筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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久しぶりの投稿になりやした失礼しやす!


無駄口と本音、正直の線引き

 

フランは身体の至るところから黒い墨のようなインク(私の血)を垂れ流し、嗚咽を漏らしながらさまよっている。どうやら目の前の相手の姿が見えておらず、戦意の喪失は火を見るより明らかだ。

 

 

 

───雌雄は決した。

 

 

 

「い、妹様!!」

 

何処かで見守っていたのだろう、間髪いれず咲夜さんがフランを介抱すると、キッと鋭い目付きで私を睨んだ。

 

 

「……なにか?」

 

 

私は最大限の憎悪と「ざまあみろ」と言わんばかりの苦笑を浮かべ、咲夜さんを見下ろして言う。仕掛けてきたのも挑んできたのもそっちだ。最大限楽しませてやったつもりだし、私の血を吸ったのも自業自得でしかない。

私が咎められる理由はない筈だ。

 

 

「妹様に手を掛けて……その憎たらしい顔を崩してやってもいいのよ?」

 

「……妖怪一匹に殺意を込めすぎですってば。」

 

 

別にフランを殺した訳でもあるまいに、咲夜さんからはひしひしと敵意と殺意が伝わってくる。私としてもこうするしかなかったというのが本音なのだが。

 

 

「貴女の不気味で小馬鹿にしたような笑みがムカつくって言ってるの。」

 

 

それは、どうしようもない。顔つきとか生まれ持ったものを変えろというのは無理難題。妖怪らしさということで一つ持っては貰えないだろうか。

 

 

「……謝りませんよ。私は本気で抵抗しただけだ。」

 

 

私は地面から影を縦に伸ばし、黒鉄球の鎖を握った。手は抜いていない。かといってやりすぎたとも思っていない。まぐれであったにしろ、一般妖怪が名のある吸血鬼に一糸報いただけでも奇跡に近い。抵抗しなければやられていたのはこっちなのだから、多少痛手を被って貰えないと私としても妖怪のプライドが廃る。

 

 

「さ……咲、さくやぁ……」

 

 

 

咲夜に抱かれた状態で、フランは黒い涙を流しながら呟く。人を一方的にいたぶっておきながら、自分がダメージを受けると途端に泣き出すヤツ。そんなヤツが一番嫌いだ。それに乗じてロクに話を聞こうとせず同じように糾弾するヤツも同列だ。

 

私はそんな奴らを知っている。そんな奴らにこれまでだって……

 

 

「確かにそう……かもしれないわね。」

 

「貴女も殺りたきゃ来ればいい。互いが互いを幻滅している。私は卑怯な妖怪だ。大切なフランを傷つけた相手を前に、何を躊躇っている?」

 

「私をイラつかせたいのか、和解したいのか、どっちなの?」

 

 

……と、咲夜さんに聞かれ反応が遅れる。この嫌味たらしい性格で誤解されるのが常だ。かかってくるなら仕方ない、そんな考えで一人突っ走るせいで人に喧嘩売ることもしばしばある。

 

 

だけど。

 

 

「……正直、和解したい。貴女に勝てる気はしてませんから。」

 

「初めからそう素直に言ってくれればいいのに。私も貴女を追い詰めすぎたわ。黒葉。」

 

 

正直に話せば和解できる。どうやら幻想郷もどこか少しずつ変わりつつあるようだ。私は咲夜さんからの謝罪を受け取り、すぐにフランの治療に取りかかった。

 

「……。」

 

 

治療、といってもそう大層なことではない。彼女の身体を占める私のインク、いわゆる血を極限まで薄くするという応急処置だ。排泄まで促すことはできないけど、完全に無症状と言えるまで回復させることはできる。あとはゆっくり時間を掛けて解決するだけだ。

 

 

「ん。これからはヒートアップしないでね。私が持たないから。」

 

「ごめん……ごめんなさい。黒葉。」

 

 

フランからの謝罪を聞き入れ、前述の能力について咲夜さんに洗いざらい吐くことにした。インクの濃度を操る能力で、今やいつでもフランを人質に取れることも。

 

 

「……。」

 

 

それを聞いた咲夜さんの顔は、当然ながら良い表情ではなかった。まあそりゃあそうだ。私だってよく思われたい訳じゃない。身近な人間の命を握ってると言われて激情しないだけありがたい限りである。

 

 

「それでも……妹様を手に掛けようとしたら、私が貴女を殺すから。絶対にね。」

「……腹いせにそんなことはしないよ。私としてもなるべく温和でいたいから。」

 

 

そう忠告した咲夜さんの目は本気だった。私が何かの弾みでフランを傷つけたが最後、こいつは私を殺しにやってくるだろう。

今すぐに、というわけではなくとも彼女との関係性は最悪なところまできてしまったようだ。

 

 

……正直に話す、というのも難しいな。言わなきゃ良かったと後悔することもある。知らない方が幸せだったことをある。

 

その線引き、というのがまだ私にはよくわからない。大抵そういうことは言ってから後悔しても、もう遅いのだ。

 

 

人の心は私の能力では作用できない。それがどれだけ辛いことか、怖いことかを今改めて理解できた気がしている。

 

 

「ま、すぐに治るよ。」

 

私はフランに向かって一言そう呟き、館を後にする。今更家主に挨拶する度胸はない。貴女の家族を手に掛けましたなんて口が裂けても言う勇気なんてあるはずがない。こっちだってなるべく穏便に済ませたいのだ。

 

例え本当のことであっても余計なことってあるじゃないか。向こうの機嫌を損ねたら何をされるかわかったもんじゃない。私だってまだ生きたい。

 

 

私はすでに暗くなった、霧の湖を囲う森の中へと脚を踏み入れたのだった。

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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