やっと本編再開です!待ってくださっていた方々には申し訳ありませんでした…
「さて…なんか弁明はあるか?ダメツナ」
「え…えっと、その…」
ライブ会場から帰ってきたツナは現在、自分の部屋にてリボーンの目の前で正座させられていた。
「あの程度で気失うとは情けねぇぞダメツナ。そのくせして響といちゃつく余裕はあるなんてな」
「ちょっ!?あれはいちゃつくとかそんなんじゃ「口答えすんな」アガッ!」
慌てて弁明するツナの顎をリボーンが蹴り上げる。
「これは鍛え方が甘かったみてぇだな…特訓メニューの難易度を上げるとするか。まずは特訓の初めにネッチョリコースを…」
「んなー!?ネッチョリはイヤー!」
リボーンのこぼした単語にツナが悲鳴を上げる。そんな彼を見てため息をこぼしたリボーンは、彼が手を抜いていた本当の理由を聞く。
「オメーの事だ─マリア・カデンツァヴナ・イヴがなんであんなことをしたのか、とでも考えてたんだろ?」
ツナは自分の抱いていた感情を言い当てられ、驚きの表情を浮かべると、すぐに顔に影を落とす。
「うん…セレナから聞いてたマリアさんは、とても優しい人だった…なのにどうしてあんなことを─そ、そういえばセレナは?」
ツナが、帰ってからセレナと一度もあってないことを思いだしリボーンに尋ねると、リボーンはボルサリーノを深くかぶる。
「よほどショックだったんだろーな…マリアが宣戦布告した直後に気を失ってな…」
「だけど安心して♪今はぐっすり眠ってるよ」
「─白蘭!」
ツナとリボーンが話していると、部屋に白蘭が入ってくる。
するとツナは立ち上がり、彼に詰め寄った。
「ユニが言ってた予言ってこの事なのか!?お前、マリアさんがあんなこと起こすって、まさか知ってて黙ってたのか!?」
「だって、しょうがないじゃん?─綱吉クン、秘密にしとくの下手でしょ?「うっ…」どっちみちセレナチャンに知られるのは確定だったんだから、それなら遅い方がいいんじゃないかって♪」
「それでも…!」
「─あれは、物語で言うところのほんの序章さ─だから、僕に構うよりもこれから起こる出来事を気にしたほうがいいんじゃない?」
そう伝えた白蘭は、呼び止めようとするツナを無視して部屋から出ていく。
「これから…起こる事…」
「─そういやツナ。今回の輸送中の輸送後の事件、そしてマリアの宣戦布告…おまえからみてどう思った?」
白蘭の言葉の意味を考えていたツナだったが、そこでリボーンが問いかけてくる。
「ちょ!オレ、今考え事してるんだけど─「いいから答えろ」ひぃっ!」
不満そうな顔を浮かべたツナだったが、リボーンの鋭い視線を受け悲鳴を上げる。
そんな彼を見たリボーンがため息をつきながら視線をそらすと、それを見たツナは安堵したのち、自分の考えを話し始めた。
「輸送車と基地、そしてライブ会場の襲撃─どれもタイミングがよすぎる…状況をよく理解できてる人じゃなきゃやれないはずだ…それらのことから考えたら、俺は─」
ツナの口から告げられた答えを聞いたリボーンは、『ニッ』と笑顔を浮かべる。
「さすがオレの生徒だ。オレと同じ結論に至るとはな」
そう呟いたリボーンは、急に雰囲気を切り替え、一瞬で寝巻きに着替える。
「さて、明日からは特訓が激しくなるぞ。さっさと寝て気力を蓄えろよ」
「ウゲッ!─わ、分かってるよ!」
こうして、一抹の不安を覚えながらも、ツナの一日は終わっていった…
そして次の日─
「おはようございます!」
「お、おはよう…」
ツナがリボーンと共にリビングにおりると、既に家事を始めていたセレナの姿があった。
リボーン達が来てからここ最近は、彼女の横にユニもいることが多いのだが…いないことから考えて、白蘭共々まだ眠っているのだろう。
「おはようだセレナ。調子はどうだ?」
「はい、大丈夫です!昨日は突然倒れてしまいましたが、もう平気です!」
リボーンの挨拶に元気よく答えるセレナ。しかしツナは、彼女の言動が無理をして行っているものだとすぐに感じ取った。
(元気そうにふるまってるけど、やっぱりまだ辛い感じが抜けてない─そりゃそうだよね…自分の家族が、あんなことを始めちゃったんだから…)
「それじゃ、俺たちは特訓にいってくるからな」
「はい!いってらっしゃい!」
リボーンはセレナのことに気づいている上であえて気づいていないふりをすると、彼女を心配するツナと共に特訓に出ていった…
マリアの宣戦布告から一週間がたった。
しかし、彼女の宣戦布告以降、『フィーネ』と名乗る組織からの恣意行動や各国との交渉などもなく、何もないままの日々がすぎていた。
そんななか、響は政府が買い取った、新たな私立リディアン音楽院の校舎で、窓の外を眺めながら物思いにふけている。
(ガングニールのシンフォギアが二つあるんだ…だったら、戦う理由がそれぞれにあっても不思議なことじゃない…)
『私は、困ってる皆を助けたいだけ!だから!』
『それこそが偽善者…!』
彼女はライブ会場で言われた言葉を思い返し、ため息をつく。
(─私が戦う理由…自分の胸に嘘なんてついてないのに…)
「響!響ったら!」
一人考え事をする響に、横にいた未来が小声で呼び掛けるが、全く気付かない。
そんな響の元に、穏やかな表情にも関わらず─禍々しいオーラを纏う人物が近づく。そう─響達のクラスの担当教師だ。
「立花さん?なにか悩みごとでもあるのかしら?」
「はい…とっても大事な…」
「秋ですものね…立花さんにだって、きっと色々思うところがあるんでしょう─例えば私の授業よりも大事な」
それを聞いた響はやっと我に戻り、今が授業中であることを思い出した。
「へ?あれ?」
「新校舎に移転して、三日後に学祭も控えて、誰も皆新しい環境で新しい生活を送っているというのに、あなたときたら相も変わらずいつもいつも!いつもいつもいつもいつもいつも…!」
怒りで震える教師を見て、響はすぐに誤魔化そうとする。
「で、でも先生!こんな私ですが、変わらないでいてほしいといってくれる心強い友達も、案外いてくれたりするわけでして─」
「立花さん!!」
「ヒィ!?」
「…バカ…」
いつものように怒られている響に、未来だけでなくクラスメート達全員が皆呆れ返っていた。
「でね!信じられないのは、それをご飯にザバーっとかけちゃったわけデスよ!絶対におかしいじゃないデスか!そしたらデスよ…?」
その頃、今は廃病院となっている建物の中で、切歌と調はシャワーを浴びていた。すると切歌は調の様子がおかしいことに気づく。
「まだ、あいつのことを…デスか?」
切歌の言うあいつ─それは一週間前、自分達と一戦を交えた装者の一人である響のことだ。
切歌に話しかけられた調の脳裏に、響の言葉が思い起こされる。
『話せば分かり合えるよ!戦う必要なんか…!』
「なんにも背負ってないあいつが─人類を救った英雄だなんて、私は認めたくない…」
「うん…本当にやらなきゃならないことがあるなら、例え悪いと分かっていても、背負わなきゃならないものが─」
「っ!」
突如、調が目の前の壁を殴りつけた。
「困っている人たちを助けるというのなら、どうして…!」
そう言って歯を噛み締める調。
そんな調を見た切歌は、彼女の手をそっと握ると静かに絡ませ、互いに身を寄せ合う…
そんな百合百合しい空間が広がっていたシャワー室に、今度はマリアが入室し、彼女もシャワーを浴び始めた。
「それでも私たちは、私たちの正義とよろしくやっていくしかない…迷って振り返ったりする時間なんてもう、残されていないのだから…」
「マリア…」
どうやらマリアは、切歌達の話を外で聞いていたようだ。
(それにしても彼…戦っている間、ずっと眉間にシワを寄せていたわね…まるで、私と戦うのが辛いかのような─)
マリアがシャワーを浴びながら、先日戦ったツナのことを思い出す。すると突如、いきなり警報がなり始め、建物内の防衛システムが起動した。
制御室では、ナスターシャがモニターに写し出された禍々しい生物─否、自立型完全聖遺物であるネフィリムを眺めていた。
(あれこそが伝承にも描かれし、共食いすら厭わぬ飢餓衝動…やはりネフィリムとは、人の身に過ぎた─)
「人の身に過ぎた、先史文明期の遺産─とかなんとか思わないで下さいよ?」
そこへ白衣を着た男が、部屋の中に入ってくる。
「Dr.─…」
「例え人の身に過ぎていても、英雄たるものの身の丈に合っていれば、それでいいじゃないですか」
「マム!さっきの警報は─!!」
そこで、先ほどまでシャワーを浴びていた三人が部屋に駆け込んできた。
白衣の男は、先頭にいたマリアに視線を向ける。
「次の花は未だ蕾ゆえ、大切に扱いたいものです」
「心配してくれたのね…でも大丈夫。ネフィリムが少し暴れただけ…隔壁を下ろして食事を与えているから、直に収まるはず…」
ナスターシャが話した直後、彼女の話を否定するかのごとく、振動がマリア達がいる部屋に響く。
「マム!」
「対応処置はすんでいるので大丈夫です」
「それよりも、そろそろ視察の時間では?」
ネフィリムの起こす振動が響くなか、男がナスターシャにそう問いかける。
「フロンティアは計画遂行のもう一つの要─起動に先だって、その視察を怠るわけにはいきませんが…」
「こちらの心配は無用…留守番がてらに、ネフィリムの食糧調達の算段でもしておきますよ」
「では、調と切歌を護衛につけましょう」
「こちらに荒事の予定はないから平気です。むしろそちらに戦力を集中させるべきでは?」
二人の間で、互いの手の読みあいが行われる。そして─先に折れたのはナスターシャの方だった。
「─分かりました…予定時刻には帰還します─あとはよろしくお願いします」
そう伝え、ナスターシャが三人をつれて部屋を出ようとしたところで、男が思い出したように話し始める。
「そういえば…いい忘れていましたが、政府が隠していると思われるシンフォギア以外の─ノイズを倒すことのできる力をもつ少年についてですが…彼、少し厄介な敵かもしれませんよ?」
「どういうことですか?」
彼の言葉を聞いたナスターシャが動きを止め振り返る。
「知っての通り、私はライブ会場での戦いをこっそり見ていたのですが─実は彼、最後の最後で私の視線に気づいたんですよ。それも、かなりの距離が離れているというのにです…そのことから、彼は感覚─もしくは直感がよほど優れているのではないかと思われます」
男が科学者らしい意見を真剣な表情で伝える。彼を知るものからすれば、そんな顔を浮かべるのはとても珍しいことだと分かるだろう。
だからこそ、ナスターシャ達は彼の話を真剣に聞いていた。
「─確かにそれは、気になるところではありますね…彼の力に関する情報は政府から一切公開されておりませんから…」
「ええ…私が知っているのも、炎を使って戦うこと─そして、彼の名前が沢田綱吉ということぐらいですから」
「沢田…綱吉…」
「名前が分かっただけでも僥倖です。こちらでもできるだけ調べておきましょう」
そういってナスターシャ達は部屋を出ていく。
(さて…蒔いたエサに獲物はかかってくれるでしょうか…)
男はナスターシャ達の背中を見送ると、眼鏡を怪しく光らせ、画面に映るネフィリムに目を移した…
「ハァ…ハァ…!」
夕日が照らすリディアンの廊下を、一人の少女が駆け抜ける。そんな彼女が角を曲がると─向かい側からきていた誰かとぶつかり、両者共に尻餅をついた。
「わき見しつつ廊下を駆け抜けるとは、あまり感心できないな…」
ぶつかられた女性─風鳴翼がぶつかってきた相手を確認すると─
「イッツツ…」
「雪音?何をそんなに慌てて」
そう…廊下を走っていた少女は─リディアンの制服を着た雪音クリスだったのだ。
相手に気付いた翼が驚いていると、クリスは慌てた顔で立ち上がる。
「奴らが─奴らに追われてるんだ!もうすぐそこにまで…!」
「何!?」
すると、すぐに足音が聞こえてきた。
クリスは壁に引っ付いて隠れ、翼が足音の主を確認する。だが、走っていったのは同じ学校の生徒だった。
「特に不審な輩など見当たらないようだが…?」
「そうか…うまくまけたみたいだな…」
安堵の声をこぼし、壁からはなれるクリス。
「奴らとは、いったい…?」
「あぁ…なんやかんやと理由をつけて、あたしを学校行事に巻き込もうと一生懸命なクラスの連中だ」
クリスが逃げていた相手を翼に伝えていると、遠くでクリスの名前を呼ぶ声が聞こえる。
「フィーネを名乗る謎の武装集団も現れたんだぞ?あたしらにそんな暇は─って、そっちこそなにやってんだ?」
呆れ顔で話していたクリスだったが、翼の持っているダンボールを見て首をかしげる。
「見ての通り、雪音が巻き込まれかけている学校行事の準備だ」
翼はぶつかった際に落とした道具を拾いながら説明する。
現在リディアンでは、開催があと三日に迫っている『秋桜祭』と呼ばれる学祭の準備が行われていた。
その学祭は、共同作業による連帯感や、共通の想い出を作り上げる事で、生徒たちが懐く新生活の戸惑いや不安を解消することを目的に企画されている。
閑話休題
「それでは、雪音にも手伝ってもらおうかな」
道具を拾い終わった翼が、クリスに急な提案をした。
「なんでだ!?」
「戻ったところでどうせ巻き込まれるのだ…ならば少しぐらい付き合ってくれてもいいだろう」
困惑するクリスに翼はそう言うと、自分のクラスに向かって歩いていく。
そんな彼女を見たクリスは、不満げな顔をしつつもついていくのだった。
「まだこの生活に馴染めないのか?」
「まるで馴染んでないやつに言われたかないね」
翼のクラスにて、学祭に使う紙の花─一般的にペーパーポンポンと呼ばれるものを作りながら雑談を始める二人。
「フッ…確かにそうだ。しかしだな、雪音─」
「あ、翼さん!いたいた!」
「材料取りに行ったまま帰ってこないから、皆で探してたんだよ?」
すると教室のドアが開き、翼のクラスメートの三人が入ってきた。
「でも心配して損した!いつの間にか可愛い下級生連れ込んでるし」
「皆、先に帰ったとばかり…」
「だって翼さん、学祭の準備が遅れてるの自分のせいだと思ってそうだし」
「だから私達で手伝おって!」
「私を、手伝って…?」
自分を心配するものがいたことに驚く翼。
「案外人気者じゃねぇか」
そんな彼女を見たクリスが茶化してくる。
「でも昔は、ちょっと近寄りがたかったのも事実かな?」
「そうそう!孤高の歌姫っていえば聞こえはいいけれどね」
「初めはなんか、私達の知らない世界の住人みたいだった」
「そりゃあ芸能人でトップアーティストだもん!」
「でもね!」「うん!」
「おもいきって話しかけてみたら、私達と同じなんだってよく分かった!」
「皆…」
クラスメート達の話を聞き、嬉しそうな表情を浮かべる翼。
「特に最近は、そう思うよ」
「─ハァ…チェッ!うまくやってらぁ」
そんな彼女達の会話を聞いていたクリスが、わざとらしくそっぽを向く。
「面目ない…気にさわったか?」
「さぁてね─だけどあたしも、もうちょっとだけ頑張ってみよっかな…」
気を悪くさせたのかとクリスを心配した翼だったが、彼女の最後の言葉を聞き安堵の表情を浮かべる。
「そうか…」
「もう一頑張りと行きますか!」「うん!」
「よし!さっさと片付けちゃお!」
クラスメート三人がそう言うと、5人でペースを上げて作り出した…
そしてその日の夜…
『いいか!今夜中に終わらせるつもりで行くぞ!』
通信機から弦十郎の声が響く。
場所は浜崎病院─ツナ達は、緒川が入手した情報をもとに、敵のアジトと思われる建物へ突撃しようとしていた。
『明日も学校があるのに…夜間の出動を強いてしまい、すみません…』
「気にしないで下さい。これが私達、防人のつとめです!」
「正直、俺はもう帰って休みたいんですけど…」
真剣な顔で答える翼の横で、疲れた顔をするツナ。
そんな彼の言葉を聞いたリボーンが、通信越しに話しかけてくる。
『なーに弱音を吐いてやがる。防人の務めもはたせねぇようじゃ、立派なボスになんてなれねぇぞ』
「いや、防人とボスは関係ないだろ!それに俺はマフィアのボスにはならないって─『ちなみに、明日いつもの時間に起きれなかったら、次の休日はミッチリネッチョリ漬けだからな』んなー!?ネッチョリはイヤー!」
「仲良し漫才は後でにしろ!?」
いつものやり取りを始めた二人をクリスがとがめる。
なお、『ネッチョリ』という単語が響いたのか、今のやり取りでツナの疲れは彼方へと消え去っている。
「街のすぐ外れに、あの子達が潜んでいたなんて…」
『ここは、ずっと昔に閉鎖された病院なのですが、二ヶ月前から少しずつ、物資が搬入されているみたいなんです…ただ、現段階ではこれ以上の情報が得られず、痛し痒しではあるのですが…』
「尻尾が出てないのなら、こちらから引きずり出してやるまでだ!」
緒川の話を聞いたクリスが病院に向かい走りだし、そのあとを三人が追う。
「おもてなしといきましょう…」
その様子をモニタリングしていた男が、PCを操作する。すると、病院の通路に赤い煙が溢れ始めた。
(なんだ、この煙…?)
「やっぱり、元病院てのは雰囲気だしてますよね…」
病院内に突入し、物陰に隠れながら移動していたツナ達。その道中、誰よりも早く煙に気付いたツナの横で、周りを見渡した響がそんなことを呟く。
「なんだ?びびってるのか?」
「そうじゃないけど…なんだか空気が重いような気がして…」
「─以外に早い出迎えだぞ」
翼が確認していた方向を見ると、奥から大量のノイズが向かってきていた。
《Balwisyall Nescell gungnir tron…》
《Imyuteus amenohabakiri tron…》
《Killiter Ichaival tron…》
装者達は聖詠を歌ってシンフォギアを纏い、ツナは死ぬ気丸を飲んでハイパーモードになる。
「挨拶無用のガトリング ゴミ箱行きへのデスパーリィー」
『BILLION MAIDEN』
最初に仕掛けたのはクリス。
彼女が二丁のガトリングを乱射させると、ノイズは容易く灰と化していく。
「やっぱり、このノイズは…!」
「ああ、間違いなく制御されている!」
「One,Two,Three 消え失せろ」
「立花、沢田!雪音をカバーだ!懐に潜り込ませないように立ち回れ!」
「はい!」「ああ!」
翼の指示に従い、四人はそれぞれに分かれてノイズを倒していく。
「イ・イ・子・は・ネンネしていなッ!!」
いつものように順調に倒しているように見えたが、途中で異変が起こり始めた。
ツナの方がいつも通り順調に倒しているのに対し、装者達三人の方は、攻撃を与えるとノイズ達は一瞬炭化するものの、すぐに再生していくのだ。
「ハァ!」
『蒼ノ一閃』
翼のエネルギー刃がノイズを切り裂くが、ノイズは再生し響達に近づいてくる。
「なんで、こんなに手間取るんだ…!?」
「─ギアの出力が落ちている…!?」
周囲を囲まれ、一ヶ所に集められた響達はやっと、自分達の異常に気付きはじめる。
「大丈夫か!」
すると、ノイズ達の頭上を通ってツナが響達のもとに飛んで来た。
「ハァ!」
ツナが響達に攻撃を仕掛けようとしていたノイズを殴ると、ノイズは炭化し消滅していく。
「なんで、おまえだけいつも通りなんだよ…!」
「─恐らく、さっきから通路に流れてる赤い煙が原因だろうな…どういう理論なのかは分からないが、この煙が響達のフォニックゲイン値を─っ!!」
自分の考えをのべていたツナは、奥から何かが迫ってきていることを超直感で気付き、響達に襲いかかる直前に殴り飛ばす。
しかし、闇から出てきた物体は、そのまま消滅せず地面に着地した。
(あれは…まさか!?)
「死ぬ気の炎で迎撃したんだぞ!?」
「なのになぜ炭素と砕けない!」
「まさか、ノイズじゃない…?」
「じゃあ、あの化け物はなんだっていうんだ!」
響達は、ツナが殴ったのに消滅しないこと─そしてツナは、自分が殴り飛ばした生物の正体に驚きを隠せない。
すると奥から、拍手が聞こえてくる。それに気付いた四人が奥の方に目を凝らすと、白衣を纏い眼鏡をかけた、彼女達も見覚えのある男性の姿があった。その正体は─
「ウェル博士!?」
─行方不明となっていた筈のウェル博士だった。そして彼の手には、紛失していた筈のソロモンの杖が…
装者達の視線がウェルに集中しているなか、ツナはウェルが持ってきた小型の檻にゆっくりと入っていくネフィリムをじっと見つめる。
「以外に聡いじゃないですか」
「そんな!博士は、岩国基地が襲われたときに…!」
「つまり、ノイズの襲撃は全部…!」
翼が睨み付けるなか、ウェルは飄々とした面持ちで語り始める。
「明かしてしまえば、単純な仕掛けです…「搬送時の襲撃の時点で、すでにソロモンの杖はケースの中から取り出され、おまえが隠し持っていた」ほぅ…」
「最初の襲撃…あれは、おまえの自作自演だった─違うか?」
ウェルの話を遮って、ツナが自分の予想を語ると、ウェルは再び拍手を送る。
「いえいえ、見事に大正解です。やはりあなたは、
ツナに不気味な笑みを見せるウェル博士。
「バビロニアの宝物庫よりノイズを呼び出し制御することを可能にするなど、この杖をおいて他にありません」
ウェルはそう言いながら、さらにノイズを呼び出した。
「そしてこの杖の所有者は、今や自分こそがふさわしい!そう思いませんか!」
「思うかよ!」
そうクリスが反論すると、ウェルは杖を使ってノイズ達を響達に近づかせる。
それをみたクリスが、ミサイルを展開し始めた。
そんな彼女をみて、ツナが止めようとする。
「待て、今の状態で技を使ったら─!」
しかし、クリスはツナの制止をふりきりミサイルを放ち、ノイズを通路ごと爆破する…が、フォニックゲイン値が低いことによるバックファイアがクリスの体を蝕む。
「クリス!」「雪音!」
全身を襲った激痛に倒れかけたクリスを、ツナと翼が左右に寄り添い支える。
「無茶をして…」
「っせえな…くそっ!なんでこっちがズタボロなんだよ…っ」
(この状況で出力の大きい技を使えば、最悪の場合─そのバックファイアで、身に纏ったシンフォギアに殺されかねない…!)
「あれは!」
翼が自分達の現状に悔やんでいると、響が上空を指差す。
声に反応した三人が上を見上げると、小型空輸型のノイズが、先程ネフィリムが入っていった檻を持ってどこかに向かっていた。
(さて…身軽になったところで、もう少しデータを取りたいところだけれど…)
そう考えながら振り向いたウェルは、身構えている響をみて両手をあげて降参の意を示す。
「立花!その男の確保を!沢田は雪音のことを頼む!」
「翼!」
そんななか、今度は翼がツナの制止を振り切り、小型空輸型を追いかける。
(天羽々斬の機動性なら…!)
翼が徐々にノイズとの距離を近づけていくが、相手は遥か上空。ただ飛び上がるだけでは届かない距離だ。そこへ、本部からの通信が入る。
『そのまま飛べ、翼!』
(飛ぶ…!?)
『海に向かって飛んでください!どんな時でもあなたは─!』
「幾千、幾万、幾億の命 すべてを握りしめ振り翳す」
翼は弦十郎達の言葉に困惑しながらも、言われた通り崩壊した道路の先端から海へ向けて飛び上がり、両脚部のブレードのバーニアで近づこうとする。
しかし先程の煙の効果が残っているのか、すぐに不調を起こし海に落下していく。
すると、翼が落下していく先で、巨大な潜水艦─二課の仮設本部が浮上し、翼の足場としての役目をはたした。
翼は弦十郎達が作り出した足場を使いノイズに急接近すると、すぐさま切り刻む。
そして落下しながら、ネフィリムの入ったケースを回収しようとした─その直後、上空から一振りの槍がネフィリムから距離を離すように翼を吹き飛ばした。
「翼さん!」
「あの槍…マリアか…!」
槍の主─マリアは、水面に渦をまかせながら、空中で浮遊するアームドギアの柄に立つと、ネフィリムを回収する。
そんな彼女の背を、水面から顔を出した朝日が照らす。
「時間通りですよ─『フィーネ』」
「フィーネだと…!?」
「終わりを意味する名は、我々組織の象徴であり─彼女の二つ名でもある」
「まさか…じゃあ、あの人が…!」
「新たに目覚めし、再誕したフィーネです!」
それを聞いた三人がマリアを見つめる。
太陽に照らされるアリアの姿は、神々しく見えた…
んー…一回自分で内容を見返してみた結果、タグにご都合主義と処女作も追加した方がいい気がしてきました。
何とか原作のキャラクター性を出そうと頑張ってますが、やっぱり難しい…