ラブライブAnotherx2!~新人アイドルに窮地に追い込まれた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が奮起し、追いつくまでの話(予定 作:ひいちゃ
「それじゃ、歩夢ちゃんたちのトレーニングの様子を見に行ってくるよ。二人とも頑張ってね!」
「うん! せっつーたちによろしくね!」
「行ってらっしゃい。このトレーニングが終わるころには、一皮むけた朝香果林を見せてあげるわ。ふふふ」
二人に別れを告げ、私……高方結友は、幼馴染の上原歩夢ちゃんとともに、彼女たちが特訓している音楽室に歩いて行った。
体育室の扉の向こうから、愛ちゃんのダジャレがかすかに聞こえてきたことは気にしないでおこう。
* * * * *
「それで、歩夢ちゃんたちのほうはどう?」
「うん。穂乃果ちゃんや千歌ちゃんたちのパフォーマンスから、楽しい感じや、情熱というのかな? そういうのがいっぱい感じられてきて、それに触発されてか、私やせつ菜ちゃん、それにしずくちゃんも、いつも以上に頑張ってるよ」
「そっか。それは、A・ZU・NAのパフォーマンスもとても素敵になるだろうなぁ」
歩夢ちゃんとそんな会話をしながら歩く。すると、私がそう言ったところで、歩夢ちゃんがほほをぷくっと膨らませた。
「もう、結友ちゃん。みんなの様子を見るのはいいけど、ちゃんと私のことも見てくれないとダメだし、みんなに見とれてばかりいたらダメなんだからねっ」
「ははは、わかってるよ。もうあんなケンカはしたくないし、歩夢ちゃんは怒ったり泣いている顔より、笑ってる顔のほうが素敵だしね」
「も、もうっ……。結友ちゃんったら、そんなことばっかり言って……。でも、ありがと……」
そう言って、彼女は頬をかすかに染めて照れた。
あのスクフェス準備の中での歩夢ちゃんとのケンカの後、彼女は私への好きという気持ちをあまり隠さなくなっていた。それまではみんなが私とわいわい話してる時は、控えめに話す程度だったけど、今はむしろ積極的にその会話の輪の中に入っていくようになったんだ。とてもいいことだと思う。
一方の私も、周囲のことにばかり目を向けていたことを反省して、歩夢ちゃんによく目を向け、気を遣うようになった。
そのかいもあってか、二人の関係はケンカする前より、かなりよくなったように思う。
* * * * *
さて、音楽室に入ると、そこではせつ菜ちゃんとしずくちゃんが、穂乃果ちゃんと千歌ちゃんの歌を聞いているところだった。あともう一人……。
「あ、海未ちゃん。海未ちゃんも来てたんだ?」
「はい。穂乃果が頑張っているのに、私が何もしないわけにはいきませんから。それに、彼女にはお目付け役が必要ですし」
「え~、海未ちゃん。私って、お目付け役がいないとダメなキャラなの~?」
「ご自分の過去と胸に聞いてみてください」
「ぶ~」
『あはははは』
海未ちゃんに厳しい指摘を受けて膨れる穂乃果ちゃんに、私たちは思わず笑いがあふれ出します。
そしてひとしきり笑ったところで。
「でも、本当にすごいよね。穂乃果ちゃんも千歌ちゃんも。歌、とってもすごいと思う。私たちも一生懸命練習してるけど、またその域までは達せない感じがするよ」
「そうですね。何か心構えみたいなものがあるんでしょうか?」
せつ菜ちゃんからそう質問され、穂乃果ちゃんと千歌ちゃんは、そろって腕を組んで頭をひねりました。
「うーん。特にそんなかしこまったものはないかも……だけど」
「だけど?」
「私、歌が本当にとても好きなんだ。とても好きだから、その気持ちに嘘はつきたくないんだ」
「気持ちに……」
穂乃果ちゃんの話に、歩夢ちゃんがそうつぶやいた。
「うん。だから、歌った後に、胸を張って『歌が大好きです!』と言えるように心がけてる、かな。そうすれば、自然と、みんなにも私たちの歌が……うぅん、スクールアイドルの歌が好きって思ってもらえると思うから」
そんな穂乃果ちゃんの話を、みんな真剣な面持ちで聞いていた。広がる沈黙。そこに。
ぐぅ~。
歩夢ちゃんのおなかが鳴った。それを見て、みんなが微笑む。
「ふふふ、とってもかわいいおなかですね、歩夢さん」
「うぅ、恥ずかしいよ~、しずくちゃん。いちいち言わないで~」
と、そこで今度はせつ菜ちゃんのおなかも鳴った。そこで、彼女が腕時計を見る。
「あ、もうそろそろお昼ですね。そろそろお昼ご飯にしましょうか。実は今日は合同練習ということで、張り切ってお弁当作ってきたんですよ♪」
『え』
そのせつ菜ちゃんの爆弾発言に、私、穂乃果ちゃん、千歌ちゃん、海未ちゃん、しずくちゃんの笑顔が固まる。
そういえば、せつ菜ちゃんの料理は……。
「あ、大丈夫だよ、みんな。今朝、私も手伝ってきたから」
そうだったのかー。それは安心だね。
私たちは胸をなでおろして、さっそくお弁当におはしをつけた。
うん、さすがせつ菜ちゃん、というより歩夢ちゃん。とってもおいしい。いいお嫁さんになると思うよ。
それに……。
「この卵焼きもおいしそうだよね。これも、歩夢ちゃんが作ったの? ……はむ」
「ああ、それは歩夢さんが来る前に、私だけで作ったんです。自信作ですよっ」
* * * * *
さて、その日の練習を終えた私たちは、一度ニジガクに戻り、それから帰途についた。そして生徒玄関を出たところで……。
~~♪
「あれ、この声は……」
「アンジュちゃんの声だね。この近くで練習してるのかな?」
「そうかも。行ってみようよ」
「うん」
そして私と歩夢ちゃんは、その声にひかれるように、それが聞こえる方向に歩いて行った。
するとそこには……。
「~~♪」
木陰で華麗な歌声を響かせてる金髪の女の子……多分、彼女がアンジュちゃんなんだろう……の姿があった。
やっぱり、彼女の歌声は本当にすごい。心に響き渡るかのようだ。
そして、私は前からの評価を改めた。以前彼女のライブを見た時に、彼女の歌とダンスは天賦の才によるものだと思っていたけど、それだけじゃなかった。このような日々の鍛錬のたまものでもあったんだ。
それにしても、本当にすごい。でも、私は何かひっかかる違和感があった。
「本当にアンジュちゃんってすごいね、結友ちゃん」
「うん。……だけど……」
「だけど?」
そうつぶやいた私に、歩夢ちゃんがそう聞いてきた。
「彼女の歌には何か違和感があったんだ。確かに彼女の歌はすごくて、心に響くんだけど、何かが欠けているような……」
「欠けている何か……」
「うん。みんなの歌にはあるけど、彼女の歌にはないもの……。それが何かは今はまだわからないんだけど……。でも本当にすごいよね。でも、そんな彼女が、どうして私たちの同好会に入らないんだろう?」
「そうだよね……。栞子ちゃんが誘ってみたんだけど、良い返事はもらえなかったって……」
「そっか……」
私たちが再び彼女が立っていた木の方を見ると、そこには落ち葉がただ風に吹かれているだけだった。