火の無い灰に救済を   作:ラウガメア

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「あなた今何しようとしたの!?それ吹いたらヒルチャール集まっちゃうでしょ!?というかそもそもあなた何者!?どこから来てどこへ行くつもりなの!?」

 

灰の所へ駆け寄ってきたアンバーは凄まじい早口で捲し立てた。その早口は付け焼き刃とはいえかなり頑張って身につけた灰の言語識別(リスニング)能力をはるかに超えていた。故に灰は半分程度しか理解出来なかった。

 

「貴公、すまないが、ゆっくり、話してくれ。わた、しは、まだ慣れていな、い。」

 

灰は先程ウェンティから教えてもらった言語を口にした。ぎこちない部分は多いが、一夜漬けでここまで出来れば上出来だろう。

一方でアンバーの混乱はさらに深まった。明らかに怪しい姿で、自分を片手間で燃やし尽くすことができる男に突発的に話しかけてしまった挙句、その男が上手く話せないときた。事態はアンバーの許容量を大幅に超えていた。

 

「あーっと…。あなたがもってるその笛は危ないから吹いちゃダメって言ったんだけど…。」

 

だがアンバーは挫けない。たとえ目の前に属性てんこ盛りの不審者が現れようとも、彼女の胸にはモンドの偵察騎士としての誇りがあった。もしこの男が旅人ならモンドへ案内しなければならないし、もしこの男がモンドに仇なす不審者だったならば然るべき対応をとらなければならない。なお、目の前の男が自分を片手間に焼き尽くすことが出来る点は目を逸らすことにした。吹っ切れたとも言う。

 

「そうか。それで、貴公は何、ものだ?」

 

灰は素直に話を聞き、とりあえず笛をしまった。それを見たアンバーは、目の前の男はとんでもなく常識知らずなだけで、悪い人ではなさそうだと思った。

 

「あ、自己紹介がまだだったね。私はアンバー。モンドの偵察騎士、アンバーよ。あなたは?」

 

「私は、灰の方、と、呼ばれていた。旅を、している。」

 

灰の自己紹介を聞いたアンバーは、突然目の前の男が聞いたことの無い言葉を話したことに驚いた。恐らく名前だったのだろうが、耳にしたことのない発音だ。どうやらかなり遠いところから旅をしてきたのだろうと推測する。アンバーは彼を不審者ではなく、旅人として扱うことにした。

…ちなみに灰の言った、旅をしているという設定はウェンティが入れ知恵したものである。最近モンドでは『旅人』が活躍しているから誤魔化しやすいだろうとは彼の弁だ。

 

「えっと、あしゅわんさん…?アッシュ()さん…?はどこへ行くとか決まってる?」

 

名前の所を不安そうにしつつアンバーは灰に問いかける。灰は特に訂正を入れなかったのでアンバーは灰のことを『アッシュ』と呼ぶことにした。灰としては名前などどうでもよかったから訂正を入れなかっただけであるが。

 

「いや、決まってな、い。が、それより、あの笛を、吹いた、ら、どうなる?」

 

灰としてはそんなことより謎のアイテム(黒銅の角笛)の効果の方が気になった。折れた直剣やゴミクズまで集めた灰には、目の前の未知を解き明かすことの方が重要事項だったようだ。

 

「あの笛?あれはヒルチャールが増援を呼ぶ時に使う笛だから吹いちゃダメ。近くのヒルチャールを呼び寄せちゃうから危険だよ」

 

アンバーは灰の常識の無さに呆れた。てっきり分かっていて笛を吹こうとしたのだと思っていたのだ。何となく目の前の男を放っておいたら大惨事になりそうな予感がしたアンバーは、モンドに帰り次第騎士団に報告しよう(丸投げしよう)と密かに決意した。そして視線を灰に戻すと、

 

ブォォォオオ!

敵の増援、襲来!

 

「なあぁぁんでぇぇえ!?」

 

笛を片手にやりきったような顔をした灰が立っていた。

アンバーの受難はもう暫く続く。




UA7000突破、お気に入りも300間近となりました。
皆さん、本当にありがとうございます。
遅筆ではございますが、引き続き投稿を続けていきます。
これからもこの作品をよろしくお願いします。

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