筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅 作:わはかす茶
その後暫く魔理沙を含めた3人で軽く茶化し合ったりしながら過ごしていたが、辺りはすっかり真っ暗になったあたりでアリスさんにそろそろ身体を休めるようにと言われ、彼女が用意していた来客用のベッドに横たわる。
ずっと放浪を続けていたせいかずっと感じ得なかった布団の暖かさに身を預け、寝付くまでの間考え事に耽る。
──今日は本当に色々なことがあった。
この一日でルーミアに出会い、魔理沙と勝負し、久しぶりに人里を訪れて小鈴と話したし、今代の博麗の巫女や霖之助さんと会話もした。妖精の悪戯に掛けられたりしたが、それも経験のひとつとして十分だろう。怒りに身を任せるだけでなく、こうして思い耽ってみればまた違う。
……ああ、そう言えば魔法使いについて聞いてなかったな。長々と話を聞いていたせいで肝心なことがぽっかりと穴が開いたように抜け落ちてしまっていた。一日が充実しすぎていたから仕方ないと言えば仕方ない。私は人間ではないし、まだまだ時間は有り余っている。焦ってもいい事はないか。
ともかく今日は遅い。アリスさんに改めて聞いてみるのもいいけれど、どうせならまた別の魔法使いと出会って、そこで学んだことを新たな教訓にしよう。因みに魔理沙は駄目だ。あいつは人にものを教えられる性格じゃない。
人にものを教えるというのはある程度の知識と経験、それを言葉にする語彙力が必要だ。魔理沙にも魔法使いとしての力や経験はあるだろうが、それを教えるための知識と語彙力が完全に欠如しているように見える。
アリスさんも『魔理沙は一般の魔法使いから外れている』なんて言ってたし。
「魔法使い……かぁ。」
ふと私が妖怪としてではなく、魔法使いだったらどうだったのだろうと考えてみる。『魔法』と銘打って妖力を振り回す普通の人間な自分。箒に跨がったり人形を器用に操っている私。
……うん、想像できないね。
筆を動かしはすれども、人形を手足のように操る程の器用さはないし、箒に跨がって飛ぼうとする精神が最早私にはわからない。
アリスさんみたいにふわっと宙を浮くように飛べるのならいいのだが、万が一箒から落ちて浮力を失う事態になったらと思うと、ベッドに付けて暖かいはずの背筋が凍りつく。
……けど凄く、暖かい。ここ数十年、百年以上ずっと野宿を繰り返していたから寒さには慣れっこであった。木に背を付けて身体を休めたり、大きな岩に横たわって眠ったり、木の枝にぶら下がって落っこちたりと色々あった。
朝起きたら雪の中に埋まってたり、泥のように柔らかい地面に埋まりかけてたりしたこともあるし、湖に落ちて溺れかけたこともある。なんなら目覚めたら崖際だったなんて記憶もある。思い出すだけで笑ってしまうや。
柔らかい布団に身を包んだのなんて、いつぶりだろう。それこそ私が生まれたごく数年くらいしか……いや、こんなこと思い出して仕方ないことだな。
とにかく暖かい、どこか安心する。気持ち程度だが、ここまで身を預けられる存在が身近にあったなんて。
ある程度自由で便利な私の能力でも、気持ちや感情といった抽象的なものは再現できない。
そもそも私の能力を端的に言うなら暗く、重く、そして寒い。人々に温もりを与えられる布団なんてものとは無縁であり、再現できやしないのだ。
絶対に。
取り敢えず寝よう。こんなことを考えても何も始まらないし進まない。久方ぶりにこんなことを考えた気もするが、その結末など容易に想像がつくから。意味がない。
私は温かみのある布団に身体を包み、ゆっくりと意識を深い闇へ落とした。
......
......
......
「黒葉、もう昼になるわよ。」
思っている以上に疲れが溜まっていたのか、長々と眠っていたことでアリスさんに起こされる結果となった。
「ああ、すみませんアリスさん。おはようございます。」
「はいはい、よく寝れた?」
そう聞いてくるアリスさんの服装は煤ひとつない綺麗なものになっており、私が寝てから暫く裁縫していたことが窺える。単に替えがあるだけかもしれないけど、私よりよっぽど良くできた人間だ。
「ええ、それはぐっすりと。」
「それは良かったわ。それで、魔女についてはわかってもらえたかしら?」
アリスさんはこれ見よがしに不気味な笑みを浮かべて聞いてきた。どうやら昨日魔理沙と同じ扱いをされたことを未だ根に持っているようだった。
「違いはまあ……わかりました。確証は持ててませんけど。」
「はあ、私と魔理沙だけだと根拠に欠けるわよね。比較はできても魔女が何かがわからない。無理もないわ。」
魔法使いのことを魔女……というのは何となくわかる。アリスさんは仕方ないといった様子で、笑みを崩さない。ちょっと不気味だ。
「そうね、この森を抜けてまっすぐ進めば霧の湖があるのはわかるわよね?そこにある館にパチュリーという魔女が住んでいるから、まだ魔女について知りたいならそこにいくといいわ。」
アリスさんがちょっとした助言だと言わんばかりにため息をついてそう言った。
霧の湖についてはなんとなく場所を知っている。文字通り霧に覆われた巨大な湖であり、人がほとんど寄りつかない場所である。
「わかりました、ありがとうございます。」
私はアリスさんに軽く会釈を交わすと、彼女の家を後にして魔法の森を歩く。次の目的地は霧の湖に住む魔女、パチュリーのところだ。
次はどのような出会いと知識が私を魅せてくれるのか、楽しみである。
バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?
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一話にまとめて書く
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今の形態(分離)でいい。