筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅 作:わはかす茶
自己紹介を済ませた私達は、水色の髪の少女、チルノの案内を受け彼女の友達であるミスティアという妖怪の元へ行くこととなった。
陸路を使えないわかさぎ姫に別れを告げ、現在霧の湖を突っ切っている。
「……草の根妖怪ネットワーク?」
「ええ、私達のような力の弱い一般妖怪達が集まって情報を共有する集団のことよ。」
現在、私は影狼からこんな珍妙な話を聞いている。ここ数十年で妖怪の在り方というものも変化しているらしい。元々必要以上に群れない妖怪の鉄則……言い換えれば暗黙の了解が破られているようだ。
だが確かにその理屈は追っていけば理解はできる。今代の博麗の巫女をはじめとした人間が、それも一個人が圧倒的な力を持ち始めている。
箒で空を飛ぶ普通ではない普通の魔法使い、霧雨魔理沙。
人形を巧みに操る魔法使い、アリスマーガトロイド。
人知を越えた機構で高速移動するナイフ使い、十六夜咲夜。
半端な妖怪など直視せずとも蹴散らせてしまう程の強さを持つ彼女達を恐れ、徒党を組み抵抗といったところか。最悪抵抗どころか傷を舐めあってるだけの可能性もある。
だとすれば妖怪も落ちぶれたものだ。里の人間を襲ってはいけないというルールが作られてからというもの、妖怪全体の覇気が無くなっている気がする。一体どんな考えでそんな決まりを作ったのか問いただしたいところである。
「生憎と、私は意味もなく群れるのが好きじゃないもので。勧誘なら断らせて頂きますよ。」
「あら、それは残念ね。貴女情報に疎そうだから最近の流行とか色々教えてあげるのに。」
私の返答に、影狼は大して残念そうではない顔でそう言った。確かに流行には疎い、というより興味がない。人がなにをして楽しんでいようが、私は私なのだから。
元よりスペルカードも森近先輩から「作っておいた方がいい」と念押しされて渋々作っただけなのだ。今思えば作っておいてよかったとも思う反面、本来被捕食者たる人間に合わせている気がしてちょっと歯がゆい。
「流行がどう、とか妖怪には関係ないのでは?私は生きるのに精一杯だ。人の娯楽に興味はない。」
「そんなこと言って堅苦しいわねぇ。生きるのに精一杯といいながら、貴女だって執筆を嗜んでるじゃない。」
「私がしているのは低俗な悦楽じゃない。仮にも妖怪とあろう者が泡沫の如く消える遊戯に浸るだなんて、正気じゃない。」
ああ言えばこう言う。彼女とは真っ向からぶつかるくらいに意見が対立しているようだ。最近の妖怪の考えが人間寄りになっているのは火を見るより明らかで、本来妖怪が持つべき感情まで消えかけているのが目に見えてわかった。
「……これが今の妖怪の生き方よ?勿論貴女の言うように人と足並みを揃えるのを嫌う妖怪もいるにはいるけど、その考えだと生きづらいだけ。」
「……。」
影狼は諭すような優しい口調でそう言うが、納得はできない。
私を含めた妖怪は存在を維持するために人間に深いトラウマを与える。決して多くはないが、中には人を喰らうことを強いられて生まれたモノだっているだろうに。
妖怪のためにつくられた、妖怪が生きづらい場所……か。なんと浅はかで滑稽な世界よ。
「二人ともそんな怖い顔して、喧嘩か!?」
「怒ってないわよ?」
「……別に。」
私と影狼の口論が喧嘩に見えたらしく、チルノが横槍を入れてきた。影狼は「怒ってない」といいつつも声色が変化し、完全に私を拒絶しているのがわかる。
「あーぁ、早く酒を飲みたいものだわ。チルノちゃん、あとどれくらいで着くの?」
「あたい、わかんない!!」
酒に溺れたいらしい影狼が、あとどれくらいで着くかをチルノに問う。実際この間にもずっと森を歩いているが、一向に進展している様子はない。
「……ねえ影狼。多分この様子だと、」
「そうよね。やっぱそうよね。」
お互いに真意は伝えずとも、現在迷子だという事実を薄々感じ取っていた。
「……仕方ない。視界共有。」
私は自分の足元から影を伸ばし、四方八方に張り巡らせる。これはフランの館に入る時に使った視界共有の能力だ。
それなりに離れたところまで視野を広げられるため、便利な能力の使い方である。勿論何かしら書いて実像化させてもいいのだが、自分の目で見た方が安心できる。
360度ぐるりと視界を這わせ、何かないか注視する。
木、木、森、木、湖。
木。
岩。
森。
湖。
わかさぎ姫。
門番。
館。
「……。」
屋台なんてありゃしない、ここは見渡す限り森だ。
「そういえば、ミスティアの屋台って迷いの竹林の周辺にあるのが基本よね。」
「そう言うこと、もっと早く言ってもらって良いですか?」
ここでトンデモカミングアウトを始める影狼。てっきりこの霧の湖にあると思っていたから、疲労の具合が変わった。一気に肩に重りが乗ったような重圧がかかる。
迷いの竹林というと、一度入ったら出られないと有名な妖怪スポットだな。確か木のように高い竹がものすごい速度で成長し、目印をつけたところで全くもって意味をなさないと言われている。
人間の里を中心として、妖怪の山の対極に位置するはずだ。霧の湖からだとそこまで時間は掛からないと思うのだが。
「ま、私は迷いの竹林で暮らしてるからね。地理なら任せなさい。」
と、自信満々に豪語する影狼。価値観の違う相手をそうまでして連れていきたいか。いや、違うな。多分こいつの頭の中には酒のことしか入ってない。
「ここからでも十分たどり着けるわ!いくわよチルノちゃん、黒葉!」
「おーっ!」
「……はいはい。」
今度は影狼が先陣をきって、ミスティアの屋台へ向かっていった。いやあの、最初からそうしろ。とツッコミを入れるのは野暮なのだろうか。私はそんなどうでもいいことを考えながら、彼女の後を着いていくことにした。
※お酒は二十歳になってから!
バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?
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一話にまとめて書く
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今の形態(分離)でいい。