デビルサマナー葛葉ライドウ 対 天穂のサクナヒメ   作:カール・ロビンソン

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第漆章『深淵の最終決戦』・中

 空を駆け、やって来たりまするは、かつて訪れた最終決戦の地。ヒノエ島の季節が十度も廻らぬ内に、またここにやってくることになろうとは、サクナヒメも想像もしなかったことにございます。

 目の前にある大瀑布。その深淵には、古き創世樹の遺骸が横たわっておる。その更に更に深淵に、悪神オオミズチめは潜んでおった。此度もまたきゃつと相まみえることになるのか。平和な世を予言し、眠りについたあやつめは、次はどんな怨嗟を吐いて現れるのか、想像もつかぬ。

 しかし、あの悍ましい疫神の力を得た奴が、創世樹の遺骸を取り込めば、もはやヤナトはおしまいでございます。何としても、再び倒さねばならぬ。

 

 サクナヒメはライドウの顔を見る。そこに怖気の色はなし。全ては大和とヤナトを守るため。偉大なる英雄ライドウが、巨悪に恐れをなし、使命を放り出すことなどないのだ。流石、我が見込んだ武士よ! サクナヒメは、ふと微笑むと、迷いなく瀑布に身を躍らせたのです。そして、ライドウもまたそれに続くのでございます。

 

 そして、辿り着きます倒れし大樹の幹。石とも土とも違う硬質な足場に、足を滑らせぬように気を付けて、しかし、可能な限り速く英雄と女神は突き進んでまいります。

 

 その行く手を阻むは、無数の鬼共。兎鬼、豚鬼、鹿鬼、猪鬼等々の今まで見た幾多の鬼の面々が雁首揃えて、ライドウ達を待ち構えておるのです。

 その中には、それぞれの鬼を率いる大将格もおるではないか。なんと大きな体躯よ! 普通の鬼の一回り、いや二回りは大きい! まるで、ライドウが子供のようではないか!!

 豚鬼大将・赤銅。雉鬼大将・白風。鼈鬼大将・黄爪。猪鬼大将・紫紺呪。熊鬼大将・黄金腕。蜆鬼大将・鉄殻。鹿鬼大将・玄影。貉鬼大将・苔衣。奴らは自らの軍勢を率い、ライドウとサクナヒメに決戦を挑んで参ったのです。

 

 よろしい。ならば受けて立とうぞ、と前に進み出るライドウ。お前たちが鬼の軍勢であれば、我は悪魔の軍勢を率いる身。いざ、尋常に勝負也!!

 

 懐に入れた両手を抜き放つライドウ。その手には、それぞれの指に挟まれたる管が8本。両手を交差し、気合を入れたれば、いざ渾身の悪魔召喚だ!

 我が身に満ちたるマグネタイトを開放し、祝詞を唱えるライドウ。ココロワヒメより預かったこの力。いざここが使いどころぞ!

 我らを送り出した美しい女神の想いに応え、祝詞を完成させるライドウ。顔を上げ、鬼の軍勢を睨みつけたれば、八本の管からマグネタイトが乱れ舞い、それぞれが螺旋となって宙を舞う。おお、なんというイルミネーション!! この世のものとは思えぬ美しい光景は、やがて悪魔の宴に変わるのでございます。

 

 やがて、姿を現したる8体の悪魔。それは一気に前に出て、同じく突撃して来たる鬼の軍勢と真っ向からぶつかるのです。その戦力差8対8000!! しかし、それぞれが一騎当千の精鋭なれば、何も畏れることはなし!!

 

 その顎より吐き出されし紅蓮の炎は、無数の鬼諸共に辺り一面を火の海に変える! 豚鬼の大将を爪の一撃で吹き飛ばしたる白き獣! 牡牛以上の体躯を誇る獅子にも似たるその姿!! 希臘の神話に語られし、冥府の番犬ケルベロス!!!

 

 手にした氷の刃で鬼共を切り裂けば、凍り舞う血はまさに乱れ雪月花! 逆巻く吹雪のように戦場を舞い、雉鬼大将めを地に落とす白き貴公子!! その尊し御姿は出雲が国津神の宗主、大国主命!!!

 

 寄せ来る亀の鬼共の甲羅さえも嚙み砕く龍牙! 天に轟く咆哮が雷を呼び、鼈鬼共を大将ごと消し炭に変えたる金色の龍!! 四神の、そして瑞獣の王たる黄龍!!!

 

 太刀を片手に空を舞い、風の刃で鬼共を得蹴散らせば、かつて英雄義経に伝授したる秘技八艘飛び! 鬼を睨みて法螺貝を一吹きすれば、忽ち起こった竜巻が、猪鬼大将めを吹き飛ばす!! 剣技と兵法の奥義を英雄に授ける、鞍馬山の大天狗こと鞍馬山僧正坊!!!

 

 一度その手の羽々斬の太刀を振るえば、寄せ来る鬼共は忽ち血煙と消し飛ぶ! その山をも抜く剛力を叩きつけたれば、熊鬼大将めは見事満塁ホームラン!! 天津の破天荒にして、蛇神退治の荒神、建速須佐之男命!!!

 

 妖艶たるその御姿を前に、忽ち鬼共は理性をなくし同士討ち! 地獄の刃たる朽ち縄の牙が、鋼より硬い蜆鬼大将の外殻を引き裂き平らげる!! 始祖の女性にして、地獄に住まう魔界の王妃リリス!!!

 

 天にて冷たき微笑みを浮かべたれば、その手より放たれる紫紺の波動メギドラオン! 繰り出される魔術の数々は、瞬く間に鹿鬼大将とその軍勢を、凍てつかせ、焼き払い、打ち砕く!! 妖精の女王にして、大いなる月の女神ティターニア!!!

 

 無数の鬼共に囲まれし、幼き金色の髪の少女の姿! 侮った愚かな鬼共は、死んでくれる? の囁き一つで、空間ごと暗黒次元に真っ逆さま!! 二体の魔王を従えし、底知れぬ呪力を持つ魔人アリス!!!

 

 嗚呼、見事也一騎当千の豪の者たちよ! 寄せ来る鬼共を、千切っては投げ千切っては投げの快進撃!! もはや、戦局は我が方に傾きたり!!! 

 強靭! 無敵!! 最強!!! ライドウ軍団よ! 全速前進だ!!

 

『行け、ライドウ! 仲魔の指揮は吾輩に任せろ!!』

 

 ライドウの肩より降りたゴウトが言う。彼とて、元はデビルサマナー。仲魔を率いるのはお手の物。

 

「お任せしました、ゴウト殿! おひいさま、いざ!!」

 

「うむ! 行くぞ、爺! ライドウ!」

 

「はっ!」

 

 タマ爺の檄を受け、駆けるサクナヒメとライドウ! もはや、その行く手を阻むものはなし! ただ、ひたすらに無人の野を行くが如し!!

 

 そして、ついに! ついに見えて参ったオオミズチの岩戸! 躊躇うことなく、入り口をひた走り抜け、ついにはオオミズチの眠る深淵に至ったのでございます!! 目の前には、紫紺の大海が広がり、天は重々しい黒雲に包まれております!! おお、ここは本当に奈落の底であるのだろうか!?

 

 すると、どうであろう! 淵よりぬっ、と大蛇が姿を現すではないか! それはまさに天を衝く槍の如し! サクナヒメはおろか、ライドウさえ一呑みに出来る程の大朽ち縄ではないか! 

 気後れすることなく、武器を構えるライドウとサクナヒメ。すると、右手にもう一本の首が現れ、最後の大顎が正面に現れるのでございます!!

 おお! 何という猛々しくも悍ましい邪悪!! ヤナトの都を、ヒノエの島を大いに恐れさせた悪神オオミズチがいざ轟臨したのでございます!!

 

 だが、その姿を見たライドウとサクナヒメは、大いに驚くのでございます! 以前は硬き鱗に覆われた龍であったオオミズチ。だが、その身体は所々が欠け、筋肉や骨が剥き出しになっておるではないか!! 2つの首の片目は零れ落ち、正面の大首には眼球さえありませぬ!! そして、漂う腐臭が鼻を蝕み、吐き気さえ催す有様。むむ! 腐っておる! 早すぎたのだ!! サクナヒメに討たれた悪神の肉体は、不完全な復活を遂げただけなのだ!!

 

「ミタサレヌゥ…ミタサレヌゥ…」

 

 そして、吐き出されたるは悍ましき怨恨。嗚呼、そこには両親の敵であるオオミズチはおらなんだ。ただ、半ば躯となったその身体を、怨念に操られるだけの屍龍がおるだけであった。

 

「…よもや、其方に哀れみを覚えることになるとはのぅ…」

 

 苦笑交じりに呟く、サクナヒメ。両親の敵である宿敵も、こうなってしまえば哀れなもの。嗚呼、オオミズチよ! 今我が楽にしてやろう!! サクナヒメは鍬を突き付け、そして猛き音声を放たれるのです!!

 

「弔われることさえない、哀れなる亡霊よ! その怨念、我らがここで断つ! このサクナヒメ、そして葛葉ライドウ! ヤナトの神、大和の侍にして、ヒノエの民である!!」

 

 そして、武器を鍬を構えるサクナヒメ。刀を構えるライドウ。その表情に一片の憂いもなし! 大いなる怨霊よ! 世を滅ぼす厄災よ!! 我らが祓い奉る!!

 

 いざ、最後の戦いが幕を開けた! 大和にヤナト、そして全ての世の運命は、この一戦にかかっておる!! 雄々しく戦え、ライドウにサクナヒメ! いざ、快刀乱麻に悪を断て!!

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