねえ!…この場の主役と勘違いしてるなら教えてやる─狙いははなっから、
少女はそう言ってノイズに捕まっている響を親指で指す。
「鎧も仲間も、あんたにゃ過ぎてんじゃないのか?」
「─そんなこと、させるか!」
ツナはそう叫び、『死ぬ気の零地点突破・
それを見た少女は一瞬驚いたが、すぐに持ち直し
「まだまだ出せるんだよ!」
そう言ってツナの周囲を取り囲むように、人型ノイズから大型ノイズまで、複数の種類のノイズを呼び寄せる。
「そこを、どけぇぇぇ!!」
そう言ってツナは右手のガントレットを『Ⅰ世のガントレット』に変化させ、ノイズを倒し続けるが、いっこうに減る気配がしない。その事に歯を噛み締めながらもノイズを倒していく。
「─繰り返すものかと、私は誓った!」
そう言って翼は刀を空に向ける。
『千ノ落涙』
少女は剣の雨をかわし、翼は立ち上がり駆け出す。少女と翼の戦闘が激化していく。
「─そうだ、アームドギア!」
今までその戦いを見ていた響がアームドギアを召喚させようとする。
「出ろ、出てこい!アームドギア!」
だがその訴えは届かず、アームドギアが出てくる気配はない。
「何でだよ…どうすればいいのか分かんないよ…」
一方その頃、少女と翼は互いに競り合っていた。
「鎧に振り回されているわけではない…この強さは本物…っ」
「ここでふんわり考えごとかい!?」
少女の回し蹴りを回避すると、少女が再びノイズを呼び出す。だが、翼はノイズ達をすぐに殲滅し、少女との戦闘を再開させる。
「ちょろくせぇ!?」
翼が投げた小刀を鞭で弾き飛び上がる。
黒い電撃を帯びた白いエネルギー球を鞭の先端に生成し、翼に投げつける。
『NIRVANA GEDON』
翼はその攻撃をアームドギアで防ごうとするも、爆発によって吹き飛ばされてしまう。
「フン!まるで出来損ない!」
「─確かに、私は出来損ないだ…」
翼はうつ伏せのまま言葉を続ける。
「この身を一振りの『
そう言いながら翼は立ち上がる。
「そうかい…脱がせるものなら脱がして─何!?」
体が金縛りにあっているような状態であることに気付き、少女が後ろを振り向くと、先ほど弾いた小刀が少女の影に刺さっていた。
『影縫い』
「クッ…こんなもんで、私の動きを─っ!?まさか、お前…」
「─月が覗いているうちに、決着をつけましょう…」
少女は金縛りを解こうとするが、翼の顔を見て、彼女が何をしようとしているのかに気付き、固まる。
「歌うのか─『絶唱』をっ!?」
「翼さん!」
響が翼の名前を叫ぶ。ツナは少女の言葉を聞いた瞬間、以前セレナが言っていたことを思い出す─
(シンフォギアの力の一つには、『絶唱』と呼ばれる歌があります。その歌を歌うことによって、シンフォギアの力を限界以上に解放し、増幅したエネルギーを、アームドギアを介して一気に放出します。その力の発現はシンフォギアごとに異なりますが、共通して発生するエネルギーは凄まじく、ノイズを始めとするあらゆる存在を一度に殲滅し得る絶大な効果を発揮します。私も、その『絶唱』を使ってネフィリムを擬似的に仮死状態にすることができました。ですが、装者への負荷も、生命に危険が及ぶほどに絶大です。反動ダメージは装者の適合係数の高さに伴って軽減されますが、そもそも適合率の高い適合者自体が稀でありLiNKERの負担や、追い詰められた状況で使用される負担やダメージもあり、いずれにせよ大きなダメージは避けられません)
「
ツナがセレナの話を思い出している間に、翼はそう言って響の方を向く。
「あなたの胸に、焼きつけなさい!」
翼は響に刀を向け、そう言いはなった…
「やらせるかよ!好きに、勝手にっ…」
少女はなおもあがこうとするが、金縛りが解ける気配はない。その間にも、ツナは話の続きを思い起こす。
(すべてのシンフォギアの『絶唱』は同じ歌です。なので、もしツナさんが装者の人と一緒に戦うような状況になって、その人が『絶唱』を歌おうとしたら、すぐに気づいて止められるように、歌の始まりだけでも教えておきますね─)
「『Gatrandis babel ziggurat edenal …』」
記憶の中のセレナの歌と、翼の歌が重なった─
「─っ!やめろ翼!歌うのをやめるんだ!」
ツナがそう叫ぶが、翼は歌を止めず、少女にゆっくり近づいていく。
ツナは翼を止めるため、彼女のもとに向かおうとするが、それを拒むかのように周りをノイズが囲む。
「邪魔を、するな!!」
そう叫び、道を作るために近くのノイズを吹き飛ばすが、すぐに他のノイズが立ち塞がる。
その間にも、翼は少女に近づきながらも歌を歌い続ける。
少女は再びノイズを召喚させるが、すでに翼は少女のすぐ近くまで来ていた。
「バーニングアクセル!!!」
その時、ツナがノイズの集団の一角を吹き飛ばした。そしてすぐに翼のもとに急ぐが、彼女は、怯む少女の肩にそっと手をおき…
「Emustolronzen fine el zizzl…」
『絶唱』を歌い終わってしまい、翼の口から血が流れでる。
「翼!」
ツナが翼に向かって手を伸ばすが、あと少しのところで届かず…
─翼のアームドギアからエネルギーが放出される─
その衝撃によって、ツナは翼から離されるように吹き飛ぶ。
その場にいたノイズはアームドギアから放出されたエネルギーによってすべて消滅し、翼のすぐそばにいた少女も、その衝撃をもろに受け吹き飛ばされ、地面に大きなクレーターができる。
少女が纏っていた鎧も、所々吹き飛ばされていたが─突如、鎧からのびるように少女の体を黒い筋がつたう。
それを見た少女は空を飛び逃げていった…
「翼さーん!」
響がクレーターの中央部にいる翼のもとに向かうが、途中で転んでしまう。すると、翼達のもとに弦十郎達が乗った車が到着する。
「無事か翼!」
車から降りながら、翼の無事を確認する弦十郎。
「─私とて、人類守護のつとめを果たす『防人』…」
そう言って振り返った翼は、目と口から大量の血を流し、シンフォギアもボロボロになっていた…
「こんなところで、折れる『剣』じゃありません…」
血を流しながら、翼はそう言った─
「ふざけるな!」
その直後、響に遅れてやってきたツナが叫んだ。その場にいた全員がツナの方を向く。
「何が『防人』だ!何が『剣』だ!そんなの間違ってる!…あなたは、ただの人間じゃないか!!」
ツナは翼の顔をしっかりと見ながら、言葉を続ける。
「それに…あなたが傷ついて、弦十郎さん達が─奏さんが喜ぶと思ってるのか!!」
そう言いきったツナの眉間には、皺がついていた…
「─沢田は、優しいな…」
そう呟き、翼は地面に倒れこんだ…
「「翼さん!!」」
翼が最後に見たのは、自分の元に駆け寄る叔父と、ショックを受けている響─そして、眉間に皺を寄せ、悲しそうにしながらこちらを見るツナだった─
その後、翼は二課医療施設に緊急搬送され、かろうじて一命を取り留めたが、余談を許されない状態だった。
弦十郎は医師から説明を聞くと、鎧の行方を追跡しに行った。
そして緊急治療室の近くにある休憩所には、響とツナが、二人してうつむいて座っていた。すると、
「─あなた達が気にやむ必要はありませんよ」
そう言って緒川が入ってきて、自販機で飲み物を購入する。
「翼さんが自ら望み、歌ったのですから…」
「緒川さん…」
「─それでも俺は、誰かが傷つくところを見たくない…傷ついてほしくないんだ…っ」
ツナは弱々しくも、そう訴えた。
「─ご存じとは思いますが、以前の翼さんは、アーティストユニットを組んでいまして…」
「…ツヴァイウィング、ですよね…」
緒川が響達に飲み物を渡してくる。
「その時のパートナーが、天羽奏さん…今はあなたの胸に残る、『ガングニール』のシンフォギア装者でした…そして、以前話した通り、現在この施設にて、未だ昏睡状態で入院しています」
そこで一度、手にしていた飲み物を少し飲み、話を続ける。
「二年前のあの日、ノイズによる被害を最小限に抑えるため、奏さんは、『絶唱』を解き放とうとしたんです─まあそれは、沢田さんが来たことで防げたんですがね」
そう言ってツナの方を向く緒川。
「『絶唱』…翼さんも言っていた…」
響がそう呟くと、緒川は絶唱の説明をし、再び飲み物に口をつける。
「─奏さんの昏睡、そしてツヴァイウィングは一時解散…一人になった翼さんは、奏さんの抜けた穴を埋めるべく、がむしゃらに戦ってきました…同じ世代の女の子が知ってしかるべき、恋愛や遊びも覚えず、自分を殺し、一振りの『剣』として生きてきました…そして今日、『剣』としての使命を果たすため、死ぬことすら覚悟して─歌を歌いました」
「─やっぱり、おかしいですよ…自分を殺してまで戦い続けて、死を覚悟してまで歌うなんて…死んだら、残された人たちがどう思うか、考えたことはなかったのかよ…っ」
緒川の言葉を聞いたツナがそう呟いた。
「不器用ですよね…でもそれが、『風鳴翼』の生き方なんです…」
「─そんなの、ひどすぎます…っ」
響が泣きながら言う。
「そして私は…翼さんのこと、何にも知らずに…『一緒に戦いたいだ』なんて…『奏さんの代わりになる』だなんて…」
「響…」
そう言って泣き続ける響に、かける言葉がなにも思い付かずにただ名前を呟くことしかできないツナ。
「僕も、あなたに『奏さんの代わり』になってもらいたいだなんて、思っていません…そんなこと、誰も望んではいません。─ねえ響さん、沢田さん…僕からのお願い、聞いてもらえますか?」
二人が緒川の顔を見る。
「─翼さんのこと、嫌いにならないでください。翼さんを世界にひとりぼっちだなんて、させないでください」
「はいっ」
緒川のお願いを一言で受け入れる響。
「─ひとりぼっちになんて、絶対にさせません。それに─俺はもう、特機部二の人達も、翼さんのことも、仲間だと思っていますから」
そう言って微笑むツナを見て、緒川は安心したように笑顔を見せた─
─その頃、翼の精神世界では─
海中のような空間で、翼は深海にゆっくりと落ちていく…そのすぐ近くを、誰かが通りすぎていった。
その正体に気づいた翼が体制を整え振り向くと、ずっと先で、翼に背を向けている奏の姿があった。奏は顔をそらすようにして翼の方を向く。
「片翼だけでも飛んで見せる!どこまでも飛んで見せる!だから笑ってよ、奏っ─」
必死に話す翼だが、奏はそのまま翼から離れていく。
それを見た翼は、暗い海の中に沈んでいく…
─だが、沈みゆく彼女を止めるように、後ろから誰かが抱き止めた─
翼が後ろを向くと、そこにはまだ幼さが残った顔立ちをした少女が、翼を優しく抱き締めていた。
少女が優しく微笑むと、少女と翼を包むようにきれいな橙色の炎が展開される。
(この炎は、沢田と同じ…)
そして炎は少女と翼を囲むように展開された。
(温かい…)
自分と少女を覆い囲む炎によって、まるで心を優しく包まれているような感覚になった翼は、安心したような顔で目を閉じていく…
「奏さんの、代わりだなんて…」
翼が倒れてから数日後。
響はリディアンのとあるベンチでそう呟き、特機部二本部での会話を思い出していた。
「響」
そんな響に、未来が話しかけてきた。
「最近一人でいることが多くなったんじゃない?」
「そうかな?そうでもないよ?私、一人じゃなんにもできないし…ほら、この学校にだって、未来が進学するから私も一緒にって決めたわけだし…」
そうやっていいわけを続ける響に、未来は彼女の隣に座る。
「やっぱり、未来には隠し事出来ないね…」
「だって響、無理してるんだもの」
「…うん…でもごめん、もう少し一人で考えさせて。これは、私が考えなきゃいけないことなんだ」
未来にそう伝える響。それを聞いた未来は響の手を握る。
「…わかった」
「ありがとう、未来…」
すると、未来がベンチから立ち上がる。
「あのね、響…どんなに悩んで考えて、出した答えで一歩前進したとしても、響は響のままでいてね」
「私のまま…」
「そう。変わってしまうんじゃなく、響のまま成長するんだったら、私も応援する。…だって、響の変わりはどこにもいないんだもの!いなくなってほしくない」
「…でも私、私のままでいいのかな?」
「響は響のままじゃなきゃ嫌だよ」
それを聞いた響は特機部二で自分が行った言葉を思い出す。
『私だって、守りたいものがあるんです!だから─』
未来が響に微笑みかける。それを見た響は立ち上がり、奏と翼が入院している施設の方を一度向き、手を握りしめる。
「ありがとう、未来。私、私のまま歩いていけそうな気がする!」
それを聞いた未来は笑顔になる。
「そうだ、こと座流星群みる?動画で録っておいた!」
それを聞いた響は喜び、動画をみるが…
「なにも見えないんだけど…」
「うん…光量不足だって」
「ダメじゃん!」
そうつっこむ響。実は昨日、ツナもセレナからこと座流星群の動画を見せてもらったのだが、今の響達の会話と全く同じ会話をしていた。
二人はおかしくなって笑い出し、響は涙を流す。
「おかしいな…涙が止まらないよ。…今度こそは四人で一緒に見よう!」
「約束!次こそは約束だからね?─だから、次までには、ツナと二人で早く用事を終わらせてね?」
「え!?何で未来がそんなこと知ってるの!?」
「響が私に連絡したあと、ツナからも用事でこれないって連絡が来てね、その時に二人の用事が同じだってことを聞いたんだ。内容とかは詳しく教えてもらってないけど、ツナ曰く、いつか私に伝えるときが来ると思うって。それに、私が響にこと座流星群を録画してたこと、今まで黙ってた間はとても辛かった。響達も今、そんな気持ちなんだよね?だから、私からは聞かないから─響達が話してくれるまで、待ってるからね?」
「…ありがとう、未来」
そう言ってくる未来に感謝する響。
(私だって、守りたいものがある!私に守れるものなんて、小さな約束だったり、何でもない日常くらいなのかもしれないけれど…それでも、守りたいものを守れるように…私は、私のまま強くなりたい!)
そして響が向かった先は…
「たのもー!」
風鳴邸─風鳴弦十郎の元だった。
「私に、戦い方を教えてください!」
そして響は弦十郎の元に弟子入りし、彼の厳しい特訓が始まった…
「時に響くん─君は、アクション映画とか嗜む方か?」
「はえ?」
なんとか書けました…翼さんのところに来た少女は一体どこの姫なんだ…
追記(2020年12月22日)
誤字報告ありがとうございます!