戦姫燈炎SYMPHOGEAR!   作:生粋の名無し

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お待たせしました。
今回も意外と早く出来上がりました。
作者は最近シャーマンキングを読み始めたのですが…O.S.もかっこいいとは思いますが、初期は完全なかませ犬だったのに、シャーマンの才能に目覚めてから一気に男らしくなった木刀の竜がメラカッコよすぎて驚いてます。


ツナの過去(10年後編):⑥

「出撃したはいいが…どこから敵拠点に侵入する算段なんだ?」

 

 作戦が始まり、無人の商店街を走るツナ達を見ながら、翼がリボーンにそう訪ねる。

 

「敵のアジトである地下ショッピングモールの地下駐車場の発電室にあるダクトからだ。実はショッピングモールのダクトの中にはいくつか不自然な場所にあるものがあってな、それらの位置と雲雀の所に流れ込んだミルフィオーレアジトのダクトの位置が一致して、そこからミルフィオーレアジトとショッピングモールの図面を重ね合わせて敵アジトの正確な位置をつかんだ結果、そこがベストになったわけだ」

「なるほどな…」

『こっちよ』

 

 ツナ達が地下駐車場に着くと、見送りに来たビアンキがダクトの前で待っていた。

 

『京子やハルやチビ達のことはまかせなさい。安心して暴れてくるのよ』

 

 ビアンキからの励ましを受け、ダクトの中に入っていくツナ。そのあとをついていく獄寺は、ビアンキとすれ違う際に話しかける。

 

『しっかり頼むぜ『!!』いつまでも過去に縛られてたまっかよ─敵の主要施設を破壊し入江正一を倒した後で話がある…』

『ハヤト!』

『待ってください!』

 

 獄寺は言いたいことだけ言うと、山本に続いてダクトに入っていく。そんな彼の背中を、ビアンキは優しい眼差しでみていた…

 

『まさかこんな映画みてーなことするとはな』

 

 匍匐前進をしながらそんなことを呟く山本。ダクトの中に入った彼らは、そのまま何事もなく進み続け、地下3階にある敵の格納庫の上まで来ていた。

 

『ラル・ミルチ、体調はどう?』

 

 そんな中、ツナが前にいるラルに心配そうに話しかけると、突如ラルが止まり彼女の靴に顔をぶつけてしまう。

 

『でっ』

『赤外線センサーが張られている』

『!』

 

 ラルの前方をよく見ると、赤外線が5mほど張り巡らされており、その奥にはレーザー砲と思われる装置が待ち構えていた。

 

『訓練通りに"くぐり抜け"を実行する。ジャンニーニ特製の擬光フィルターで5秒間、赤外線を止める。その間に通り抜けるぞ』

『わ…わかった…』

『OKだ』

 

 全員の賛同を確認したラルが手に持った装置を赤外線が張り巡らされている通路の真ん中に投げると、装置が作動し赤外線が消え去る。

 それを確認した5人は急いで前進する。そして5秒が経過し、赤外線センサーが再起動する。

 

『どうだ!?』

 

 ツナが最後尾にいた了平を確認すると、赤外線は彼の靴のギリギリ手前で止まっていた。

 ホッとするツナ達。─だが、安心したのも束の間、赤外線には触れていないのに、奥にあったレーザー砲が突如起動したのだ。

 

「なんで!?誰もセンサーに触れてないのに!」

『回避だ!!』

 

 ラルが叫んだ直後、四本のレーザーが放たれる。

 迫り来るレーザーだったが、山本が自分達がいる通路を切断して倉庫内に落ちることで何とか回避する。

 

『っぶねー』

『ギリだぜ』

『なぜだ?赤外線には触れなかったはず…』

『ハハァ~!オレがスイッチを押したからだ~』

 

 声のした方を向くと、そこには自分達の二倍近い大きさをした大男が立っていた。

 

「でかっ!」

『うわあぁ!!』

『んん~?ガキ…?確かボンゴレ10代目達もガキだと言ってたな~?でも奴らは今、攻められてボコボコにされてるんだもん、違うよな~』

「どうやら敵本部にはまだ急襲が失敗したことは気づかれていないようだな…」

『ってことは一般人がまぎれこんだんだな~!ま~いいや、おまえ達のおかげで格納庫(ここ)に届いた武器の試し撃ちができるな~』

『「え?」』

 

 大男の発言にツナと響達が理解できずに声を漏らす。

 

『兵器の威力を見るのは生身の標的が一番だからな~』

 

 大男は左右にそれぞれ3つの発射口がついた大型のアーマーを背負うと、取り付けられた供給口に雷の炎を流し込む。

 

『バァ~ハハ~イ!!!』

 

 そして大男は迷うことなく、ツナ達に向けて雷のレーザーを放った。

 レーザーはまっすぐツナ達の元へ飛んでいき、大爆発が起こる。

 

「みんな!」

『ハハァ~!なかなかの威力だな、これは!使えそうだ~!これじゃ骨も残らんな~』

「こいつ、人を殺すことを楽しんでやがるのか…!?」

「虫酸が走る…!」

『今の誰だ?』

 

 武器の威力に満足げにする大男にクリス達が不快感を抱いていると、煙の中から声が聞こえた。

 その事に驚く大男。煙が収まると、無傷のツナ達が立っていた。

 

「よかった!無事なんだ!」

「だがいったい、誰があの攻撃を防いだのだ?」

「恐らく獄寺がSISTEMA(スイステーマ)-C.A.I.で防いだな」

『道を開けろムダマッチョ!遊んでるヒマはねぇ』

『ム…ムダ!!?』

 

 そう言って大男に睨みをきかせる獄寺。すると大男は獄寺の言葉が癇に触ったのか、怒り始める。

 

『許さんっ!殺してやる!!!デンドロ様のこの電槍(ランチャ・エレットリカ)でなぁ~!!!』

 

 そう言って大男─デンドロは(ボックス)から雷の炎を纏った巨大な槍を取り出した。

 

『こいつは…「一番槍(アラッタッコ)」の異名を持つ切り込み重装兵のデンドロ・キラムだ!後方に配置すると背後から味方ごと串刺しにするキレた男だと聞く』

『ああ…槍を持った奴の突破力はミルフィオーレ随一…雷の匣の特徴である"硬化"によりコーティングされた電槍に貫けぬものはないとも聞く』

「へぇ、こんな子ミルフィオーレにいたんだ!全く知らなかったよ♪」

「えぇ…?」

 

 元とはいえど自分が率いていた組織にいた、これ程キャラの濃い人物を知らなかった白蘭に、クリスが彼女らしくない口調で呆れはてる。

 

『やっかいだな…いったん間合いを取るぞ』

『ハァ~?間合い!?そんなものやるもんか!!』

 

 間合いを取ろうとするツナ達にデンドロが槍を構え突進してくる。

 

『ぶっ散れ!!!』

 

電撃突き(コルポ・エレットロ・ショック)!!!

 

 デンドロはツナへと突っ込み、槍から放たれた雷の炎がツナを包み込む。

 

『ハハァ~!飛び散った!!』

 

 雷にのまれたツナをみたデンドロは勝利の笑みを浮かべ槍を引こうとする。しかし槍は全く動かない。その事に違和感を覚えるデンドロだったが、その答えはすぐにわかることになる。

 

『聞こえなかったのか?遊んでいるヒマはない』

 

 煙が晴れると、ハイパーモードになったツナがデンドロの槍を掴んでいたのだ。しかも槍の先端に関しては、しわしわになったアルミホイルのような形になり、五つにわかれていた。

 その光景に驚いたデンドロは、引いて駄目なら押してみろとばかりに力一杯槍を押し込む。しかしいくら押しても足がずれ下がるのは自分の方で、ツナに関しては全く動かず、槍に関しても徐々に先が溶けていくのみ。

 

「銃弾防いでた時点で薄々気づいてはいたが、あれって鉄すらも溶かすのかよ…」

「しかし、沢田はどうやって槍を止めているんだ?」

『なんでだ!!なんでビクともしない~!!』

『後ろ側にある手の炎だな…』

『ああ、あの炎は絶妙だ!さすが10代目!!』

 

 デンドロと同じくなぜビクともしないのかわからなかった響達は、山本達の言葉をきいて目を細めると、おろしている右手のグローブから、うっすらと炎が吹き出していることに気づいた。

 

『ありえないんだな!!デンドロ様がこんなガキにィ~!!!』

『まだ一般人(カタギ)だと思ってやがる』

『めでたいな…』

『沢田、手を貸そうか?』

『下がってろ』

『…だろうな。どう見ても必要ない』

『チッ、チクショ~!!!おまえ達ナメやがって~!!!』

 

 デンドロは電槍を放り捨てると、後ろへ飛び一度距離を取る。

 

『こうなればオレの本気の力を見せてやるぞ!!!』

『そうしてくれ』

『何をしている沢田!!敵にスキを与えるなと教えたはずだ!!奴はまだ匣を持っている可能性があるんだぞ!!』

『わかってる』

「わかっているならなぜ…!?」

『ヒハハッ!ベソをかいてももう遅いな!!』

 

 そう言ってデンドロは懐から取り出した匣を開匣し、雷を纏った巨大な猪を呼び出した。

 

『ハハァ~!これがデンドロ様の相棒"電猪(エレットロ・チンギャーレ)"だ!こいつの2本の角こそがデンドロ様のもうひとつの"2本槍(ドッピオ・コルノ・ランチャ)"なんだな!!!』

 

 デンドロは自慢げに話を続ける。

 

『聞いて驚くな~!!こいつの突破力はオレの5倍だ!!止めた者は誰もいないぞ!!!』

『だろうな』

『!』

『待っていたぜ…本当の「一番槍」』

「なに!?」

『ミルフィオーレの誇る「一番槍」とは、デンドロ自身でなく匣兵器の力ということか』

「沢田はその事を見抜いていたのか!」

「さっすが綱吉クン♪」

『あの嫌なガキを殺せ!!!ゆけ!!猪突猛進(チンギャーレ・スコントロ・フロンターレ)だ!!!』

 

 デンドロの指示を受けた電猪は、雷を纏って言葉通りツナに向かってものすごい速さで突進してくるが、ツナは迫ってくる猪をただ見つめている。

 

『よけんのか沢田!!』

『これくらいの攻撃、止められなければ、入江の所まで辿り着けそうにないからな』

 

 そう言ってツナは両手を前に出して受け止める構えをとる。そして電猪の角を掴むが、電猪は勢いを殺さず、ツナごと箱の山に突っ込んでいった。

 

「ツナ!」

『ハハハァ~!!!見たか!!一瞬だ!!』

 

 それを見たデンドロが勝ち誇るが次の瞬間、箱の山が吹き飛び、背後に向けた右手から炎を噴射し、左手で角を掴んで電猪の動きを止めているツナの姿が露になった。

 

『「止めてる!!!」』

『当然だ。剛の炎の衝撃はこんなものではないからな』

『分かってないな~!!両手を使えないんだぞ!!とどめの一突きだな!!!』

 

 そう言ってデンドロが新たに出した槍で電猪の背後からツナを突き刺そうとする。するとツナは、電猪の腹を膝蹴りで蹴飛ばしデンドロごと吹き飛ばす。吹き飛んだ衝撃による煙をよけるようにして天井に立ち、デンドロがまだ意識があることを確認すると、床に足をつける。

 

『終わらせるぞ』

 

 そして左足を前に出して踏みしめ、左手で右手の拳を握りしめる。

 

「あの構えは…!」

『やさしくしてやれば調子にのりやがって!!こうなれば!!』

 

 デンドロは雷の炎を纒い電猪に跨がると、電猪と手にもった槍をツナに向ける。

 

『3本同時の"3本槍(トリプル・コルノ・ランチャ)"だァ!!!死ねェェェ!!!!』

 

 そう叫ぶとツナめがけて一直線に突進してくる。だがツナは怯むことなく、左手を後ろへ向け膨大な柔の炎を放射し始める。

 その膨大な量の炎を見たデンドロは驚きを露にするが既に遅く、ツナは迫ってくるデンドロに右手を向け─

 

X(イクス)-BURNER(バーナー)!!!』

 

 ツナの放った剛の炎が、デンドロと電猪を飲み込んだ─

 

 ツナのX-BURNERによってデンドロを倒し、ラルが格納庫の監視カメラに幻術を施した後、ツナ達の潜入は基地の索敵能力を麻痺させるために警備システムサーバーを破壊しに地下8階まで降りてきていた。するとそこで、ツナの肘の怪我に気づいていた了平が治療を申し出てきた。

 

『おい、待て芝生頭!!極限バカのおまえに治せんのかよっ』

『心配はいらん!オレのこの匣で、傷口を焼いて血を止めるだけだ!!』

 

 そう言って了平が取り出したのは、黄色い炎を纏った小型のコテだった。

 了平は怯えるツナの傷口にコテを押し付ける。すると徐々に傷口が塞がりだした。

 

「確か黄色の炎って、『活性の晴』だったよね?」

「その通りだ。晴の炎は細胞組織の自然治癒力を活発にさせて、普段の何百倍もの早さで傷を修復するなんてこともできるぞ」

『よし!終わったぞ』

 

 響達がツナの腕を見ると、先程まであった怪我は完全に塞がっていた。

 

『見たか!!極限晴の力!!』

『へっ!軟弱な炎で調子に乗ってんじゃねえ!手入れの行き届いてない芝生がっ』

『なんだと!足の多いタコ(ヘッド)!!』

『まーまーっ!傷も治りゃあ、まさに無傷で勝利!絶好調じゃねーか!!ツナの新技もすさまじかったしなっ』

『あれは本当にすごかったっス!!』

『うむ!たいした極限技だったな』

『沢田はまだ半分程度の力でしかあの技を出していないがな』

『本当か!!』

『そうだろ沢田』

『え…ッ!いや…うーんと……2割ぐらい…かな』

「あの大きさでまだ2割だと!?」

『いったいどんだけすげー技なんスか!!』

『心強いぜツナ!!』

『でも、まだまだ不安定でフルパワーじゃ撃てないんだ…それに敵も全力じゃなかったし…』

『たしかにデンドロの炎は見た目は派手だったが、武器や匣の性能を充分に引きだしてるとは言えなかったな…大切なのは炎のでかさではなく純度だからな』

「言われてみれば…私達が知ってるX-BURNERはさっきよりもっと澄んでた気がする…」

 

 響達がツナの2割という言葉の意味を理解するなか、獄寺と山本は、以前戦い惨敗した相手であるγの炎を思い出し、顔を引き締めていた…

 

『基地内の敵の数が想定していたより大幅に少ないな…ヒバリが囮になっている効果は絶大なようだ』

 

 先程の場所から少し進み、巡回するミルフィオーレ兵を観察しながらそう呟くラル。

 

『そんな多くの敵が…』

「いくら守護者最強っつっても、一対多じゃやっぱ無理があんじゃねぇか?」

『心配はいらん!!いまだかつて奴が死んでいるところは見たことがないからな!』

『「どんな理屈だ!!」』

『おまえら、どこでも遊ぶんじゃない!!図面を確認しろ!!』

 

 ツナ達はラルにしかられ、言われた通り手元の機械で場所を確認すると、図面に写る黒い部屋らしき場所のちょうど横に来ていた。すると獄寺が壁になにかを見つける。

 

『通気孔にカビ…?』

『なんかヤバイ植物でも栽培してんのか?』

『もしくはゴミタメかだな』

『詮索は後回しだ!今は警備システムの破壊が優先だ』

 

 一行はミルフィオーレ兵を避けながら進み、警備システムの手前の部屋の前まで来た。

 

『この奥に警備システムがあるんスね』

『どうする?』

『オレが先行する。合図をしたら来い』

 

 そう言ってラルが部屋に入り、偵察に向かう。

 

『よし、いいぞ!特に問題は…待て!!』

「ウェ!?っととと…ど、どうしたの?」

『どうした!?何が起きている!?』

『そこか!』

 

 ラルが叫んだ直後、中から爆発音が聞こえツナ達が慌てて入ってくる。

 

『ラル!?』

『大丈夫か!?』

『…かすっただけだ』

『ランダムに増え続ける標的の規則性を見破り、間一髪カウンターをあわせるとは、さすがアルコバレーノのなりそこない』

「何奴!」

 

 響達が声の聞こえた方を向くと、明かりがつき、相手の姿がくっきり見えるようになる。その人物は黒い三角帽に黒マントと、メルヘンな格好をしており、最も異様なのは─

 

「嘘!?宙を浮いてる!?」

「本物の魔法使い!?」

『そのいでたちは魔導師の人形(マジシャンズドール)…ジンジャー・ブレッドか』

 

 響達が宙に浮かぶ少年を見て驚くなか、ラルは相手の格好から正体を見抜く。

 

『今はミルフィオーレ第8部隊副隊長さ!しかし驚いたな。まさか、こんな所まで敵の侵入を許すとはね』

 

 ジンジャーは床に足をつけながら話を続ける。

 

『僕には君達がここに来てるって、上に知らせる義務がある─まあ、先に殺してしまうのも悪くないけどね!君のコロネロみたいにさ♪』

「コロネロだと!?」

『貴様、師匠に何をした!!返答次第ではただではおかんぞ!!』

『フフッ♪何かかんちがいしているようだね?最強と謳われた7人の呪われた赤ん坊、アルコバレーノも非7^3線(ノン・トゥリニセッテ)の放射される中じゃ死にかけた虫みたいなもんだろ?そんな退屈なもんをわざわざ自分の手で殺すかよ─僕はただ残酷で笑える殺し方を提案して、ながめてただけ』

「なんとも悪質な…!」

『貴様ぁ!!!』

『下がっていろ笹川…こいつはオレが倒す』

 

 怒りを露にする了平が動くよりも前に、ラルがジンジャーに向き合った。

 

『待てラル・ミルチ!!おまえの体では無理だ!!オレが行く!!』

『冷静さを失った奴は戦う前から負けていると、コロネロは教えなかったか?』

 

 怒り心頭だった了平だったが、ラルに言われたコロネロの教えを思いだし少しずつ落ち着いてくる。

 

『あの女、たいしたもんだぜ…』

『まったく動じていない…』

『それはどうかな?僕には怒りを抑えるのに精一杯って風にしか見えないけど』

「ラルさん…」

『でもイジメがいは出てきたな!通報する前に少し遊んでこうかな♪』

 

 ジンジャーはそう言うと少しずつ宙に浮き始める。

 

『ただし1対1(サシ)1勝負(ワンチャンス)だけね?君を片づけたら上に報告するよ。その頃には僕も飽きてるだろうしね』

 

 そしてジンジャーが指を鳴らすと、ツナ達の足元から小さな何かが飛び上がり、ラルとツナ達を遮るように糸を展開した。

 

「く、クモだぁ!?これも匣兵器なの!?」

「だが奴は匣を出すどころか、リングすらもつけていなかったぞ!?」

『どうだい?僕の魔術(ソーサリー)は』

『「ソーサリー?」』

『そのクモは君達がちょっかいを出そうとすると伝えてくれる僕のしもべでね?ヘタに動かない方が身のためだよ。君達全員殺さなくちゃならなくなる』

『たいした自信だな』

 

 ジンジャーが呑気に説明している間に、彼の背後に回ったラルは躊躇なくガントレットに仕込まれた引き金を引く。

 ジンジャーはすぐに回避するが、追尾性を持つ霧の炎は方向を変え避けたジンジャーに再び飛んでいく。

 

『甘い甘いバァ~♪』

 

 しかし、ジンジャーが背中に羽織るマントを翻すと、マントに当たった霧の炎は打ち消されてしまう。

 

『がっかりさせるなよ!それでも"選ばれし7人(イ・プレシェルティ・セッタ)"?』

 

 ジンジャーはそう呟きながら、どこからか箒を取り出したかと思うと、穂先から黒い剣のようなものを無数に放つ。

 ラルがそれをバク宙して回避すると、床に着弾した剣が爆発を起こした。ラルはそのままバク宙を続け、壁際まで来たところでジンジャーの集中砲火が来るが、匣から出した雲ムカデを全身に巻き付かせることで防御する。

 そしてジンジャーの攻撃の手が止まると、雲ムカデがジンジャーに向かい飛んでいく。

 ジンジャーはその攻撃を余裕でかわし調子に乗るが、油断していたところを背後から迫ってきた雲ムカデがついて両足を拘束し、それに驚いた隙に前から迫っていた雲ムカデが両腕に絡み付く。

 

「凄い!完全に先読みしてるよ!」

「あの女、動きを予知できんのか!?」

「いいや、あれは経験だ…恐らく、幾千もの実戦を生き抜いてきたからこその彼女の強さなのだろう」

【このしなやかさが、ラルなんだ】

『コロネロを殺った実行犯を吐け』

 

 ラルがジンジャーに問い詰める。

 

『なんだ、やっぱり気になるんだ─フフ♪だーれが言うかよ』

 

 拘束されてなお、余裕を崩さないジンジャー。すると彼に巻き付いた雲ムカデが四肢を締め上げ始める。

 

『そのムカデは万力のように手足をしめあげるぞ…またその手で飯を食いたいのなら吐け』

『やめろぉ!!折れる~!!』

「ラルさん!それはいくらなんでもやりすぎなんじゃ…!」

『待ってラル!!』

『なんてね♪』

 

 ─先程まで痛がっていた筈のジンジャーが指を鳴らすと、突如としてラルの左肩から血が吹き出した。

 

「何が起こったんだ!?」

『ざっとこんなもんかな?楽しいのはこっからだけど♪』

 

 ジンジャーがそう言うと、彼の四肢が体から外れる。

 

『義手に義足!!』

「魔導師の人形…人形…まさか…」

「見て!ラルさんの傷口から小さいクモが…!」

 

 翼が何やら考えるなか、ラルの体をよくみると、ラルの肩から無数の小蜘蛛がわいてきていた。

 

『どういうことだ…』

 

 いきなり体内からクモが現れた理由を考えるラル。そして、ある結論に至る。

 

『この部屋に入ってすぐに被弾したのは、活性する前の晴の匣兵器か!!』

『ご名答!これに関して言えば魔術ってのは嘘♪君の体内に撃ちこまれたのは超微粒の晴の匣兵器"晴クモ(ラーニョ・チェル・セレーノ)"の卵でね。僕の合図で"活性"して成虫となり人の体を突き破って出てくるのさ』

『何だって!?』

「なんて惨いことを…!」

『最初のクモも仕組みは同じ。そしてまだ君の体内には何千もの晴クモの卵が巡っている』

『そ…そんなことが!!』

『ほーら♪』

 

 ジンジャーが再び指を鳴らすと、今度は背中から血が吹き出した。

 

「ラルさん!」

『おのれ!!』

『おっと!ヘタに動いてみなよ?次は心臓を突き破るかもよ♪』

『くっそう!!』

『フッフフ♪楽しませてくれたお礼に教えとこうか、ラル・ミルチ』

 

 ジンジャーは倒れているラルを眺めながら話し始める。

 

『コロネロは最後に一緒に戦っていたアルコバレーノ、バイパーをかばって死んでいったよ』

『「!!」』

『彼は人の身代わりになるのが趣味みたいだね?聞いた話じゃ、アルコバレーノが生まれたあの日もそうだったんだろ?』

「コロネロさん…」

『傑作だったのは、助けられたバイパーも勝ち目がないと見ると、自ら命を絶って死んでいったのさ』

「そ、そんな!」

『笑っちゃうだろ?バイパーもアホだがコロネロという男の性分をよく現している─おせっかいの役立たずさ!君がその濁ったおしゃぶりを手放せないのも奴が助けそこねたからなんだろ?裏目裏目の男コロネロ♪』

「あの野郎、好き勝手言いやがって!」

「死んだ者を侮辱するな!」

「落ち着け二人とも。お前らがどうこう言おうと、あっちに干渉はできねぇんだ」

「だが!」「だけどよ!」

『しかし悲惨な人生だったね…哀れなラル・ミルチ。それもこれもアルコバレーノ一のおせっかいバカのせいってわけだ!裏目のコロネロのね♪』

『……撤回…しろ』

 

 ジンジャーの発言に翼とクリスが怒りを露にしていると、倒れていたラルがおしゃぶりを握りながら起き上がる。そしてラルの顔のアザが突如広がり始めたのと同時に、おしゃぶりから目映い青の光が溢れ出した。

 

「どうなっている!?」

『なんだ!?あの青い光は!!』

『コロネロへの侮辱を撤回するか死を選べ、ジンジャー・ブレッド』

「ラルさん、顔のアザが…!」

 

 ラルはおしゃぶりを握りしめながらそう通告するが、彼女の顔のアザは徐々に広がり始めている。

 

『醜いなぁ♪それはなりそこないになった時の中途半端な呪いの名残だろ?まぁでも君もまがりなりにもアルコバレーノってわけだ。君の濁ったおしゃぶりはもう使いものにならないと思ってたよ─ただ残念なことにラストスパートが遅すぎたね』

 

 宙に浮きながら観察していたジンジャーが指を鳴らす準備を始める。

 

「いけないっ」

『この指を鳴らせばクモが飛び出し、君の体は粉々にはじけとんでおしまい♪』

『まっ、待って!!!』

『いいね~♪悲痛の叫びを聞くとよけい鳴らすのが楽しくなるよ♪』

 

 ジンジャーは指に力を溜めていく。

 

『「やめろーっ!!!」』

 

 ツナと翼の叫びが響くなか、ジンジャーは無情に指を鳴らした─だが

 

「─何も、おきない?」

 

 いつまで経ってもラルの体を晴クモが食い破る気配がない。

 

『確かにオレはなりそこないだ』

 

 そんな中、青い光が収まるとラルが口を開いた。無事を確認したツナ達は安堵し、何が起こっているのか理解できないジンジャーは何度も何度も指を鳴らすがやはりラルの体内にいる晴クモが反応する気配はない。

 

「よかった!ラルさん無事なんだ!」

「しかし、何故彼女の中に潜む晴クモが反応しないのだ?」

『不完全な呪いに蝕まれたオレの体は歪な体質変異を起こし、体内を巡る波動までもが霧と雲の属性に変わってしまったんだ…だが、このおしゃぶりは変わらない─本来コロネロではなくオレが受けとるはずだったこの()()おしゃぶりは、オレの命と引き換えに炎を放つ』

 

 ラルの手に握られていたおしゃぶりは、濁った灰色から綺麗な青色に変化していた。

 

『属性は雨』

 

 するとラルの全身から青い炎が溢れだし、それを見たツナが驚く中、了平がラルが何をしたのかに気づく。

 

『なぜクモが体を突き破り出て来ないのかわかったぞ!あのおしゃぶりの力だ!!クモの卵を急成長させる晴の"活性"の力を─雨の"鎮静"で相殺したのだ!!』

「なるほど…それならば、体内に卵は残るが孵化するまでの時間は稼ぐことが出きるな…」

『その肉体に背負わされた宿命─苦しみと絶望は誰にもわかりやしない…オレが、あのままアルコバレーノになっていたら、魂を病み、バイパーの最後と同じ道を選んでいただろう…コロネロがいたから…オレは生きたんだ。あいつのおかげで生きてこれた』

「まさかラルさん、コロネロのことが…」

『ほーう♪君にとってコロネロは救世主みたいだね!でも結局、君もここで死ぬんだし、またコロネロのしたことは報われないのさ♪』

『ジンジャー…死ぬのはおまえだ!!』

 

 ラルはジンジャーへ向かい一直線に飛ぶと、接近戦に持ち込む。しかしジンジャーはある程度攻撃を防ぐとラルの攻撃をヒラリとかわす。

 

『勢いは認めるけど、まっすぐにしか進めなくちゃ意味ないよ』

 

 後ろに飛んでいくラルをみてそう呟くジンジャー。しかしラルは、いつの間にかジンジャーのすぐ傍まで来ていたムカデを掴んで急な方向転換をすると、ジンジャーの背後からしがみついた。

 

『最後のチャンスだ─撤回するか死を、選べ』

 

 ジンジャーの首を絞める腕の力を少しずつ強めながら最後の通告をするラル。ジンジャーの前方からは、二匹のムカデが彼に向かい飛んできている。

 

『ヤダヤダしつこい女だな~!だーれが言うかよ♪僕が本気を出せばこんな拘束へでもないね!甘い甘いバァ~…!?』

 

 そんな状況でも余裕を見せるジンジャーだったが、いざ動こうとすると何やら驚いた表情を浮かべ、そのまま二匹のムカデに体を貫かれた。

 

「なんだあいつ、拘束がどうのこうの言ってたくせに、全く動かなかったぞ!?」

「恐らく、ラルが直接ジンジャーの肉体に雨の炎を流して、意識を鎮静化させたな」

『オレの炎の鎮静力を甘く見すぎたな』

『くっ…そー!─でも…いいのかい?これでコロネロを殺した実行犯は聞けなくなるんだよ…?』

『お前を生かしていたところでどうせ話さないだろう…自分で探す』

『憎たらしいメスだなぁ…でも…あ~~~─楽しかった♪』

『!ふせろ!!』

 

 何かに気づいたラルが注意を促した直後、ジンジャーの体が大爆発を起こした。

 

「ラルさん!」『ラル!』

 

 煙から顔を守りながら、爆発に巻き込まれた仲間を心配するツナ。煙が晴れると、少し離れた場所でうつ伏せに倒れるラルの姿があった。

 

『大丈夫か!!』

 

 ツナ達が彼女の元に駆け寄ると、少し呻きながら体を起こす。

 

『とっさにムカデのシールドを展開したんだな』

『やっぱりすげーよ!ラル・ミルチ』

『…極限によく倒したな。奴も師匠の仇の一部に違いはない』

『…倒せなかった』

「え!?」

『見ろ』

 

 そう言ってラルが指を指した先─ジンジャー・ブレッドの体はあまりに─

 

「人形!?」

「やはり…魔導師の人形とは、そのままの意味だったのか」

『あれがジンジャーが魔導師の人形と呼ばれる所以だ。いまだ奴にとどめを刺した者はいない…不吉な殺し屋でな…ここ数年、ファミリーが滅亡するような抗争では必ず目撃されている』

『「…恐っ」』

『まるで妖精だな』

「どこが妖精だよ?」

『妖怪の間違いじゃないっスか?』

 

 激しい戦いが終わったことによる安心から、そんな他愛ない会話をしていると獄寺が前に出る。

 

『おいラル・ミルチ!そろそろ教えてくれてもいいんじゃねえか?アルコバレーノの謎ってのをよ』

 

 獄寺がそう問いかけると、彼と同じくアルコバレーノの謎について聞きたかったツナと了平が真剣な表情を浮かべる。だがラルは…

 

『…断る』

『てめっ!いつまでも一人でしょいこんでんじゃねーよ!!何で話せねーんだよ!!』

『何と言おうとオレから話すつもりはない。どうしても知りたければ─山本に訊けばいい』

「なぜここで山本が!?」

『え!?山本、知ってんの!?』

『ん…?まあな』

「おいおい!本当に知ってやがんのか!」

 

 突然の話に驚いていると、至るところから警報がなり始めた。

 

『ジンジャーの奴…予告通りに通告したというわけか…すぐに警備システムを破壊するぞ!』

『おう!!』

 

 その後、部屋を抜けたツナ達は警備システムの爆破に成功すると、次の作戦に向かおうとする。

 

『そんじゃあ主要施設の破壊に移っか!!』

『待てよ!アルコバレーノの話が済んでねーぞ』

『ん?』

『何でお前が知ってんだよ』

『…約束でさ、修行が終わった時、小僧が教えてくれたんだ』

『なっ』『リボーンが!!』

『こいつはたまげたな…オレだって師匠には聞けずじまいだったのに』

『ただし今は話せねーんだ』

『なんでだよ!!』

『この作戦が終わるまでは話すなって…これも小僧との約束でな』

「リボーンくん、何で山本さんにはアルコバレーノの秘密を話したの?」

「あいつは天然な所がありはするが、約束事は絶対に守る男でな。山本になら話しても悪くねぇと思ったんだ」

『ぐ…リボーンさんがそうおっしゃるのならしょうがねえか…』

『そんじゃ行くかっ』

『おまえ達だけで行け』

 

 施設の破壊に向かおうとするツナ達だったが、一人だけ、その場から動こうとしない者がいた─先ほど戦っていたラルだ。

 

「ラルさん!」

『俺は後で行く』

『まさか…体調が!?』

『ジンジャーとの戦いで少しハシャギすぎた…』

 

 汗を頬につたわせながらそう伝えるラル。それもしょうがないことだ─先程ラルがおしゃぶりの色を変えたのは、文字通り生命力を削って行ったのだから。

 

『体…つらいんだね』

『いいから行け!足手まといになるのはゴメンだ…』

 

 うつむいて話すラル。そんな彼女の話を聞いた四人は─

 

『『『『ダメだ!!!』』』』

 

 ただ一言、そういった。

 

『ふざけてんじゃねーぞっ!これくらいのことは想定内なんだよ』

『オレ達は作戦を成功させて、誰一人欠けることなく帰るんだ!!』

 

 力強く話す獄寺とツナ。そんな彼らにラルが驚いていると、遠くからシェルターが閉まるような音が響いてくる。

 

『メインルートのゲートの封鎖が始まったようだな…シミュレーションしていた敵の行動パターンの一つだが…この場合は、皆が次のポイントに移動するまでの囮をラル・ミルチがやる予定だった…』

『そーいや…』

「でも、その囮役のラルさんはさっきの戦いで消耗しちゃってるし…」

『あ…あの…オレがその囮をやります』

 

 了平が囮役を誰にするか悩んでいると、ツナが自らその囮を名乗り出た。これには響達だけでなく獄寺達も驚愕した。

 

『た…たしか囮役は機動力がいるんですよね……だったらおれが一番だと思うし…』

「たしかにそうだが…」

『しかし危険すぎます!!』

『大丈夫!後でおち合おう。獄寺君、ラルを頼むよ』

 

 必死に止めようとした獄寺だったが、ツナから確固たる意思を読み取ると、一瞬悩んだ末に肩につかみかかる。

 

『何かあったら無線で呼んでください!!"右腕"がすぐにはせ参じます!!』

『ありがと…イテテ!!』

 

 その後ツナは、泣き出す獄寺をよそに了平から、離れた場所にある用水路までのルートを教えてもらうと仲間に見送られながら、敵を食い止めるべく用水路に向かった。

 そして用水路につき、ハイパー化して敵を待っていると、前方から四機のストゥラオ・モスカが向かってきているのを確認する。そしてツナは、敵を食い止めるべく四機のモスカに突っ込んでいった…




今回はここまでです。
次回はスパナが操るモスカ戦からX-BURNER完成までいけるよう努力します。
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