筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅 作:わはかす茶
「ついたー!ついたぞー!」
私達は霧の湖から一直線に突ききり、迷いの竹林までダッシュでたどり着いた。ダッシュというよりも、私が能力で書いた
「うおっ!?」
チルノが一足先に百足から飛び降りて走ろうとしたので、影を踏んで足止めだけした。
「凄く便利なのね……なんか妖怪として負けた気分。」
「確かに万能……ではありますけど、器用貧乏ですので。」
私の能力を妬く影狼を宥め、百足を地面の影に溶かす。私の能力は比較的オールラウンドに対応できるが、弱点や欠点が無いわけではなく寧ろ短所の方が山積みだ。
長所は影で再現できるモノはなんでも再現することができること。姿形なんでも私が思った通りに描けるこの能力は、弘法を始めとしたあらゆる物書きが欲しがるのかもしれない。
創造した物を紛いなりにも自分の武器にできる、という点は確かに使っていて便利だ。
だが、そんな考えをひっくり返すほど不便でもある。
まず一つ目の短所は機動力に欠けること。これまで魔理沙やフランと戦ってきて、速い相手には大抵ロクな抵抗が出来ないと感じた。考える、描く、再現するという行動のラグ……隙が無視できないくらい大きいのだ。
更にはその場その場で機転を利かせ、常に走り回りながら頭を巡らせかつ相手の出方に気を配らなくてはならない。
それ故二つ目の短所に、平行して考え事をしないといけない点がある。避けるだけではじり貧だし、反撃に集中すれば被弾してしまう。
実際前者はフランで、後者は魔理沙とアリス相手に痛感させられているのだ。
この能力を与えられただけで果たして強くなれるかと言われれば私は否と答える。
仕込みが万全でかつ、守りに徹すればそれなりに時間を稼ぐことは出来る。しかしフランのように仕込みごと破壊する相手には手も脚も出ないのが事実だ。
普通の妖怪……よりは多少強いのかもしれないけど、速い相手や能力について知られた瞬間無力になるこの能力自体が突飛して強い訳じゃない。
それに、そもそも私自身がそこまで強くないのだから。
「ま、楽じゃないですよ。」
私は一言そう呟き、影狼に笑いかけた。
「でも……なんでも再現できるのかぁ。それって凄いことじゃない?」
「……まあなんでもといっても、想像の及ぶ範囲だけど。」
だが影狼はこの能力を羨ましがっている。人間の言葉で隣の芝生は青いとも言うが、妖怪同士でも能力を羨ましがる現象は少なくない。
「あと、再現できるのはあくまで姿形だけ。力量は術者本人に依存するから、完全にそっくりそのまま真似できるわけじゃない。」
「それくらいわかってるわよ。そんな都合のいい力があったら貴女は自分から動いて異変を起こしてるわ。」
影狼は「わかってる」と一言返してくれた。やはり彼女のようにちゃんと話を聞いてくれる人は安心できる。
「その、さっきはごめん。価値観はちょっと違うけど、低俗とか言い過ぎた。」
「良いわよ、気にしてない。貴女のような考えの妖怪もまだまだ沢山いるし。」
溝が出来るのを嫌い、私は一言影狼に謝った。話が出来る相手、というのは少なからず持っておきたい。これからの幻想郷を生きていく上で参考にしたい部分もあるしな。
「なあ黒葉!なんでも再現できるってことはあたいも描けるのか!?」
と、今度はチルノが目を輝かせてそんなことを聞いてきた。愚問だな。ハリボテ程度ならいくらでも描いてやるよ。
「描けるよ。」
「ほんとか!?描いて描いて!」
チルノに頼まれるまま、私は地面から約2メートルに渡る巨大な筆を取り出した。筆先を地面に叩きつけると、びちゃりと黒いインクが跳ねる。
チルノの顔と地面を交互に見ながら、私はゆっくりと人の形を描いていく。
『.....。』
そして暫くして、真っ黒な体表を除けば瓜二つな原寸大チルノが完成した。輪郭から服まで立体的に再現できたと個人的に思っている。一言も発しないけどね。
「すげー!すげーよ黒葉!あたいが、あたいがいる!」
どうやらお気に召したようで何よりである。自分と瓜二つの存在がいるって不気味に感じる人も少なからずいるはずだが、チルノは寧ろ自尊心の塊。こうなることも予想できた。
「ほ、ほんとそっくりねー。」
「ふふ、ありがとう。」
影狼もチルノの出来に驚きを隠せないようだ。
「もしよければ影狼も描いてみようか?」
「いや、遠慮するわ。ここまで似ていると、なんだか自分を見失いそうで……」
「……そりゃそうか。」
モノは試しにと進めてみたが、当然ながら影狼には断られてしまった。確かに自分と同じ存在がいるってすごい不気味だし。怖いし。彼女のような答えになるのが普通だと私も思っている。
それに妖怪相手だと、自分の存在が脅かされるという考えに至ってもおかしくないだろう。自分と同じ存在が二つといることは自己存在理由が揺らいでしまいかねない。
実際私も逆の立場なら嫌だ。だからこそ、私は直接危害を加えてきた妖怪相手にしかそういうことはしていない。何かの弾みで喧嘩を買ってしまっては自分の存在が危うくなるからな。
「ねえ黒葉。もし良ければ出来るだけ仲良くしましょ?」
「そんな怯えなくてもいいじゃん。勝手な鬱憤晴らしで関係ない人を傷つけるつもりはないから私。」
一応弁明はしたけれど、影狼は自分の存在を脅かされるんじゃないかと恐怖していた。
バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?
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一話にまとめて書く
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今の形態(分離)でいい。