真由美は新たなアーティファクト【シグルドスラッシュ】を携え迷宮に潜る。そこで新たな技能:性質診断を得る。その後20層まで下り、真由美たちはとある鉱石を見つける。しかしそれは罠でその鉱石を取ると転移陣が発動しどこかに飛ばされる。そこにはベヒモスと呼ばれる化け物がいた・・・
それでは第六話 ついに迷宮へ 後編 お楽しみください!
「まさか・・・・・・・・ベヒモスなのか?」
その空間にメルドの声は嫌というほど響いた。その声に反応し、ベヒモスは真由美たちの方へ向く。その目はまるで今日の獲物を見つけたといわんばかりに。そして、その化け物【ベヒモス】は戦闘開始と言わんばかりに
咆哮を上げた。
「総員、階段付近まで撤退しろ!今のお前らじゃ無理だ!」
メルドが叫ぶ。パニック状態になっているクラスメイトは一斉に階段付近まで移動する。が、そこで足止めを食らった。階段前に魔法陣が展開され、大量のトラウムソルジャーが出現したからである。
クラスメイトはそれに応戦するが、パニック状態でまともに攻撃が当たらず、じりじりと押し返されている。するとトラウムソルジャーが一斉に凍った。クラスメイトが背後を向くと、そこには深雪が立っていた。
深雪の持つスマホ型のアーティファクト【アイシングブルーム】は使用者の氷魔法の威力はそのままに広範囲に広げる特性を持っている。そのため彼女が放った、敵を凍らせ一時戦闘不能にする魔法【氷獄】が
前方のトラウムソルジャーをまとめて凍らせたのだ。
「姉さん、今!」
「えぇ!任せて!」
深雪がそう叫ぶと、クラスメイトの前に真由美が立った。技能:疑似瞬間移動の効果だ。そのままシグルドスラッシュを構えて魔力を込める。
「風爪一閃!」
真由美はそれと同時に横なぎにする。シグルドスラッシュはその刀身に風の爪を纏い、凍った敵を横薙ぎに切り裂いた。
「深雪。敵の転送がこれだけだとは思えないから、転送されてきたときは氷漬けにしちゃって!」
「了解しました、姉さん。」
真由美はベヒモスの方へと向かった。
ベヒモスは光輝、香織、雫、そして光輝の友人である龍太郎とメルドが抑えていた。その後ろにはハジメもいる。
「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟」
光輝が切りかかる、がベヒモスはびくともしていない。
「どうする?このままじゃじり貧だぜ?」
「あきらめるな龍太郎。せめて、クラスのみんながここを離れるまでの時間を稼がなきゃ!」
「二人とも!前!」
光輝と龍太郎の目の前にはベヒモスの前足が来ており、このままでは二人とも奈落に落ちてしまう。二人はとっさに目をふさぐ
しかし、衝撃は来ず、その代わりに岩が砕けるような音がした。ハジメが錬成で、壊れてしまったとはいえ、岩の壁を生成したのだ。
「ありがとう南雲!」
「助かったぜ!」
2人はハジメにお礼した。しかしまた前足が二人の元に迫っていた。
「二人とも!危ない!」
ハジメは叫ぶ。錬成はクールタイム中だ。いくらハジメでも1秒以上のタイムラグが出てしまう。今度こそ確実に終わる。そう思った二人の前で、ベヒモスの足に半ばから亀裂が入り、後ろへと吹き飛ばされた。
「なんだ!?」
光輝は驚く。ベヒモスが後ろに吹き飛び、その目の前に真由美が来ていたのだから。階段からベヒモスのいる広場まではかなり離れている。いくら早くても1秒でこれるはずがない。
「二人とも大丈夫⁉」
香織が二人に声をかける。その間にも真由美はベヒモスにロックマウントにも使った魔法【エア・バレッド】で迎撃している。
その光景を見て光輝はうなだれる。
「なんだよ・・・・・・・・俺なんかよりも勇者してるじゃないか。」
するとそこへ、真由美が飛んできた。
「ハジメ、錬成で壁を作って!なるべく分厚い奴。私も作るから。」
「分かった!」
そして二人は同時に呟く。
「「錬成!」」
ベヒモスと真由美達との間に5mほどの分厚さの壁が出来上がった。そのすきに真由美は光輝の方を向く。
「光輝!あなたはクラスメイトの方に行きなさい!私にはあのパニックを止めることはできないけど、あなたならできるでしょ!何も勇者は戦うことだけが仕事じゃない!」
そう言っているうちに壁にひびが入っていく
「真由美!・・・・・・・・でも俺は・・・・・・・・」
「ぐずぐずしないで!あなたがあの場で先陣を切った時の覚悟はその程度なの!?早く行きなさい!早く!」
真由美はそう叱咤する。そう、真由美が言ったのは最初に集められた時の光輝の発言だった。光輝はそれを言われて覚悟しなおしたのか
「香織、龍太郎!一緒に来てくれ!クラスのみんなを撤退させる。」
2人に声をかけた。
「分かったぜ!」
「でも真由美たちは?」
香織が真由美の方を向き、言った。真由美はこう答えた。
「大丈夫、撤退を確認したら私たちも撤退するから!さぁ早く!」
「・・・・・・・・分かった!無事に帰ってきてよ!」
光輝たちはクラスの方へ向かった。そして龍太郎はハジメの横を通り過ぎるときハジメに言った。
「助かったぜ!その勇気はすげぇよ!ありがとよ!」
それを聞いてハジメは嬉しそうにしていた。その瞬間真由美たちが作った壁が破壊された。その瞬間真由美はシグルドスラッシュをベヒモスに向け、今打てる最大級の威力の魔法を放った。
「貫け!【エアロ・ブラスト】!」
周りの風が収束して一塊になり巨大な礫を形成し、ベヒモスに当たった。ベヒモスはその衝撃で内臓にダメージを負ったのか、後方に吹き飛ばされながら、悲鳴を上げていた。
真由美が再度引き金を引く。するとベヒモスの頭上に二つの魔法陣が出現し、【エア・バレッド】がベヒモスを足止めしていた。そのすきに真由美はメルドとハジメのところに向かった。
「メルド団長。光輝のいうことも正しいです。このままじゃじり貧だ。だからこれから私が錬成でベヒモスの周りを固めます。その間に後ろから魔法を奴にぶつけてください。効果はあります。
それは先の私の魔法で証明済みです。」
「でもそれじゃあ真由美さんに負荷がかかりすぎるよ!」
ハジメがそう言う。メルド団長もそれにうなずいた。
「その通りだ。それじゃあお前に負担がかかりすぎる。最悪死ぬかもしれんぞ?」
「それでも!」
真由美はそう叫ぶ。
「それ以外に方法がありません。それに光輝という旗印を失ったらそれこそ終わりです。だからどうかお願いします!」
「・・・・・・・・だったら、僕もいく。真由美さんを一人にはさせない!」
真由美とメルドは驚いた。まさかハジメの口からそんな言葉が出るとは思わなかったからだ。それが決め手となり、メルドは渋々頷いた。
「わかった。二人に任せる。だが死ぬなよ!」
「「はい!」」
メルドは光輝達の方へと向かった。真由美はハジメに近づき耳元で作戦を伝えた。
「もうすぐあの攻撃が止むわ。その瞬間あいつを一気に覆うわよ。」
「でもそれじゃあすぐ突破されるんじゃ・・・・・・・・」
「そこで、この鉱石を使うのよ。」
真由美が手にしていた鉱石。それはこの世界で一番固いとされている鉱石、アザンチウム鉱石だった。
「それは、アザンチウム!?どうしてそれを?」
「フフッ。資材倉庫に入った時に少しくすねて来たのよ。これを外側の壁に薄く張るわ。それで後ろの皆の魔法発動までの時間は稼げるわ。」
「そして準備を完了したと同時に錬成を解除。突破してきたベヒモスに集中砲火でチェックメイトよ。」
「わかった。やろう!」
と同時にエア・バレッドが効果切れで霧散した。それと同時にベヒモスが迫ってきた。真由美たちは作戦を成功させるため、簡単で、その時に最も効果的な呪文を唱えた。
「「錬成!」」
一気にベヒモスの周りにドーム状の壁ができ始める。それは一瞬にしてベヒモスを覆った。
それを遠くから見ていたメルドはクラスメイトに指示を飛ばす。
「真由美たちがベヒモスをとらえた!総員、詠唱開始!今の自分が持てる最大火力でいけ!」
それを聞いた光輝たちは詠唱を開始する。その中で一人だけ悪魔のような笑みを浮かべているものがいた。そう、檜山である。
檜山はハジメと真由美にとても憎しみを持っている。そしてこの混戦状態での一斉攻撃。この状況を見て檜山には悪魔の声が聞こえた。
つまり、「今ならやってもばれないぞ」ということだ。そう考えて檜山は詠唱を開始した。そして光輝たちが詠唱を完了した時、ちょうど真由美達の錬成の限界が来ていた。
「真由美さん、これ以上はっ!」
「分かったわ。タイミング合わせて!最後に足だけに錬成するわよ!」
「分かった!」
「じゃあ錬成一時中断!」
真由美とハジメの錬成が止まる。するとすぐにアザンチウムの壁にひびが入り始めた。その力は最高の高度を誇る鉱石ですら止められなかった。
ベヒモスが壁の中から出てくる。それと同時にその足は石の壁に覆われた。
「いま!」
真由美がそう叫ぶ。メルドはそれを聞き、
「総員、魔法発動!」
光輝たちの一斉法撃が開始された。それはほとんどがベヒモスに命中し、ベヒモスは悲鳴を上げその場に倒れる。ついにベヒモスを倒したのだ。
そう光輝たちが確信すると雄たけびが上がった。初の強敵撃破にみんな浮かれていたのだ。その中で檜山だけが苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
その横を香織が通り抜けていく、香織はそのまま向かって真由美とハジメに抱き着いた。
「やったね!真由美!ハジメ君!」
「うん。やったよ、香織。」
「う、うん。やったよ白崎さん。」
その光景を見ていた人たちはほんわかした目をしていた。ただ一人、檜山を除いて。
その瞬間、メルドが叫んだ。
「三人とも!伏せろ、まだベヒモスは死んでいない!」
「えっ?」
香織が声を発す、その瞬間真由美はハジメと香織を後ろに吹き飛ばした。
「何をするのまゆ・・・・み・・・・?」
香織が見た光景、それは圧力に耐えられずに所々から出血しながらシグルドスラッシュを必死に構えてベヒモスの足の一撃に耐えている真由美の姿だった。
「くっ!意外と・・・・・重いわね・・・・!」
その体からどんどん出血は増していき、ついに片膝をついた。ダメかと目をつぶった真由美。しかし実際に潰されることはなく。力が弱まっただけだった。何があったのかと目を開けてみると
そこには自前の剣で真由美の横で攻撃に耐えているハジメの姿だった。
「真由美さんだけに・・・・やらせない・・・・・!」
真由美はその言葉を聞いて思った。この人はやはりいい人だ、と。そして、出来るかどうか聞かずに真由美はハジメに言った。
「行くわよハジメ!」
「うん!」
「「うおぉォォォォォォ!!!!」」
真由美はその力の限界まで力を振り絞り、抑えている足を上へと払い上げた。それと同時に魔法がベヒモスを直撃する。そう、ただ一発を除いて。
一発の炎弾が真由美たちの足元に直撃し、足場にひびが入った。元々ベヒモスが暴れたせいでもろくなっている床だったが、その炎弾が直撃し、耐久値の限界を迎えた。
様々な魔法が直撃し、倒れたベヒモスの起こした振動で床が崩壊を始めた。
「姉さん!ハジメさん!」
「真由美!ハジメ!」
当然近くにいた真由美たちも巻き添えを食らい動けずにそのまま奈落へと落ちて行った。否、落ちかけた。しかし落ちる寸前でそれは止まった。
「絶対に、落とさせはしないよ!二人とも!」
そう、二人の腕をつかんだのは香織だった。しかしその努力は空しく終わった。香織がいた床が崩れたからだ。そのまま3人は奈落へと落ちて行った。
「そ・・・・んな・・・・・姉さん?」
その後に残ったのは崩れ去った広場へと続く階段だけだった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
深雪がその場に崩れ落ちる。そのほかのクラスメイトも一様に、唖然としているもの、泣き崩れるもの、そのほかの反応をしている中で、何とも言えない表情をしているものがいた。
そう、檜山である。
「(こ、これでいいんだ。ハジメなんかが”俺の香織”に手を出したからだ。そしてその関係を崩そうとする俺の邪魔をしたのが悪いんだ。あとは香織をどうにかして取り戻すだけだ。フヒヒッ)」
檜山は訳の分からないことを思っていた。自分で言ってることに矛盾に気づきもしない。だからこそ、目の前の”現象”に気づくのが遅れた。
辺りの気温が下がる、否、檜山の周りのみ。そう、周りが凍っていたのだ。檜山の周りだけ。
視線を上げるとそこには、なぜか深雪がいた。
後編はこれにて終了です。次回は檜山が処刑されるかもしれないシーンです。そして真由美たちのその後も書きますので次回をお楽しみに。
檜山はこのまま死んだほうがいい?それとも魔人族の一味になって襲い掛かってくる展開がいい?(奈落編終了まで)
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このまま死すべし慈悲はない
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復活させるよ?イイネ?