筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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本棚が連なってるこの場所ってなんていうのだろうか。

──広い。

 

一生かかっても読みきれないであろう何百、何千、何万という本が棚に収まっている姿をこうして目にするのは初めてだ。これだけの本の知識を蓄え、管理しているとなればその実力も知識量も凄まじいものになるだろう。

私のような底辺妖怪では到底理解できない域に達しているのかもしれない。

 

 

「触ったら駄目よ。何が掛けてあるかわからない、下手したら私でも助けられないかもしれないから。」

 

 

興味が赴くままに手を触れようとした私を嗜める咲夜さん。なんの冗談かと思いはしたが、彼女の本気の目と魔女の恐ろしさを痛感していたことを思い出して手を反射的に引っ込める。本にそのようなまじないが掛けてあったとて何ら不思議ではあるまい。

 

 

─現に鈴奈庵にあった空白の本は牙を向いてきたからな。物理的に。

 

 

「……見慣れぬ客人ね。咲夜が連れてきたのなら悪い人ではなさそうだけれど。」

 

 

上から声をかけられ見上げると、そこには紫とピンクを基調とした不思議な少女がふわふわと空中を浮いた状態で私を睨んでいるのが見えた。

 

外に出る……にはいささか重々しいゆったりとした服に身を包んでいるにも関わらず軽快に動いている辺り、アリスさんの言うように彼女もまた魔女なのだということが窺える。

 

 

「ええ、それもパチュリー様宛にだそうで。」

 

「……私に?」

 

「なんでも彼女、魔女について知りたいそうなので。」

 

「あー……随分物好きなのね、貴女。」

 

 

咲夜さんが私の用件を端的にパチュリーさんへと告げると、彼女は顔をしかめ呆れたようにそう言った。

 

 

「知りたいと思う欲があるだけですから。」

 

「その好奇心で死んでも知らないから…なんか死にそうだけど大丈夫?」

 

「ああ……その線は……。」

 

 

 

 

少女説明中……

 

 

 

──────

 

 

「フランにねぇ、それは御愁傷様。」

 

「あの、なんとかなりませんかねぇ……。」

 

「そればかりは私に話してもどうにもならないわ……諦めて。」

 

 

先程フランに遊びという名のデスマッチに誘われたことをパチュリーさんに話したが、「諦めろ」と一蹴されることになった。やはり宿命は避けられないというか、運命の悪戯というものか……。

 

 

 

「運命……ねえ。」

 

 

まったく、つくづく理不尽が押し潰してくる運命なんて勘弁してほしいけど。現にまるで誰かが意図的に仕組んでいるんじゃないかと思えるくらい酷い。

 

 

「……例え運命の决路は変えられなくとも、自らの意思でここへ来た貴女なら彼女の力に抗えるはず。」

 

「……というと?」

 

「わからない?フランは貴女と私の“話が終わったら“と言ったのよね?」

 

「……あ。」

 

 

「それでも」とパチュリーさんが助け船を出してくれたのに気付くことができた。

 

 

 

「そうと決まれば──いえ、私から言えることではないですが……もしよければ。」

 

「いいのよ。折角ここまで御足労頂いた貴女が不憫でならないもの。彼女と時間が許す限り、沢山話しましょう?」

 

 

私とパチュリーさんの間で出した結論。それはフランが待ちくたびれて飽きるまで、談笑に浸ろうというものだった。会話を途切れさせなければ彼女達が付け入る隙はないし、一度フランが寝ればそれに乗じて無事に館を出ることも叶うかもしれない。

 

 

現時点で私が取れる、最善の択であり唯一の頼みの綱だ。そう易々と切らしても離してもいいものじゃない。

 

 

 

「それじゃあ、何から話す?」

 

「そうですね……まずは……。」

 

 

 

 

 

少女談笑中……

 

 

 

 

 

……それから、パチュリーさんから書物を通じた魔法使いの知識を中心に、色々な事を聞いた。元々目的があって来ただけあって個人的にはかなり充実したものになったとも思う。

 

 

なんでもパチュリーさんは先天的な魔法使い、いわば生まれもって魔女だったと明かした。魔理沙のように魔法使いとして道を定めて学を深めるというよりは、元々魔法が使える性分であると。だからどちらかというと彼女は妖怪に近い。

 

 

「どうぞ、紅茶になります。」

 

 

「ああ、ありがとうございます……。」

 

 

 

 

 

そしてこうやって時折話の合間に紅茶を差し出す赤髪の少女は、パチュリーさんの使い魔であるのだとか。背中に小さな羽があり、それでパタパタと飛びながら書籍の収まる棚を掃除しているようだ。

 

なお正式名称は不明。パチュリーさん曰く小悪魔だから『こあ』と呼んでいるし、彼女もそれで同意しているからどうでもいいとのこと。なんたる適当な呼び方だ………。

 

 

「貴女も使い魔とかには興味あるのかしら?」

 

「いえ、自分の代わりなら幾らでもいるので。」

 

 

照明の光を遮る棚から伸びた影へ目をやると、それは立体的に浮かび上がり人の姿へと変化した。全身は黒く目や口が表面的に着いただけの異形。それでも私の代わりとして十分に機能できるし自立もする。

 

 

……自分の身を守るうえで使い魔みたいな他人に頼る必要はない。

 

 

「随分便利そうね。掃除も捗るだろうし、よかったら私の司書として働かない?本の知識も沢山得られるし、少しばかり魔法を教えてあげることだってできるわ。」

 

 

パチュリーさんに違った方向で能力の価値を見出だされ、もしよかったらと彼女の使い魔になれと誘われる。膨大な本の知識を得られるという点は確かに魅力的だが……

 

 

 

「いえ、それはちょっと遠慮します……。」

 

 

私は彼女の誘いを断った。本で見ただけの知識は現物には敵いようもない。物書きとしてあってはならぬ発言かもしれないが、逆にいうと物書きが本に振り回される姿を思い浮かべればいかに滑稽か。

 

目の前の景色や対談、自らの足で赴いて感情のままに書き連ねることことこそ、物書きとしての価値があるのだから。

 

 

「……あと、それだと妹さんと顔を合わせることになるじゃないですか。」

 

「それもそうね。悪かったわ。」

 

 

 

だがそれ以上に、あの悪魔的妹と顔を合わせる度に死にかけると思うと底知れぬ恐怖が訴えかけてくるのだ。

 

そんな色々諸々と、理由があって断ることにしたのでパチュリーさんからの心証もそこまで落とさずに済んだとも思う。

 

 

「あと、一応言っておくけれどこの館の主はレミィで、フランは彼女の妹だから。」

 

「ほえ?」

 

 

どうやらパチュリーさん曰く、この館の主はレミィ……レミリア・スカーレットという吸血鬼なのだそうで。パチュリーさんとフランの姉妹関係とか色々おかしいとは思っていたが、そうか。そういうことなのか。

 




感想のほういただきましたありがとうございます!
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バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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