筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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最近の人間が怖すぎる件

必死に影を伝いながら目的の館へと避難する。堅牢そうな石垣に囲まれた門をくぐり抜け、なんとか敷地へ。

 

不法侵入とか気にすることは多々あるが、とりあえずあの金髪少女をやりすごさないことには命そのものが危うい。

 

 

 

……結果的に裏切ることになってしまったのは胸が痛いが、身の危険と物理的な死が頭によぎったのであって、致し方なかったと割りきる他ない。

 

 

館の玄関口を開かず、足元の小さな隙間を潜ってお邪魔する。門番を通していないのだから私はただの侵入者に他ならず、攻撃されても文句は言えまい。少女の喧騒が止むまでだ、なんとか凌ぎきるしかないな。

 

 

 

「……。」

 

 

 

広々とした館の中を見渡す。

 

 

 

一言でこの場所を表すならば真っ赤である。それはそれは血のように、外観の赤レンガ基調のものよりも濃く深く、凝視すると目が痛くなりそうだ。

 

私たち幻想郷に住まうものとは違う価値観を持っている者のよう……少なからず幻想郷の暮らしとは無縁だと言えよう。

 

 

石造りの柱に立て掛けられた蝋燭、客人をもてなす為の赤い絨毯に頭上にぶら下がった硝子の照明。実物を目にするのは初めてな物ばかりで、機会こそ違えば話を深めたいものであった。

 

 

 

一通り玄関を見回した後、周囲に警戒しながら影を伝わせる。屋敷の廊下は遮蔽物がひとつもなく、影を伝って進めば間違いなく怪しまれるだろう。

 

建物の構造もまだわからずじまい、下手に動くより偵察を兼ねてじっとしていた方がいいはずだ。

 

 

 

 

 

 

少女警戒中……。

 

 

 

 

この建物の中には何匹もの妖精や、醜悪な見た目をした面妖な妖怪が出歩いていて、彼女らは各々館内の掃除に従事している。魔法使いパチュリーの姿を一目見ようと影を走らせるが、今のところそれらしき人物は見受けられない。

 

 

聞く……訳にもいかないな。嘘をついてもいいが、バレた時が面倒臭い。妖精やあの妖怪程度ならどうにかなりそうだが、ゴタゴタしているところをパチュリー本人やガードに見られでもしたら最悪怪我では済まないかもしれない。

 

 

 

「今日は止めよう……日を改めるべきk」

 

 

視界を自分の元へ戻し身体を一瞬浮かした瞬間、先程までいなかったはずの銀髪の女性と目があった。しかも姿が戻っている状態で。

 

アリスさんがしていたカチューシャをふわふわとした生地で覆ったようなものを頭につけた長身の彼女は、手にナイフを持ってこちらを睨んでいる。短めのスカートやら見たことない服やら、色々とはじめて見るモノに呆気にとられてしまった。

 

 

 

「誰よ貴女。」

 

 

「消え──うわっ!!」

 

 

彼女の姿が残像を残して消えたことを視認した時には、前や後ろや、四方八方からナイフが飛んできたのだ。昨日戦った三妖精のように何かギミックがあるのか?

 

 

「勝手に入ったことは謝ります!!逃げてきただけで、そのえっと……ああクッソ……」

 

 

私の弁明も通さず、容赦なくナイフが飛んでくる。まさしく問答無用というやつだろう、話くらい聞いてくれたっていいのに……いくらなんでも理不尽すぎるだろう。

 

 

「……霊体なのかしら?」

 

「いえ、生身の妖怪ですけどnッッッ!!」

 

 

時には身体を透かし、反射神経と勘を頼りにナイフを避ける。身体を影と同化してなんとか凌げそうだが……相手が速すぎて逃げも隠れも捕らえも出来ないな。

 

 

「……」

 

 

まるで違う世界を歩いているかのように速い。ずっと後ろをとらせないように彼女を追うのが精一杯で、とても攻撃に転じるなんて出来やしない。

 

 

 

「スペr……そんな暇ないよなぁ!!」

 

 

一瞬ナイフが止んだと思えば、銀髪の彼女は間合いを詰めに詰めてナイフを振りかぶってくる。遠距離でダメージを与えられなかったから今度は接近戦で来たというわけか。

 

 

「このっ舐めるな……!!」

 

 

私も負けじと片手に筆を握り、ナイフとかち合う。“筆は剣よりも強し“という格言があるが、残念ながら物理的に作用するわけではないのだ。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

彼女の振るうナイフが私の腕や顔を掻き切っていく。そもそもの戦闘力、身体能力に差が開いているのがわかった。

 

 

 

見たところ相手はただの人間だが……というか実力の飛び抜けた人間が多すぎない?昨日今日と見てきて一般妖怪を遥かに凌ぐ実力者が揃い踏みだった。まったく、いつから幻想郷は人間の覇権になったのだろう。

 

 

 

「……くそっ!!」

 

 

 

ジャラン……

 

 

 

鈍い音を響かせ、鎖に繋がれた巨大な鉄球を出現させる。身体能力で劣るなら力一杯振り回して館ごと巻き込んでいくしかない。

 

 

 

「“影符“【黒鉄球の刑】!!」

 

 

光を返さぬ黒い鉄球が館の床や壁、天井を跳ね回る。質量を持ったそれらは硬い石材のそれらにヒビを入れ、傷をつけていく。

 

 

「いい加減にしろ。妖怪の分際で度が過ぎてるのよ。」

 

 

鉄球を避けながら高速で迫ってきた女性が、私の身体に蹴りを入れた。その表情は静かながらも怒りに震え上がっていて、声も低くドスを聞かせているのがわかった。

 

 

「──殺す。」

 

「……っ。」

 

 

すぐに間合いを詰められ、手慣れた絞め技で組伏せられてしまった。首もとにナイフを掛けられ、状況は最悪の最悪、絶体絶命である。高速移動ができる能力ってだけなのに、単純に強すぎる。単純ゆえに強いってやつだろうか。

 

 

 

「……組伏せられはするのね、ならこれで終わりよ!」

 

「終わらせ……ない!!」

 

 

身体を液体化させて拘束を解け、ナイフによる一閃を透かした。すぐに間合いを詰められることを承知で距離をとり、再び身体を構築する。

 

 

「物理攻撃が効いたかと思えば……また透かされたわね。」

 

 

「効きませんよ、そもそも。」

 

 

銀髪の女性がナイフを力強く握るのと同時に、私も再び手に鎖を持ち、鉄球を振り回して空中へ運んだ。

 

 

 

「なら効くまで刻んであげるわ!!」

 

「ぶっ潰してやるよオ“ラ“ァ“!!」

 

 

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

 

お互いの武器がかち合う瞬間、爆音と共に屋敷の壁が一部砕け落ちる。

 

 

 

「ああもう、面白そうだったのに逃げられちゃっ……た?」

 

 

 

その壁を壊して現れたのは、先程私を襲撃した金髪の少女だったのだ。

 




評価の方頂きましたありがとうございます!
もしよければ引き続き感想や評価の方よろしくお願いします!!

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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