ラブライブAnotherx2!~新人アイドルに窮地に追い込まれた虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が奮起し、追いつくまでの話(予定 作:ひいちゃ
「ランジュ。済まないけど、ボクはもう、スクールアイドルやめたい」
ジョイントライブのあと、ミアが発したその言葉を聞き、ランジュは衝撃を受けたが、表情は変えなかった。
表情を簡単に変えるべきではないと、彼女はわかっているから。
内心の動揺を押さえつつ、ランジュは相棒に聞いてみることにした。
「なぜ? さっきのライブを見ていたでしょ。みんな熱狂していたじゃない」
だが、ミアは首を振った。
「うん、熱狂してた。でもそれだけ。みんなからは楽しいという気持ちが感じられなかった。そしてボクも何回もライブをやったけど、楽しくなかった」
「……」
「あの子たちのライブを見て、楽しくなるかもと、ランジュの誘いにのったけど、やはりダメだった。スクールアイドルでは楽しめなかった。少なくともボクでは」
ミアの告白を聞き、ランジュはため息をついた。心のどこかが彼女を引き留めたいと叫んでいた。そしてもう一方では、彼女を優しく去らせてあげたいと訴えていた。だが、彼女の心の大部分、彼女が育ってきた中で築かれてきたものはそれを許さなかった。
「……わかった。あなたなら、私についてこれると思ったけど、残念だわ。どこへでも去りなさい」
「……わかった……」
そう言って、ミアは控室を出ていった。静かな中、扉が閉まる際に発した静かな音が、ランジュにはミアの、そして自身の声にならぬ泣き声に感じた。
「やっぱり、頂点に立つ者は一人、孤独ってことね。わかってはいたけれど」
そう強がるように言うランジュの目から、涙が一筋落ちた。
「ミア……」
* * * * *
控室を出たボク……ミア・テイラーは、行くあてもなく校舎をさ迷い、そして生徒玄関までたどり着いてしゃがみこんだ。
外には小雨が降っていた。まるで、今のボクの心のようだ。
ボクの家、テイラー家は有名な音楽家の家系だった。
その一族の一人だったボクは物心ついたときから、やはり音楽の特訓を受けていた。
その特訓が嫌だったわけではなかった。かといって好きというわけでもない。
生まれたときから、音楽はボクとともにあった。
いわば空気のようなもの。ただ空気を吸って吐くように、特に好きや嫌いといった感情を持つことなく、淡々と練習をしてきただけだ。
そして特訓の成果もあり、ボクは14のころには、プロの音楽家に匹敵する実力を身につけ、それに見合う、しかしボクの年齢には過分な名声も手に入れた。
でも、楽しくなかった。そんな生活の中、ボクは内心、楽しくなれるものを求めてあがき続けていた。
そんな中、ランジュに付き合って留学した虹ヶ咲学園で出会ったのだ。スクールアイドルと。ステージで楽しく踊り歌う少女たちと、彼女たちを見て、楽しく盛り上がる観客たちと。
それに楽しくなる可能性を見たボクは、ランジュの誘いに応じてスクールアイドルを始めてみた。でも……
楽しくなかった。
眼前にあったのは、いつもと非なるも酷似した光景。
辛くない、でも楽しくもない、あの光景だった。ただ、熱狂か感嘆かの違いだけだ。
やはり、スクールアイドルでも楽しくなれなかった。だから諦めることにした。
なのに。
なのに、どうしてこんなに胸に穴が開いた気持ちになるんだろう。
なぜこんなに悲しいんだろう。
雨はいつしか、どしゃ降りになっていた。
ボクが彼女にあったのはそんなときだ。
* * * * *
「あら、土砂降りになってきちゃったね」
私……天王寺璃奈……の傍らのしずくちゃんが、そう困惑したように言う。すると、かすみちゃんが……。
「ねぇねぇ、りな子。この雨をなんとかする機械って出せない?」
と、そんな無茶ぶりをしてきた。でも、そんなことは無理。
「出せない。私はド〇えもんじゃないもん。璃奈ちゃんボード『むーん』」
「え~」
私は内心、やれやれと思いながら、かばんから折り畳み傘を出して渡してあげる。
「はい。こんなこともあろうかと思って持ってきた。天気予報、午後から雨になると言ってたから」
「私も天気予報チェックしてたよ。かすみさん、ちゃんと天気予報見てなかったんだね」
私としずくちゃんがそう言うと、かすみちゃんは口をぷくっと膨らませた。まるでふぐみたい。
「ぶ~。だって、お寝坊して天気予報見ている暇がなかったんだもんっ」
「それって理由になっていないような……」
「うんうん……あれ?」
そこまで言って、私は人の気配に気が付いた。そのほうを向くと、一人の女の子がぽつんと体育座りしていた。何か気になるものを感じた私は、彼女の元に行ってみた。その私の後に、かすみちゃんとしずくちゃんも続く。
その女の子は、とても寂しそうで、哀しそうだった。まるで迷子の子猫のような……。
って、あれ? この子、見たことある。確か……。
「ミアさん? QUEENDOMの……」
私がそう聞くと、彼女……ミアさんは弱々しく、こくんとうなずいた。
「どうしたの? 傘がないなら、予備がまだあるから貸してあげるけど」
「帰れない……ボクの帰る場所はもうないから……」
そう言って、ミアさんはうつむいた。
彼女の言っている意味はわからないけど、嘘を言っていないことだけはわかった。
本当に迷子の子猫、ならぬ迷子のミアさん、なんだね……。うん、それなら……。
「ねぇ、それなら、私の家に来ない? 私のマンション、親がなかなか帰ってこないから大丈夫だし」
そう言って、私は彼女に手を差し伸べる。少し驚いた顔をしてこちらを見てきたミアさんに、私は優しく微笑んだ……表情の璃奈ちゃんボードを顔の前に掲げた。見ていないけど、しずくちゃんとかすみちゃんも微笑んでる気配がした。
それから少しの沈黙。ミアさんはちょっと戸惑っていたけど、私の手をおずおずと握った。
* * * * *
そして私のマンション。
私はミアさんと、着いてきた二人に、おじやを作って持って行った。あまり料理は得意じゃないけど、おじやぐらいなら作れる。
そしてさっそく『いただきます』をして食べる。……うん、おいしい、よくできた。ボードは使わないけど、璃奈ちゃんボード『えっへん』。
「ぱくぱく……うーん、とってもおいしい~。りな子、いいお嫁さんになれるよ~あちっ」
「ほら、かすみさん。あまり慌ててたべるからだよ」
かすみちゃんも、しずくちゃんもおいしく食べてくれていた。良かった。
「ミアさん、どう?」
「……わからない」
ミアさんは暗い表情でそう答えた。え、やっぱりおじやは外国人のミアさんの舌には合わなかったのかな?
「ご、ごめん。ミアさんにはおじやよりもリゾットのほうがよかったかな? 璃奈ちゃんボード『あせあせ』」
「わからない。……なぜ君たちは、あんなに楽しくスクールアイドルができるんだい?」
その言葉を聞き、私たちは顔を見合わせる。それは私たち自身、考えたこともなかった。
でも一つだけわかることがある。それは、理由はわからないけど、それを伝える手段はあるってこと。
だから私は、ミアさんにこう言った。
「ミアさん……それなら、私たちの同好会に体験入部してみる?」
ミアの一人称を間違えていたので、口調もあわせて修正しました。
それと性格と設定も、ランジュと同じくこの物語向けに改変しました。ご了承ください