あと設定のところに、重要なアイテムの一つである京子手作りのお守りについて書き足しておきました。
─
『─これがオレが知る、最も有力と思われる匣の情報の全てだ』
「すごいな…400年も前にこのような理論を考えていた人がいたとは…」
「それにヴェルデって名前、ツナが持ってた医療箱の名称に入ってたよね?」
「ご名答♪あのすごい医療キットを作り上げ、匣の開発にも携わった人物こそ、元・雷のアルコバレーノでありダ・ヴィンチの再来と唄われる男、ヴェルデクンさ!」「へぇー」
「しっかし、そのヴェルデってやつを含めた、匣の理論を現実にした科学者の2人がそろって変死ってのはな…」
「…もしかして、誰かが変死に見せかけて殺したんじゃ…」
『ああ、間違ってはいない…だが、どうして匣ができたかという問いに対する、本質的な答えとは言えないな…匣を現在に成り立たせた本当の立役者は、ジェペットでも優秀な科学者でもない─偶然だ』
「偶然だぁ?」
『それって…何となくできちゃったって…ことですか?』
『こういうことです─世界的な大発見や大発明には、発明家の身近に起きた偶然がひらめきを誘発してできたものが少なくありません。ニュートンが万有引力を発見したリンゴしかり、ノーベルがダイナマイトを発明した時の珪藻土に染み込んだニトログリセリンしかり…もちろん、それらのミラクルには偶然を必然とする受け手の準備と力も当然必要ですが。しかし、それらを含めてそのような偶然はそう簡単に起こることではありません』
『だが、こと匣開発においては、それが尋常でなく頻繁に起きている』
「えと、どういうこと…なの?」
『我々はそれを調査してるのです』
『知るほどに謎は深まるばかりでね…沢田綱吉、明日も楽しませてくれよ』
そういって雲雀は、先程とはどこか違う笑みでツナを見る。
『覚えておくといい。大空の炎は全ての属性の匣を開匣できるが、他属性の匣の力を全て引き出すことはできない』
「おい!ツナが出したハリネズミが取り込まれていってるぞ!」
ツナが出したハリネズミはそのまま雲雀の雲ハリネズミに飲み込まれていき、粉々に砕け散る。
『悲観することはないよ。大空専用の匣も存在するらしい』
雲雀はそう言い残すと、草壁を連れて部屋を出ていく。それとすれ違うようにして、リボーンを探しに来た山本が入ってくる。
『小僧!!』
『待たせて悪かったな』
『ツナも元気そーじゃねーか!いやーよかった!!』
『んじゃ、お前の修行も再開すっぞ山本『ああ』』
『沢田、おまえも休んでる暇はないぜ。一刻も早くVer.
そう愚痴のように呟きながらラルが近づくと、ツナは先程の戦いで消耗しすぎたからか、いつの間にか眠っていた。
『…仕方のない奴だ。あの試練の後だ…無理もないな─』
「ラルさん…実は優s」
『─とでも言うと思ったか!!』「ウェ!?」
『こんなことでは、ミルフィオーレに潜入し入江正一を消すことなどできんぞ!!目を覚ませ!!』
『ぶぶぶっ』
「やっぱり鬼だったー!!」
『ラルさん、すごいスパルタ…』
『ってか、ツナ教えるの降りるって言ってなかったか?』
そのあと、ツナは一度眠気を覚ますためにお手洗いに来ていた。(なお、ツナがトイレに来た際に他に用を足している人がいなかったのは響達にとっての救いである)
ツナは顔を洗い眠気を吹き飛ばすと、一度指からはずし、再びチェーンで繋いでいたボンゴレリングを眺める。
『…あんなことって…あるのかな…歴代ボンゴレに…初代ボンゴレ…だって、考えてみたらみんな、もう死んじゃってるんだし…あ!』
【死んじゃって…】
ツナの脳裏に9代目の姿が浮かぶ。
「そうか…あの中に9代目がいたということは、この時代の9代目はもう…」
「そんな…」
ツナは9代目のことを思い出してうつむきながらトイレから出る。すると─
『ツナ!!どいてくれ!!』
『へ?─も゛っ』
山本の声と共に、ツナの頭に何かがぶつかってきた。
『わりぃ!!まだノーコンでな!!』
そういいながら、倒れこむツナの横を走り抜けていく山本。彼の前方には、先程ツナの頭にぶつかってきた生き物─
『や…山本!!』
『本当スマン!!あとでちゃんと詫びるから!!』
『…てか、ろうかで何やってんの…?『軽いランニングよ』ふぎゃっ』
謎のコスプレをし、山本の後を追ってきたリボーンがツナの頭をキックボードで轢く。
『匣のつばめをとばしながら、5kgのウェイトをつけて42km走ってんだ』
『なあ!?42kmって!?』
「それもう完全にフルマラソンだろ!どこが『軽いランニング』だ!?」
『あとでこの階の酸素を薄くするからな。息苦しくなるぞ』
「しかも酸素濃度を下げてさらに肉体的負担をかけていくのか!?」
「あ、なんか落としていった」
リボーンが落としていった紙をツナが拾い、響達が後ろから覗きこむと─『女子マネ的 軽~い準備運動♥️』というタイトルと、全くもって軽くない内容が書かれていた。ちなみにいくつか抜粋させていただくと─『軽いランニング♥️ 42km』『軽いうでたて♥️ 100×100回』『軽いふっきん♥️ 100×100回』─などだ。
『んなー!!準備運動がこれー!?あの2人の修行はハイパースパルタ体育会系!?』
「「「どこが軽い運動!?」」」
『負けてられないな』
「あ…ラ、ラルさん…」
『オレ達はヒバリの修行時間以外はVer.V.R.の強化だ』
『え…オレ達って…』
『えではない!!それでは入江正一を倒せんぞ!!Ver.V.R.の新しい必殺技なり戦略を手に入れるんだ!!』
『「だからなんでー!?ラルさんが燃えてんのー!?指導降りるって言ったのに~!!」』
ツナと響のツッコミが見事にハモる。その後ツナは、対抗心に火が着いたラルにつれられて修行に向かうのであった…
『今日もごちそうさまのまえに寝ちゃったね』
台所兼食堂にて、ならんで眠るツナと山本を見て微笑む京子。
『新しい修行が始まって3日連続ですよ』
『よほど疲れてるんだよ』
『獄寺さんは今日も1人だけ席離れてますし…ケガ…大丈夫かな?』
『ほっときなさい。自分の修行の不甲斐無さを恥じてるのよ』
『うまくいってねーのか?』
『ええ…1分間にやっと2匹…何よりあの子、やる気があるのかないのか…』
『ふむ…』
獄寺の修行についてビアンキとリボーンが話していると、そんな二人の会話が聞こえていたのか、獄寺は起き上がる。
『リボーンさん、お先に休ませてもらいます。10代目にもよろしくお伝えください』
獄寺はそれだけ伝えると、扉を乱暴に閉めしながら、部屋を出ていった。
「獄寺さん、荒れてるね…」
『おまえと獄寺は例の件もあるし、水と油だと思ってはいたが…やはり、この修行のこの組み合わせは無理があったのかもな』
『軟弱なのよ─あの子のことは最後まで見させてください。先におフロいただきます』
そういってビアンキも食堂を後にしたのだった…
『起きろよダメツナ』
『ふにっ!』
その後、洗い物が終わった京子達もお風呂に入りに行ったのを確認したリボーンは、今まで眠っていたツナを、顎を蹴りあげてたたき起こす。
『リ…リボーン…そーいや、ビアンキと獄寺君の例の件って何だよ』
『何だ、さっき起きてたのか?』
『うん…一瞬ね…そのまま眠気に負けて寝ちゃったけど…でも、確かに近頃の獄寺君おかしいよ!話しかけても反応薄いし…例の件って何があったの?』
『…しょーがねーな…』
リボーンは一言呟くと、獄寺とビアンキの関係を話し始めた…
『獄寺ん家はマフィアで父親がボスなんだか、獄寺はビアンキとは違う母親から生まれたんだ』
「「「え…!?」」」
過去のリボーンからのまさかの話に驚きを隠せない響と未来、そして血の繋がった姉を持つセレナ。
そして現在のリボーンは、『違う親』という言葉に、一瞬だけ反応した翼を見逃さなかった。
『獄寺の母親は正式な妻じゃなくってな…なにかと待遇がひどかったらしい。最後は父親の組織の者に消されたって噂だ』
「「「「「消された!?」」」」」
『け…消されたって…獄寺君のお母さんが?』
『獄寺の母親はまだ若く駆け出しだったが、将来を嘱望された才能あるピアニストでな…大変な美貌の持ち主でもあった。そんな彼女にビアンキの父親は一目惚れしてな。妻子ある身でありながら強引に口説き落とした…やがて、二人は付き合いはじめ、彼女は赤ん坊を身ごもり出産した。それが獄寺だ…だが、妻でない女との間の子供が、マフィア界では決して許されず…獄寺はビアンキの母親との子供と公表された。獄寺の母親は年に3日しか子供と会うことを許されず、ピアニストとしての将来も奪われた。そして獄寺の3歳の誕生日の5日後…誕生祝いの密会を許され、組織が所有する山奥の別荘に向かう彼女の車は…あり得ない場所で謎の転落をした。タイヤ痕は一切なかったという…彼女は即死…幼い獄寺を残してな…』
「そんな…」
「あいつ、幼い頃に親をなくしてたんだな…それも、あたしよりも断然幼い時に…」
『自殺の線も疑われたが、彼女はこの日を心待ちにしいてたふしがあり、車内からもプレゼントが発見されている…獄寺がそれらのことを知るのは、城を飛び出す前日─お手伝い達の噂話を偶然聞いてしまう8歳のときのことだ…』
『…なにそれ…そんなひどい話、獄寺君、一言も…』
『それであいつ…家庭がドロドロのグチャグチャだって…』
『山本!起きてたの?』
途中からリボーンの話を聞いていた山本が自分とツナ、リボーンの湯呑にお茶を注ぎ、一息つく。
『難しいなぁ…何て言って獄寺君を励まそう…』
『ほっとけ。男なんだ、自分で折り合いつけさせろ』
『なっ!おまえこーゆー時冷たいぞ!!』
『周りがとやかく言う問題じゃねーって言ってんだ』
『まーまー2人とも。気持ちがニッチもサッチもいかなくなった時は、気分転換が一番だと思うぜ』
『「気分転換?」』
『ああ!オレにいい考えがある。任せとけって!!』
『ランボさん登場!!』
山本の言う気分転換が何なのか響達が興味津々にしていると、風呂上がりで少し火照っているランボが部屋に元気よく入ってくる。
『よっランボ!』
『フロ入ってきたのか?』
『んーとねぇ、ビアンキと京子とハルとイーピンもだよ。今ねぇおフロの中ねぇ─おっぱいがいっぱい』
『なっ!』
『ぶ─っ!』
ランボのまさかの爆弾発言に、山本は持っていた湯呑を落とし、ツナは口に含んでいたお茶を勢いよく吹き出した。その結果、二人とも熱々のお茶に苦しめられることに。
そろって熱がる二人を見て、リボーンが『本当ガキだな』と呟く。そんなこんなで夜が過ぎ、次の日の朝。
『おはよーございます!!10代…』
食堂に入ってきた獄寺が目にしたのは、いつものように料理の準備を始める京子とハル、そして左胸に「すし」と縦書きされた法被を羽織った、ツナと山本の姿だった。
『待ってたぜ!』
『おはよう獄寺君!』
『な!?』
『今日は男子が朝ごはん当番になったんです!』
『山本君指導、竹寿司直伝の手巻き寿司を作るんだって』
「山本の家は寿司屋だからな。山本の父親が握る寿司は格別だが、山本も寿司屋の息子なだけあって、相当な腕前だぞ」
「そうなんだ!いいな~、私も山本さん家のお寿司食べてみたいな~」
「竹寿司は
「うぐっ!…やっぱり?」
「ま、お前らが山本と仲良くなったら、山本ん家に遊びに行ったときにお茶請けの代わりに出されなくもない、かもな」
「本当!?」
「おいご飯バカ!そういう話は後でにしろよ!」
『最近修行ばかりだし、たまには息抜きしようよ』
『え…』
獄寺はツナの言葉に一瞬目を見開くが、すぐにうつむく。
『す…すいません10代目…今、自分そういう気分では…』
『で…でも人手が足りないんだ!オレ、ラル・ミルチの分も作らなきゃいけないし…あの人、みんなとごはん食べないけど、結構、食にはうるさくて…』
『とにかくやろーよハヤト兄!!』
獄寺の後ろに現れたフゥ太が、背中を押してツナ達の元に連れていく。
『おい!』
『すっし!すっし!』
『こらアホ牛!!米粒ついた手で触んな!!』
『ベロベロベー!』
『これでちったー修行に身が入るといいがな』
ウザ絡みしてくるランボにキレる獄寺を見ながら呟くリボーン。その隣では、獄寺をじっと見つめるビアンキの姿があった…
『骸に動きがあったって、どういうことですか!?』
皆で山本直伝の手巻き寿司を堪能したツナ達ボンゴレメンバーは、パソコンなどが設置されたミーティングルームのような部屋─副作戦室にて草壁からの報告に声を荒げる。
「骸さんって確か、リボーン君が最初の方で言ってた…」
「沢田の霧の守護者の片割れ…そして、
『だってまだ骸は
『我々もそう思っています』
「復讐者…?また聞いたことのない名が出てきたな」
「復讐者は法で裁けねぇ人間を裁くマフィア界の番人だ。たった一人でも相当な強さを持ってやがる奴が常に三人一組で行動している…あの出来事が終わった今でも、出来れば関わり合いたくねぇ連中だ」
「あの出来事…?」
『5年前に城島・柿本・クロームは復讐者の牢獄へ骸救出に向かい失敗。その後、3人は消息を断った…ただし半年ほど前、妙な噂が立った』
『妙な噂?』
『骸が倒された、というものです』
『「!」』
『どういうこと?』
『発信元はミルフィオーレ…倒したのは第8部隊隊長「グロ・キシニア」。数少ないAランクで、相当腕の立つ強者です』
そう話す草壁のモニターに、メガネをかけたおかっぱ髪の男─グロ・キシニアの写真が写し出される。
「下種なのに強いんだよねぇ、彼って」
「下種?」
「彼、女性を痛め付けるのが好みっていう頭のおかしい性癖を持ってるんだ。そのくせして常識に縛られない考え方したり、素早く状況を把握できる冷静さを持ってるから、気持ち悪いのに強いんだよなぁ」
元・
『考えられるとすれば、何者かに憑依した骸と戦ったのでしょう?』
『骸が大きなダメージを負ったことも考えられますが、少なくとも死んではいないはず…なぜなら我々はその後、イタリアの空港である男と接触している、クローム髑髏を捉えたからです』
そう言って草壁が取り出した写真には─空港で、右腕を包帯で支え、顔をサングラスとバンダナで隠した大人クロームと思われる女性と、ハンチング帽を被った男性が会話していると思われる姿が写っていた。
『ク…クローム生きてたんだ!!ケガはしてるみたいだけど…』
『そうか…骸が死んじまってたら、クロームは生きてられねーんだったな』
「生きていられない、だと?」
「あぁ、クロームは─『だが今、クロームは行方不明…ってことは、今回動きだしたのはこの密会していた男の方だな』…」
翼達にクロームについて説明しようとしたリボーンだったが、過去の自分に話を遮られてなんとも言えない空気が漂う。
「─まぁ、クロームについては後々話すか」
『雲雀は、この男が骸の
そう言って草壁が新たに取り出した写真は─
「こりゃたしか、前見たヒバードとかいうやつの写真じゃねーか」
「これに骸に関わるものが写っているというのか…?」
「─あ!皆さん、写真の左上をよく見てください!」
『「─!!」』
『これが骸!?』
『これも骸の何かです…雲雀はイタリア滞在中にこれの視線を何度か感じ確信したらしいです。運よく我々のカメラに一枚だけ写りましてね』
『でもよ…』『こいつぁ…』
「フクロウ、だよね?」
『我々はこれに、骸をもじって名前をつけました─ムクロウ、と』
草壁が写真に写った生き物のコードネームを口にした直後、中央のメインモニターに写されたレーダーが反応を見つける。
『何だジャンニーニ』
『一瞬ですが、データにない強いリングの反応が…黒曜ランド周辺です』
『!!』
『黒曜ランド!?』
「なんだ?どっかの遊園地か?」
「正式名称は黒曜ヘルシーランド。廃墟になった黒曜センターっていう複合娯楽施設の一つで、骸達が活動の拠点にしている場所だ」
「なら、レーダーに反応したのは骸さんかクロームちゃんのリングかも…!」
『ただしこのあたりは電波障害がひどく、誤表示の可能性も高いです』
『新たな敵かもな』
『─違う…きっと仲間だ…』
「ツナ…?」
『ボンゴレリングを持った…クロームかも…』
その後、ジャンニーニがレーダーの反応の解析を始めるが…
『やはりデータ不足ですね…レーダーに写った黒曜の反応が本物かどうか計りかねます』
『どうしよう…もしクロームならこんなことしてる場合じゃ…』
ジャンニーニの発言にツナが慌て始めた直後、警報と共にメインモニターの映像が切り替わり、画面を横並びの『,』の文字が埋め尽くす。
『!?』
『今度は何だ?』
『緊急暗号通信です!』
『コードにコンマが並んでるってことは─』
『我々の
「暗殺部隊!?」
「そうか…マフィアなら、そのような部隊がいてもおかしくはないか…」
【え…?暗殺部隊って…】
『どうだ?』
『画像データのようですね…あと少しで解析できます』
『でもよ…暗殺部隊っつったら…』
『あの人達しか思い当たらないけど…』
『しかし、世の中には多くのそれが存在しますよ』
「あれ?ツナ達はその暗殺部隊の人達のこと知ってるの?」
「そりゃそうだ。何せ
「え゛」
『おっ!いけそうですよ─!やはり暗号コードはボンゴレのものです。デジタル署名も一致』
『つーことはやっぱ!』
『ボンゴレ特殊暗殺部隊…!』
『再生します』
ジャンニーニが解析できた画像を再生させるため、エンターキーを叩くと─
『う゛お゛ぉおい!!!』
映像が始まってすぐ彼らを襲ったのは、鼓膜が破れんばかりの大きな声だった。
「な、何だいったい!?」
「あー!耳がぁ!」
翼達やリボーン達は何とか耳を塞げたようだが、響だけは間に合わなかったようで耳を押さえてその場で転がる。
『首の皮はつながってるかぁ!?クソミソカスどもぉ!!!』
『出やがった!』
『じゅ…10年後の…』
『スクアーロ!!』
「スクアーロってたしか、未来の山本が使ってた技にあった名前じゃねぇか!?」
『ボリュームを下げろ!聞くに耐えん!!』
『はいっ…ずいぶん下げてるんですが』
「大丈夫?響…」
「うぅ…まだ耳がキンキンするよぅ…」
『いいかぁ?クソガキどもぉ!!今はそこを動くんじゃねぇ!!外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!』
『!黒曜ランドのことだな』
音量を下げたことによって先程よりかはかなりマシにはなったが、それでもまだやかましく感じる程の大声で、映像に写る長い銀髪の男性─スクアーロは命令のような言い方で注意を促してくる。
『じっとしてりゃわっかりやすい指示があるから、それまでいい子にしてろってことな!お子様達♪』
『ナイフ野郎!』
そんな彼の後ろから、今度は王冠をかぶり、前髪で目が隠れた男性─ベルフェゴール(通称ベル)が現れる。
『う゛お゛ぉい、てめー何しに来た!』
『王子ヒマだし─ちゃちゃいれ』
『口出すとぶっ殺すぞぉ!!』
『やってみ』
映像に写る二人が徐々に険悪な雰囲気になっていき、ベルの一言が開戦の火蓋となって突如争い始めた。
『う゛お゛ぉい…』
『しししっ─いてっ』
【相変わらず荒くれ集団だ…】
「ねぇ、スクアーロさんと、あと…「ベルフェゴールな」ベルフェゴールさん、いきなり喧嘩始めたけど大丈夫なの!?しかもさっきスクアーロさん、殺すって…」
「なーに、あいつらの『殺し合い』は日常茶飯事のことだ。それに、稀に重傷者は出るが誰か死んだりとかはねーから安心しろ」
「イヤ殺し合いとか重傷の人が出る時点で安心できないよ!?」
『またこの世で会えるといいなぁ!!それまで生きてみろぉ!!』
画面いっぱいに写し出されたスクアーロは、顔に血を滴らせながらそう叫ぶと、映像が終わる。
『あいつら、変わってなかったな!』
『怖かった…分かりやすい指示って何だろ…』
『どーやらあの方のことのようですよ。イタリア帰りの』
するとツナ達の背後から足音が聞こえ、振り返ると─
『笹川了平、推参!!!』
傷だらけのクロームを抱き抱えた10年後の了平の姿があった。
『芝生…!』
『お兄さん!それに─クローム髑髏!』
「やっぱり、さっきの反応はクロームちゃんのリングだったんだ!」
「にしても、こいつは何でこんな傷だらけなんだ?」
「聞いた話によれば、黒曜ランドに隠れているところをグロ・キシニアに襲われたらしくてな」
「な…!?あの外道にか!?」
「ああ。だが、クロームは匣兵器のフクロウに憑依していた骸の手助けと、ボンゴレリングの力で返り討ちにしたらしいぞ」
「あ!クロームちゃんが抱えてるの、写真に写ってたムクロウじゃない?」
そんなこんなで、クロームを集中治療室につれていき、ビアンキに手当てを任せたあと、了平がツナ達と情報共有を始めようとしていると、話を聞き付けた京子とハルが部屋に飛び込んでくる。京子は元気そうな兄を見つけると、彼の胸に飛び込み抱きついた。
『よかった無事で!!』
『な…泣くな…見ての通りオレはピンピンしている!!なっ』
『うん…』
「よかったね…京子ちゃん、お兄さんと再会できて…」グスッ
「そうですね…」グスッ
【二人を見てると10年前と一緒だな…お兄さんも昔のままみたいだ…】
『つか、なんでお前がここに来るってヴァリアーが知ってたんだよ!』
『もちろん、オレもそこにいたからだ!そして伝言を持ち帰った!』
【お兄さんがヴァリアーに!?】
『ベルフェゴールの言ってた指示のことだな』
『一体、何スか?』
『それが極限に忘れた!!!』
「忘れたのかよ!?」
『だが心配はいらん!ちゃんとメモしてある!オレにしかわからんようにな』
『お』『10年で1つ覚えたな』
了平は取り出したメモを読み始める。
『ふむふむ!─はっ!そーかそーか!─イタリアには出張相撲大会があって行ったのだった!楽しかったぞ京子!!ハル!!』
『「え?」』
【ごまかし方相変わらずメチャクチャー!】
「まだこのとき、京子とハルはマフィアやボンゴレについてなにも知らなかったからな…京子をマフィアのいざこざに巻き込みたくない了平は、マフィア関連の争い事を全て相撲の試合だと偽っていたんだ」
「…せめて誤魔化す内容、もうちょっとマシなの考えろよ…」
『沢田さん…ムクロウですが、やはり匣兵器のようです。本当にこれ以上の調査はいいのですか?』
『うん…だってそれもクロームの持ち物だもん。勝手にいじられたら嫌だと思うし…』
『…そうですか…』
その後、京子達が昼食を作りにいったことを確認すると、部屋を主作戦室に変えて了平がイタリアで起こったことを話し始めた。
『ある案件についてボンゴレ10代目の使者としてヴァリアーに出向いてな『オレの!?』その最中、ボンゴレ狩りが始まったんだ。10年前から来たお前達のことは、ある情報筋よりヴァリアーに伝えられ、オレもそこで知った。このことを知るのは、残存しているボンゴレと同盟ファミリーのトップのみ…信じぬ者も多いがな』
『同盟ファミリーって、ディーノさんのキャバッローネも!?』
『ああ、あそこも健在だ』
『よかった…!』
「ちなみにディーノってのは、俺がツナの前に家庭教師した─ツナの兄弟子だ」
『そしてお前達がいると仮定し、ファミリー首脳により大規模作戦が計画された─ここにいる
了平が持ち帰った指示の内容を聞き、その場にいた全員が顔を引き締める。
【それって…殴り込み…】
『…急だな』
『そうだ…それがボンゴレと同盟の首脳が立てた作戦だ。我々も足並みを揃えてこの作戦に参加する必要がある』
「でも、たった5日だなんて…」
『5日後ってすぐだ…』
『だがこの機を逃すと、次にいつミルフィオーレに対し有効な手立てを打てるかわからんのだ』
『オレ達のアジトだって敵にいつ見つかるかわからんのだ…早くて悪いことはない』
『でも…なんか…こんなマフィアの戦争みたいなのに参加するって…オレ達の目的と違うっていうか…』
『目的は入江正一を倒すことだろ?合致している!』
『!…でも…』
『了平がクロームを連れてきたことで、オレが出した最初の条件もクリアしたしな』
『条件?』「あ!」
『「守護者集め!」っスよ10代目!』
『あっそういえば!!─なにげに全員そろってるー!!!』
『よほど、みんなの日頃の行いがいいんだな』
『バカか!!ノーテンキな言い方すんな!ボンゴレの守護者としての宿命が、オレ達7名を引き合わせたんスよ』
【この人照れずに言ったー!!】
「こいつも別の意味でバカじゃねーか」
『まあ他にもいくつかあるがそれは後だ。いいか沢田─たしかにこの作戦はボンゴレの存亡をかけた重要な戦いだ…だが、決行するかどうかはお前が決めろ』
『なぁ!?オレがー!?』
『現在、ボンゴレの上層部は混乱しているし10年前のお前達を信用しきったわけではない…ヴァリアーもあくまでボンゴレ9代目の部隊という姿勢だ。お前の一存で作戦全てが中止になるようなことはないだろう…だがこのアジトのことは、ここの主であるボンゴレ10代目が決めるべきだと極限にオレが言っておいた!!』
【お…お兄さん…】
『でっかくなったな了平』
リボーンは了平に対し、成長した教え子の姿を見ているような視線と笑顔を浮かべる。
『期限は本日中だ。中止の場合は首脳にオレが伝えにいく。しっかり頼んだぞ沢田』
了平はそう言ってツナの肩を掴んで揺さぶった後、部屋を後にしようとして─
『師匠の話はまた…『!』さーて、オレは極限メシ食って寝るっ!!!』
『そんな!困ります!待ってください!!』
ラルとすれ違った際に彼女にだけ聞こえる声で伝えると、ツナの必死の制止を無視して部屋を出ていった。
『どうしようリボーン!!責任重すぎるよー!!』
「なんか今さらだけど、ここまで慌てまくるツナってホント珍しいよね…」
「うん」「はい」「「ああ」」
『ボスが情けねー声出すんじゃねえ。まずは5日後にお前の納得できる戦力を確保できるか考えるんだ』
『5日後に予想されるクローム髑髏の状態とお前達の修行の仕上がりだな』
『そ…そーだよね…戦いに…なるんだもんな…』
「ツナ、辛そうだね…」
『なーに、修行についちゃオレ達がなんとかするって!なー獄寺っ!』
『─あ…ああ、任せてください10代目!!』
いつもみたいに返事を返す獄寺だが、その顔はどこか不安げな表情だった…
その後、三人はいつものように修行に向かい、ツナはトレーニングルームで新しい炎を使いこなすため、教習所で行われるスラロームの応用版をしていた。
『ふ~、体がきしむ…』
『スラロームのタイムはだいぶ縮まってはいる…だが、それでもノーマルグローブの方が早い。まだまだ動きにムダが多いということだ!こんなことでは午後の修業で、また雲雀に半殺しにされて終わるぞ!!』
『ひいい(殴られる!また殴られるー!!)』
怒鳴りながら近づくラルをみてツナが悲鳴を上げるが、ラルは途中で足を止め、動きも止める。
「どうしたんだろ、ラルさん…」
『…他の連中を見てこい。5日後、戦力になるのかをな…』
『は…はい…【…どうしたんだ?】』
ラルはそれだけ告げると、部屋を出ていった…
そのあとツナはラルに言われた通り、山本達の修業風景を見に行ったのだが…
「山本さんはなかなかうまく行ってないし、獄寺さんに関しては修業から逃げちゃってるし…」
「バックレるのは普通ありえねぇだろ!」
【困ったな~、あの調子じゃ山本も獄寺君も5日で修業が完成するとは思えない…リボーンは山本の修業が忙しそうだし、ラル・ミルチに相談してみよう…】
エレベーターの中でツナはそんなことを考えていたが、目的の階についてすぐ視界に写ったのは、背中を壁につけ、辛そうな顔で座り込むラルの姿だった。
「ラルさん!?」
『どーしたのラル!?大丈夫!?』
ツナがラルに駆け寄ると、意識を失っていたようだが声に気付き目を覚ます。
『……誰だ…?』
『え?』
「─まさか、彼女は右目が見えてないのか?」
『沢田か…少し…ふらついただけだ』
『…ラル…目…』
『以前から右目は弱いんだ…そのためのゴーグルだ…もう必要はなさそうだがな…』
『オレ…誰か呼んでくるよ』
『その必要はない『でも…』余計なことをするな!!』
「ラルさん…」
『5日後の作戦でオレが足をひっぱるわけにはいかない─このことは誰にも言うな!!』
『でも…無理することないよ!!お兄さんだって作戦は断っていいって言ってくれたんだ『!!』それに本当はオレ…こんな戦争みたいな作戦に参加するの…あんまり乗り気じゃないっていうか…』
直後、ラルがツナの襟を勢いよく掴んだ。
『本当にそう思っているのか!!』
『!』
『笹川は、お前に甘いがハッキリ言っておく…ミルフィオーレとボンゴレの戦力差は圧倒的だ。参加しようが引き延ばそうがここにいる多くの人間は死ぬんだ!!おまえに委ねられているのは生きるか死ぬかの選択ではなく…どちらの地獄を選ぶかだ─甘い考えを捨てろ』
「生きるか死ぬかではなく、どちらの地獄を選ぶかどうか…」
『少しでもマシな…0.1%でも生存確率の高い選択をするのがお前の義務だ…それだけを考えろ』
ラルは溜め込んでいた感情を出しきると、ツナから手を離し、頼りない足取りでその場を後にした…
ツナはラルが立ち去ったあと、主作戦室にて一人考え込んでいた。
【一体どーすりゃいいんだ!?作戦に参加してもしなくても地獄だなんて…それに、ラル・ミルチの状態があんなに悪かったなんて知らなかった…】
「ツナさん…」
そんなとき、元気な声を上げながら、ランボが部屋に入ってきた。そんな彼の手にはマジックペンが。
『ツナみーっけ!!ツナにも落書きしてあげよっか!?』
『ランボ…遊んでる気分じゃないんだ…あっちいってくれよ』
『あららのら♪本当は遊びたいくせに~!!』
『やめろ、本当に怒るぞ…』
『ガハハ!書くもんね~』
『─やめろって言ってるだろ!!!』
落書きしようとしていたランボだけでなく、響達もいつもの彼らしくない行動に怯え始める。
「このときのツナ、怖い…」
『どーしたんですかツナさん!?』
そこへ、ツナの叫び声を聞き付けたハルが部屋に入ってきた。
『はひ?ランボちゃん泣いてるんですか?』
『ハル!!修行中はちゃんと面倒見ろって言ったじゃないか!!』
『す…すいません…でも…ランボちゃんだって遊んでるばかりじゃないんです…ちゃんと家事のお手伝いしてくれてるんですよ?ツナさん何も知らないから…』
【何も知らない…?】
『何も知らないのはお前達だろ!!?』
ハルの一言を聞いたツナは、彼女にも自分の怒りをぶつけてしまう。
『…ごめんなさい…ハルはいつでも相談にのります…』
『あっ』
怯えるハルの姿を見てやっと我に返るツナ。
『さあ行きましょうねランボちゃん…』
『ハルっ!ちがうんだ…』
ツナはハルを呼び止めようとするが、ハルはランボを抱いて、涙を流しながら部屋を去っていった。
【オレ最低だ!!隠してるのはオレ達なのに!!みんなを安心させなきゃいけないってのに…】
「…こんなに苦しんでるツナ、初めて見た…」
『ここにいたのか』
『リボーン…』
自分がしたことに自己嫌悪に陥ってると、今度はリボーンが入ってきた。
『やっぱりオレにはムリだよ!!ボスの役割なんて!!』
『ヘコたれてるヒマはねーぞ─クロームの容態が急変した』
『「え!!?」』
『相当やベーぞ…内蔵のいくつかが壊れだした』
『な…内蔵!?』
【まさか…】
ツナ達が急いでクロームとビアンキがいる治療室に向かうと、血を吐き出すクロームの姿があった。
『クローム!!』
『ダメだわ!!手の施しようがないの!!』
『そんなぁ!!なんで!?』
『失われてるのよ!!─内蔵が!!』
クロームの腹部を見ると、ビアンキが言った通り腸や胃がごっそりなくなったようにへこんでいた。
「おい!こいつが連れてこられた時は腹にはなにも異常はなかったはずだぞ!?一体どうなってやがんだ!?」
「─クロームはある時、猫を助けようとして交通事故に遭って、右目と内臓のいくつかを失ってるんだ」
「なっ!?」
「医師は母親に内臓移植を持ちかけたが、クロームの母親は娘に愛情を注がない女優だったらしく、臓器提供を拒絶…父親も仕事にしか興味のない大手外資系企業の営業部長で義理の父親だったらしいから当然娘のことに興味はなく…クロームは生死を彷徨っていたとき骸と出会い、骸の幻覚によって内臓の機能を補って延命しているんだ」
「─ふっざけんな!」
リボーンの説明を聞いたクリスは怒りで体を震わせる。
「自分の娘を心配しない親なんか、親でも何でもねぇ!ただのクズ野郎だ!」
「─待て…骸が幻覚で作り出した彼女の臓器が消えたということは、彼が幻覚を維持できないほど追い込まれているということではないか!?」
『─様…むく…』
『しっかりしろクローム!!死んじゃだめだ!!』
『ボ…ス…?』
『そーだ、オレだよ!!しっかりするんだ!!』
ツナはクロームの手を掴み、必死に呼び掛ける。
『あった…かい…ボ…ス…骸…様を…』
『え…?骸が…どーしたんだ?』
ツナがクロームに問いかけた直後、彼女が再び血を吐き始める。
【…骸!!おまえ一体何やってんだ!!】
ツナが心の中で、この場にいない人物に問いかけた直後、クロームの持ってきた鞄から何かが砕ける音が聞こえ、それと同時にクロームが先程とは比べ物にならない量の血を吹き出した。
『ク…クローム!!』
「一体何がおこった!?」
ツナ達がクロームに釘付けになる中、響達がクロームの鞄を覗き込むと、砕け散った三叉槍が入っていた…
ツナ達が慌てふためいていると、部屋に雲雀が入ってくる。
『ヒバリさん!』
『邪魔だよ』
雲雀はツナをどかすと、クロームの頭に手を添え、優しく持ち上げる。
『死んでもらっては困る』
雲雀がクロームを見つめるなか、ツナは草壁につれられて部屋を後にした…
次回こそはミルフィオーレ殴り込みまで絶対に行かせます!