筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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人里に住まう妖怪

「……ひえぇ。」

 

 

結局遠くへ吹き飛ばされた鳴子を回収するのにちょっと手間どったが、どうにか人里のやつらに妖怪同士の衝突を見られるのは回避できたようだ。

 

今の服装は擬態もなんもしてない妖服だからね。今の私はれっきとした妖怪なのだから。

 

 

「すまない……っと謝りはしないよ。気付いてたなら言ってくれて良かったのに。」

 

「なんなら最初からわかってたよー!」

 

「……嘘おっしゃい。 」

 

 

 

そもそもわかってたら喧嘩なんて吹っ掛けないくせに。

 

 

と、まあ鳴子本人からはまったくもって反省の意を感じられないのだが。まあこれがいつもの鳴子だとわかっているこっちからすれば、もはや「いつもの」である。

もう小鮫も私も、彼女の振る舞いには慣れっこであるため、今や溜め息しかでない。逆に謝られなんかしたらこっちが困惑するわ。

 

 

「じゃあ黒葉、ちょっと″朝を伝えに行ってくるね″!!」

 

「おいちょっと待てや」

 

 

気を取り直して、と鳴子がさも当たり前のように人里に向かっていこうとしたため、その首根っこと頭を両手で掴んで止める。これじゃあ私が止めた意味がないだろうに。

 

 

「なんでだよー!太陽が私を呼んでるんだよー!?」

 

「今日は生憎の曇りと言った筈なんだけどね……。あと妖怪の本領は夜だし。」

 

「はーなーせぇぇぇぇ!!」

 

 

かなりの力で前に出ようとする彼女をなんとか押さえつけ、宥める。でも鶏の妖怪なら朝に活動するといっても差し支えない……のかな?

 

 

ブンッ!!!

 

 

「あっっっ!!!」

 

 

あ、しまった。変なこと考えて力が緩み、鳴子を逃がす結果となってしまった。結構速いし、頭と身体の両方を押さえないと駄目だから、捕まえるのがめんどくさいヤツなんだこれが。

 

 

「くっそ……!『黒鉄球』!!」

 

 

投げ出された身体をくるりと捻って着地させ、愛用の武器である鎖付き鉄球を地面から出現させる。

 

 

そのまま鳴子をぶん殴る勢いで、どうにか足を止めようと振り回していく。

 

 

 

ドゴォン!!

 

「キャハハッ!朝ですよー!朝だよぉー!」

 

 

しかし鳴子も逃げることに関しては強い。鶏の妖怪というのもあって、走るスピードはかなりのものだからだ。

 

 

『朝ですよおおおおおおおっ!!』

 

 

更に彼女は鉄球を避けながら、さも余裕といった素振りで自分の責務を全うしていく。

 

 

「イヤァァァァァァッ!!!!」

 

 

 

その責務とは、言ってしまえば目覚ましである。

目を開けたら首のない妖怪が朝を告げにやって来ていて……そんなグロテスクな姿を目に焼き付けさせられるのだ。たまったものではない。

 

 

 

「バッドモーニング♪」

 

 

文字通り、最悪の目覚め。妖怪の恐怖を忘れた人間が感じる事ができる、数少ない妖怪体験だ。いやまあ、傍迷惑なことには変わりないんだけど、うん。

 

 

「はあ……これはもう、無理だな。」

 

 

私はもう手遅れなことを察し、手に持つ鉄球を離してしまった。傍迷惑な妖怪ではあるが、裏を返せばそれ以上の事はしてこないドッキリ妖怪なのだから。

 

 

恐らく心を喰らう妖怪……のタイプだ。

 

 

さて、落ち着いた時にでもあいつを回収しようかな。なんか無害っぽいし、私が介入して何かあったらそれこそ本末転倒というもの。

 

 

 

「あーさーでーすー……」

 

 

 

ゴンッ!!!!

 

 

彼女が人里の中でも一際大きな建物に差しかかったとき、偶然外に出ようとしていた人と彼女の頭が衝突した。

 

腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪の女性。頭には頂に赤いリボンをつけた帽子を乗せている。

 

全体的に白と青で纏め、赤のアクセントを所々に加えた彼女がその建物から出てきたのだが、彼女の姿には見覚えがあった。

 

 

「慧音さん……」

 

 

そう、彼女は人間社会に溶け込む数少ない妖怪の上白沢慧音という。年も私より上で先輩にあたる。

 

 

「まったく、傍迷惑なものだな。」

 

 

彼女は鳴子とぶつかったことをなんとも思っていない。というかわざとぶつかった?頭突きした?

 

 

「きゅ~~……」

 

 

鳴子は突然飛んできた頭突きによってノックアウトさせられ、仰向けで地面に突っ伏している。この様子だとしばらく目を覚ますことはなさそうだ。

 

 

「すみません慧音さん、私が目を逸らした隙にこの子……」

 

「なんか母親みたいなことを言うんだな、黒葉。」

 

「ま、まあ保護者みたいなものですけど……」

 

 

あれが自分の子供とかちょっと勘弁してほしい。自由奔放というそんな生易しいものじゃないんだよ、もうあの子は。

 

 

「連帯責任ということで、一発食らっとくか?」

 

「……丁重にお断りさせて頂きます。あのホントやめてください死んでしまいまs」

 

 

 

ゴンッ!!!!

 

 

「だあっ!!!」

 

「喧嘩両成敗。さっき人里で暴れまわってたの、ちゃんと見てたからな?」

 

 

激痛と共にひび割れそうになる頭を押さえ、その場に倒れる私の耳にそんな言葉が届く。どうやら私が鳴子を鎮圧していたあれが喧嘩に見えていたらしい。

 

 

 

くそ、慧音さんは理解力こそあれど先走って行動する癖があるからな。一応人里にいた頃からの知り合いだから、話せばわかってくれるだろうが……クッソ痛い……。

 

 

 

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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