筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅 作:わはかす茶
「鳴子……さんが執筆グループに入っているというのはにわかに信じがたいですが、まあいいでしょう。」
「あーっ、馬鹿にしてんなこいつ!」
阿求が話を進め、馬鹿にされたと噛みつく鳴子。確かに鳴子が本を書くイメージとかどっからどうみても沸かないよな。うん。
「いえいえ、貴女は妖怪の中でもとりわけ活動的で、身体で知識を吸収しているとさえ思っていたものですから。」
「へっへー。ま、誉めても何も出ないけど?」
誉めてない、誉めてないんだよ。そんな満面な笑みでドヤらないでこっちが恥ずかしい。
ただ皮肉言って貶してるだけだから彼女。多分いつも里を駆けずり回ってる脳足りんとしか思われてないよ、うん。
「鳴子さんは……グループの中でどういった立ち位置なんですか?この子がまともな文章を書けると思えないんですけど。」
皮肉を皮肉とわからず舞い上がってる鳴子を余所に、阿求は私にそんなことを聞いてきた。確かにこの子は文字こそ読めるが書くことはできない。
まあ意思疏通は出来るし(こちらの望んだ行動をするとはいってない)、
会話が支離滅裂ってわけじゃないから(突拍子もないことを言いすぎて対処に困るんだが)、
別に構わないのだけどね(ただ擬音で会話しようとするのは止めてくれ流石にわからん)。
「この子はうちの脚がわりといった所ですね。彼女がいてくれるから、普段目に出来ないような場所を探す手間が省ける。例え文字は書けなくても、ちゃんと貢献はしているので。」
「へへーん、私だって
いやまあ、そんな名前を着けた覚えもなければ、今のも半分皮肉みたいなものだがな。今回は確かに誉めてはいるけど。
……というか、ここ数年は効力がなくなって彼女を利用する手立ても無くなってたから、ほぼ執筆活動には貢献してないんだけどね。
あと一応、絵は描く。阿鼻叫喚の地獄絵図と言えば概ね彼女の描く絵がどの程度のものかは想像できるだろうか?
いや、結構独創的で個性的……なのかな?抽象画ってやつだよ(違う)。
「……では、鳴子さんの方は一旦おいておくとして、貴女の書いた本をいくつか見せてもらえますか?」
「手持ちはこれくらいですが、良ければ。」
気を取り直して、と本を見せるよう頼んできた阿求に向け、複数の書物を並べる。複数の妖怪の″ガワ″を記録した[無然妖怪影絵巻]を筆頭に、複数の武器の形を理解する為の図鑑のようなものから小説、伝記まで様々だ。
この場にない本も含めれば、両手には収まらないくらい書いている。
「これだけの本……小鈴が見たら大喜びしそう。」
ペラペラと本を捲りながら、阿求はそう言ってクスッと微笑んで見せた。小鈴というと、少し前に人里を訪れた時に出会ったあの女の子だ。妖魔本をコレクションしているらしい無謀で無警戒な人間。
そんな彼女と知り合いだった訳か。まあ同じ人里で暮らす人間同士、自然ではあるけども。
「ふむ……二つ名としては《処刑人の影》《断罪を描く影法師》あたりでしょうか。後は……《鮮明に煌めくシルエット》とかどうです?」
今読んでいた本を閉じ、阿求が聞いてくる。彼女の連ねる言葉は、多分二つ名というものだろう。本名ではないそれが必要か……と考えるのは無粋かもしれない。折角私にあだ名をつけてくれるというなら、少し腰を落ち着けて聞くとしよう。
「……正直どれも理に
私は彼女を追い詰めない程度に、そう言葉を投げ掛ける。別に無くてもいいけど、あってもいい。だからここで「やっぱやめた」と言われても別になんとも思わないけど、この三つの中だったらどれで呼ばれても悪い気はしない。
《処刑人の影》、《断罪を描く影法師》……は私の持つ武器やスペルカードをなぞらえた二つ名だ。鎖付き鉄球や振り子ギロチン、串刺し刑、ファラリスの牛……そういった刑罰を元にしたスペルカードが幾つもあるし、それを再現したというのも事実だ。これらの二つ名は私を表す上で理に適っていると言えるだろう。
《鮮明に煌めくシルエット》……は私の能力そのものを表す言葉なのだろう。シルエットは影。影は本来物や人の形だけをぼんやりと明らかにするものだが、私は″影″をまるで生きているかのように操ることができる。
執筆したものに命を吹き込み、輝かせてやることができる……そんな私を体現した二つ名なのだろう。
黒葉の二つ名について、どれがいいかアンケートを取ります!全部つけちゃえって人向けにも作りますので答えてくださると幸いです。
面白いと思ってくださったら、ブックマークや評価、感想も是非是非!
夜爛黒葉の二つ名はどれがいいでしょうか?
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処刑人の影
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断罪の影法師
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鮮明に煌めくシルエット
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全部つけちゃえ!