太陽だ。地平線に煌々と輝いている。朝方、灰はそれを何か得難いものを見るように目を向けていた。光が目を焼き、一時の間何も見えなくなる。その事実に感動を覚え、そして実感する。ここはもうロスリックではないのだと。目線を下げ人々の行き交う街を見る。皆活気ある顔をしている。そこにはかつて己が切望した、人の営みがある。そしてあの時の己の選択は、確かに今のこの光景に繋がっていると理解する。
この光景は幸せなものだ。だがその礎を忘れてはならない、そう灰は自戒する。最初の火を消し、世界を混乱に陥れたのは紛れもなく灰だからだ。確かに今を生きる人は灰を英雄とするだろう。人の時代を創り出したのは紛れもなく彼だから。だが、当時……火が消えたその時、生きていたヒトは?消えかけた火を前に、希望を捨てずに足掻いていたヒトは?未来の為に死んでくれと言われたようなものだ。誰が納得できようか。
「柄にもなく、感傷的になったものだ」
そうして自嘲するように灰は笑う。だがそこに後悔の色は無い。あの選択が間違ってなどいないことは今まさにこの光景が証明している。自分は、彼らを脳裏に刻み込み、前を向いて進まなければならない。それが生きる者の債務であろう。
……灰が生者かどうかは、些か疑わしいものがあるが、細かい事は気にしてはいけない。
思考を切りかえ、灰は宛てがわれた部屋を退室し、アンバーを探し城内を歩く。前日のジンに、「しばらくはアンバーと行動を共にしてもらう。その方が人々にも受け入れられ易いだろう」と言われたからだ。
灰はしばらくあてもなくさまよっていたが、どうやら見つかりそうにないようだ。邪魔にならない隅っこで腕を組み思案している。その際ピクリとも動かないため装備も相まって彫像のようになっている。現に何人かは『こんな像あったか?』とでも言いたげな顔をして通り過ぎていた。ちなみに今の灰の装備は
そして今は日の出から数刻たったばかり、夜間警備を終えた騎士達が全員帰ってきた頃である。アンバーが起きているはずがなかった。加えて灰は『人は眠らなければ死ぬ』ことを失念していた。故に、アンバーが自分を避けているのでは、とまで考えている。これはあながち間違いではない。
「……このような像、ここにありましたっけ?」
思案すること数10分。灰はようやくアンバーは寝ているのではという結論に至り、そのままその場で時間を潰していた。その時前方から見覚えのない少女が現れたのである。彼女の名はノエル。騎士を夢見るメイドである。彼女はバケツと雑巾を携えて、窓掃除の最中であった。
「わあ……とても精巧にできてます」
そう言いつつノエルは灰の背後に立つ。一方灰はといえば彼女のことを放置していた。素手ならば
「一体どれほど重いのでしょうか、私1人では運べそうにないです。……少し汚れが目立ちますね」
どうやらノエルは完全に灰のことを像だと勘違いしているようだ。鎧にぺたぺたと触っている。現代テイワットに置いて全身鎧は主流ではなく、その存在は図書館の資料や昔話などで見る程度。彼女は何か祭りの際に展示するものだと断定していた。そしては灰はそろそろ勘違いを正すことにした。
「貴公、私は像ではないのだが」
瞬間、時が止まる。彼女の顔は驚愕を表している。どうやら
「え、ぞうじゃな、い……ひと?」
灰は肯定し、ノエルの方を向き兜を脱ぐ。彼女の脳は情報の洪水を処理しようとフル回転する。見たことない鎧があって、よくできていてすごいなぁと思っていたら話しかけてきて、中には男の人がいて、何故か両目を覆う眼帯をしていて、でもしっかり自分の方を見ていて……
「きゅう」
灰の頭にいくつかの選択肢が浮かぶ。
1つ。適当な部屋のベッドに寝かせる。絵面が最悪である。
2つ。放置。なお、こうなった原因は灰自身である。
3つ。どうしようもない。現実は非情である。
熟考の末、灰は3番を選んだ。現実逃避である。現状はどう動いても悪手であるが故に。これが肉体的な死ならばもはや恐るるに足らないのだが灰は社会的な死は経験がない。そうしてどうしたものかと遠い目になりながら虚空を見つめていると、どうやら
「アッシュ?これ、どういうこと?」
審判の時だ。
初めに、アンケートの御協力ありがとうございました。
気にならないが多数、それに次いで今後気をつければ良いでしたのでこれから気をつけることにします。
誰だ今の
いや本当に圧倒的なちくわ大明神の人気度。過半数ですよ過半数。思わず笑っちゃいました。
それと次回投稿は合格発表までお待ちください。さすがに精神が持ちません…