筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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二画目
出会い頭に刺されるとか出オチを通り越して理不尽


ドゴォン!!

 

ドッゴオオオン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

開幕と同時に凄まじい爆発音を響かせながら、あらんばかりの弾幕が空から降り注ぐ。

妖生きっての大ピンチに私は肝を凍らせて、そのまま死んでしまいそうなほどに息を殺していた。

 

 

(っ……!!)

 

 

 

……なぜこんなことになっているのか。答えは簡単、真っ暗闇の森の中でありながら誰かに追われてるからだ。

 

 

 

『キャハハハ!!逃げないでよ妖怪さん!私ともっと遊びましょ!遊ぼうよ!!』

 

 

純度100%の笑顔を振り撒きながら弾幕を放ってくるとんだイカれた追っ手の正体は、全体的に真紅でまとめあげられた服を纏った金髪幼女である。背中には色とりどりの宝石がぶら下がった木の枝のような羽を持ち、それで飛んでいるようだ。

 

 

 

服装や一部の特長を除けば先日話をしたルーミアにそっくりだが、そもそも外見や性格が違いすぎる。

 

 

──また、それに加え彼女の放つ圧倒的な力を誇示するかのような禍々しいオーラに鳥肌が逆立っている。ここ百年以上色々なものを見てきたつもりだが、彼女のような存在は見たことがなかった。

 

 

異質な見た目や能力の凄まじさと威力、どうみても一般的な妖怪のそれじゃない。そのどれもが幻想郷の最上位に位置する種族である鬼と同程度か、最悪それ以上の力を有している。

 

 

 

ドゴォン!!!

 

 

 

彼女が着地するだけで地面はひび割れ木々は折れ、衝撃波と共に飛んでくる。これは最早自然災害である。抗いようのない暴力が、現在私に降り降り注いでいるのだ。

一体……私が何をしたっていうんだ。

 

 

アリスさんに別れを告げたあと暫く人里をまたほっつき歩いて時間を潰した。そしていざ魔女パチュリーのところにいこうと霧の湖を歩いていたら彼女に声をかけられ、用を話したら返答もなく弾幕をぶつけて来てドンパチ始まったのだ。

 

最早訳がわからない。更にこちらが用有りなことを知っていての反応だと思うと尚更タチが悪い。

 

 

 

彼女の使い魔……みたいなものなのか?と考えてまさかと疑いはしたが、アリスが薦める魔法使いである。

彼女が人形を操っていたように、パチュリーとやらは人間に似た虐殺ドールを作って湖中を警備させているとでもいうのか。

 

 

 

……だとしたら不味いな。こいつもパチュリーも明らか人間ではない。

人間が妖怪になるみたく、魔法使いになるために人間を辞め、強大な力を得ているパターンか。パチュリーが使い魔より強いと仮定して、本当に私が出会っていいヤツかどうか考え直すレベルだ。命がいくつあっても足りない。

 

 

 

 

『──見つけた!!今度は逃がさない!』

 

「うっ……“影符“、【影燻(かげくす)んだシルバーフイッシュ】!!」

 

 

開けた場所に出てしまい、金髪の少女が急降下して距離を一気に詰めてきた。ホント飛んでくる相手が苦手で苦手でならないが、四の五の言ってはいられないのも事実。

撹乱と目眩まし、そして仕込みの為にひとつ目のスペルカードを用いた。

 

 

 

『……。』

 

 

 

ドン!

 

 

 

少女が無言で地面をグーで叩くと、周囲の地面がひび割れる。それもなんと私の仕込みごと。それはそれは完膚なきまでに走らせていた影を崩されており、文字通り影も形もなくなった。

 

 

「……っ!!」

 

 

本能が危険を告げるより早く、頭より脚が先に動いた。瞬時に木々を伝って彼女から距離をとる。

 

 

 

 

まさか……まさか私の能力に特化したキラーだとでもいうのか。

スペルカードも仕込みも何もかも容赦なく破壊してくる彼女と私の相性など確認するまでもない、最悪だ。私側がな。

 

 

 

やばい、もうパチュリーがどうとか言っている場合じゃない。早いところ全力で逃げなくては命が危うい。

 

 

 

私は両手を地面に叩きつけるようにして、姿勢を低く構える。

 

 

『そうやってまた逃げるんでしょ、妖怪さん?』

 

「────ッ!!?」

 

 

しかし少女はお見通しとばかりに足で影を踏み、再び手を握りしめる動作をした。

忍ばせていたはすまの地面の影が墨玉のように爆ぜて飛び散り、影に溶け込んで必死に逃げていた私の身体が、地上へ引きずりだされる。

 

 

「がっ……ぐう!!」

 

 

無理やり投げ出された身体をくるりと反転させ、受け身をとる。視線の先には少女がいて、ゆっくりと迫ってきていた。

 

 

『地面に影の道を作って逃げていたんでしょう?中々面白い能力だけれど、別に貴女自身が消える訳じゃない。』

 

「……そうだね。そんなふざけた能力ではないよ。」

 

『更に地形を変化させることで貴女の能力は上書きできる。』

 

「……地形を変化させるなんて誰でも出来るモノじゃないでしょうに。」

 

『ほんの少しの変化だっていいの。例えばそう、こうやって土をかけるだけで無力化しちゃう。』

 

 

 

少女は足で土を軽く蹴り、わずかに残っていた仕込み用の線に被せた。するとその線は文字通り消えた。それを視認すると同時に、全身が思い切り逆立つような感覚を覚えた。

 

 

『貴女の能力、筆みたいね!』

 

 

 

この短時間で、名も知らぬ彼女に能力の概要を見破られた。不味い、不味い不味い不味い不味い。

 

 

 

『そろそろ観念して、私の玩具になってよ!』

 

 

満面の笑みでふわふわと飛びながら、少しずつにじり寄ってくる少女。地面を素手で破壊できる女の子の相手なんてしてたら、すぐさま物理的にぶっ飛ばされそうだ。

 

 

「それは……無理!!」

 

 

私としてもそれだけは本当に勘弁願いたい。能力の概要こそバレはしたが、手の内はまだ明かしてはいない。能力を扱う上で大切なのは根幹ではなく思考と応用だ。

 

 

少女の機動力は魔理沙と同程度か少し劣る程度。破壊力こそあれど逃げられないスピードってわけじゃない。

 

 

 

 

──だったら安全圏まで逃げ延びてやるだけさ。

 

 

 

『そうやってまた逃げるつもり?無駄だよ!!』

 

「無駄だとしても、足掻いてみせる!!」

 

 

背中から浮き出した筆を両手に取り、再び構えを取る。元々こんなふざけた人形少女の相手をまともにする気なんてない。ひとつひとつ試して気を惹いた隙に逃げる。

 

 

「影符、【箱庭の大暗斑】!!」

 

 

スペルカード発動と共に少女を竜巻で包み、爆発と拡散を繰り返す弾幕の嵐をおみまいする。質量のない風なら少しばかり振りほどくのも時間がかかる筈だ。

 

 

 

スッ……

 

 

『無駄だよ。妖怪さん。』

 

 

少女が再び手を握る動作をすると、まだスペル解除をしていないにも関わらず、風が掻き消えたのだ。

 

 

「掻き消した……!?」

 

『私が攻撃するとすぐ終わっちゃうから、勿体ぶってたけど……でも貴女、逃げるつもりじゃない?』

 

「ひっ!!いえそんな、滅相もない!」

 

 

 

これでも少女が勿体ぶっていたと聞いて、私は声がうわずっているのも気にせず彼女の機嫌取りに努めていた。

 

 

 

……これが力を持たないものの悲しき宿命よ。万が一にもあの少女の岩をも砕く殴打を身に受ければ、物理的に爆発四散……は流石になくとも骨折などの重傷は免れない。

 

 

『全然仕掛けてこないからつまらないのよー!』

 

「あの、でしたら仕込みを壊さないで頂きたい……。」

 

 

 

私の能力の根幹は影を走らせ下準備をしたうえで、影を走らせフィールドを制圧することにある。その仕込みを崩されてしまえば当然動きは制限されるため、本領を発揮しづらいのも事実。

 

 

『わかった、待ってあげる。その代わり、絶対逃げないでね?』

 

「……了解。」

 

 

少女の切実な頼みにはやはり答えてやらねばと、木が根を張るように周囲に影を巡らせる。時間が経つほどそれは色濃くなり、まるで元から影が延びていたかのように深く染まっていく。

 

 

(……視界共有。)

 

出来もしない約束を立て、少女に悟られぬように延びていく影と視界を共有して良さそうな場所を探す。暫く見渡していると、赤を基調にした大きい屋敷が見えた。巨大な門を構え、その門前には門番が立っている。

 

 

よし、オーケー。逃げるための道順は完全に把握した。あとは彼女の隙をどうにか窺って逃げるだけだ。流石に影を伝って視界共有出来ることは知らないはずだしな。

 

 

私は一度大きく深呼吸をし、彼女に向き直る。

あとは……どれだけ稼げるかだ。不安はあるが結局やるしかない。

 

 

 

「……いくよ。“影符“【無然妖怪影絵巻】。」

 

スペルカード詠唱とともに、手に持つ筆を地面へ突き立てる。そのままぐりぐりと押し付けることでその影は形を成した陰へと変わった。

 

 

「本気だから、結果については恨みっこなしで。」

 

 

『キェーーーー!』

 

『ガウッガウッ!』

 

『ぐぬぁん!』

 

『フシュルルルル……』

 

『ドドドドドォ……』

 

 

そう保身をかけておきながら、ゆっくりと地面に筆を叩きつけて乱暴に書きなぐった。

 

 

私の後ろに絵巻に記された畜生達がおののき叫ぶ。影で作り上げた私の妖魔本、無然妖怪影絵巻によって形を成した妖怪達の成れの果てのようなものである。

 

 

『わあすごい!!』

 

「……。」

 

彼女がスペルカードに気をとられている隙に、自分の身体を再び地面に溶け込ませて姿を消す。ひとまずこれでやりすごs

 

 

『でもちょっと多くて面倒ね!“禁忌“、【フォーオブアカインド】!!!』

 

 

少女がここに来てスペルカード宣言する。その様子を眺めていたが、まさかの光景に目を疑った。なんと彼女が分身でも作り出したのか、4人に増えていたのだ。

 

 

あの馬鹿力が4人に増えるなんて誰が想像つくか、あれでは私のスペルカードも即破られて終わりだ。

 

 

とにかく時間は稼げたし、行くべき場所も把握できた。私は恐怖に怯える身体を前へ前へと動かして、全速力で屋敷へ向かって駆けたのだった。

 




1000UA(ユニークアクセス)突破ありがとうございます!

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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