筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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暫くぶりの投稿すまぬ!!


影纏うラストスペル

ふわっと浮き上がるように飛んだアリスさんは見下ろすようにこちらを睨み付ける。更に彼女を守るように何処からか現れた数体の人形が武器を持ち、その可愛らしさに反して物騒な刃を向けていた。

 

 

 

 

やっぱり飛ぶヤツかよ……ことごとく相性の悪いのばかり増えやがって。

 

 

「貴女、飛ばなくていいの?」

 

「ええ、こっちの方が性分に合ってるので。」

 

 

暫く経っても私が高さを合わせないのを不思議に思ったのか、アリスさんがゆっくりと降下してきてわざわざ聞いてきたのだ。靴が地面に着いておらず、走るより浮いて移動する方が楽らしい。

 

 

「……なんかフェアじゃないわね。」

 

「ああ、私の事は気になさらず撃ってきてどうぞ。」

 

「……。」

 

アリスさんは少々悩む素振りを見せていた。空から一方的に撃ち飛ばす行為が気に食わないのだろうか。それか単純に空を飛びながら人形を地面に近づけるという愚行を嫌ったのかもしれない。

 

 

 

「いいわ、私も降りてあげる。お互いその方が良いでしょ?無論貴女にとっても、ね。」

 

 

 

こちらの事を気遣ってか、溜め息混じりにそう言うアリスさん。たった一言飛ばないというだけで底を見透かされた気がして、いい気分がしない。

 

 

しかし相手だって一方的に勝負が終わってしまえば煮え切らないもの。それに今回は単に魔法使いについて知るためのものだし、アリスさんも魔理沙との違いを知らしめる為なのだから、すぐに終わってしまうのもどうかと言える。

 

 

 

「そうですか、それでは────」

 

 

 

私は自分を中心に、周囲に黒い線を走らせていく。いつもと変わらない、戦うための下準備だ。不器用で一辺倒な底辺妖怪がまともに戦うために欠かせないものである。

 

 

 

「───後悔だけはなさらぬよう。」

 

 

 

私はそう言うと、自分の身体を足元の影へ落として同化させた。

 

 

 

───しゅるしゅると地面を駆ける一筋の影が、虫のように高速で這いずり巡り廻って標的であるアリスさんを囲う。

 

 

 

「″影符″、【影燻(かげくす)んだシルバーフイッシュ】。」

 

 

スペルカード宣言と同時に枝分かれした影が跳ねるように浮き上がり、囲われていたアリスさんへ向けて飛び掛かかる。小汚ない不意討ち見たくなってしまったが、相手はどうせこちらを低く見ている。

 

 

どうせスペルカード宣言もしているし、そのくらいは許されよう。

 

 

スペルカードになぞらえ、まるで虫が獲物を喰らうかのごとく影がアリスさん目掛けて次々と跳ね回る。元々このスペルカード自体が【字食い虫】を参考にしたものだから地面を走る作りになるのも致し方ないのだが。

 

 

 

「……中々面白い能力じゃない、機転の利くルーミアみたいなものかしら?」

 

 

アリスさんは私のスペルカードをひょいひょいと低空を飛んで避け切った。そもそもこのカード自体相手の出方を窺う為の布石でしかない。魔理沙に使わなかったのは、残念ながら空中の相手には完全に無力であるから。

 

 

「彼女と私は別物ですから、根本がね。」

 

 

「あらそう、なら今度は私がいくわね。″蒼符″、【博愛の仏蘭西人形】!!」

 

 

少し距離をとっていたアリスさんがスペルカード宣言をする。と同時に、彼女の周囲をふわふわと人形が漂い始め、それぞれが竜の鱗のような形をした青い弾幕を飛ばし始めた。

 

 

 

暫くそれを眺めていると、突如白く変色した弾幕が広がっていく。

 

 

「……分裂する弾幕か!!」

 

 

更に弾幕は方向を変えて四方八方に展開されていき、やがて白かった弾幕が赤く変化した。

 

 

地面を強く蹴り、低空で繰り出される弾幕の応酬をひたすら避け続ける。密度もそれなりに濃く、加えて漂い続ける人形の軌道によって複雑に重なりあうそれに対処し続けなくてはならないと、回避するにしても苦労させられる。

 

 

「黒葉も飛べるんじゃないの。」

 

「飛べない、とは一言もいってませんよ。」

 

 

と、言っては見たものの、地に足着けず空中をふよふよと漂う程度だが。高く飛ぶだけ自分の能力が死ぬので無駄なのだ。労力も馬鹿にならないしね。

 

 

 

 

「...それじゃ、次いきますか。″影符″、【断頭台の狂喜劇】!!」

 

 

 

ギリギリ被弾せずぐるぐると低空で回っていた自分の身体を立て直させ、勢いつけて(意味はないが)次のスペルカード宣言をした。因みに魔理沙との戦いでは消化不良になってたヤツである。

 

 

地面から3メートルほどの振り子ギロチンが吊り上げられるように現れ、周囲の地面が刃と同じ漆黒に染まる。

 

 

 

 

「──振るえ。」

 

 

空に掲げた手を下ろすと共に、振り子ギロチンはぶんぶんと徐々に勢いを付けながら揺れ動く。だがこのスペルカードの真髄は振り子ギロチンに在らず。本当の脅威は振り子ギロチンが振り撒く特大弾にあり。

 

 

 

加えて自由に動ける私が無防備でいるわけもなく、当然ながら針型弾幕で追撃をする。振り子ギロチンが揺られる断頭台で狂っているかのような弾幕が降り注ぐスペルカード、思わず笑ってしまう程の理不尽さを醸し出すそれはまるで喜劇である。

 

 

 

「当たったら痛そうね、それ。」

 

「痛いどころじゃ済ませませんから……」

 

 

 

相変わらずアリスさんは振り子ギロチンを眺めながら、涼しげな表情で弾幕を軽々避けていく。空中で動けるってだけで行動の幅が広がるとは聞くが、ここまで余裕と言わんばかりに回避されるなんて……。

 

 

 

 

ブオン……

 

 

 

ブオン……

 

 

 

ブオン……

 

 

 

ブオン……

 

 

 

ブオン……

 

 

虚しく振り子ギロチンが揺り動いて弾幕を放ち続ける音が鈍く響き渡る。

 

 

 

うん、当たんねえなこれ。そろそろ別のスペルカードでも───

 

 

 

「″操符″、【乙女文楽】!!」

 

「───ッ!!」

 

 

彼女の宣言を聞き取った瞬間、目の前に人形が現れたかと思えばゼロ距離で弾幕を撃ってきた。当然避けられるわけなんてなく、情けない声を上げながら空中で吹っ飛ばされる結果となった。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

これが魔法使いか、何がどうなっているか全くもってわからない。それでいて弾幕に被弾してピチュったのか、妙に身体がだるい。

 

 

 

「あら、当たっちゃったのね。」

 

「……。」

 

 

木を背にしてもたれかかってる私を見下すかのようにアリスさんはゆっくりと近づいてくる。決着がついた、と言わんばかりに地に足つけて力を抜ききっているようだ。

 

 

「魔法使いがどんなものか、わかってくれたかしら?」

 

「……。」

 

 

そんなもの、わかるわけがない。結果不意討ちでわからん殺しされたんだぞこっちは。それにその眼をやめろ。その人を見下すような冷めた目で睨むんじゃねえ。

 

 

 

「……黒葉?」

 

「スウ……。」

 

 

私は一度大きく息を吸って、立ち上がる。一度被弾したくらいがなんだ。理不尽なんて前からずっと喰らってきたし、この程度別になんて事はない。

 

 

 

「久しぶりにこれを使うことになるとはね。私、ちょっと怒っちゃったよ。」

 

「え、な、なに?」

 

 

周囲に落ちる影は徐々に色濃く、深く、液体のように形を崩していく。それに呼応して私自身も足元の影と同化していくのがわかった。暫くぶりのラストスペル、ここで一発ぶちかましてやるか。

 

 

 

「″陰符″【虚像夢幻の海坊主】!!!」

 

 

私の頭が、身体が、腕が、周囲を包む影に飲まれて感覚を失う。後は流れに身を任せて光のない暗黒に流されるだけだ。

 

 

 

私はまるで眠るかのようにゆっくりと眼を閉じた。

 




この話と三妖精戦の投稿が終わったら、一回アンケ締め切りかなー

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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