筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅 作:わはかす茶
暫くパチュリーさんと談笑に耽っていたが、唐突に全身が寒気に逆立った。この図書館の扉を隔てた向こう側に、殺気のような重々しい空気を放つそれがいる。
「……相当、楽しみで待ちきれなかったんじゃない?」
「勘弁してほしいです……」
その正体については察しがついている。間違いようもなく、フランだ。
パチュリーさんも苦笑いで同じ扉の方を向いている。気配には気づいているのだろう。なんせ殺意ましましオーラが電波のように延びているのだから。
ガンッ!ガンッ!!ガンガンガン!
「黒葉―!!遊びましょうー!」
ドンッ!ドゴン!バンッ!!ゴンッ!!
更に追い討ちを掛けるように、図書館の分厚い扉が物凄い勢いで叩かれる。明らかに片手でノックしている音じゃない。轟音に混じり、明らかに壊れていくかのようなメキメキという鈍い悲鳴を上げている。
「あのー、これ無視したら……どうなりますかね?」
「図書館の扉は破壊され、書籍もろとも焼き尽くされそうね。」
パチュリーさんは飄々とえげつない結果を口走った。フランのおっかなさについては折り込み済みなのだろう。だがこんなヤバい状況でも彼女は冷静さを欠いていない。
きっとフランの性格を熟知している証拠なのであろう。
「……御無礼を承知であれなんですけど、逃がしては貰えないですよn」
「無理よ。ここを破壊されてもなんだもの。貴女一人の犠牲で済むと思って諦めなさい。」
「……ッ!!」
そんな殺生な、と言いかけて止めた。パチュリーさんは何も悪くない。
自分のテリトリーを守りたいと思うのは至極全うだし、彼女は彼女なりに私を助けようとしてくれた。そんなパチュリーさんに落ち度などなく、それを咎めようものなら私が廃る。
(仕方ない……)
結局、私が折れる他ない。あの悪魔のような妹に勝てるビジョンは見えないけれど、どうやらやるしかないらしい。
轟音を響かせる扉を前に、私はパチュリーさんへ目配せし、一礼する。本の知識をくださった一応の礼のつもりだ。
「ここで死んだら意味ないじゃないの、集中なさい。」
「……そうですね。」
パチュリーさんに激励され、私は扉の向こう側にいるであろうフランへと向き合い、扉を開ける。
「まーだー……あっ。」
「待たせたみたいだな。」
てっきり逃げようとしている、とでも思っていたフランが意外そうに目を見開いている。
改めて向き合ってみると、彼女の体躯はかなり幼い少女のそれだ。
身長に留まらず瞳孔の大きさ、肩幅、胸囲、その他諸々人里で半人半妖に学んでいる子供たちと大差ない。
「反応がないから、逃げたかと思っちゃった。」
「……なに、腹を括ったまでさ。」
フランとのやり取りを交わす手前、全身が震えている。最早隠す気もない殺意と妖力がオーラとなって表面的に現れている。
表情は驚いてこそいれど、獲物を目の前にした肉食獣のように開き、仄かに笑みを浮かばせているのがわかった。
「あら、死ぬ覚悟が出来たの?壊しちゃっていいの?」
「……」
彼女の問いに、私は沈黙を貫いた。腹を括ったといいながら、意気揚々と「構わない」と答えられる度胸はなかった。
フランの言葉は比喩でもなんでもない。対峙すれば、文字通り物理的に壊されてしまうだろう。
あの短時間のやり取りで既に歴然とした力の差を実感してしまっている。
私は、無力だ。何時から得たかもわからぬ能力を力任せに振るう下級妖怪が、彼女のような妖怪と形容するのも憚られる化け物に勝てるはずなんてない。
勝てないことは百も承知だ。元より彼女と目があった瞬間から、私の死は運命づけられていたようなそんな気がしてならない。
けれども。
「……私にも妖怪としてのプライドってやつがあるのさ。」
「怖くないのかしら?」
「ああ、怖いよ。」
プライドがある、と言いながらすぐに「怖い」と口走る私。それだけ目の前の相手は脅威に他ならない訳だが、妖怪にあるべき度胸やら、力の誇示とはかけ離れた振るまいであることは自覚している。
……この震えを武者震いと呼ばずして、なんと形容しようものか。
「滅茶苦茶怖い。道中出会ってきた何者よりも、フラン。貴女が怖い。」
「……。」
これから対峙する相手にそんな事を話しても仕方ないと言うのに。声がうわずっているのがわかる。全身が緊張でぴんと張り、一歩踏み出すのも躊躇してしまう。
「……でも、やらなきゃ死ぬっていうならやるしかないじゃん。」
「やらなきゃ死ぬなんて一言も言ってないじゃない。」
おいおい、折角人が決意を表明した瞬間に折ろうとするのやめてくれないかな。色々と揺らぐから。
「……じゃあ逃がして貰えるの?」
「逃げた瞬間追い詰めて……きゅっとしてドカーンよ。」
「駄目じゃんそれ。」
まあわかってはいたことだが、彼女の中では私を逃がす選択はどうやらないらしい。仮に逃がす選択を持ってたらそこまで執着しないか。
「……まあ、知ってたよ。ここまで執着されたのも久し振りだ、出来うる限り楽しませて見せるよ。お嬢様。」
「ホント!?私も久し振りの弾幕勝負、楽しませて貰うわ!」
楽しませてあげられる確証はないけれど、結局後ろには退けないのだ。精一杯全力尽くしてやろうじゃないか。
黒葉の能力がもう一個追加されるかもしれないので、
次の投稿までにどんな能力か予想して貰えたら!
(一応現能力に付随するものではあります!)
バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?
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一話にまとめて書く
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今の形態(分離)でいい。