#書き出しと終わり #shindanmaker
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1400字ピッタリなんじゃあ
手を伸ばしても空を掴むだけだった。
多分それは、僕の人生の中で初めて経験した失恋というものだった。失恋した感想は、意外と辛くないな、というもの。
自分でも冷めてるなとは思うけど、そもそも好きになった経緯も曖昧だしそんなものだと思う。
じゃあなぜ僕はこうして夜空を見上げているのだろう。届かない星に手を伸ばしているのだろう。
それは無意識のうちに行われていた行為で、自分が何をしたいのかわからなかった。
彼女と出会ったのは、高2に上がったときだった。たまたま席が隣になって、たまたま話があった。そんなありきたりな理由で僕は彼女が好きになった。
その程度。そんな熱烈に好きだったわけじゃない。告白も、人生で初めてだったけど別に振られてもいいかなって思ってた。仲が良かったから、ワンチャンあると思った。だから告白したら、玉砕した。
振られた直後はそこそこショックだったさ。さっき辛くないといったけど、それは今、落ち着いてからの話。どれだけ薄っぺらくて汚い恋心だとしても、それは確かに恋だったのだから。
ごめんなさい。
その6文字に込められた想いは、どんなものだったんだろうか。申し訳ない、気持ち悪い、よくわかってない、意外、予想通り……正直、なんでもいい。
僕が振られて、君は振った。それだけの関係。今の懸念事項は来週からの学校生活が気まずくならないかどうかだけ。
席が隣どうしだから気まずくなるのは困るし、そうなったら周りに何を言われるかわかったもんじゃない。
そう考えて、自嘲する。もうそんなことを気にしているのか。我ながら切り替えが早いな。
いつだかに男は切り替えが遅く引きずるが、女はそこのところさっぱりしていると聞いたことがあるが、どうやら何事にも例外はあるらしい。夜空には星が煌いていた。
僕が物事を考えるときは、大抵夜空を見る。
星が好きだから。月が好きだから。そういうのもあるだろうが、ただただ広がる真っ黒な空を見ていると、自分が自分じゃなくなって幽体離脱したみたいに感じるから。
ただ、ベランダから見える空なんて大したことがない。だから、もっと考えたいときは外に出る。親は遅くにしか帰ってこないし、僕がいなくても何も気にしないだろう。
外を歩いて十分ほどしたところで、前方に彼女の家が見えた。家まで送ったこともあったっけ。家には上がらせてもらえなかったけど。
ふと、彼女の家に向かう人影を見た。
心臓の鼓動が早くなる。彼女は一人っ子のはずだ。男がドアの前に立って、出てきたのは僕が好きな人。なんで彼女が出る必要がある?
男が家に入ったのを見た僕は駆け出していた。石につまずき転んだ。心臓が煩いくらいに騒いでいる。胸が痛い。蔦に思いっきり締めつけられているような感覚がある。
星に手を伸ばしても、掴むのは空だけ。いや、空も掴めていないのか。
そんなとき、僕に声がかかった。
「キミ、大丈夫か?」
お巡りさんだった。大丈夫、ランニング中に転んだだけです。そう応える。それを聞いたお巡りさんは、早く帰りなさいよとだけ残してどこかへ行った。
なんだ、もともと勝ち目の無い勝負だったんじゃねえか。無様に舞っていた自分を嘲笑う。
この心臓の痛みは走ったからだ。吸い込む空気が痛いのは今が夜だからだ。
そうやってどれだけ誤魔化そうがこの胸の痛みは僕に真実を告げてくる。
僕は彼女が好きだった。
振られたときだって泣いていなかった。だけど、心の中では泣いていた。