筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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酒の席につくまで人を信用してはいけない

「あ、おーいミスティアー!空いてるかー!」

 

 

迷いの竹林を暫く歩いたところで、一台の荷車が置いてあるのがわかった。チルノは一足早く屋台に突撃する勢いで走りだし、暖簾を潜った。

 

 

「あ、チルノちゃん!それに影狼さんと……見たことない方ですね。いらっしゃい!」

 

ミスティア、と呼ばれた少女がこちらに気付き笑顔を向ける。和服に身を包んだ桃と紫の中間の髪色をしたショートカットの女の子だが、それだけでは説明し足りない。

 

指の第一関節程度の長さを持つ、毒々しい紫色をした鋭い爪、わかさぎに似た羽のような耳を持っているが第一の特徴はやはり背中に生えた大きな翼だ。

 

 

鳥の妖怪……多分夜雀だ。夜雀というのは文字通り夜に鳴き声を上げる妖怪で、不幸の象徴であるともされている。

彼女がどんな能力を持っているかはわからないが、名も知らぬ相手に聞かれていい気分はしないだろう。

 

 

「はじめまして。黒葉と気軽に呼んでくれ。」

 

「はじめまして、ミスティア・ローレライです!」

 

 

夜雀の少女、ミスティアは意外にも丁寧に挨拶を返してくれた。チルノの友達というものだから、てっきり彼女に似て自尊心が高めなのかと思ったが。

 

 

……いや、寧ろ逆か。チルノと似た性格の奴が一緒にいたところで衝突するだけだな。

 

 

「はいはい、辛気臭い顔してないで酒よ酒。みんな大好き宴の時間よー!」

 

 

一足先に屋台の椅子に座っていた影狼が私に座れと急かす。正直なところ帰りたい、酒慣れしてないんだけどなぁ私。

 

 

「あたいも飲む~!」

 

「はいはい……あ、黒葉さんも飲みますよね!?」

 

「うっ……じゃあ一杯だけ。」

 

 

ミスティアも目をキラキラ輝かせているのを見て、断るに断れなかった私は渋々酒の席に入ることにした。

ところでチルノが酒を飲むのは果たして大丈夫なのだろうか。彼女、見た目年齢からして私にナイフぶん投げてきた光の三妖精共と同じくらいだろうに。

 

 

まあ実は意外と年齢の方は高くて、見た目が幼いだけなのかもしれないが。

 

 

「はい、どうぞ。」

 

「これは……?」

 

 

と、酒と同時に串に刺さった謎の物体を差し出された。見たところ魚のようだが……私はあまり川や湖に赴かず、食事もこれといって必要ではなかったために知識が乏しい。

 

 

「屋台自慢、八ツ目鰻(ヤツメウナギ)の蒲焼きです。」

 

 

ミスティアが簡単に説明をしてくれた。どうやらこれも店の商品であるようで、一つ頂くことにした。

 

 

うん、美味しいな。甘めな蒲焼きのタレが凄くいい。焼きたてで温かくて、ふっくらしている。その癖身はぎっしり詰まっていて、食べごたえがある。

 

 

「……美味しい。」

 

 

無意識に私はそう呟いていた。私がそれに気付いたのは、ハッとなにかを口走った気がしてミスティアの顔を見た瞬間だった。

彼女は幼いながらも妖艶で大人っぽく妖しい笑みを浮かべる。目を細く閉じてわざとらしく笑みを作る、純粋な笑いではない……邪気ある顔だ。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「……」

 

 

素直にお礼を言われると、なんか恥ずかしいな。誉められるべきはこれを作ったミスティアなのであって、なぜそんな彼女が私なんかにお礼をいうのか。

 

 

解せぬ。調子が狂う。

 

 

「っ……」

 

 

私は恥ずかしさを紛らわす為にわざとらしく酒を啜った。アルコール独特の熱っぽさが舌を焼き、喉を通り抜ける。頭が少しぼんやりとして、酔っていることを自覚する。

 

 

「そんでさぁぁぁ、酷いと思わない黒葉ぁぁ??」

 

「か、影狼さnnnnnnnnnッッッッッ!?」

 

 

突如ゼロ距離で抱きついてくる影狼。ああ、完全に酔っぱらいモードだ。急に来たもんだからビックリして思わず敬語がでた。

 

 

「あ、あー。そう、そうだね。」

 

 

こういう時ってどうすればいいのかわからない。酔っぱらいのノリなんて知らないから何をすれば正解なのか全く理解が追い付かない。

 

 

「ち、チルノちゃr」

 

 

そうだ私たちは二人じゃない、もう一人頼れる子がいる。と私はほんの僅かな期待を込め、影狼の隣にいるチルノに声を掛け助けを求める。

 

 

「Zzzzz……」

 

 

あぁ、うん。寝てた。

 

 

お酒はあまり強くないだろうと思ってたが、まさか寝てしまってたとは。友達とはいえ、仮にも人の店で眠りこけるなんて。良識なさすぎだろこの子。

 

 

「ミスティア、これはどうすれば……」

 

「いつもの事ですから気にしないでください。」

 

 

どうやらチルノはずっと前からこんな調子らしい。ミスティアもそれを知っていてお酒を提供しているのだから余程懐の広く、優しい妖怪なのだろう。

 

 

 

ダンッ

 

 

 

「おかわりぃぃ!!」

 

 

グラスを勢いよく卓上に叩きつけ、御代わりを頼む影狼。ああ、さっきの優しくて大人びた彼女は一体どこにいってしまわれたのだろうか。

 

 

「ダンッじゃねえよ危ねぇなお前。」

 

「んええぇ?お前じゃないですぅぅぅー。」

 

 

グラスが割れかねない、と注意しても聞く耳は持ってないようだ。その獣耳は今や飾りになってしまっている。

 

 

 

「……今日はずいぶん賑やかだな。それに珍しい客もいる。」

 

 

そんな私の助け船と言わんばかりにピッタリなタイミングで、少し遠くの方から聞きなれない声がしたと共に真っ白な長髪の少女が姿を現したのだった。

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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