バフデバフ   作:ボリビア

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おひさしぶりです。
本誌の動きが活発ですね。

番外編は1話より前に移動しました


呉越同舟3

 虎杖達は混乱の最中であった。

 終わりのない殺しの中で突如として現れた虎杖の兄を名乗る受肉した呪霊である腸相は虎杖が五体満足である事に安心した笑みを浮かべていた。

 

「アンタ東堂の他に兄弟いたの!?」

 

(虎杖は特殊な体だし、ありえる…?

 なら最悪、コイツを使って共鳴りを当てれるか!?)

 

 釘崎は最悪の手段として虎杖を介して腸相に共鳴りが当たる可能性を検討していた。

 

「居ねーよ!

 てかさっき殺されかけたよ!!

 後、東堂も他人だけども!?」

 

(俺の周りにこんなのばっか!!)

 

「巫山戯てる場合か!

 受肉した呪霊だぞコイツ!」

 

(十中八九高専から盗まれた、受胎九相図の一人…!

 仲間を二人祓われた事への報復か!?

 なら何で虎杖を兄弟扱いする…?

 訳わかんねぇぞ…!)

 

 三人の中で伏黒が最も混乱しており、釘崎が最も良い線の推理をしていた。

 

「安心しろ、いまお前達は俺の血で守られている。」

 

(いつの間に…!)

 

 腸相の言葉で三人は周囲に浮いている無数の棘に気付いた。

 三人を中心に海に浮かぶ機雷のように360度展開された血の棘は全て外側、即ち真人に向けられていた。

 

「俺の血は全て人間にとって猛毒、受肉した真人の弱点の一つだ。」

 

「普通の人間にとってもだろ…。」

 

「そうだな、だがお前達が悠仁の友達であるならば俺が攻撃する理由は無い。」

 

「いや、俺一人っ子だし。」

 

 三人を混乱に突き落とした最大の疑問点。

 受肉した特級呪霊である腸相が自称する虎杖悠仁の兄を自称するという事態だ。

 

「それは違うぞ悠仁。

 思い出せ、お前の父親か母親の額に縫い目があった筈だ。」

 

「いや、そういう話はじーちゃんとしたこと無いから分かんねーって。」

 

 虎杖の両親は物心付く前に他界しており、本人のさっぱりとした性格もあって執着もなく育ててくれた祖父から話を振られても興味を示したことがない。

 故に全く分からなかったが。

 

「…でも、なとんなくお前の言いたい事は分からないでもない。」

 

 呪術師になって色んな事を経験した虎杖は最近、自分の異常性に疑問を持つことはあった。

 呪力や天与呪縛と関係ない異常な身体能力や宿儺の器という特性。

 前者については『誰かを助けれるなら問題ない』として前向きには捉えていた。

 宿儺の器という特性も『処分できないゴミを纏めて処分する手段』であるとポジティブに考えていた。

 だが、その特性が何故自分に有るのかは偶に気になっていたが五条先生に聞いたが。

 

『さあね!

 いいじゃん、別に!

 才能だよ才能!』

 

 家入先生に聞いた時は。

 

『バラバラにしたら分かるかもしれないからやって良い?』

 

 とメスを構えられたので逃げ出した。

 

(ちょっとは爺ちゃんに話を聞いたほうが良かったかもな。)

 

 と思うときもあった。

 故に、目の前の受胎九相図の呪肉体の言葉に対して否定できない部分が心の中で目立っていた。

 

「…とりあえず、敵じゃないなら先ずはこの状況から抜け出すのに協力しろ。」

 

 伏黒は虎杖の否定しきれない態度を見て、腸相への警戒を後回しにした。

 

 

 一方その頃、轟は比較的近くに居たパンダと日下部と合流していた。

 

「よし、二人…いや四人か?

 魂は無事か。」

 

「お、おう大丈夫だけどお前は大丈夫なのか?」

 

 二人との合流の際に空から降ってきた轟は周囲一帯に無下限を展開し真人を圧殺、生き残った真人達も轟を見るやいなや退散し一時的な安全地帯となっていた。

 

「やっぱり触れたらアウトな感じか。

 …轟、その目になってるって事は五条の封印はダメそうか?」

 

 日下部は術式を持たずに一級術師に成り上がった強者であり、術式を持たない点を補う為、比較的呪術師として安全圏であろう教職という立場を失わない為に学んでいた。その培われた呪術に関する知識により、相対した真人の状態から『魂の汚染』という仮説を立てて全て斬り殺し対処しており、一方パンダはその特異性と肉体と魂が直接結びつかない綿であるため難を逃れてはいたがボロボロであった。

 

「やっぱり日下部先生も聞いてんだ?

 取り敢えず五条先生は後回しで今はウジ虫の処理でしょ。

 向こうの親玉も今の真人は処分したいみたいで帳の縛りが変更されてるし。」

 

「おい待て、降ろした帳の条件を変えるって天元様クラスの結界術じゃないかそれ…?」

 

 さらりと轟から持ち込まれた情報で日下部のやる気が下がった。

 一度降ろした帳の条件を変更する怪物的技量の呪詛師という事実は無視できるモノではない。

 

「取り敢えず帳の条件が変わったお陰で術師も外に出れるみたいだし、日下部先生とパンダ先輩は取り敢えず結界の外で五条先生の手筈通りに夜蛾学長と合流して政治の話をして下さい。

 禪院家の家長の身柄は抑えてる筈なので。」

 

「…まてお前どうやって結界の外に出すつもりだ。」

 

 テキパキと二人を中心に血を触媒にした円陣が轟によって出来上がっていく。

 

「日下部先生なら五条先生のパンチ知ってるでしょ?

 ほら無下限パチンコ。」

 

 原理はシンプル。

 対象の周りに中和する無限、前方に収縮する無限、後方に発散する無限を置いて対象を打ち出す。

 円陣は対象が二人かつ術師自身以外を送る事に不慣れな轟が五条悟から教わった補助的な術技である。

 

「うーん、この方角なら行けるかな。」

 

「おい、待て待て待て!!

 そのふわっとした自信の無さは何だ!?

 自力で外に出るから放せ!?」

 

「いやー、まだ馴染みきれてないんですよねー。」

 

「おい片目から夥しい血が流れてるぞ!?

 日下部の言う通り辞めようぜ!?

 頑張って走るから!」

 

 既に対象を保護するための無限は発動しており、日下部とパンダはどれだけ騒ごうと外には出れない。

 轟も他者のみを更に複数を送り出す事は始めてであり、持ち前の術式ではなく適応しきれてない無下限術式を使うのはちょっと不安ではあった。

 

「今は1秒でも惜しいんで、着地は任せました!」

 

「おまっ」

 

 最期に何かを言うことなくパンダと日下部は帳の外へと送られた。

 

「さーて、後は棘先輩と1年生かな。

 冥冥はとっくに逃げてそうだし。

 …あー、ヤバいな。」

 

 未だに出血の止まらない左目は遠くの狗巻棘の周囲の魂が真人に染まっていく所を捉えていた。

 魂が順々と染まっているが人影自体の動きはなく、おそらく狗巻棘に悟られずに奇襲しようとしている。

 

(なるほど、襲わずに魂を染め上げてから一気にやる算段か。

 …狙撃の方が早いか。)

 

『虚式 茈』

 

 架空の質量は狗巻棘の周囲の真人に成りかかった人間を空間ごと抉り取った。

 その中にはまだ染まってない一般人も含まれていた。

 

「……。」

 

「悪いね先輩。

 弁明は後でするよ。」

 

 守るべき一般人が一瞬で殺された事実とそれを実行した身内に対して唖然とする狗巻棘の元に飛んだ轟悟は打ち漏らしを殺しながら流れ作業で狗巻棘をパンダ達と同じように外へと送ると渋谷の街を飛んだ。

 残穢や匂いを頼りに三人の元へと駆けていく

 

「よし、後は三人だけ。

 虎杖と釘崎が居るから、真人への対処は出来てるだろけど…。

 何で受肉した呪霊と共闘してるんだ?」

 

 轟の目に入ったのは1年生三人と受肉した呪霊と思わしき存在が連携している姿であった。

 

 

 




狗巻目線からしたら、保護した一般人を丸ごと殺したような感じですね。
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