戦姫燈炎SYMPHOGEAR!   作:生粋の名無し

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今月は何やら気力がわいてきてるのか、今回も結構早く完成しました。今回はモスカ戦、そしてX-BURNER完成に欠かせなかった人物であるスパナとの出会いです。


ツナの過去(10年後編):⑦

 前方から向かってくるモスカ達に迫ったツナは、すれ違いざまに最後尾の一機の頭部を掴んでかっさらうと、高度をあげ天井にぶつける。そして数メートルに渡ってモスカの後頭部を削ると、流れるような動作でモスカの顔を殴り、モスカは大きな水柱を起こしながら水中に墜ちる。

 

「すげぇ!あっという間に一機倒しやがった!」

「ストゥラオ・モスカは蓄炎(チャージ)システムを搭載することで動力の無人化に成功した対(ボックス)戦闘用の機体だ。戦闘力は攻守ともに段違いに強い─だからこそツナは遠慮なく戦えるんだ。壊しても誰も死なない無人の機械だからな」

 

 その後、ツナの後方から槍を構えたモスカが迫ってくるが、ツナはバク転の要領で、空中で上下反転させることで突進を回避する。

 すると少し距離を離して追ってきていた一機が放ったミサイルがツナの周囲で爆発し、白い煙が充満する。ツナはすぐに煙の中から抜け出し、炎をうまく操って水上に着地すると少し涙目になりながら咳をする。

 

「さっきの煙は催涙ガスか!」

『く…』

【あと3機…この足場では、X-BURNERは使えないな】

 

 そんなことを考えていると、水中から突如大きな手が現れ、ツナの右足を掴む。その手の主は、先程ツナが墜としたモスカだった。

 

「こいつ、まだ壊れてなかったのかよ!」

 

 ツナが必死に拘束を解こうとしていると、前から槍を構えたモスカが再び迫ってくる。

 ツナは間一髪、グローブについたクリスタル部でいなすことで頭部への直撃を防ぐが、防いだ時の衝撃で体制を崩し、その隙をつかれて水中へと引きずり込まれてしまう。

 水中に引きずり込んだモスカはツナの足を掴んでない右腕を変形させレイピア状の槍を展開すると、躊躇なくツナに刺そうとする。それを右手で掴み、左手で足を掴む腕を焼き切ろうとするが、装甲が厚くなかなか削ることが出来ない。

 

「ヤバいな…このままでは窒息死してしまう!」

 

 息ができず苦しむツナに焦りだす響達。そこへツナを追って他の三機のモスカが水中に潜ってきた直後、ツナの足を掴む力が弱まり、拘束から抜けたツナは地上へ向け急上昇する。

 

【一機にこれだけ手こずってたんじゃ、ラチがあかない…】

 

 向かってきていたモスカ達の間を抜けていったツナは地上へ出る直前に体制を上下反転させる。

 

【あれしか!!】

 

 そして地上に出たツナは、水中のモスカごと水を凍らせた。

 

「死ぬ気の零地点突破初代(ファースト)エディションだ!」

「なるほど…水ごと凍らせれば身動きを封じるのは容易いことだ」

【このまま戦っていたら危なかった…】

 

 息を荒くしながら、固まっているモスカ達を眺めるツナ。すると三機のモスカの胸元が音をたてて光り始める。

 

「こいつら、まだ何かするつもりか!」

 

 何やら準備を整え始めるモスカ達を警戒するクリス。するとモスカ達の胸元から炎が発射され、初代エディションの氷を削りながらツナに向かい一直線に上がってくる。

 

【そう…今のまま戦っていたら危なかった】

『こいつを待っていたぜ』

 

 氷を貫いた炎を見て呟いたツナは、右手と左手を組み合わせ四角形を作る。

 そしてツナにぶつかった炎は、煙ごとツナが作った四角形の中に吸い込まれ、比例するようにツナの炎が膨れ上がった。

 

「今度は零地点突破改か!」

《─なんでモスカのレーザーが死ぬ気の炎だとわかった?》

「え!?モスカの中に誰か乗ってるの!?」

 

 翼がツナの戦いに感心していると、モスカから男性の声が聞こえる。

 

『…零地点突破初代エディションを溶かすことができるのは、死ぬ気の炎以外に考えられない…』

《やっぱりそうだよな…零地点突破改で吸収したエネルギーをどれくらい戦闘力に変換してる?》

「…なんだこいつ?敵のくせして色々聞いてきやがって」

()る気は…ないのか?』

《─ある》

 

 男がそう言うと、一機のモスカが氷を砕いてツナに突貫してくる。ツナはその攻撃を避けると、モスカの後ろに回りこみ、両手を左右に広げ車輪のように勢いよく一回転することによって遠心力をつけたかかと落としを食らわせる。それにより怯んだモスカに対し、ツナの止めの一撃がモスカの頭を穿つ。それによりモスカの動力がやられ、壁を削りながら通路に落下すると爆発した。

 

「よし!やっと一機!」

《データ…とれた…》

 

 するとそんな声が聞こえ、ツナが振りかえると、先程まで氷漬けにされていた残りの三機がすぐ傍で待ち構えていた。

 

『まだ壊されたいのか』

 

 疲れた表情を見せずにそう問いかけるツナ。しかし帰ってきた答えは─

 

《172%だ》

「…いきなり何言ってんだ、こいつ?」

《零地点突破改で吸収した炎を自分のエネルギーに変換することで、あんたの戦闘力は約1.7倍にはね上がった》

「なっ…!まさか、先程モスカを倒した際に…!」

《これは相当に高い数値だ─人としてはね》

『…?何が言いたい』

 

《それでもウチのモスカのが強い》

 

 男がそう言うと、左右にいた頭の白いモスカが胸元の発射口に再びエネルギーを溜め始める。

 

『わからないのか?無駄だ』

 

 ツナは再び零地点突破改の構えをとる。しかし、白のモスカ達は真ん中にいた頭の黒いモスカの方を向き、あろうことかそのまま黒のモスカに炎のレーザーを放ったのだ。

 

「はっ!何をしだすかと思えば…いきなり仲間割れか?」

「─いやまて、少し様子がおかしいぞ!」

 

 すべての炎を放出した白のモスカ達は機能を停止しツナの作った氷の上に落下する。そして、残った黒のモスカは外見が変わり、物凄いオーラを放っていた。

 

『これは一体…』

《キング・モスカ》

 

 キング・モスカと呼ばれた機体は、腕を伸ばしジェットでツナに近づく。

 その攻撃をツナが両手でいなすと、キング・モスカの胴体から鎖で繋がれた分銅のようなものが射出され、がら空きになったツナの鳩尾に食い込んだ。

 キング・モスカは攻撃の手を緩めず、怯んだツナを膝で蹴飛ばし、バックパックから取り出した武器で殴り付けると、小規模の爆発が起こり、もろに爆発を食らったツナが氷の上に落下していく。そこに追い討ちとばかりに、指先の発射口から小型ミサイルを放ちツナを爆煙がつつむ。

 

「あのモスカ、スピードもパワーも、さっきとは比べ物にならないくらい強くなってる!」

《キング・モスカはとっておきだ。徹底的に細部をチューンアップし、装甲は2倍。そして目玉は零地点突破改から着想を得て開発した、炎吸収システム。その優れたエネルギー変換効率により、キング・モスカの戦闘力は10倍にはねあがる。全てにおいてボンゴレ10代目より上。楽勝だ》

「じゃあさっきのは味方を攻撃していたのではなく…!」

「ツナの零地点突破改みてぇに吸収して強くなってたって訳か!」

『その計算は本当に合っているのか?』

 

 響達がキング・モスカの強さに驚いていると、煙の中からツナの声が聞こえた。

 

『10倍でその程度とはたいしたことないな─そいつがおまえのとっておきなら…次はオレのとっておきを見せてやるぜ』

 

 煙が晴れると、傷だらけになりつつも氷の上でX-BURNERの構えをとるツナの姿があった。

 

「通常の攻撃力で負けるのなら、一発逆転の可能性がある必殺技に賭けるという算段か!」

《とっておき?》

『ああ…これ以上おまえ一人にかまってられないからな』

【初代エディションで足場はできた。高出力のX-BURNERなら、キング・モスカを倒せる!…問題はあのスピードだ。確実に当てるには…】

《…零地点突破以外にも技があるとか?》

『どうだろうな』

《どのみちキング・モスカには勝てやしない。このスパナが造った最高の機体だからな》

『やってみなけりゃわからないぜ』

【奴を墜とす!!アレを狙うしかないな…】

 

 ツナはキング・モスカの()()()()に狙いを定めると、飛び上がってキング・モスカに迫り近接戦に持ち込む。

 

【見切った!!】

 

 そしてキング・モスカがツナに膝蹴りをいれようとした直前、ツナは器用に体勢を変え、モスカの膝裏についているスラスターを蹴り壊した。その代わり、自分はモスカに蹴られ壁まで吹っ飛ばされてしまったが。

 

【予想通りのコンビネーションだ…この調子で推進装置(スラスター)を壊していけばキング・モスカは墜ちる!】

「なんて無茶なことを…」

主導推進装置(メインスラスター)を壊して身動きをとれなくする…とっておきってコレのこと?》

『まあな』

【残る推進装置は3つ】

《わかってないな…キング・モスカの本領発揮はこれからだ。近接だけがキング・モスカの領域(フィールド)じゃないし》

 

 男がそう言うと、キング・モスカが両手を胸元で構え、発射口から炎のレーザーが、両手の指先からは小型ミサイルが発射される。

 

【炎に不純物(ミサイル)が含まれていては、零地点突破改で吸収できない!】

『くっ』

 

 吸収できないことに気づいたツナは攻撃がぶつかる寸前に横にずれて回避する。

 

《キング・モスカはあんたを参考に造られているからね。零地点突破改の長所も短所もわかってる》

「それじゃあ、今までの戦いかたじゃツナは勝てないってこと!?」

 

 キング・モスカは避けたツナに再び狙いをつけ、先程と同じくレーザーとミサイルを混ぜて放ち、ツナは必死に回避する。

 

《逃がすか》

 

 そしてキング・モスカが放った三撃目が、ツナが作り出した氷に着弾し、氷が一気にくだけ散る。

 

『しまった!!足場が!!』

「踏みしめる足場がなくては、今の沢田ではX-BURNERを撃つことが出来ない!」

 

 ツナがくだけ散った氷に気を取られていると、その隙に距離を積めたキング・モスカが棍で殴り付ける。

 爆発と打撃を食らいながらも、何とか空中で体勢を整えたツナだったが、追い討ちにもう一本の棍で殴り飛ばされる。

 

《スピードをさっきの倍にしたよ。これが正真正銘のキング・モスカMAXパワーだ》

【なんだって!?】

「あれだけの速さでも本気じゃなかったのか!?」

「危ない!ツナ!」

 

 吹き飛ばされ、がら空きになったツナの背中にキング・モスカの重い一撃が入り、痛々しい音が響く。

 

《本領発揮はこれからだって言ったろ?フィニッシュだ》

 

 男がそう言うと、キング・モスカが胸元の発射口にエネルギーをチャージし始める。

 

「あいつ、本気で止めを刺しに来るつもりだ!」

「逃げろ沢田!」

【油断した…これ程の力を残していたとは……このままでは…もう…どうすればいいんだ…】

『…X-BURNERさえ…』

 

 圧倒的な力の前に、弱々しくそう呟くツナ。すると、ツナのヘッドフォンにノイズが入り─

 

《─撃ちゃあいいじゃねえか》

『「!!」』

《あるのは剛と柔の炎だけだ。地上も空中も関係ねえはずだぞ》

【この声…】

「リボーン君!」

《ダメツナが頭で考えてんじゃねえ。ダメもとでつっこんでこそダメツナだろ?》

【リボーン……ああ。そうだな…】

 

 ツナは空中、上下反転した状態で右手で左拳を握りしめる。そしてキング・モスカがミサイルの混じったレーザーを放つと同時に、左手で背後に柔の炎を噴射させる。

 

【決めて…やるぜ!!】

 

 覚悟を決めたツナは、そのまま右手をキング・モスカに向け─

 

X(イクス)-BURNER(バーナー) AIR(エアー)!!!』

 

 ツナの放った剛の炎はキング・モスカのレーザーを押し返し、そのままキング・モスカを飲み込んでいく。

 そしてキング・モスカは徐々に崩壊していき─突如ツナの右腕の軸がぶれ、大きな爆発がツナを飲みこみ─

 そこで場面が切り替わる合図である暗転が起こった。

 

「あぁ!いいところで!」

「一体あのあと沢田はどうなったんだ!」

 

 響達がその後のツナがどうなったのか気にしていると、場面が切り替わり、機材やら溶接具やらが散らばっている部屋で、布団の上に寝かされているツナと、緑色の作業服を着て何やらキャンディのようなものを咥える金髪の男性が写し出される。

 

「よかった…無事ではあるみたい」

「しかし、この金髪の男は一体誰だ…?」

 

 響達がツナの無事に安堵する。そんな中、金髪の男が『チャブダイ』と書かれたドラム缶の上でお茶を注いでいると、匂いにつられたのかツナが目を覚ます。それに気づいた男は、お茶を注いだコップと一切れの紙を持ってツナに近づき、紙をツナに見せつける。その紙には、『酢花゜』と書かれていた。

 

『す…はな…?』

「なんだ?この字は」

「なんて読むんだろう…?」

『……パ。スパナ』

『ハハッ!本当だ…(マル)がついてる…ゴメン、寝ぼけてた…』

『気にするな』

「あ~なるほど!『花』の(最初)に『゜』がつくから『酢花゜(スパナ)』って読むんだ!これは一本取られたよ~」

「…てかちょっとまて!スパナって言や、さっきのキング・モスカを操ってた奴じゃねえか!」

『モスカ!!!』

 

 クリスの発言で響達が思い出したのと同時に、ツナもその事に気づいたようで布団から跳ね起きる。するとツナの姿をみた響達女性陣は何やら顔を赤くさせ、手で顔を隠したり視線を傾けたりと、とにかくツナから視線をそらそうとする。

 

『お!おまえが!!』

『その格好では風邪をひく』

 

 スパナから距離を取ろうとするツナだったが、自分の格好をよくみると、パンツ以外何も身に付けていなかったのだ。

 

『わわっ』

『これを貸してやる。茶を飲め』

 

 その事に気付き、慌てて掛けられていた布で体を隠すツナ。そんな彼に、スパナがコップと自分が着ているのと同じタイプの作業着を差し出してくる。

 ツナはそんなスパナに驚きつつ、辺りを見渡すと、配管に繋げられた紐に、びしょ濡れになった自分の服がかけられており、すぐ近くのドラム缶の上には、身に付けていたヘッドフォンにミトン状態に戻っているX(イクス)グローブ、死ぬ気丸が入ったケース、そして大事に持っていた京子のお守りが置かれていた。

 

『ああ!!お守り!!』

 

 それに気づいたツナがドラム缶の上に手を伸ばそうとし─自分の手首に手錠がかけられていることに気づいた。

 その事に驚いて固まるツナに対し、スパナは手に持っていたコップを足元に置くと、懐から取り出した拳銃をツナの側頭部に突きつけた。

 

『騒ぐなボンゴレ10代目─あんた今、行方不明ってことになってるから』

 

 あのあと、スパナに渡された作業着に着替えたツナは、反対の手首にも手錠をかけられ、その手錠の鎖にもさらに大きな鎖が取り付けられており、逃げ出せないようになっていた。

 

「そういえば、前に確か、ツナが『過去に一度手錠をかけられたことがある』って言ってたけど、この事だったんだね」

「確かに言ってはいたが…まさかこのような形でだったとは…」

『Sサイズでもでかいな…』

『…』

【どうしよ~…死ぬ気丸もグローブもとりあげられちゃってるし…どう考えてもヤバいよ…結局オレ…殺されるのか?】

 

 敵に捕まり、武器をとりあげられ、手錠をつけられている絶望的な状況を前に、最悪な結末がよぎるツナだったが、その予想は外れることになる。

 

『未完成なんだろ?最後のアレ…』

 

 スパナは手に持っていた拳銃を別のドラム缶の上に置くと、ツナに話しかけてきた。

 

『見た感じ…バランスが悪くて、フルパワーで撃てないように見えた』

『え…?撃つ…?もしかして…X-BURNERのこと?』

『X…BURNER…』

 

 キング・モスカを倒した技の名前を聞いたスパナは、感動したかのように頬を染め声をふるわせる。

 

『そう、X-BURNERだ!X-BURNERが安定しないのは、右手の炎と左手の炎の力のベクトルにズレが生じているからだ。左右を完全なシンメトリーになるように工夫を施せばいい』

『「え…え?」』

『ウチは日本人(ジャッポネーゼ)日本(ジャッポーネ)も好きだ。ロボット工学が進んでるから…カタカナや漢字もクールだし、緑茶の香りも神秘的』

『「はぁ…」』

『でも一番興味があるのは、ボンゴレ10代目の技だ』

『へ…?』

「…あーもう!つまり何が言いてぇんだ!」

 

 スパナの長話にしびれをきらしたクリスが怒鳴る。そして、スパナが言い出したのは─

 

『あんたの完璧なX-BURNER、見たくなった。ウチが完成させてやる』

 

『「なっ」』

【何…?なんなんだこの人?】

 

 いきなりツナのX-BURNERを完成させると言ってきたスパナに、ツナと響達は驚きを隠せずにいた…

 

『あのっ!聞いていいですか?』

 

 X-BURNERを完成させると言いだしたスパナは、ツナに自作のキャンディを渡すと、そのまま何やら作業を始めてしまった。

 そんな彼に声をかけるツナだが、スパナは作業に集中しているのか、反応はかえってこない。

 

『やっぱりダメか…』

【スパナって人、何考えてんだか分かんないな……悪い人って感じはしないんだけど…とにかくみんなが待ってる!!こんな所にずっといられないよ!!】

『何?』

 

 ツナがどうにかして逃げ出す算段を考えていると、声はちゃんと聞こえていたのか、スパナが作業を一時中断して問いかけてくる。

 

『あ…あの…みんな…外はどうなってるんですか!?』

『外?』

『オレ以外のことです!!何か聞いてませんか!?』

『…?』

『えと…それに、あなたの言ってることもよく分からなくて…なんでオレの技を完成させるんですか?ミルフィオーレの人でしょ?』

『一気にしゃべるな』『え?あ…スイマセン…』

『技を完成させるのは見てみたいからって言ったろ?あの時あんた殺さなかったのはキモチ悪くなったんだよね』

『は?』

『モニターごしの殺しは平気だけど、生は嫌だっていうアレだよ』

『「何言ってんの!?」殺しは全面的にダメでしょ!!』

 

 スパナの発言を聞いたツナがいつものようにダメ出しをすると、スパナは少し驚いた表情を浮かべる。

 

『あっ!ス…スイマセン…!』

『……外って基地の他の様子のこと?』

『そ!そうです!!』

『知らないな…正一はバタバタしてるみたいだけど』

『しょ…正一って、入江正一のこと!?』

『うるさい』

 

 気が散って迷惑なのか、大声をあげるツナに拳銃を向けるスパナ。

 

『ヒッ!スイマセン!!…』

【分かってはいたけど…本当に入江正一はここにいるんだ…すぐ近くに…】

『でも、正一を攻めに来たんだったらやめた方がいい』

「なに?」

『高校の国際ロボット大会の頃から知ってるけど、正一は相当キレる─いつも全体を見てる、すごい奴だ』

 

 スパナの話を聞いて息を飲むツナと響達。すると突如、ツナ達がいる部屋を物凄い揺れが襲ってきた。

 

『ひい!!』

「キャア!」

「いきなり何!?」

「じ、地震!?」

「地震にしては揺れがおかしくねぇか?」

「雪音の言う通りだ…この揺れは地震なんかではない。まるで、部屋が移動して擦れているような…」

 

 揺れは長い間続き、落ち着いた頃には、部屋にあったものがいたるところに散らばっていた。

 揺れの途中で頭をぶつけていたツナが、揺れがおさまって頭をさすりながら起き上がると、四つん這いになってなにかを探すスパナの姿があった。

 

『どうしたんですか?』

『…大事な部品を失くした』

 

 どうやら先程の揺れで、必要な部品がどこかへ行ってしまったようだ。

 

【…みんな…大丈夫だったかな?こんなことしてる場合じゃ…】

 

 仲間達の心配をしながらツナが立ち上がろうとすると、後ろで何か物音が聞こえた。

 すぐにツナが確認すると─

 

『「あっ」』

【死ぬ気丸にグローブ!!】

「それにヘッドフォンもあるぞ!」

 

 先程の揺れでドラム缶が倒れた際に、運良く死ぬ気丸が入ったケースとグローブ、ヘッドフォンがすぐ後ろまで転がってきていたのだ。

 つい声を上げてしまったツナは、スパナにバレていないか心配するが、彼はいまだに失くした部品を探しており気づく気配はない。

 

【今なら…逃げられる!!】

 

 ツナはスパナにバレないよう、慎重にグローブとケースを回収しハイパーモードになろうとするが、両手を手錠で繋げられているせいでケースの蓋をうまく開けることが出来ない。

 

『あった』

 

 ツナが蓋を開けるのに手こずっていると、スパナが失くした部品を見つけ、蓋を開けようとしている姿をバッチリみられてしまった。

 スパナに見つかり絶望するツナ。しかし、スパナから帰ってきたのは意外な答えだった─

 

『じゃあハイパーモードになってよ』

『「ええ!?」』

『実際やって試すから』

『えっ!いや…でも!ハイパーモードになったら…オレ…逃げちゃえると思うんですが…』

『逃げてどーすんの?ウチの連中は強い。次は殺されるぞ』

「確かにな…沢田より戦闘経験の多いラル・ミルチでさえ、不意打ちがあったとは言えど、副隊長クラスのジンジャーにあそこまで追い詰められたのだ…このまま逃げ出して、もし隊長クラスとかち合った時には…」

『スパナの言うことも一理あるな。X-BURNERを完成させないと、この先キビシイかもしんねぇ』

『わ…わかったって!!─ん!?』

『ただし、時間はあまりねえがな』

『リボーン!!?』

 

 ツナが横を見ると、今も地下アジトで待っているはずのリボーンが、宙に浮きくつろいでいた。

 

『ちゃおっス』

『おまえいつのまに!?』

 

 ツナがリボーンに抱きつこうとするが、手はリボーンを突き抜けて通りすぎていく。それもそのはずだ。そこにいるリボーンは、足元に落ちているヘッドフォンから写し出されている立体映像(ホログラム)なのだから。

 

『あれ?透ける!!─ひいっ!お化け!?』

「ハハッ!面白い反応するね、綱吉クン♪」

「このときの沢田は、ホログラムというものを知らなかったのか?」フフッ

「まぁ昔のツナは、今では考えられないほど運動も勉強もダメダメだったからな」

 

 驚いているツナに、ホログラムのリボーンが立体映像とヘッドフォンにつけられた機能について説明する。

 

『本当はもっと早くおどかそうと思ったんだが、電波が悪くてな。さっき急によくなったんだが、何かあったか?』

『え…?ああ地震!!そっちもあったろ?』

『ん?なかったぞ』『え?』

「てことはやっぱ、さっきの揺れは地震なんかじゃねぇってことだな」

『っていうかじゃあ、そっちは…』

『ああ、今んとこ無事だ』

『「よかった~」』

『人のことより自分の心配しやがれ』

『え?』

 

 とぼけるツナを無視して、リボーンはスパナに視線を向ける。

 

『スパナ、X-BURNERの完成までにどれくらいかかるんだ?』

『ん…』

『おまえ、もしかしてこの人のこと知ってんのか?』

『知らね』

『そのわりには、さっきからなれなれしーな!』

『まーな。お前が捕まってからずっと音声は聞こえてたからどんな奴かはわかってんぞ』

『だからってなあ…』

『それにおまえにまかせとくと、いつまでたってもラチがあかねーからな。いつまでもチンタラしやがって』

『ひいっ!待てリボーン!!タッ、タンマ!』

 

 ホログラムのリボーンが拳銃をツナに向けると、相手はホログラムだというのにツナは見事な怯えっぷりを見せる。

 

「ツナってこの頃から、映像越しでも拳銃向けられたら怖がってたんだ…」

『とぎれとぎれの音声しか入ってこねーが、施設の破壊に向かった山本達は、2組に分断されちまったぞ』

『「ぶ…分断!?」』

 

 怯えあがるツナに伝えられたのは、なんとも不穏な情報だった…

 

『X-BURNERのフォームを、自分で矯正する?』

 

 スパナの話を聞いたツナがそう呟く。

 あのあと、仲間が分断されたと聞いて慌てたツナと響達だったが、ツナはホログラムのリボーンが、響達はリボーンと白蘭、ユニの三人係でどうにか落ち着かせた。

 困惑するツナに、スパナは先程まで作っていたものを手にとる。

 

『このコンタクトディスプレイを装着する』

「え!?コンタクトディスプレイって確か…!」

「沢田が、戦う際に身に付けているコンタクトのはず!あれを作ったのは彼だったのか!」

『将来的には手ブラでテレビを見たりする技術だが─超小型なので戦闘に最適』

『でも…それとX-BURNERの完成が、どう関係があるんですか?』

『X-BURNERが不安定なのは右と左の炎のバランスが悪いからだ。あんたの場合はグローブと連動させて、ディスプレイに左右のグローブの炎の出力状況が映し出させるようにするから、左右のグローブのエネルギーベクトル─つまり見える左右の矢印が重なるように撃てば、X-BURNERはブレずに安定する』

『え?…それだけ?』

「あれ?結構簡単そう…?」

「それは違うぞ立花。確かに客観的に聞けば簡単な内容に聞こえるが、いざ実際に左右対称にしようとすれば、私でも感覚だけで合わせるのは相当に難しい」

「確かにな…左右を完全に対称にするってのは、左右の腕に生じる感覚のズレも考慮した上で調整する必要があるってことだからな」

「ウェエ!?そんな難しいことをあんな超ちっちゃいコンタクトでどうにかしちゃってるの!?」

 

 今やツナの十八番となっているX-BURNERの難しさ、そしてX-BURNERの重要なサポートしているコンタクトディスプレイの凄さに驚く響達。

 その後、一度もコンタクトを付けたことがなかったツナが勇気をふりしぼっていたが、どうにかコンタクトディスプレイを装着させたツナは、ミトンを着けて次の段階に移る。

 

『よし、始めて』

『え?あの…手錠は?』

『壊していいよ』

 

 破壊していいと言われたツナは、手錠をつけたまま死ぬ気丸を飲み、ハイパーモードになると、一瞬で手錠を破壊した。

 

「普通の手錠でも、かなり頑丈にできているはずなのだが…」

『どうだツナ』

『…視界がかすむ』

『やはり調整に時間が必要だな』

『どれくらいかかる?』

『20分もあれば』

『かかりすぎだ。リボーン、その後の連絡は?』

『電波が悪いらしく、誰からもねーぞ。今は無事を祈るしかねーな…』

「山本さん達、無事だといいけど…」

 

 未だ連絡の取れない山本達が無事であることを願う響達。

 

『スパナ…さん?コンタクトの調整、何とか早くできませんか?』

 

 一時して、ハイパーモードを解除したツナがスパナに問いかける。実は先程、ツナのヘッドフォンに一瞬だけ山本の声が聞こえ、不安になっていたのだ。

 

『何を言われても完成時間は変わらない。ウチのポリシー』

『…はあ』

『ふむ…なあ、スパナ。おまえ白くて丸い装置のこと知ってるか?』

 

 リボーンがそう言うと、ツナのヘッドフォンから目的の装置が映し出される。

 

『こいつなんだが…この基地のどこかにあるはずだ』

『……あ』

『知ってるんですか?』

『正一の研究所にある装置だ』

『入江正一の!?』

『何を研究してんだ?』

『……ずっと前に聞いた時は、亜空間のエネルギーを捕まえるってつぶやいてたな』

「あくうかん?」

『そんなもん何に使うんだ?』

『相当ありえない話だよ。たしか時空間移動絡みの…いわゆるタイムトラベル』

『『タイムトラベル!!?』』

『あ…(言ってよかったんだっけ…?)』

『リボーン!!』

『やっと点と点がつながったな…奴がタイムトラベルの研究をしていたとなると、過去へ戻るために入江を標的にするってのはドンピシャリだな』

 

 何やら答えを導きだす二人を不思議そうに見るスパナ。

 

『オレ達は10年バズーカでこの時代に来てしまって、過去へ帰れなくなってたんです!!その手がかりが入江正一にあると聞いてここへ来たんだ!!』

『10年バズーカ…?あ…だから子供なのか』

「いや、今まで不思議に思わなかったのかよ…」

『この感じだと、入江は手がかりどころか元凶そのものなのかもな。この装置も、過去へ帰れないことと深く関係してそうだぞ』

『うん…やっぱりこの侵入作戦はまちがってなかったんだ…これで入江を何のために倒すのかはっきりわかった…入江正一を捕まえて、オレ達が過去へ帰る方法を白状させるんだ!!』

『だな』

 

『何に気づいたって、時すでに遅しだよ』

 

「誰だ!」

 

 ツナが入江捕獲に意気込んでいると、部屋の入り口に、アフロヘアーが目立つグラマラスな女性と、彼女を取り囲むように、ツナのように額に炎を灯す屈強な4人の男が立っていた。

 

『あんた達はここで永遠におねんねするんだからね』

『……アイリスと死茎隊…』

『下がってろ』

 

 ツナはすぐにハイパー化すると、スパナを庇うように立ち塞がる。

 

『準備はいいかい?ボンゴレボーイ』

 

 アイリスと呼ばれた女はジャケットのジッパーを下げはじめ、ツナはいつでも動けるよう身構える。

 

『やめとけボンゴレ。死茎隊は今のあんたが敵う相手じゃない』

『そうか?ツナはおまえのキング・モスカと相打つほどの強さだぞ』

『だからだ。前に死茎隊の戦闘データを拝借してキング・モスカとの戦闘シミュレーションをやったことがあるが…ボロ負けだった』

「なっ!?沢田をあそこまで追い詰めたキング・モスカよりもさらに強いだと!?」

『ふーん…死の忠告をしてやるなんてお利口じゃないか、スパナ!まぁどっちみち、裏切り者のあんたもここで死ぬんだけどね』

『え…』

「何『何でオレも?』みたいな顔してんだ!ツナを匿って、更には必殺技の完成まで手伝ってるとなりゃ、裏切り者扱いされてもしょうがねぇだろ!」

『さぁ、いくよ下僕ども』

 

 アイリスがそう言うと、死茎隊がアイリスの前に立ち、アイリスの持つ鞭に紫色の炎が灯る。

 

『燃えてきな!!』

 

 するとアイリスは、死茎隊を鞭でおもいっきりしばいたのだ。

 

「いきなりの女王様!?」

「バカなこと言ってんじゃねぇ!良くみろ!」

 

 鞭でしばかれた死茎隊が苦しみだしたかと思うと、突如全身の筋肉が異様な膨張を起こし、まるで怪物のような体に変わってしまった。

 

【「何だ!?」】

『増強ってさ♥️』

『で…出た…死茎隊の雲の肉体増殖』

【肉体増殖…?】

 

 歪な体に変わった死茎隊は、到底人間とは思えない雄叫びをあげる。

 

『何だありゃ…人間なのか?』

『……元々はね』

『さあ、ひねっといで!下僕ども♥️』

 

 アイリスからの命令を受けた死茎隊がそれぞれ動きだす。

 二人の男が遠くにいるツナに向け腕を伸ばす。すると腕はみるみる伸びていき、ツナの元まで伸びていく。

 

「筋肉だけでなく、関節までも増殖しているのか!?」

 

 それをみたツナは一瞬驚くものの、すぐに手を構え受け止める。だがキング・モスカを越える力を持つ死茎隊の力を完全に受け止めきれることができず、ツナの足が宙に浮いてしまう。そこへ死茎隊の一人が足の筋肉を増殖させて迫ると、ツナの体を蹴り飛ばした。その力はあまりにも強く、ツナは血を吐き出しながら勢いよくぶっ飛び、壁を破壊して隣の部屋まで吹き飛ばされてしまった。

 

「ツナ!」

『……だからムリだって…』

『本当にあいつら人間なのか?』

『─死茎隊。ミルフィオーレ人体覚醒部の被験体だ…』

「人体、覚醒部?」

『改造された肉体が全身をおおう特殊なスーツとアイリスのムチの雲の炎によって異常な体質変化を起こし、人体に眠る攻撃能力が覚醒しあーなってる』

「チッ!いわゆる人体実験かよ…見ていて吐き気がする」

『人体実験か…ひでーことしやがる』

『…それは少し違う。あいつらは自ら進んで肉体の改造をしたんだ』

「なに?」

『あの被験者達は元々人体覚醒部の博士だった。4人の共通点は1人の助手にほれていたこと…アイリスだ。彼らは、一番アイリスを喜ばせるのは自分だと競うように、それぞれ自らの肉体にメスを入れ、肉体を改造していった…あれはその成れの果ての姿…生きがいは殺戮と…妖花アイリス』

『よくやったよ下僕ども♥️』

 

 アイリスがそう言うと、死茎隊達は嬉しそうな声をあげアイリスのもとに群がる。

 

「なんと歪な…」

『さぁ、ボンゴレはカベの向こうだよ!開けてやるから腕ごとかっさらっといで!!』

 

 アイリスと死茎隊の関係にシンフォギアメンバー全員が顔を歪めていると、アイリスが部屋に取り付けられていたレバーを下げ、ツナが突き抜けた壁が上がりはじめる。すると扉が上がりはじめてすぐに、まっすぐ立つツナの姿が現れる。

 

『へぇ…なかなかしぶといじゃないか』

『スパナ、何をしている。早くコンタクトを完成させてくれ』

『え?』

 

 いきなりそう言われ驚くスパナ。そんな中、リボーンは彼の考えていることを理解したのか、『ニッ』と口角をあげる。

 

『完成時間が変わらねぇのがポリシーなんだろ?早くつくれ、スパナ』

『…でも、死茎隊はキング・モスカより強いって言ったろ?ムダなあがきだ』

『ツナはそう感じてねーぞ』

 

 リボーンがそう呟くと同時に、ツナが両手から炎を噴射させ死茎隊に向かっていく。

 

『いいやムダさね─やっちまいな』

 

 アイリスの命令に忠実に従う死茎隊。するとツナは、先程のモスカ戦とはうってかわって、死茎隊の攻撃を的確にかわしながら懐へ潜り込み、どんどん攻撃をいれていく。

 

『何だい?どーなってんだい!?』

『ウチの知るボンゴレとは…まるで違う…』

『キング・モスカ戦とでは、違う所が2つあるからな』

 

 ツナの変化に驚くスパナに、リボーンが説明する。

 

『1つはキング・モスカを倒した経験。それがあの時のツナとは比べ物にならない程に戦闘力を引き上げてる』

『でも、あれは成長とかのレベルじゃない…』

『ああ。もう一つは、相手が機械ではなく生きた人間だってことだ』

「そうか!例え人体実験で変わっちまった奴らでも、人間であることには変わりねぇ!それなら!」

『生身の人間だからこそみせる動きや考えの予兆というものがある。ツナは、それを感じ取ってんだ。これこそがボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)に継承される、"見透かす力"。またの名を─』

 

『「超直感!!!」』




少し微妙なところですが、残り文字数もあまりないのでここで今回は終わりです。次回はついに完成したX-BURNERが火をふきます!
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