戦姫燈炎SYMPHOGEAR!   作:生粋の名無し

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なんとか出来ました。楽しんでいただければ幸いです。
それと、感想はどんなものでも大歓迎なのでどしどし書いていただいて結構です!


標的(ターゲット)14 陽だまりと白い羽

A.M.4:00

 

「おいおい…あいつが言ってた通り本当に降ってやがる…」

 

 ほとんどの人が寝ている時間、クリスは外を見て呟く。そして最初に着ていた服に着替え、セレナが眠るなか、静かに部屋を出る。

 階段に向かっていると、ツナの部屋の扉が少し開いてることに気づき、そこから中を覗き込む。ツナはぐっすり眠っていた。

 

『ツナさんにとって、仲間や家族、友人、そしてその人達と過ごした時間は、いいことも悪いことも全て宝物のように大事だからです』

 

 そんな彼を見ていると、昨日セレナが話していたことを思い出す。

 

「仲間や家族、か…」

 

 そう呟くと、ツナが起きないように扉をそっと閉じ、静かにツナの家から出ていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A.M.5:00

 

「大変ですツナさん!」

 

 ツナが起きてすぐに、セレナが慌てて部屋に入ってくる。

 

「どうしたの…」

「クリスさんがいつの間にかいなくなってます!」

 

 起きたばかりで寝ぼけていたツナだったが、セレナの話を聞いてすぐに目が覚める。そしてすぐに外を確認する。

 

「嘘でしょ!?こんなどしゃ降りの中、外に出るなんて…」

 

 ツナはすぐに雨の日用のスポーツウェアに着替え始める。

 

「俺、今からクリス探してくる!」

「ツナさん、学校は!?」

「ごめんセレナ、今日は休むかもしれないって連絡しといて!」

 

 そう言って、どしゃ降りの雨の中を走っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツナが探している頃、クリスは商店街の路地裏でノイズと戦っていた。

 少しして戦闘が終わると、クリスのシンフォギアが解除され、彼女はどしゃ降りの雨の中、その場に倒れこんだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから三時間近く必死になって探し回っていると、弦十郎から連絡が入る。

 

「ノイズですか!?」

『そうだ。響くんにもすでに連絡しているが、市街地第六区域に、ノイズのパターンを検知している。未明ということもあり、人的被害はなかったのが救いではあるが、ノイズと同時に聖遺物『イチイバル』のパターンも検知したのだ』

「ーー!?弦十郎さん!その第六区域ってどこら辺ですか!?」

 

 ツナは弦十郎から発生場所の情報を聞き出す。

 

『捜査はこちらの方で引き続き行う。綱吉くんは、指示があるまで待機ーー』

「俺も探します!ていうか今探してます!」

『何をしているんだ綱吉くん!?君、学校は…』

「すでに学校には行けないかもしれないって連絡いれてます!それじゃそっちに向かうんで切りますね!」

『まちたまえ綱吉くん!話はまだーー』

 

 ツナは電話を切り、発生場所付近に向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

 クリスが目を覚ます。彼女がいた場所は、ツナ達がよく四人で食べに来るお好み焼き屋『ふらわー』の寝室だった。

 

「よかった、目が覚めたのね」

 

 クリスに未来が話しかける。クリスが路地裏で倒れたあと、その近くを未来が偶然通りかかり、ここまで運んできて看病していたのだ。

 

「びしょ濡れだったから、着替えさせてもらったわ」

 

 そう言われてクリスは自分の上着をよく見ると、胸元に『小日向』と大きく書かれたゼッケンが縫い付けられている体操服を着ていた。

 

「勝手なことを!」

 

 そう言って立ち上がるクリス。だが、そこで自分が下着を着ていないことに気づく。

 

「なんでだ!?」

「さすがに下着の替えまでは持ってなかったから…」

 

 未来が視線を横にずらしながらそう話す。すぐにクリスは自分の体を隠すように布団にくるまる。するとふらわーのおばちゃんが洗濯物をもって現れる。

 

「どう?お友達の具合は」

「目が覚めたところです!ありがとうおばちゃん…布団までかしてもらっちゃって」

「気にしないでいいんだよ!あ、お洋服、洗濯しといたから」

「私手伝います!」

 

 そう言って未来は洗濯干しの手伝いをしに行った。

 少しして戻ってきた未来は、クリスの体をタオルで拭き始める。

 

「あ、ありがとう…」

「うん?」

 

 未来にお礼をいうクリス。そんな彼女の、体のいたるところには、複数のアザが出来ていた。

 

「なにも、聞かないんだな…」

「…うん。私は、そう言うの苦手みたい…」

 

 未来はそれ以上なにもいわず、無言でクリスの体を拭いていた…

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ…」

 

 ちょうどその頃、今まで走り続けていたツナがふらわーの近くで立ち止まり息を整えていた。

 

「あら、ツナくんじゃない!こんな時間に何してるのかしら?」

 

 するとふらわーの中からおばちゃんが現れ、ツナに話しかけてくる。

 

「いや、その…ある人を、探してまして…あの、おばちゃん!小柄で、銀髪で、襟足の左右を長く伸ばして、おさげのような髪型をした女の子見ませんでした!?」

「あら、もしかしてその子、今家の寝室にいる未来ちゃんのお友達かしら?」

「っ!」

「あ、ちょっと!今は入らない方がいいわよ!」

 

 ツナはおばちゃんの制止を無視して建物の中に上がり込み、寝室と思われる部屋に向かう。

 

「クリス!大丈b…え?」

「ツナ!?なにしてるの!?」

 

 そして寝室の中を見ると、そこには、上着を脱ぎ背中を向けているクリスと、そんな彼女の背中を拭く未来の姿があった。

 

「え、あ、あぁぁぁ!ごめん!」

 

 その場の状況にやっと気づいたツナは、顔を両腕で塞いで慌てて下がろうとすると、

 

「えっ?」

 

 偶然にも足場が濡れており、それに足をとられたツナは─

 

 

 

 

 

 

ゴンッ!

「ウゲッ!?」

 

 

 

 

 

 

 勢いよく半回転し頭をぶつける。その際、未来が今までに聞いたことのないような鈍い音を出していた。

 

「ちょっと、大丈夫ツナ!?」

 

 そんなツナに未来が近付くと、彼は漫画のように目を回しながら気絶していた…

 

 

 

 

 

 

「うっ…いっつつ…」

「よかった、気づいたんだ」

 

 いっときすると、ツナが目を覚まし、未来は安心したように息をつく。

 

「あんな漫画みたいな気絶の仕方するやつなんて始めてみたぞ…」

「アハハ…」

 

 クリスにそう言われ苦笑いするツナ。

 

「そういえば、えっと…」

「クリス、雪音クリスだ」

「クリスは友達とかいないの?」

「…友達いないんだ」

「え?」

「地球の裏側でパパとママを殺された私は、ずっと一人で生きてきたからな…友達どころじゃなかった…」

「そんな…」

「たった一人理解してくれると思った人も、あたしを道具のように扱うばかりだった…誰もまともに相手してくれなかったのさっ…大人は、どいつもこいつもクズ揃いだ!痛いと言っても聞いてくれなかった…やめてと言っても聞いてくれなかった…あたしの話なんか、これっぽっちも聞いてくれなかった…っ」

 

 苦痛の表情を浮かべるクリス。彼女の話を聞いていたツナは、クリスが過去に受けたであろう仕打ちを想像し、苦悶の表情を浮かべた。

 

「ごめんなさい…」

 

 未来がクリスに謝り、沈黙が訪れる。

 

「─なぁ、クリスがよければなんだけどさ…未来と、友達になってくれないか?」

「「え?」」

 

 ツナがそう言いだし困惑する二人。

 

「もし、辛いことや悲しいことを話せる友達が出来れば、クリスの気持ちも少しは楽になるんじゃないかなって…」

「…すごい偶然だね。ちょうど私も、クリスと友達になりたいと思ってたんだ」

「─あたしは、お前たちにひどいことをしたんだぞっ」

 

 クリスがそう訴えた直後、サイレンが響き渡る。

 すぐに外の様子を見に行くと、たくさんの人が逃げるように走っていた。

 

「おい、いったいなんの騒ぎだ?」

「なにって、ノイズが現れたのよ!警戒警報知らないの!?」

 

 クリスはノイズが現れたことを聞き、逃げる人々とは逆の方向に向かって走り出した。

 

(バカ!あたしってば、なにやらかしてんだ!)

「クリス!?」

「クリスのことは俺に任せて、未来はおばちゃんと一緒に避難してて!」

 

 ツナはそう言ってクリスの後をおう。

 クリスは商店街から出てすぐのところで息を整える。

 

「あたしのせいで関係のないやつらまで…っ」

 

 クリスは泣きながら雄叫びをあげ、膝をつく。

 

「クリス!」

「あたしがしたかったのはこんなことじゃない…でもいつだってあたしのやることは、いつもいつもいつもっ!」

「落ち着け!」

 

 ツナはクリスの肩を掴み、目を合わせる。

 

「嘆いてるだけじゃどうにもならない、行動しなきゃなにも始まらないんだ!」

「おまえ…」

「俺は、クリスが過去にどんな目にあったのかなんて知らない…でも一つだけ言えることがある!俺は、君を裏切ったりなんて絶対にしない!」

「っ!」

「俺だけじゃない、響もそうだ!あいつは誰かを裏切ることなんて絶対にしない!それに、響はクリスと友達になりたいと思ってるんだ!それは翼さんも未来もセレナも、同じ気持ちのはずだ!…俺も、クリスのことはもう仲間だと思ってる…だから、俺はクリスのことを信じるし、危なくなったら絶対に助ける!だから…っ!」

 

 ツナが話していると、ノイズが襲いかかってくる。クリスはすぐに聖詠を歌おうとするが、先ほどの熱が少し残っていたのか、咳をしてうまく歌えない。ツナに関しては、ヘッドフォンどころかXグローブまでつけていなかった。

 どうにか前から襲ってくるノイズの攻撃をかわす二人だったが、上空から鳥型のノイズが強襲してくる。避けきれないと思ったツナは、すぐさまクリスを庇う。すると─

 

「フン!」

 

 聞き覚えのある男性の声となにかが迫り上がる音が聞こえ、ツナが後ろを振り向くと、弦十郎が踏み込みだけで地面からアスファルトの壁を生み出していた。

 

「ハァ!」

 

 そしてその壁で鳥型ノイズの攻撃を防ぐと、壁を殴って破壊し、ノイズの群れまで吹き飛ばす。

 その姿に二人が呆気にとられていると、右からノイズが襲いかかってくるが、それを再び弦十郎がアスファルトの壁を生成して防ぎ、二人を抱え近くの建物の屋上まで飛ぶ。

 

(やっぱこの人、人間じゃないでしょ!?)

 

 ツナが心の中でつっこみを入れる。どうやら多少は心に余裕が出来たようだ。

 

「大丈夫か二人とも」

「あぁ、はい、大丈夫です…」

 

 弦十郎の問いかけにツナが答えるが、クリスはその場を走り去ろうとする。すると目の前に鳥型ノイズが現れる。

 

《Killiter Ichaival tron…》

 

 クリスがシンフォギアを纏い、弓型のアームドギアで鳥型ノイズを倒していく。

 

「ご覧の通りさ!あたしのことはいいから、他の奴らの救助に向かいな!」

「だが…」

「こいつらはあたしがまとめて相手にしてやるって言ってんだよ!」

 

 そう言ってクリスはアームドギアをガトリングに変形させ飛び降りる。

 

「ついてこいクズども!」

BILLION MAIDEN

 

 クリスは周りの敵を一掃していく。

 

(俺は、またあの子を救えないのか…)

「安心しろ」

 

 肩に手をおかれ、そちらを向くと、ハイパーモードになったツナが立っていた。

 

「おまえの代わりに、俺があいつを絶対に守ってみせる」

 

 そう言ってツナはクリスのもとに向かう。

 

「HaHa!さあIt's show time 火山のような殺伐Rain」

 

 クリスは周囲のノイズを倒していると、上空から鳥型ノイズが強襲してくる。それに気づいたクリスが打ち落とそうとすると

 

Xカノン!!!」

 

 炎の弾がノイズ達を打ち落としていく。

 

「後ろは任せろ」

 

 クリスの後ろに現れたツナはそう伝える。

 

「あたしに背中なんか向けていいのかい?すぐにでも撃つかもしれないんだぞ?」

「さっき言っただろ…俺はお前のことを信じる、て」

 

 背中越しでそう伝えるツナ。

 

「そうかい…じゃあ、流れ弾にあたっても恨むんじゃねぇぞ!」

 

 クリスがそう叫ぶと、銃弾と炎の嵐が吹き荒れた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリスとツナが戦闘を開始した頃、弦十郎から連絡を受けた響はボロボロになった商店街を走っていた。連絡が来た際、隣にいた翼も現場に向かおうとしたが、メディカルチェックが出ていないからと弦十郎に止められ、響はそんな彼女に学院の皆を守ってほしいと伝え現場に向かっていた。

 

「キャー!」

 

 すると遠くから悲鳴が聞こえ、声が聞こえた方に向かう。声が聞こえたのは、ボロボロになった、恐らく建築中だったと思われる建物からだった。

 

「誰か、誰か今─」

 

 響はその建物の中に入り、誰かいないか話しかけた直後、上から何者かが攻撃してきて、それをその場から飛び降りて回避する。そして響が上を見ると、タコのような形をしたノイズが壁に張り付いていた。

 それを見た響が声を出そうとすると、横から誰かに口を押さえられる。響がその人物を確認すると、先ほどふらわーのおばちゃんと一緒に逃げたはずの未来だった。

 未来は響にジェスチャーで静かにすることを伝えると、スマホに文字を打ち込む。

 

『静かに あれは大きな音に反応するみたい』

 

 未来のスマホにはそう書かれていた。

 

『あれに追いかけられてふらわーのおばちゃんとここに逃げ込んだの』

(シンフォギアを纏うために歌うと、未来やおばちゃんが危ない…どうしよう…)

 

 響が考えていると、未来が新しい文章を彼女にみせる。それを見た響は、慌てて自分のスマホを取り出し文字を打ち込んで未来にみせ、それを見た未来がさらに言葉をみせる。

 響はその内容に驚き、新しい文章を作ろうとするが、未来は彼女のスマホに手を置き止める。

 するとふらわーのおばちゃんが呻き声をあげ、それに気づいたタコ型ノイズが動き出す。それに気づいた未来は響の耳元に顔を近付ける。

 

「私は、響やツナみたいにノイズを倒す力なんて持ってない…それでも一緒にいたい。私だって戦いたいんだ…っ」

「ダメだよ、未来…」

「どう思われようと関係ない。響達だけに背負わせたくないんだ…」

 

 そう言うと、未来は立ち上がり

 

「私、もう迷わない!」

 

 迷いを吹っ切るようにそう叫んだ。そしてその声にタコ型ノイズが反応する。

 未来は響達から遠ざかるように走り出す。そしてタコ型ノイズが未来に向かって攻撃を始める。

 未来はその攻撃をかわし、建物の外に出るが

 

「キャッ!?」

 

 偶然にも、足元に散らばっていた瓦礫に足を引っかけ転んでしまう。

 そんな未来にたいし、タコ型ノイズは容赦なく未来を襲おうとする。それを見た響が、彼女の名前を叫ぼうとした、その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─上空から、衝撃波のようなものが飛んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはノイズの触手のすぐ前を通り、地面に着弾した直後その場にクレーターを作り出した。

 それを見た響と未来が空を見上げると

 

「誰か、飛んでる…?」

「天、使…?」

 

 太陽の逆光で顔や格好はよく見えないが、翼を生やした何者かが、上空から響達を見下ろしていた。

 二人は最初、その状況が理解できず呆けていたが、未来がタコ型ノイズのことを思いだし、すぐに立ち上がり走り出した。そしてノイズも未来の後をおい建物から離れていく。

 ノイズが動き出すと同時に響も立ち直り、ふらわーのおばちゃんのもとに向かう。

 

《Balwisyall Nescell gungnir tron…》

 

 響はシンフォギアを纏うと、すぐにふらわーのおばちゃんを抱きかかえ建物よりも高く飛ぶ。するとタイミングを見計らったように、緒川が運転する車が現れる。響は緒川の近くに降り立つとすぐに空を見上げたが、先ほどの人物はいつの間にかいなくなっていた。

 

「緒川さん、おばちゃんをお願いします!」

「響さんは!?」

 

「何故どうして? 広い世界の中で」

 

 響は緒川におばちゃんを任せると、建物や電柱を使って未来が逃げた方向に向かう。

 

(未来、どこ!?)

 

 響は未来を探しながら、先ほどのやりとりを思い出す─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『響聞いて わたしが囮になってノイズの気をひくから その間におばちゃんを助けて』

『ダメだよ そんなこと未来にはさせられない』

『元陸上部の逃げ足だから何とかなる』

『何ともならない!』

『じゃあ、何とかして?』

 

 その一言を聞いた響は、一瞬驚く。

 

『危険なのはわかってる だからお願いしてるの 私の全部を預けられるの 響達だけなんだから』

 

(戦っているのは、私一人じゃない…シンフォギアで誰かの助けになれると思っていたけど、それは思い上がりだ!)

 

 響は空高く飛ぶ。

 

(助ける私だけが一生懸命じゃないっ…助けられる誰かも、一生懸命─)

『おい死ぬな!』『目を開けてくれ!』

『生きるのを諦めるな!』

(本当の人助けは、自分一人の力じゃ無理なんだ…だから、あの日あの時、奏さんは私に、『生きるのを諦めるな』と叫んでいたんだ!今なら分かる気がするっ…)

「イヤー!」

 

 遠くから未来の悲鳴が聞こえた。

 倒れこんでいる未来の目の前には、いつの間にかオレンジから青に変わったタコ型ノイズが、地面に触手を突き刺していた。

 未来はすぐに体制をたてなおし走り出し、ノイズも触手を引き抜いて未来の後をおう。

 響のシンフォギアの腰部ユニット後方に装備する二基のバーニアが炎をふかせる。

 

(そうだっ、私が誰かを助けたいという気持ちは、惨劇を生き残った負い目なんかじゃない!)

 

 両足の脛部にパワージャッキが展開され、バネが引き絞られる。

 

(2年前、奏さんから託されて、私が受け取った、気持ちなんだ!!)

 

 響は、パワージャッキの力によってさらに加速し、未来のもとに飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ…」

(もう走れない…)

 

 今まで走り続けていた未来だったが、元陸上部といえどさすがに限界が来たようで、足の力が抜け四つん這いになってしまう。そして後ろからノイズが近付いてくる。

 

(ここで、終わりなのかな?─仕方ないよね、響…)

 

 迫り来るノイズを見た未来は顔をうつむかせる。

 タコ型ノイズは、止めだと言わんばかりに空高く飛び、足を広げて未来の元に降ってくる。

 

(だけど、まだ響と…ツナやセレナ、皆で流れ星を見ていない!)

 

 その事を思い出した未来は、慌てて立ち上がったことでノイズの直撃をかわすことが出来たが、落ちてきたノイズの衝撃で道路が崩壊し、ノイズもろとも落ちていく。

 すると横から響が現れ、腕のハンマーパーツのバネを引き絞りノイズに迫る。

 そしてノイズを殴り付け、それと同時にバネによって強化されたハンマーパーツの衝撃によってノイズの背中側が吹き飛び消滅していく。

 ノイズを倒した響はハンマーパーツを空中で打ち込み、未来の元に飛んでいき抱き寄せる。

 そして地面が近付いてくると、足のパワージャッキを展開して腰のバーニアをふかせる。

 

「優しさを Sing out with us」

 

 なんとか衝撃を緩和し地面に着地することは出来たが、バランスを崩し草の上を転がり落ちていく。それと同時に響のシンフォギアも解除される。

 転がり落ちたさきで二人が同時に腰をさすり、互いにその事に気づくと笑いがこぼれる。

 

「かっこよく着地するって難しいんだなぁ」

「あっちこっち痛くて…でも、生きてるって気がする!…ありがとう。響なら絶対に助けに来てくれると信じてた!」

「ありがとう…未来なら絶対に諦めないって信じてた…だって、私の友達だもん!」

 

 その言葉を聞いた未来は、泣きながら響に抱きつく。いきなり抱きつかれた響は勢いのまま草原に倒れこむ。

 

「怖かった…怖かったの…」

「私も…」

「すごい怖かった…響もツナも、最近は辛いこと苦しいこと、全部背負い込もうとしていたじゃない…私はそれが堪らなく嫌だった!…また二人が大きな怪我をするんじゃないかって心配してた…だけど、それは二人を失いたくない私のわがままだ…そんな気持ちに気づいたのに、今までと同じようになんて、出来なかったんだ…!」

「未来…それでも未来は私の、私達の─っ」

「?なに?」

 

 未来が響に聞くと、彼女はいきなり笑い始めた。

 

「だってさ、髪の毛ボサボサ涙でグチャグチャ…なのにシリアスなこと言ってるし!」

「もう!響だって似たようなものじゃない!」

「うえぇ!?嘘!?」

 

 響は自分の顔がどうなっているか確認するため、未来に鏡をもってないか聞くと、未来は代わりにスマホを取り出してツーショット写真を撮る。

 

「すごいことになってる!?これは呪われたレベルだ…!」

「私も想像以上だった…!」

 

 写真を見て素直な感想を述べると、二人は笑顔で笑い始めた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、あれが立花響ちゃんに小日向未来ちゃんか…二人とも、面白い子だね♪」

 

 二人が笑っている頃、その様子を林の中から眺める人物がいた。

 

「すぐにでも彼女達の前に出ていきたいけど、まだ彼にすらあっていないし、彼に会うこと自体、彼の家庭教師が来るまで禁止させられてるからなぁ♪」

 

 そういいながら、その人物は響達とは反対の方向─林の奥に向かい歩いていく。

 

「もし()()が来てることを知ったら、彼はどんな風に驚くんだろうなぁ!楽しみだなぁ─()()くん♪」

 

 その人物は、懐からふたの開いた袋を取り出し、中から白いお菓子─マシュマロを取り出しながらそう呟き、林の奥に消えていく。その人物の近くには、小さな白い龍が突き刺さり、少しずつ崩壊していくノイズが散らばっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!ふらわーさんから回収しました」

「ありがとうございます!」

 

 あのあと二人は商店街に戻り、現場対応をしていた弦十郎達の元に来ていた。そして未来が緒川から鞄を受け取ったときには、空はすっかり暗くなっていた。

 

「あのぉ、師匠…」

 

 響は、弱々しく弦十郎に話しかける。

 

未来(この子)に、また戦っているところを、じっくりバッチリ目の当たりにされてしまって…」

「違うんです!私が首を突っ込んでしまったから…!」

「─詳細は、後で報告書の形で聞く。まぁ、不可抗力というやつだろう─それに…人命救助の立役者に、うるさいことは言えないだろうよ」

 

 それを聞いた二人は、喜びのあまりハイタッチをする。

 すると、車で遅れてやってきた了子が現場の後片付けの指示に入った。

 

「あとは、頼りがいのある大人達の出番だ!響くん達は帰って休んでくれ」

 

 それを聞いた二人が寮に帰ろうとすると、未来があることを思い出し弦十郎に話しかける。

 

「あの…私、避難の途中で友達とはぐれてしまって…雪音クリスと言うんですけど…」

 

 それを聞いた弦十郎は一瞬驚いたものの、すぐに平常心に戻る。

 

「被害者が出たとの知らせも、受けていない。その友達とも、連絡がとれるようになるだろう─ん?」

 

 弦十郎が心配ないと伝えようとすると、スマホがなっていることに気づき取り出す。その画面には、『沢田綱吉』と出ていた。

 

「どうした?」

『お疲れ様です弦十郎さん。こっちの方は片付きました』

「そうか、よくやったな。お疲れ様─ちなみにだが、彼女は…」

『クリスなら、俺の近くにいますよ』

「そうか、無事か!よかった…」

『─クリスのことなんですけど、俺に任せてくれませんか?』

 

 弦十郎はツナの言葉を聞き驚くが、声から彼が真剣に話していることに気づく。

 

「─わかった。彼女のことは君に任せよう」

『ありがとうございます!』

 

 そう言ってツナは通話を切った。弦十郎はスマホをしまったあと、未来の方を向く。

 

「あの…どうしたんですか?」

「ちょうど今、綱吉くんから君の友達は無事だと連絡が入った。だから心配する必要はない」

「そうなんですか!?よかった…」

 

 未来は弦十郎に頭を下げると、響のあとを追っていった…

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…なんとか弦十郎さんから許可を貰えたけど、どうしよう…」

 

 ツナは通話を切ったあと、そんなことを呟く。先ほど、クリスのことは任せろ、とは言ったものの、彼女が自分の家に来てくれるかどうかは聞いてなかったのだ。

 ツナはスマホをしまい、川を眺めていたクリスの近くに向かう。

 

「あのさ…「…いいぞ」え?」

「だから、お前の家に居候してやってもいいって言ってんだよ!」

 

 少し頬を染めつつ、ツナの方を向きそう叫ぶクリス。それを聞いたツナは安心から顔の表情を緩める。

 

「本当に!?」

「ただし、あたしが新しい寝床を見つけるまでの間だからな!分かったか!」

「それでも嬉しいよ!きっとセレナも喜ぶよ!」

 

 ツナの言葉を聞いたクリスは、そっぽを向き早歩きでツナの家の方向に歩き始める。そんな彼女に苦笑いしているとスマホに未来からなにかが送られてくる。

 

「ブッ!?」

 

 送られてきたものは、先ほど未来が響と撮った写真だった。二人の格好を見たツナは耐えきれず吹き出す。

 

「オーイ、なにしてんだ!さっさとしねぇとおいてくぞ!」

 

 すると遠くからクリスが呼び掛けてくる。ツナはスマホをしまうと、すぐにクリスのあとを追った…




うぉ!?今度も物凄い字数になったなぁ…
続きは来週になると思います。そしてもしかしたら来週で一期終わるかもしれません。
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