筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅 作:わはかす茶
戦闘も一段落着き、ようやく腰を落ち着ける時間が出来た。互いに自己紹介を済ませ、事の本末を吐くことにした。話を紐解けば私はとんでもない誤解と先見で決めつけて、わかさぎ姫なる魚少女の優しさを反古にしてしまったようだ。
「……ああ、ソウデスネ、それは大変申し訳なかった。」
「確かに顔も知らぬ妖怪同士で警戒する気持ちもわかるけど、貴女の意識は過剰すぎるわ。」
茶髪の獣耳少女、
「い、いいのよ影狼。私だって無理矢理掴んだりしたもの。敵意を抱かれたって無理はないわ。」
「……すみません。妖怪相手にはあまり良い思い出がなくて。」
私が普段一人で行動している理由には、妖怪同士の喧嘩や抗争を出来るだけ避ける意味合いがある。それ故対人のコミュニケーションが苦手であったり、行き過ぎた防衛本能が働くこともしばしばある。
まったく、物書きにとっては致命的すぎる欠点だ。
「ま、警戒心を持っておくのは重要だしね。私は怪我ひとつないから怒ってないわよ?」
「大丈夫、私もよ。」
二人は「仕方ないな」と苦笑し、快く許してくれた。不気味な程に優しい。最近の妖怪ってこんなに優しいものなのか……少し前までは動けなくなるまでこっぴどくボコボコにされてみたいな現場を直視してきたから、意外だった。
「あーっ、仲直りできたんだな!」
少し遠くから声がした。声の主は言うまでもなくあの水色髪の少女だったが、将夜叉に片脚を掴まれ宙ぶらりんになって運ばれているという状況だった。
「ひとまずは、ね。でもチルノちゃん、その体勢のままでいいの?」
「だってこいつ力強すぎるんだもん!!離してよぉ!」
影狼に諭され自分の状況を再認した彼女は、わざとらしく脚をバタバタさせてもがいている。
「離していいよ。」
「……」パッ
ドスッッッッ
「ぷぎゅん!!」
将夜叉が掴む手を離し、水色髪の少女は地面に勢いよく頭をぶつけた。いや、ぷぎゅんってなんだよちょっと可愛いな。
「ち、チルノちゃん!?大丈夫!?」
「へ、へーきへーき!なんたってあたいは最強だからな!」
わかさぎと影狼が彼女の心配をするも、どうやら杞憂だったようだ。口調一つ変わらずピンピンしている。見た限り妖精っぽいしなんの問題もなさそうだな。
最悪一回休みにしてしまえば……
「……。」
「あ、あー。戻って良いよ、お疲れ様。」
片手を振りかざした将夜叉を止め、そのまま退却を促す。あの様子だとそのまま彼女を一回休みにするまでボコってたかもしれないし。
「お前見所あるやつだなあ!あたいの弟子にしてしんぜよう!」
「弟子て……一応私はキミに勝ったんだけどn」
私がそう言いかけたところで、後ろから影狼に口を塞がれた。
「チルノちゃんにそれ言ったところで意味ないわよ。」
「もがー、もが、もごご」(それなら何で口を塞ぐんですか)
「言いたいことはわかるけど、子供のお守りと思って付き合ってあげなさい。」
そう呟いた彼女の目は、「仕方ない」と諦めたような笑みだった。まるでずっと前からそうしてきたかのような、可哀想な子を見る寂しげなものだ。
「聞こえてるぞかげろー!あたいを馬鹿にするなー!」
チルノ、と言ったか。彼女はぷくっと頬を膨らませている。あれでも自分に向けられている目線というのは察しがつくものなのか。
「ねぇわかさぎぃ!ひどいと思わない!?」
「ふふ、そーねぇ。」
影狼を咎めようとチルノはわかさぎへ話題を振る。だかわかさぎはわかさぎで、否定も肯定もせず愛想笑いしかしていない。
肯定……はしているのか一応。
「お前はどーなんだ!?かげろーが悪いよなぁ!?」
「……ん?」
どうしても言質がほしいのか、今度は私に聞いてきた。一応この話題の種は私にあるんだけど、あれだけ近くにいてたまたま私の言葉が聞こえなかったのだろうか?
それとも複数の情報処理ができないタイプか。この子なら後者だってありえる。
「そーだね。影狼が悪いよね。」
「だよな、そうだろー!」
「え、ちょ、あんたねぇ!!」
──返答に困ったのでとりあえず肯定だけしてみせた。すまん影狼、加害者になってくれ。実際子供のお守りなんて口にしたのは影狼だけなのだから、私だけに非があるわけじゃないだろ。
というか単純に話題の種になりたくない。この子に目をつけられたくない。いやまぁもう既に目はつけられているんだけど、こういうタイプって意外と根深いというか……
「はあ……ったく、仕方ないわね。」
私からの「すまん」のアイコンタクトを受け取った影狼は、バツが悪そうな顔で頭を掻いた。
「まあチルノちゃんの話はこれくらいにして、自己紹介を済ましとくわね。改めて、私は今泉影狼。よろしくね。」
「私はわかさぎ姫と申します。」
話が区切られ、皆が揃ったタイミングで二人は改まって自己紹介をする。さっきは本当に名前をぽんと名乗りあうだけだったしな。チルノもいなかったし。
「あたいは最強の妖精、チルノだ!宜しくなお前!」
「今から名乗る相手を前にお前て……。」
マイペースな奴というか空気読めない(読まない)というか、他人に関心がないというか……
「私は黒葉。夜爛黒葉だ。」
私も彼女らのように淡々と名前を明かすだけの自己紹介を済ます。下手に色々明かすのも妖怪同士だと憚られるのだろう。
バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?
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一話にまとめて書く
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今の形態(分離)でいい。