戦姫燈炎SYMPHOGEAR!   作:生粋の名無し

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今回は少し気力がわいてきていたので早めにできました。

それではどうぞ


ツナの過去(10年後編):⑩

『そんな…じゃあ今までのは…』

『だ…誰なんですか!?』

 

 (リアル)6弔花の存在を知り唖然とするツナ達。そんな中でただ一人、白蘭と長い付き合いのある入江が声を荒らげる。

 

『知らないぞ!!僕が知らない人間がミルフィオーレにいるなんて!!』

〔正チャンに心配事増やすとメンドくさいからね〕

 

 必死に叫ぶ入江だったが、白蘭の話に見に覚えがあるのか黙り込んでしまう。

 

〔僕はこう考えたんだ─ただ腕っぷしの強い人間を選んでもたかがしれてる。なぜならリングの力の要はより強い"覚悟"だからね〕

「より強い、覚悟…」

〔そこで、強い上に常人離れした"覚悟"を持った人間を、マフィアといわず世界中から探しまわったんだ。しかも、その「覚悟」が僕への「忠誠」になりうる人間をね─世界は広いよねー!おかげで彼らと会えたよ〕

 

 白蘭はそこで一度話を止めると、モニターから5人が消え、赤髪の男だけが写し出される。

 

〔例えば彼は…〕

 

 そして映像が切り替わり、緑に囲まれたのどかな村が写し出される。

 

〔ご覧のように、大自然に恵まれた大変美しい故郷の出身なんだけど─「覚悟を見せてくれないか?」って言ったとたん─故郷を捨ててくれたよ

 

 更に映像が切り替わり、次に写し出されたのは─先程の緑溢れる光景から一変。

 村も美しかった自然も、いたるところから溢れ出る溶岩によって焼き払われていた。

 

「なに…これ!?」

「まるで地獄絵図ではないか!」

「これが、元はさっきの風景だったってのかよ!?」

「こんなことって…」

〔怖いよねー、ここまでアッという間だよ。まさか僕への忠誠を示すために、生まれ育った木も山も村も村人も、全部消してくるとは思わないじゃん〕

「その考え方って、さっきの幻騎士さんと同じ…!」

【そんな…メチャクチャだ…】

『!?噴き出したマグマの中に何かいるぞ!?』

 

 皆が真っ赤に染まった景色に気を取られていると、獄寺が何かを見つけ声をあげる。それを聞いた白蘭が笑みを深めると、映像が画面中央のマグマ貯まりに拡大されていく。そして十分に拡大され、獄寺が見つけた生き物が視認できるようになった瞬間、響達は驚きのあまり腰を抜かしかけた。

 そこには、先ほど写されていた男が、頭にタオルをのせ、胸から下をマグマにつけながら気持ち良さそうにしていたのだから。

 

「あ…あの人、マグマに入ってるよ!?」

「しかも呑気に口笛まで吹いて…」

「マグマの風呂に入っているというのか!?」

「ありえねぇ!てか人間じゃねえだろ!」

 

 その光景に、ツナ達も響達と同じ言葉を述べる。そんなツナ達を見た白蘭は、楽しそうに笑いながら話を続ける。

 

〔フフフ!真6弔花の異常な戦闘能力もこれでわかったかな?更に彼らには、1人につき500名の部下と─選りすぐりのAランク兵士(ソルジャー)を100名与えてるからね〕

『Aランクが100人!?Aランクは今までの6弔花─6人しかいなかったはずだ…』

「それって…幻騎士さんやγ(ガンマ)さんみたいな人がまだ沢山いるってこと!?」

〔僕らを倒したら、今度こそ君たちの勝利だ。ミルフィオーレはボンゴレに全面降伏するよ〕

『白蘭サン!!力比べって…一体、何を企んでるんですか!!』

 

 余裕の笑みを浮かべながらそう告げた白蘭に、入江が投げ掛けると彼に視線を向けた。

 

〔昔、正チャンとよくやった"チョイス"って遊び、覚えてるかい?─あれを現実にやるつもりだよ♪〕

「"チョイス"って、確かユニちゃんが言ってた…」

〔細かいことは10日後に発表するから、楽しみにしててね♪それまで一切手は出さないから、のんびり休むといい〕

『無茶言うな。あんな怪物見せられて、のんびりできるわけねーだろ?』

「そ、そうだよ!あんな人が6人もいるなら10日間ずっと特訓でもしないと!」

〔んー、もっと話したいなー…でも君達はもう逃げないとね〕

「逃げるだと?」

〔君達のいるメローネ基地は、もうすぐ消えるからさ〕

 

 白蘭がそう伝えると、ホログラムの白蘭()が光を発しだした。

 

『消える!?』

〔正しくは、基地に仕込まれた超炎リング転送システムによって、移動するんだけどね〕

「また知らねぇ単語が出てきやがった…」

『それって、リングの炎を使ったテレポーテーションシステム…?完成…してたのか?』

〔まだ、この規模の物体じゃなきゃムリなんだけどね─すさまじいエネルギーと時間がかかるから、一生に一度見られるかどうかだよ?〕

「そんなすごい技術も持ってたのかよ…!」

〔じゃあ─楽しみだね、10日後♪〕

 

 白蘭がそう言い残して消えた直後、機械のような音を上げながら基地全体に目映い光が広がった。そのあまりにも眩しすぎる光に、響達は目を守ろうとする。

 

「超炎リング転送システムが起動したのか!」

「やばいよ!急いで逃げないと!」

「逃げるったって何処に!基地から出るのも間に合うわけがねぇ!」

『大丈夫だ!!何かにつかまれ!!』

『!?大丈夫って!?…!』

 

 突然の状況に追い付けず混乱するツナ達。そんな中、入江が何かを願うようにして時計を確認する。

 そして光が最高潮に達した直後─ものすごい音と揺れがツナ達を襲った。ツナ達はその揺れによって体制を崩し、床に倒れ込んでしまう。

 ツナ達を襲った揺れはその後も続いたが、数秒するとピタリと収まった。

 

「…どうやら収まったようだな」

『いつつ…』

『うぅ…大丈夫スか10代目!!』

『う…うん…』

『どうやらまだ、並盛の地下にいます…』

 

 揺れが収まり、少しずつ起き上がり始めるボンゴレファミリー。だが、そんな彼らの目の前には信じられない光景が広がっていた。

 

「お、おいおい…嘘だろ…!?」

『基地がっ…メローネ基地が消えた!!!』

 

 目の前に広がっていたのは、底が見えないほどの大きく深く空いた穴。

 先ほどまでツナ達の戦場となっていたメローネ基地は、ツナ達がいる装置の周辺だけを残し、並盛から丸々消失していたのだ。

 

『こ…こんなことが!!』

「本当に、これほどの質量を移動させる技術が使われていたとは…」

『でもなんで…オレ達だけ残れたんだろう?』

『彼が晴のボンゴレリングと共に来たからさ』

 

 ツナや響達の疑問に入江が答えた直後

 

『極限に、ここはどこだー!!?』

 

 後ろから大きな声が響いてきた。

 

「あの人は…!」

『10年前の…お兄さん!!』

 

 ツナと響達が振り返ると、そこには並盛中の制服を着た10年前の─ツナ達の時代の笹川了平がベッドから起き上がっていた。

 

『我々が移動しなかったのは、彼が過去から来てボンゴレリングがそろったからだ。7つのリングがそろったことにより、結界ができて我々と装置は守られたんだ!』

「リングって、そんな能力もあったんだ…」

『お前、こうなることを読んでたのか?』

『ああ…白蘭サンのやりかねそうなことの何割かはね』

『お兄さん!!』

 

 入江が移動しなかった仕組みを解説していると、ツナが了平の元に駆け寄る。

 

『生きてたか沢田!!!お前達も行方不明で心配しとっ『しぃっ』?』

『あとで説明してやるから静かにしてろ!!』

『10年前の笹川氏が、ボンゴレリングと共に来たことは我々にとって間違いなくプラスですが…しかし、大変なことになりましたね…』

 

 ツナと獄寺が了平に静かにしているよう促している間、草壁が独り言のように話し出す。

 

『あの6弔花より更に上があるとは…この戦力でこの先、一体どう戦えと…』

『そりゃ、やるっきゃないっスよ』

「山本さん!目が覚めたんだ!」

 

 先ほどまで眠っていた山本が起き上がり、笑顔を見せる。

 

『や…山本!!いつから!?』

『ったく、心配かけさせやがって』

『でも、どう考えても無謀な戦いだ。ミルフィオーレの戦力にかなうはずがない』

「その通りだ…(さき)に伝えられた話が事実ならば、白蘭の元には最低でも3000人の部下と幻騎士クラスの強さを持つ兵士が600人、そして真のマーレリングの保持者6人がいることになる」

「そんな人数相手に、どうしろっていうんだ…!」

 

『いいや、できるさ!!』

 

 あまりにも大きすぎる戦力の差にうちひしがれていたツナ達に、そう答えた入江は装置に近づく。

 

『成長した君達なら奴らと渡りあえるさ!!それに、僕達だってただ君達をイジメてきたわけじゃない』

 

 入江が話ながら、装置に取り付けられていた操作盤に触れると、装置の内側にあった蓋が少しずつ開き始める。

 

『君達を鍛えることは、この新たな戦力を解き放つことでもあるんだ!君達の成長なくしては使いこなせない、新たな力─今こそ託そう』

「新たな力…?」

『この時代のボンゴレのボスから君達への贈り物だ。心して受け取ってくれ!!』

 

 入江がそう告げた直後、蓋が開ききった装置の中心から7つの炎が放出され、ツナと彼の守護者達の手元で制止する。

 ツナ達の手元に飛んできた物体は、皆のそれぞれの持つ属性の色をした、ボンゴレの紋章が刻印された(ボックス)だった。

 

「この匣は…?」

『この時代のボンゴレ10代目より君達に託された、"ボンゴレ匣"だ』

『オ、オレが…?』

 

 ボンゴレ匣を受け取った7人は、それぞれの反応を示す。獄寺は目を輝かせ、ランボはサイコロと勘違いし、了平にいたっては─

 

『極限に、この黄色いハコは何だあ!?』

 

と、近所迷惑になりそうな音量で叫んでいる。

 

「アハハ…了平、元気だね…」

 

 そんな了平をよそに、ツナが自分のボンゴレ匣を眺めていると─

 

〔う゛お゛ぉい!!〕

『んなっ!?』

 

 彼のヘッドホンから耳をつんざかんばかりの声が響いてきた。

 

〔ヴァリアーから通信をつなげとの要請です…ミルフィオーレに盗聴される恐れがありますが…〔いいからつなげぇ!!〕怖いからつなぎますよ!ヘッドホンの音量に気をつけてください〕

 

 ジャンニーニがそう告げた数秒後…

 

〔てめーらぁ、生きてんだろーなぁ!!!〕

 

 全員の通信機にスクアーロの声が響いてきた。

 

『スクアーロ!!』

『っるせーぞ!!』

 

 山本と獄寺がそれぞれの反応を示すなか、響は前回の映像で学んだのか、スクアーロの声が響き渡る前に耳を塞いで音の暴力を回避していた。

 

〔いいかぁ!!こうなっちまった以上、ボンゴレは一蓮托生だ。てめーらがガキだろーと─〕

 

 そこまで話したスクアーロだったが、スクアーロ(あちら)側でなにかあったのか、「ドガスッ」という岩をぶつけられたような音が響き、通信が一度途切れる。すぐに通信は直ったが、次に聞こえてきた声はスクアーロではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔─沢田綱吉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その声を聞いた奏者達の背筋に寒気が走る。

 

(こ…声だけというのに、何という存在感だ!)

(本能が、この声に逆らったらヤベェって言ってきやがる…!)

(師匠や了子さんの時でも、こんなに緊張したことはないのに…!)

 

 奏者達が、まるで百獣の王に睨まれたかのように固まっていると、ツナが声の主に驚きを見せる。

 

『この声は…』

XANXUS(ザンザス)!!】

(この声の主が、沢田達が言っていたXANXUSか…!)

〔乳臭さは抜けたか〕

『「!!」』

〔10日後に、ボンゴレが最強だと─証明してみせろ〕

 

 XANXUSがそれだけ告げると、「ブツッ」という音を残し、今度こそ通信が切られた。

 

『─切れちまったな…』

『あんにゃろう、好きなことだけ言いやがって!!』

『まあどっちにしろ、奴ら、今回は味方みてーだな』

『そ…そうだけど…(色んなことがありすぎて…素直に喜んでいいのか…)』

「「「─ぷはっ!」」」

 

 ツナが戸惑いを見せるなか、緊張で息も止めていた奏者達が一斉に呼吸を再開させる。

 そんな中、目を覚ましてからあまり口を開いていなかったクロームが、入江にある疑問をぶつけた。

 

『あの…骸様は─六道骸は今…どうなっているんですか…?』

 

 その疑問はツナや雲雀も抱いていたようで、真剣な表情を見せる。

 

『…白蘭サンの話では、骸はミルフィオーレの兵士に憑依していた所を白蘭サンの手で殺されたらしい』

【そんな!!】

「それじゃあ、あの時クロームちゃんの臓器が消えたのは…」

『だが僕はそう思っていない「!!」なぜなら、復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄の死亡者リストに、彼の名前はあがってなかったからね』

「そうか!もし本当に六道骸が死んだとすれば、その死は彼の肉体が隔離されている牢獄に伝わるはず…」

『ってことは…』

『生きてるよ。それは間違いない…』

 

 入江の答えを聞いたツナが笑顔を浮かべた直後、クロームが床に倒れた。ツナ達は彼女の体調が再び悪化したのかと心配して駆け寄るが、どうやら骸の無事を知って安心したら力が抜けただけのようで、心の底から安堵した表情をしていた。

 

『ところで入江さん。一つ、気になっていたのですが…』

 

 皆がクロームの無事に安心するなか、クロームを起こして上げようとしている入江に、今度は草壁が問いかけた。

 

『あの装置の中にいる、この時代のボンゴレファミリーを出すことはできないのですか?彼らが加われば、すごい戦力になるはずです!』

『ああ…残念だけど、それは絶対にあってはならないんだ。過去から来た綱吉君達と、この時代の綱吉君達が同時に出現すれば、時空が壊れて世界が消えてしまう可能性がある』

『な…なんと!!』『ひいっ』

「"タイムパラドックス"か…」

『だからこそ、僕らは君達にかけたんだ。ボンゴレリングの、正式な保持者(ホルダー)である君達にがんばってもらうしかないんだよ』

 

 真剣な表情でそう伝える入江。それを聞いたツナは、ボンゴレ匣を見つめながら不安そうな顔をする。

 

『かけるとか…急にそんなこと言われても…』

『ツナ、正一にまだ大事なこと、聞いてねーぞ』

『え?』

 

 とぼけるツナをよそに、リボーンは入江に視線を合わせると一言、こう問いかけた。

 

 

 

 

 

 

『入江正一─お前、俺達のファミリーになるのか?』

 

 

 

 

 

 

 その一言に、ツナ達だけでなく響達も動きを止めるなか、問いかけられた相手は─

 

 

 

 

 

 

『へ?ダメかい?』

 

 

 

 

 

 

─と、最初から入れてもらえると考えていたのか、とぼけた顔でそう答えた。

 

「ズコーッ!」

『あっさり…っつーかヌケヌケとー!!』

『ウチも行くところがない。雇ってくれボンゴレ』

 

 あまりにもあっさりした答えに獄寺が怒っていると、今度はスパナもボンゴレに入りたいと言ってきた。

 

『どうするんだ?ツナ』

『こういう時、いつもオレだな!』

『ボスのおまえが決めるに決まってんだろ』

『心のままに言ってやってください、10代目!!イヤならイヤと!!』

「それって、獄寺(こいつ)入江とスパナ(あいつら)のこと、気に入らないからだろ」

『えっ…あ…だからオレ、マフィアとかのつもりないし…それに…正直、入江さんにはいろいろされたから…迷うんだよな…』

 

 悩んでいるツナをみて、唾を飲みつつ緊張で胃を鳴らす入江。

 

『でも、すごく大変なことをしてきてくれたと思うんだ…世界とか…話が大きすぎて…まだよくわからないこともあるけど、これからも力を貸してください!』

 

 悩んだ末に出した答えに、入江は喜びの笑みを浮かべ、獄寺は不満そうに舌をうつ。そしてスパナのファミリー入りにも許可を出したところで、入江がツナの手を両手で握る。

 

『こちらこそヨロシク!!─そうと決まれば僕にはやらきゃならないことが山程ある!君達とも、もっと話さなくちゃいけないが、先にこの装置を隠して保護する方法を考えないと…』

『正一、技術的な話なら手伝う』

『ありがとうスパナ!さあ、忙しい10日間になるぞ!!』

『あ…あの…なんか手伝った方がいいでしょうか?』

 

 気合いを入れている入江を見たツナが、自分も何かした方がいいのかと話しかける。

 

『無理するなよ綱吉君!』

『え?』

『本当は一刻も早くアジトの仲間の元へ帰りたいだろ?10日後の白蘭サンとの戦いのことはまた話し合うとして、一時解散しよう。後で僕らもお邪魔していいかい?』

 

 そう言われたツナは一瞬迷ったが、彼の言葉に甘えて、獄寺達をつれて地上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 並盛町のとある裏路地。そこには、メローネ基地に繋がる入り口が一つ存在していた。そこのドアが開き、中からツナが外の様子を確認する。

 

『ミルフィオーレの連中…本当に襲ってこないかな?』

『ボンゴレのアジトからもモニターしてるが、並盛に敵のカゲもリングの炎の反応も全くなくなっちまってる。大丈夫だ』

 

 リボーンからの情報を聞いたツナ達は、一斉に裏路地を駆け抜け、町中へでる。

 裏路地を駆け抜けた先にミルフィオーレの隊員の姿はなく、代わりに多くの一般人が行き交っていた。

 

『ふー…久しぶりの外の空気だ』

『さ…帰りましょう、10代目』

 

 獄寺に促され、ツナが京子達やリボーンが待つアジトへと足を向ける。

 

「入江さんって、いい人だったんだね」

「必要な演技だったといえど、ラル・ミルチの持っていた写真や初対面の態度からは想像もできなかったがな」

「…ん?なんだこれ?」

 

 帰路に着くツナ達を眺めながら、響達が他愛もない話をしていると、彼女らの目の前に一冊のA4ノートが現れた。

 突如として現れたそれに響達が困惑していると、ノートがひとりでに開き、白いページに文字を書いていく。そして文字がある程度書かれると、今度はノートの真上に、ページに書かれていた文字が大きく浮かび上がった。

 

 帰りはみんな無言で…足取りは重かった……

 

「これってまさか、ツナが書いた日記…?」

「もしそうだとしても、何でこの空間に…」

 

 響達が混乱したいる間にも、ノートに書かれる文章は更新されていく。

 

 

 

 

 

 

 キズの痛みや疲れもあったけど

 みんなアジトに帰りづらい気持ちがあったと思う…

 作戦は成功とは言えなくて…

 目的だった入江正一には辿り着くことはできたけど

 すぐには過去に帰れそうにない…

 待ってるみんなにどんな顔をすればいいんだろう…

 

「沢田…」

 

 …でも実際はそんな心配いらなかったんだ…

 ただ…姿を見るだけで─

 ただ…笑顔を見るだけで─

 オレ達の込み上げてきたのは─

 また会えた嬉しさだけだったんだ!!

 

 

 

 

 

 

 そこでノートが閉じ、響達の前から姿を消す。

 文章に夢中になっていた響達は、ノートが突然消えたことに一瞬驚いたが、すぐに別の光景に意識を向けた。

 彼女達が目にしたのは─

 

 

 アジトの外で、帰りを待ちきれず出迎えに来ていた仲間達と、そんな彼らの元に駆け寄るツナ達の後ろ姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『つまり…お前達がこの10年後の未来に来てみたら、オレ達の所属するボンゴレファミリーにとって、とんでもなくひどく荒んだ世界になっていたと…』

 

 時間は進み、メローネ基地での戦いの翌日。広間では、来たばかりで事情を知らない了平にツナ・獄寺・山本の三人が現状を説明していた。

 そんな了平は、どこからか取り出したスケッチブックにマジックで絵を描くと、顔の横に掲げて聞いた話を整理していく。

 

『そこで、過去に戻ろうと元凶であろう男、入江を倒しにいったら、実は入江はいい奴で─』

 

 了平が─入江らしき男の不細工な顔が描かれたページをめくると、今度はふくよかな顔の入江が出てくる。さらにめくると、今度は白蘭らしき男の下手な絵が露になる。

 

『極限に悪い奴は7^3(トゥリニセッテ)を集め、世界征服を企むミルフィオーレというファミリーのボス、白蘭と判明!!』

 

 スケッチブックを掲げながら力強く宣言する了平。了平はさらにページをめくり、今度は白蘭および真6弔花の雑な絵を見せる。

 

『奴は己の欲望のためには手段を選ばず、真6弔花という恐ろしい部下までいる!!10日後に奴らを倒さねば、過去に帰れぬどころか人類の危機らしい!!』

 

 そこまでまとめた了平は、手に持っていたスケッチブックを頭上へ放り投げ、拳を握る。

 

打倒 白蘭!!!打倒 真6弔花!!!

 

 放り投げられたスケッチブックが了平の椅子の背もたれにぶつかりながら床に落ち、自分なりに話を纏めた了平は呼吸を整える。

 

『…というわけだな』

『え、ええ…た、多分…』

『甘やかすことないっスよ』

 

 了平の迫力にタジタジになっていたツナに代わり、獄寺が話し始める。

 

『てめー、たったこんだけ理解すんのに5()()()もかけてんじゃねぇ!』

オレは二転三転する話は二転目までが限界なのだぁ!!

 

 そう叫び、目の前にあったテーブルを片手で勢いよく押し退ける了平。

 ─そう、5時間だ。了平は5時間もツナ達から説明をしてもらっていたのだ。おかげで、彼らのやり取りをみていたシンフォギア組は疲労の色を見せていた。

 

「ようやく理解しやがったよ…にしても長すぎんだろ!この(バカ)でももっと早く理解できるぞ!」

『自慢することか!!っバーカ!!』

『何だと!?バカと言った奴がバカなのだ!!』

『いいや!バカな奴がバカだね!!』

『まーまー』

 

 今にも殴り合いの喧嘩を始めそうな二人の間に、山本が介入する。

 

『やっと再会できたんじゃねーか!仲良くいこーぜ』

『おめーは安静なんだろーが!すっこんでろ野球バカ!!』

『聞けばセンパイも、過去でオレ達が次々と行方不明になっちまって、心配して日本を5周も捜索してくれたなんて、うれしーじゃねーか!!』

『おかげで身も心も、極限にたくましくなってしまったぞ!!』

 

 そう言いながら、服の袖をめくり、筋肉質な上腕二頭筋を見せつける了平。

 

「てか今さらだけど、日本を5周するとか、こいつも地味に怪物じみてねぇか?」

「「「確かに…」」」

『なーに言ってやがる!妹見つけたとたん、「京子ぉ~っ!!京子ぉ~っ!!」『当然だ!!』』

『宇宙に一人しかいないかけがえのない妹だからな!!』

「うわ…こいつ、堂々とそんなこと言うか…」

「あはは…」

 

 クリスの辛辣な感想に苦笑いしつつも、了平の妹に対する過保護な態度に、実の姉の面影を幻視し少し笑顔を見せるセレナ。

 と、そこで了平がなにかに気づきツナに問いかける。

 

『この恐ろしい話を京子は知っているのか!?』

『いえ…白蘭や今の詳しい状況については言ってません…』

 

 それを聞いた了平は安心したのか、獄寺と言い争いを再開させた。

 

【なんか10年前のお兄さんが来て、みんな明るくなったな…オレが言うのも変だけど…若さってスゴいな…】

「"ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪"…まさに晴の守護者の使命を体現していると言えるな」

 

 なんとか獄寺と了平の喧嘩を止めたツナ達は、気付けば昼飯時になっていたので広間を離れ、途中でフゥ太やランボと合流し台所兼食堂へと向かう。

 

「それにしても─了平さんはともかく、ツナや獄寺さん、山本さんはメローネ基地での戦いから1日しかたってないのに元気そうだね」

「まぁ、ボンゴレ匣を開けるほどの炎がでなかったとこを見るに、気力の面は相当使いきったみてぇだがな」

「それに─ラル・ミルチは戻って早々体調を崩し医療室に、雲雀はどこかへと消え、草壁も彼を追ってアジトを出ていった」

「ラルさんも心配だけど、雲雀さん達も無事か気になるね…」

 

 響達がそんな話をしていると、ツナ達が食堂に辿り着く。そこには既に、クロームを除いた女性陣が集まっていた。

 

『極限にメシだ!!メシメシ!!』

「こいつ、いちいち騒がしいな!」

『あ!』『ツナさん♥️』

『オレ達もそろそろごはんにするよ』

『せっかくのオフが芝生頭(てめー)のせいで潰れるぜ』

『黙らんか!!』

『この後の事で相談があるんだけど─『ふげっ』』

 

 部屋に入ってきて早々、ビアンキがツナに話しかける。すると彼女の顔をみた獄寺が顔色を悪くし、仰向けに倒れた。

 

『獄寺君!』

「そうだ忘れてた!獄寺さん、ビアンキさんの顔を見たら気絶するんだった!」

『ビアンキ、ゴーグルつけて!!』

『ごめんあそばせ』

 

 ツナに注意され、ゴーグルをつけたビアンキは先程の続きを話しだす。

 

『食後に京子(この娘)達、地上散策に連れて行きたいんだけど』

地上(うえ)に!?でも危ないよ…!!』

『あなた達が帰ってきてから、レーダーに怪しいモノは何一つ映ってないわ。きっと10日後まではなにも起こらないと思うわ』

『でも…』

『だったらオレ達もついて行こうぜ!護衛っつーかさ』

 

 一瞬迷ったツナだが、山本の提案を聞き渋々了承。更にフゥ太の提案で、メローネ基地跡で作業を行っている入江とスパナに差し入れを持っていくことになった。

 その後、昼飯を済ませ、いざ地上へ向かおうとしたツナをビアンキが引き止め、獄寺達から離れるようにして廊下の端に連れていく。

 

『なーに?ビアンキ。呼び出したりして』

『あの子達が本当に地上に出たい理由、わかる?『へ?』自分の家に行きたいのよ』

『え!?自分家に?で…でも、今行っても…』

「そうだ…もし、彼女達の親族が既にボンゴレ狩りの餌食となっていたら…」

『ええ…恐ろしい現実が待ってるかもしれないわ…でも、もうひきとめる理由がないのよ!』

 

「だから!」と、ビアンキがツナの肩をつかむ。

 

『しっかりフォローしてあげてね』

『い゛っ!?オ…オレが!?』

『あなた、ボスでしょ!!』

 

 そう言われ、情けないうめき声をあげるツナ。ビアンキは言いたいことを言い終えると、獄寺達が向かった方向へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ワクワクです♪ケーキ屋さんが10年たって、どうチェンジしてるか楽しみですね!』

『新メニュー、増えてるかな!』

 

 地上に上がっていくエレベーターの中で、京子とハルが楽しそうに話す中、ツナは先程のビアンキの話を思いだし、影を落としていた。

 

【ビアンキ、女子のことになると怖いんだよな~…10年経って、さらにアネキぶりに磨きかかってる気がするし…】

「それにスタイルいいし…綺麗で格好いい、女の憧れみたいな人だよ!」

「まぁな」

「自分の愛人だからって、自分のことみたいに自慢げにすんな!」

【…本当は行くの止めるべきなんだろうけど…自分の家に帰りたい気持ち…家族に会いたい気持ちはわかるしな……母さん…父さん】

 

 不安な顔をするツナの脳裏に、彼の両親─奈々と家光の顔が浮かび上がる。そしてツナを経由して、響達の脳内にも二人の顔が浮かび上がってくる。

 

「この方達が、沢田の両親か…」

 

 すると突如、警報が鳴り始めエレベーター内が赤いランプで照らされる。

 

『「何だ!?」』

 

 ツナ達と響達が混乱していると、取り付けられていたスピーカーからジャンニーニの声が聞こえてくる。

 

〔Aハッチにリング反応です!!ミルフィオーレの可能性もあります!!〕

『10代目!!』

『見に行くべきじゃねーか?』

『え!?あ…そうだね…ちょっと行ってくるね!』

 

 獄寺達に促され、ジャンニーニが言っていたAハッチに向かおうとしたツナだったが、ふと、なにかを感じとり振り返ると、京子とハルが心配そうな目で自分達をみていた。

 

『だ…大丈夫だよ!すぐ戻ってくるから…そしたら、行きたい場所へ行こう!』

『ツナさん…』『ツナ君…』

 

 そんな彼女達を励ますためにそう伝えたツナは、二人を残しAハッチに向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この辺りだね』

『間違いありません』

 

 ジャンニーニが言っていたAハッチから外に出たツナ達が周囲を見渡す。すると上空で物音がし、一斉に空を見上げた。そこには─

 

『え─ひっ、人~!?』

 

 彼の言う通り、一人の少年が上空から真っ逆さまに落下してきていたのだ。そしてその人物は、狙うかのようにツナの元へ落ちてくる。

 

『ちょ!どーしよ─』

 

 空から人が落ちてきていることに完全にテンパってしまっていたツナは避けるのが間に合わず─

 

 

 

 

 

 

"ゴンッ"『ぃでっ』『ぐっ』

 

 

 

 

 

 

 落ちてきた少年とツナの頭が激突し、両者とも痛々しいうめきをあげる。そして少年はそのまま地面に落下し、ツナは頭を抱え踞る。

 

『あだー!!』

『沢田!!』『大丈夫かツナ!!』

「うわぁ…今、ゴンッていったよ…痛そー…」

『てめー、何モンだ!!』

 

 了平と山本がツナの元に駆け寄り、獄寺が落ちてきた人物に警戒を示す。するとゆっくりと、少年が起き上がり始めた。

 

『申し訳…ありません…沢田…殿…』

「あれ?今、沢田殿って…」

「おい、こいつ、見覚えあるぞ…!」

『ああ!!き、君は…』

 

 痛そうにしつつも、ぶつかってきた人物の顔を確認したツナが声を上げる。

 少年は、右目が隠れる程に伸びた亜麻色の前髪の奥から、綺麗な碧眼を覗かせつつ身体を起こす。

 

助太刀に参りました!!

『バジル君!!』

「あぁ!ツナが未来に来る前に"死ぬ気丸"を渡した人だ!」

 

 空から落ちてきたのは、ボンゴレファミリー門外顧問組織『CEDEF(チェデフ)』に属する少年─"バジル"こと「バジリコン」だったのだ。

 

『こ…こいつオレ達の知ってる、10年前のバジルっス!!』

『うっ…』

 

 獄寺が自分達の時代のバジルがいることに驚いていると、バジルがうめき声を上げて倒れこんだ。

 

「バジルくん!?」

『おい、大丈夫か!?』

『情けない話ですが…体に力が…』

『何か欲しいの!?水!?』

 

 心配するツナ達にバジルは、弱々しく腕を伸ばしながらこう一言─

 

 

 

 

 

 

『できれば…おむ…すび…を…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バジルと合流して数分後、彼の頼みを叶えるため、彼を連れて食堂へ向かったツナ達。

 そんな彼らの視界には今、空になった多くの皿とテーブルに散らばる複数の調味料、そして手に持ったおにぎりと牛乳瓶を、美味しそうに口に頬張るバジルの姿があった。

 

『バジル君…よく食べるね』

『あいつ、ちっこいくせにマンプクキャラだったんすね…』

「まるで(こいつ)の男版みたいだな」

「ちょっとクリスちゃん!私、こんなに食べないって「確かに、クリスの言う通りだよ」未来!?」

『見ていたら、極限にオレも腹へってきたぞ』

『食ったばっかじゃないっスか!!』

 

 そんな彼の姿を見たツナ達が話している中、バジルは全ての料理を食べ干すと、満足げに一息つき、両手を綺麗に合わせる。

 

『ごちそうさまでした』

 

 そんな彼の姿に、「外人とは思えないほど、礼儀がなっているな」と、一人感心する翼。

 

『とてもおいしかったと、京子殿とハル殿にお伝えください』

『きっとよろこぶよ!』

『それにしても驚きました…本当に、並盛の地下にこんな立派なアジトができていたなんて!』

 

 そんなバジルの言葉を聞いた獄寺が、真剣な顔で問いかける。

 

『お前、10年前から来たのに、このアジトのこと知ってんのか?』

『はい!全てはボンゴレの勅命である死炎印のついた─この「助太刀の書」に記してありましたから』

 

 そう言って取り出された文書(もんしょ)には、縦に「助太刀の書」と確かにそう書かれており、そのタイトルの上には大空の炎が灯っていた。

 

「助太刀の書だぁ?」

『はい。このアジトへのルートと、この時代での戦い方が記されており、いざという時は燃えてなくなる極秘文書(ごくひぶんしょ)です』

「おお…それはなんとも厳重な…」

『拙者、この時代に来たのは10日前で場所はスペインだったのですが…その時、パスポートと匣兵器と共に置いてありました…』

 

 バジルの話を聞いた獄寺が、彼の持っていた匣を軽く眺めると、確かに横に「CEDEF」と刻印されていた。

 

『残念ながら、ここに来るまでに仲間には誰にも会うことはできませんでしが、この書と匣兵器のおかげで、途中で出くわしたミルフィオーレファミリーを何とか撃退できたんです』

『え!バジル君、もうミルフィオーレと戦ってるの?』

『ええ!6回ほど戦闘を』

「たった10日のうちに6度も退けただと!?」

『つまり何者かの指示で、バジルはツナ達とは別のルートで鍛えられ、ここに合流したと考えられるわね』

 

 ツナがバジルの戦績に驚いていると、いつの間にか来ていたビアンキが考えを述べる。なお余談だが、今回はきちんとゴーグルを着けているので先程のような事故は起きていない。

 

『鍛えられるって…メローネ基地でのオレ達みたいに?でも…何のために…?』

『にぶいわね…CEDEFは普段は外部の機関だけど、いざという時にはボンゴレを支える特別機関よ』

『その通りです』

 

 ビアンキの考察を肯定し、助太刀の書を見せながらバジルは告げる。

 

『「助太刀の書」はこう締めくくられていました─若きボンゴレ達と共に白蘭を砕けと!!

『おい…』

『っということはだ!!』

 

 

 

極限に、打倒白蘭の仲間だな!!

 

 

 

『よろしくお願いします!!』

『バジル君強いし、心強いよ!!』

「これは強力な助っ人だな!」

『でも一体、誰がこんな手のこんだこと…』

『そりゃ、この時代の10代目に決まってますよ!!』

『またオレ─?』

【うれしくないんだけど…】

『ツナ、さっきからハルと京子がおまちかねよ?そろそろ地上へ行きましょ』

 

 獄寺の回答にツナのテンションが下がっていると、ビアンキがそう促してくる。どうやらここに来たのはそれを伝えるためだったようだ。

 

『あ…そうだね。よかったらバジル君も一緒に─』

 

「一緒に行かない?」と言いかけたツナだったが、彼が振り向いた直後、バジルは食後の皿が散らかるテーブルに勢いよく倒れ、鼻提灯を作りながら眠りについた。

 

「び、ビックリした~…」

『…電池切れみてーに』

『よほど疲れていたのだな…』

 

 気持ちよく眠るバジルを見たツナは、こんな彼を起こすのは無粋だと考え、最初の面子で地上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレ達は、10年後の京子ちゃんとハルの家の様子を知るために、並盛の地上に出た…

 

「お、また出てきたな」

 

 地上へと上がったツナ達が、獄寺一人、山本と子供ペア、笹川兄妹、そしてハルとツナとビアンキの三人の、計4組に分かれた所で、再びノートが現れ文字を浮かび上がらせていく。

 そんな中、ツナ達がハルの家に辿り着くと、家のシャッターは閉じられていた。

 

 

 

 でも、予想通り家には誰もいなかった…

 近所の人の話だと、少し前にハルの両親は家をあけると言って出ていったらしい

 きっと、身の危険を感じて避難したんだと思う…

 

「─おいちょっと待て。今、どうやって人ん家の鍵開けやがったビアンキ(あいつ)!?」

 

 ノートが閉じ、今度は消えずに残っていたことに響達が目を奪われていると、一人だけ別の光景を見ていたクリスが声を上げる。

 

「え?ハルちゃんから家の鍵を貰ってたんじゃないかな?」

「いいや、あの動きは鍵を開けるとか、そんな動きじゃなかった。一体何を─」

 

 響の考えを否定し、先に入ったツナ達を追いかけるようにしてハルの家に上がろうとしたクリスだったが、三浦宅のドアノブをみた直後、動きを止めた。

 そんなクリスをみた響達が、心配そうに彼女の元に歩みより、そして彼女の視線の先を見て全員動きを止めた。

 視線の先にあったのは─

 

「…これって、桜餅、だよね…?」

「多分…見た目は完全に…」

「だが…煙を出しているな…」

「しかも、金属のドアノブからな…」

「これがポイズンクッキングだ。暗殺に使う以外にも、こんな感じで多様な使い方ができて、色々便利だぞ」

 

 リボーンがそう伝えるが、それは彼女達の耳に入ってこなかった。彼女達はただ、目の前にある毒物─「ポイズンクッキング"溶解桜餅"」に恐れるしかなかった…

 

 

 

 

 

 

『…ハル…大丈夫か?』

 

 ハル(自分)の部屋の中心で、座布団の上に座るハルにツナが心配そうに話しかける。

 なお、玄関でポイズンクッキングを見て思考を停止していた響達だが、あの後誰よりも早く思考を再開させた翼がどうにか全員の意識を引き戻し、ツナ達の後を追ってきていた。

 

『不思議です…ハル…自分の家に戻ったら、もっと泣いちゃうと思ったんです』

「ハルちゃん…」

『でも…10年経ったハルの家は…カーテンも、お布団の柄も、家具の位置も、ぬいぐるみも、本棚の本も変わっていて…この時代の両親が、この時代のハルに置いていってくれた手紙も…なんかよそよそしくて…見てはいけないものをのぞいてる感じです!』

 

 そう言って振り返ったハルは、目元に少し涙を浮かべていた。

 いつもの元気なハルを知っているツナは、そんな今の彼女のギャップに心を動かされ頬を赤くする。

 

『でも、気持ちがスッと楽になりました!ハルが帰る場所はここじゃなくて、10年前の両親の所だってわかったんです。それに、ここに来てわかったんです─この時代のハルも、すごく元気に生きてたって!だから─負けられないって、ファイトがわいてきました!!

 

 元気よくそう答えたハルの瞼にはもう、涙は残っていなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よ!そろったな!!』

 

 ハルの家を後にし、ツナ達が獄寺達と別れた十字路に戻ってくると、他の三組もちょうど同じタイミングで戻ってきた。

 

『獄寺君と山本は自分家いったの?』

山本『オレはチビ達と遊んでた』

獄寺『自分はどうせ引っ越してると思ったんでブラブラと…』

 

 

 

 

 

 

いいかお前ら!!極限だ!!!

 

 

 

 ツナが獄寺達と話していると、やかましい声が割り込んできた。

 

「うるさっ!」

『なに興奮してんだ?』

『お兄ちゃん、家に帰ってからずっとこうで…』

極ゲーン!!!

 

 京子が心配そうにしていることにも気付かず、了平は叫び続ける。

 

『輝かしいこの未来のため!!!()()()()()()()()()()()()!!!

『10代目…よく考えたら、いつも大体こんなんです』

『そ…そお?』

「─え!もしかしてそういう?そういうこと!?」

 

 そんな了平に獄寺が呆れ果てる中、響は了平のハイテンションな理由に気づき、その理由に自然と声のトーンが上がる。

 

「立花、お前は笹川兄が昂っている理由に気づいたのか?」

「はい!というか、私達みたいな年頃の子がよく話のネタにするアレですよ~!」

「???」

『次はどこへ行くのだー!?』

 

 翼が響の話についていけないでいると、了平がそう叫ぶ。

 

『あなた達、他に行きたい所はないの?』

 

 ビアンキにそう問われたツナ達は、皆、ある場所の名を上げた…




次回は多分、翼さん大興奮の回になると思います。

追記:11/10

アンケートを作りました。それと、もし現時点での過去編の長さに不満がある方は、活動報告で読者の方々が削っていいと思っている部分を聞かせてもらいます。いちを期間は両方とも1週間後くらいまでとさせて貰います。

次回の投稿について

  • このまま過去編を続けて!
  • いい加減本編の続き出せや!
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