デビルサマナー葛葉ライドウ 対 天穂のサクナヒメ   作:カール・ロビンソン

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第壱章『サクナヒメ邂逅』・下

 戦いの秘訣は先手必勝。ライドウはすぐさま敵陣に切り込む。前田慶次の単騎駆けもかくやの勢いで。

 俊足の勢いに任せた牙突の一衝。的殺の一撃は見事、一体の邪鬼の胴を貫いた。

 だが、邪鬼もさるもの。傷をものともせず、逆に牙で刀を抑え込むのであった。これでは身動きできず。危うし、ライドウ!!

 

 そこに二体の邪鬼が左右より来襲! 身体全体から牙を伸ばし、ライドウを蜂の巣にせんとする。咄嗟に刀を手放したライドウ。地に転がり、間一髪難を逃れる。

 しかし、邪鬼共は先回り。そして、ライドウの四方を取り囲む。そして、再び牙を突き出しライドウを殺めんとするのだ。

 抜く手も見せず放たれた銃弾。前方左右に一発ずつの銃弾が飛ぶ。鉛玉で態勢を崩される邪鬼共。だが、哀しきかな人の子のライドウでは後ろは間に合わぬ。危うし、ライドウ!!!

 

 刹那、鈍い音と共に邪鬼が宙を舞う。ライドウは後方を見る。すると、あの姫宮がその小さき体で邪鬼を蹴飛ばしたことに気づくのであった。

 

「油断するでない!!」

 

 そう檄を飛ばし、姫はライドウの隣に並び立つ。先ほどまでの怯えていた様が嘘のよう。そう、ライドウは知らぬが彼の姫宮は、武神の娘。胎を据えれば、どのような鬼にも怯みはせぬ。

 

 だが、事態はなお深刻。既にライドウの手には愛刀はなし。単銃の弾も尽きて、他に武器もなし。勇敢なる姫宮も徒手空拳では如何ともしがたい。

 

「くぅ…! 鎌の一つでも持ってくるんじゃったわい…」

 

 焦燥の滲む呻きを漏らし、姫宮は後ずさる。もはや如何ともしがたし。万策尽きたかに思われた。

 されど、快男児は恐れを知らぬ戦士のように振る舞う。もう振るう武器もなし。だが、姫宮の前に進み出て一歩も引かぬ。

 

「おぬし…」

 

 姫宮は茫然とライドウを見上げる。そして、驚愕する。ライドウは絶望などしていない。むしろ、目の前の邪鬼の群れなど、敵にして敵にあらず。そうした不敵さがその表情にはあった。

 それもそのはず。我らが英雄葛葉ライドウは数多くの修羅場を潜り抜けてきた。この程度のことなど、どうということはない。帝都の、ひいては大和の守護者の一柱、葛葉ライドウに敗北の二文字はないのだ。

 

 抵抗力を失ったとみたのか。邪鬼共は大きく飛び上がり、ライドウ達を一呑みにせんとする。咄嗟に姫宮を抱えるライドウ。後方に飛びずさると同時に、懐から管を抜く。

 溢れ出る翡翠色の光条。マグネタイトのエネルギーが螺旋を描き、今魔界の門を開く。これぞ、デビルサマナー葛葉ライドウの真骨頂。悪魔召喚の秘術であった!

 

 不意に立ち込める暗雲。轟雷と共に巨大な影が姿を現す。

 東に小陽青龍、南に老陽朱雀。西に小陰白虎、北に老陰玄武。陰陽五行の印の央に坐する、瑞獣の王。黄金色の龍こと、黄龍は今ここに轟臨せり!!

 

 龍飛天昇! 咆哮と共に龍は雲目指して高く駆け上る! 刹那、閃く勝利の稲光!! 幾多の稲妻が矢のように降り注ぎ、悪鬼共を貫き、焼き尽くす。それはさながら放たれては敵を撃たぬことのなかった、猛る雷神の怒鎚のようであった!!

 

 雲が晴れ、霧が晴れ、邪鬼の姿は影も形もなし。ライドウは悠々と懐に管を差し戻す。流石、我らの葛葉ライドウ! 有象無象の邪鬼などでは相手にもならぬ。

 だが、ライドウは勝利に驕ることはない。手柄を誇るよりも肝心なことが他にある。ライドウは姫宮を地に降ろし、その前で跪き、恭しく手を差し伸べて言う。

 

「お怪我はありませんか、姫?」

 

「あ、ああ…大丈夫じゃ…」

 

 仄かに頬を朱に染め、その手を取る姫宮。その無事を確認し、微笑むライドウ。今ここに英雄と姫が出会った! 新たなる物語が幕を開けたのだ!!

 

「某はライドウ。第十四代目葛葉ライドウで御座います」

 

「…わしはサクナ。ヤナトの神にして、ヒノエの民、サクナヒメである」

 

 爽やかに微笑むライドウ。どこかはにかむようなサクナヒメ。こうして二人は邂逅の時を迎えたのでありました。

 さあ、いよいよ、物語『デビルサマナー葛葉ライドウ 対 天穂のサクナヒメ』が始まりました!! 大和の人とヤナトの神。二人がどう交わり、どのような物語が織りなされるのか。それは、次回『第弐章:御柱都の怪事件』で語ることと相成ります。

 それでは、皆様のご期待を希いながら、一度幕引きとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました!

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