ラブライブAnotherx2!~新人アイドルに窮地に追い込まれた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が奮起し、追いつくまでの話(予定   作:ひいちゃ

12 / 13
#12『ただいま、ランジュ』

「………」

 

 ランジュは、自分たちに割り当てられた部室で、一心不乱にダンスや歌のトレーニングに励んでいた。

 自分たちのライブを見に来てくれる観客たちに、満足のいかないライブは見せられない。ショウ家の人間としては。

 

 しかし。

 

「はぁ……」

 

 ランジュは、練習を、まだ途中なのに一度打ち切った。ミアが抜けてからずっとこの調子なのだ。

 この虹ヶ咲学園の理事長も務めているほどの家であるショウ家の一員として、手抜きは許されないとわかってはいるのだが、どうしても気が乗らない。パフォーマンスの質も日々下がっている気がする。

 今更ながらに、QUEENDOMにおけるミアの大切さを痛感するランジュだが、だがそれを受け入れることは許されない。

 

「そうよ。ミアと出会う前は、私一人で頑張ってきたんだから」

 

 それなのに今更ミアの存在に泣きついていては、ショウ家の一員としては落第だ。どんな環境にあっても、最高の結果を出し続ける。それがショウ家の人間なのだ。

 

 そう自分に言い聞かせ、ランジュはトレーニングを再開した。

 しかし、ミアが抜けたことによる、パフォーマンス、そして心の穴は、なかなかふさがりそうになかった。

 

* * * * *

 

「よし、みんな。ここで休憩にしよう!」

 

 私……高方結友がそう声をかけると、みんなは息を吐き、思い思いの形で休憩した。

 

「ふぅ、かすみんたちのパフォーマンスも、かなり上達してきたね、しず子!」

「そうだね。QUEENDOMに迫るほどになってきたんじゃないかな?」

 

 そう仲良く話すかすみちゃんとしずくちゃんに、果林さんが釘を刺す。

 

「こーら、自信を持つのはいいけど、あまり持ちすぎてそれに溺れていたら、ランジュに足をすくわれてしまうかもしれないわよ?」

「わ、わかってますよぅ、果林先輩」

「ふふふっ」

 

 そんな三人の会話を聞きながら、私は歩夢ちゃんにタオルを渡す。

 

「はい、どうぞ。歩夢ちゃん」

「あ、結友ちゃん、ありがとう。今日のトレーニング、どうだったかな?」

「うん。みんなとても上達してたよ。確実にQUEENDOMに迫ってる感じがする。もちろん、歩夢ちゃんもね」

「そうかな? それならよかった……」

 

 その横で、ミアちゃんは机に向かって作曲をしていた。あの沼津でのミニライブ、そして愛ちゃんや果林さんとの関わりを通して、刺激や色々なものを受けたのか、ミアちゃんの作曲はさらにはかどっていった。私たちの存在が助けになったのなら、とても嬉しい。

 

「ミアっち。今日も作曲? とても精が出るね~」

「うん。もう少しで完成しそうなんだ……よし、できた」

 

 そのミアちゃんの言葉に、みんなが集まってきた。そのみんなの前で、彼女が私に楽譜を手渡す。

 

「はい。これがボクが心を込めて作った新曲。結友、試しにこれを弾いてみてくれるかい?」

「うん、わかったよ」

 

 私はそう言うと、楽譜を持って音楽室に向かって行った。それにみんなも続く。

 

* * * * *

 

 そして音楽室に到着すると、私はさっそくピアノに向かって、その新曲を弾き始めた。

 

~~~♪

 

 うん、とてもいい曲だ。とても楽しい曲調で、でも、心に訴えかける何かもあり、それが私や同好会のみんなにピッタリ。それに、ミアちゃんの私たちへの想いがとても感じられる。

 

 弾き終わると、みんな、感動の表情を浮かべていた。

 

「どうだったかな? みんな」

 

 ミアちゃんがそう聞いてくるけど、答えは決まっていた。

 

「うん! とてもいい曲! 私、感動しちゃった……ぐすっ」

 

と、歩夢ちゃんが目元の涙をぬぐう。

 

「うんうん、かすみんたちにぴったりで、それに、とてもじーんときちゃいますぅ!!」

「そうですね。私もかすみさんと同じで、目頭が熱くなっちゃいます」

 

 かすみちゃんは目から涙をどばーってと流している。しずくちゃんも、かすみちゃんほどではないけど、目が潤んで、今にも泣きだしそうだ。

 

「想いが伝わるって、こういうものを言うんですね! ニュータ〇プでなくても、曲でこんなことができるなんて、感動です!」

 

 せつ菜ちゃんが目に涙をためながら、拳をぐっと握っている。

 

「愛さんも、ガラになく、泣いちゃいそうだよ~! ね、りなっち!」

 

 愛ちゃんは涙を流しながら、目をごしごししている。

 

「うん、私も、とても感動した……璃奈ちゃんボード『じーん……』」

 

 璃奈ちゃんは璃奈ちゃんボードで顔を隠していたけど、その向こうの表情は言うまでもないだろう。

 

「とてもいい曲だよね、果林ちゃん!」

「そうね……。こんな曲には、めったにお目にかかれないわ……ぐすっ」

「うんうん。こんな素敵な曲が聞けるなんて、彼方ちゃんたちは幸せ者だよ~」

 

 三年生トリオも、とても感動しているようだ。

 

 その様子を見て、ミアちゃんははじめて、にこっと微笑んだ。

 

「気に入ってもらえて嬉しい。この曲、みんなにプレゼントするよ」

『ええっ!?』

 

 ミアちゃんの言葉を聞いて、みんなは目に涙を浮かべたまま驚いた。

 こんな感動的で素敵な曲をプレゼントすると聞かされて、驚かない者がいるだろうか? いやいません。

 

「え、い、いいの……? ミアちゃん」

 

 そう聞く歩夢ちゃんに、ミアちゃんは再び微笑んで答えた。

 

「うん。これは、ボクからみんなへの贈り物。そして、ボクからのお礼。ボクを見つけてくれて、こうしてよくしてくれて、仲良くしてくれた君たちへの」

「ミアちゃん……」

「本当にありがとう、みんな。おかげでボクは、ランジュの元に戻れそうな気がする」

「ミアちゃん、それじゃ……」

 

 私がそう聞くと、ミアちゃんは柔らかい表情のまま、こくりとうなずいた。

 

「うん。楽しさとは何か、そしてみんながどうして楽しいか、わかった気がする。それは、みんながお互いに仲良くやっていたからじゃないかって」

『……』

 

 ミアちゃんの告白を、みんな真剣に聞いている。もちろん私もだ。

 

「仲良く、お互いを支えあい、競い合っていくなかから、楽しさが生まれて、それが育っていくものなんじゃないかと思えたんだ。そしてそれを気付かせてくれたのは、間違いなくみんなのおかげさ。本当にありがとう」

「ミアちゃん……」

 

 そうつぶやく歩夢ちゃんの目から、また涙が一筋落ちた。

 

「今なら、ランジュと再びやり直して、みんなと練習しているのと同じくらい、いいやそれ以上に楽しくトレーニングして、そして楽しいライブができるようになると思う。みんなと練習するのも楽しいけど、私が一番、一緒に楽しく歩んでいきたいと思えるのはランジュだから」

「そうか……それはよかった」

 

 ミアちゃんが締めくくった言葉に、私はそう言って微笑んでうなずいた。みんなも同じくうなずいている。

 

 そしてそこで、愛ちゃんが。

 

「よーし、それじゃさっそくミアちゃんを連れて、ランっちのところに行こうか!」

 

* * * * *

 

 その日もランジュは、一人黙々と練習をしていた。次のライブのために、引き続き自らを鍛えなければならない。どんな環境にあろうと、手を抜くことは許されない。それが、ショウの家に生まれた者の責務だから。

 

 しかし、どうしても練習を続けるのに気が載らない。ふと思い出すのは、ミアと共に練習に励んだあの時のこと。

 

 あの時の練習のなんて輝かしいことか。

 そして今のなんと寂しく、重苦しいことか。

 

 それでも、自分はショウ家の一員だからと、やる気を無理やりわかせて、再開しようとしたその時。

 

 コンコン。

 

 部室のドアが鳴った。

 

「どなたかしら? 扉は開いているわよ」

 

 その声を受けてドアが開く。その向こうにいたのは、果たして、ミアとスクールアイドル同好会の面々だった。

 

「ミア……何の用かしら? 私と袂をわかって、スクールアイドルから逃げ出したあなたが」

 

 内心では嬉しさを少し感じていたものの、やはり別れるに至った経緯から、どうしても話し方が厳しくなってしまう。

 

「ランジュ……。もう一度君とスクールアイドルをやりたい。もうスクールアイドルから逃げ出したりしない。楽しさを見つけたから。だから、ボクとまたデュオを組んでほしい」

 

 それでも、ランジュはやはり冷たかった。

 

「そう希望を持つのは自由。でも、そう言うからには、私を納得させられるだけの実力を身に着けてきたんでしょうね? それに、一度やめると言った以上は、そう簡単に首を縦にふれないというのもわかっているでしょう?」

 

 そのランジュの言葉に、さっそくかすみがかみつく。

 

「そんなこと言わないでもいいじゃないですかぁ! せっかくミア子がやり直したいと言ってきたのにぃ!」

 

 しかし、そのかすみを、ミアが手で制する。

 

「うん、わかってる。だからそれを、ボクが今、この身をもって証明してみせるよ」

 

* * * * *

 

 そして私たち同好会メンバー、ミアちゃん、そしてランジュちゃんは、講堂へとやってきた。

 ミアちゃんのライブをするための準備は、簡素なものではあるけど、栞子ちゃんが喜んでやってくれた。本当に感謝。

 

 そして、私たちが講堂で見守る中、きれいで可憐なドレスに身を包んだミアちゃんがやってきた。その表情は、自信にあふれながらも、そしてとても穏やかで、そして明るかった。

 

 そして彼女の歌が始まった。

 

 ~~~♪

 

I'm still dreaming(まだ夢見てるんだ)

Can't hide this feeling(この気持ちに嘘はつけない)

 

I want to see a world that I have never seen before(まだ見たことのない世界を見てみたい)

 

 その歌を聞いていたランジュちゃんの表情が変わったように見えた。

 彼女も気づいたんだろう。この歌に込められた、ランジュちゃんへのメッセージを。

 

その歌詞には、このようなメッセージが織り込まれていたんだ。

 

 ランジュちゃんと再び、見たことのない世界を見てみたい。

 この気持ちに嘘はつけない。

 

 そして、ランジュちゃんと、スクールアイドルとしての道を歩んでいくことを、いまだ夢見ている。

 

 それは、ミアちゃんの、ランジュちゃんとやり直したい気持ちが強く秘められた歌詞だと、私は感じた。

 そしておそらく、ランジュちゃんも。

 

歌は続く。

 

No one can stop me from being who I am(自分らしくあることを誰も止めることはできない)

I'm still dreaming(まだ夢見てるんだ)

 

 ランジュちゃんはランジュちゃんであり、彼女の家がどうであろうとそれは変わらない。

 そして、彼女が彼女らしくあることを、例え彼女の家の者であっても止めることはできない。

 彼女の在り方を、彼女の家が縛ることはできないし、自ら縛られることもない。ランジュちゃんはランジュちゃんのままでいい。彼女の本当の心のままでいい。大切な人とともに歩むことを夢見ることを否定することはない。

 

 ~~~♪

 

 そしてミアちゃんのミニソロライブは終わった。

 

* * * * *

 

 そして彼女の歌が終わり、ミアちゃんが私たちのところにやってきた。ランジュちゃんの顔を正面から見据えて、口を開く。

 

「これがボクからランジュに伝えられる精一杯。もう一度言うよ。ボクはもう一度、君とスクールアイドルをやり直したい。だから、また仲直りして、デュオを組んでほしいんだ。もう、スクールアイドルをやめたいとは言わない」

 

 そのミアちゃんを見つめるランジュちゃんの目に涙がたまっていく。

 

「わかったわ。あなたの今の実力なら不満はないし、それ以上に感じたわ。あなたの想い、私に伝えたいこと。心の深くまで染み込んだ。そして、ごめんなさい、ミア。あんなこと言って……」

「ランジュ……」

「そして、もう一つ……ありがとう。例え、何があろうと、私はショウ・ランジュ。ショウ家とは関係なく、私はランジュであり、それ以上でもそれ以下でもない。私がランジュであることを誰にも止めることはできない。本心を偽って、ショウ家のランジュであろうとする必要はない。そうだったのね……」

「それにも気づいてくれたんだね……よかった……。ランジュがショウ家の一員であることに、そうでなければならないことに、縛られ、追い詰められていたように思えたから、それが気がかりだったんだ……。そう、追い詰められることはないんだよ。どんなことがあっても、ランジュはランジュなんだ。それでいいんだよ……」

「ありがとう……ミア……そこまで私を想ってくれて……。また二人でやり直しましょう。テイラー家のミア・テイラーとショウ家のショウ・ランジュとしてではなく、ただのミアとランジュとして……」

「うん……。そして改めて言わせてよ。……ただいま、ランジュ」

「おかえりなさい……ミア」

 

 そして二人は固く抱き合う。二人の絆が再び固く結ばれたんだ……。良かった……。

 周りを見ると、歩夢ちゃんはもちろん、かすみちゃんも他のみんなも、涙ぐみながら、二人を見守ってる。

 

 そしてミアちゃんが私たちのほうに向きなおる。

 

「ありがとう。これもみんなのおかげだよ……」

 

 その彼女に、みんなを代表して、私が……多分泣き笑いの表情になってる……答える。

 

「ううん。私たちはミアちゃんの手助けをしただけ。仲直りしたのは、ミアちゃん、そしてランジュちゃんの心のおかげだよ」

「うん……」

 

 と、そこにかすみちゃんが。

 

「なーんか、敵に塩を送った感じになっちゃいましたけど、まぁいいか。でも、かすみんたちがやってあげたんだから、二人とも、素敵なライブしてくれないとダメですよ~?」

「うん、もちろんだよ。楽しみにしてなよ。みんなの予想を軽く超えてあげるからさ」

「そうね。今なら、今までよりずっと素敵なライブができそうな気がする。負けないわよ」

 

 そう言って、二人は、涙を浮かべながらもまばゆい笑顔をしてこたえたんだ。

 




本当はIm stillの歌詞を使う予定だったのですが、残念なことにIm stillはまだJASRACに登録されていないようなので、歌詞を省いています。ご了承ください汗
登録され次第、歌詞の一部分を入れる予定です。

また、ミアが同好会にプレゼントした曲は、この話で歌ったのとは別の歌です。どんな歌かは、次回のお楽しみ。

さて。次回はいよいよ最終回! 大団円ですよ。お楽しみに!

※21/09/10 I'm Stillが登録されたようなので、さっそく歌詞を掲載しました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。