火の無い灰に救済を   作:ラウガメア

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2021/03/24 追記
geardoll様、誤字報告ありがとうございます。


7

西風騎士団。それはモンドという国の運営や統治を行う組織、所謂政府のような立ち位置にある。その本部に連れてこられた灰は、己の現状を全く理解できないでいた。なぜなら突然軽装鎧を纏った人達に槍を向けられ、更には囲まれそうになったからだ。咄嗟にアンバーの背を掴んで飛び退き、包囲を脱したは良いが、この先どうしたら良いのか全く分からない。後ろでは状況を理解しきれていないのだろう。アンバーが声にならない音を口から零している。何故このようなことになってしまったのか。事態は少し前に遡る。

 

灰はアンバーに金貨を渡した(ご機嫌取りを終えた)後、彼女の案内で本部に向かっていた。綺麗に掃除されている道。整った家々。忌々しいアイツ()に似た懐っこい四足歩行動物。そして面影はあるが己の記憶(白猫 アルヴィナ)より遥かに小さく可愛らしい猫。病み村とも不死街とも違う美しい街並み。だが何故かそこに人影がない。

 

「ここは何故、人がいないのだ?」

 

そう聞いてみる灰だったが、アンバーもよく分からないようで首を捻っている。

 

「本当はもっと活気があるんだけど…。いくら夜だからと言ってもこれは少なすぎるよ…」

 

この反応から察するに、人っ子1人いないこの状況はいささか異質な光景なようだ。何かあったのかもしれない。その本部とやらに早く向かった方が良い。そう思った灰は、だが好奇心に負けアンバーにある質問をした。

 

「ところで、この、やたら懐っこく、可愛らしいコレはなんなのだ?」

 

思いっきり頭を撫で回しながら問いかける灰に、アンバーは呆れながら答える。

 

「犬よ」

 

ッ!?…?…!!??

 

お手本のような2度見だった。落ち着くまでの間、アッシュの犬を撫でる手が止まることはなかったと、後にアンバーは語った。

 

そんなこんなで灰が落ち着きを取り戻した後、騎士団本部にたどり着いた途端、冒頭のような状況に陥ったのである。

灰は己がこの世界で強者であることを客観的事実として認識している。だが同時に無敵ではないことを決して忘れないようにしている。

たとえ力量差が歴然の相手でも、数で押し潰すことはできる。

それを何度も繰り返し、繰り返された灰は『数は力』であることを誰よりも理解していた。故に下手に動けない。

騎士団の面々も、相対する男が只者でないことは承知していた。少し前からある目撃情報と、何より先程の身のこなしから。鎧に付いた夥しい量の傷から、男が歴戦の勇士であることは容易に想像出来る。本気を出されたら1兵士である自分など時間稼ぎもできないだろうと。更には男の手元にはアンバーが居る。故に、下手に動けない。

 

「そこまでだ」

 

一触即発の現場にどこからともなく現れたのは、片手剣(直剣)を携えた長身の男だった。その男の名はガイア。氷元素を操る西風騎士団騎兵隊隊長である。

 

「剣を下げてはくれないか。こちらに敵対の意思はないんだ」

 

そう言ってガイアは騎士達を下がらせ、剣を収め両手を上げる。

灰は騎士たちが文句のひとつも言わずに下がったことから目の前の男がそれなりの地位にある者であると予測し、かつその男が話が出来そうな相手だったのでひとまず納刀し、話を聞く態勢を整える。

 

「ガイア先輩!えっと彼の名前はアッシュで旅人でちょっと言葉が不自由で常識知らずのめちゃくちゃで…」

 

と、ここで再起動を果たしたアンバーがガイアに灰のことを伝える。

本人も若干混乱しているのか早口で息継ぎの暇もなく捲し立てている。

灰はなんだか罵倒が混ざっているように感じたが事実であるため反論できず顔を顰めるのみに留めた。

 

「落ち着け。何があったのかは知らないが、客人を放置したままにする訳にはいかない。彼には応接間にて待ってもらうことにしよう。その後ゆっくり報告を聞かせてもらおうじゃあないか」

 

そう言ってガイアは本部へと入っていく。その後ろをアンバーが走って追いかけ、灰はゆっくり歩いてついて行く。歩きながら、灰はガイアについて考える。あの目は、明らかに信用していない者の目だった。だがそれも仕方がないだろう。客観的に見て、灰は明らかに不審者そのものだ。むしろ親しく接しているアンバーの方が異常なほど。

最悪の場合、『魅了』を使って逃げることを考えた後、灰は己が随分丸くなっていることに気がつき笑う。かつて(火の時代)なら囲まれた時点で抜刀し目前の敵を屠っていただろう。そうしなかったのは風神のおかげか、はたまた1人の少女の影響か。そして灰は気楽に考えることにした。ここは平和だ。己に向けられる悪意を感じられないくらいに。ならば過剰に反応する必要もないだろう、と。そして応接間に案内された灰は、刀を完全に収納し、椅子に座って寛ぎ始めた。

 

ちなみにアンバーは灰を信用したが故に親しくしているのではなく、吹っ切れているだけである。灰はその事実に気づけるほど人の機敏に敏感ではなかった。




先日(12/29)、突然UAとお気に入り登録者数が伸びたんです。
具体的に言うと新しい話を投稿した日より多いくらいです。
一体何があったんだろうと思って調べてみたところ

_人人人人人人人人人人人_
> 日間ランキング29位 <(12/29)
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_人人人人人人人人人人人_
> 日間ランキング13位 <(12/30)
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現実を受け止めきれずに5回くらい見直しました。
そして朝起きてもっかい見て変な声出しました。
家族に聞かれました。何とか誤魔化せましたが…。
ともあれ、皆さん本当にありがとうございます!

それと年内の更新はこれで最後になります。皆さん、良いお年を。
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