筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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前話で省略した戦闘背景です。見苦しい展開や戦闘描写が苦手な方は次へどうぞ。
黒葉の戦闘風景が見たいという物好きは下へまいります、どうぞ。







『影で陰を描く程度の能力』

まずは足元の影を走らせ、少女を囲う。背中から身の丈程ある巨大な筆を作り出し、ぐっと力を入れて自分の身体からそれを引き剥がした。

 

 

 

「お...筆??」

 

 

少女は箒に跨がって空を飛び、様子を窺っているようだ。彼女のように空を飛ぶタイプは正直苦手だ。能力で捕らえるにしても、その難易度は地上にいる相手の比じゃない。

 

 

 

ならば……予め囲いを作ろう。彼女の機動力を殺す程の、狭い、狭い鳥籠を。

 

 

「″影符″.『箱庭(はこにわ)大暗斑(だいあんはん)』。」

 

 

一つ目のスペルカード宣言をすると共に、私は手に持つ筆を乱暴に振り回す。筆がかなりのサイズなのもあって飛び散る墨の量も一般のそれを凌駕する。

 

 

 

「おわっ!!竜巻ぃ!?」

 

 

筆を数回振り回したことで周囲に黒い竜巻が発生。これで下準備は終えた。

 

 

ポウッ!!ポン!!パァンッ!!

 

 

竜巻に閉じ込められた少女に容赦なく墨の礫が浴びせかけられる。だがこのスペルカードの真髄は、爪程のサイズだった墨が突如人を飲み込むほどに膨張して爆発することにある。

その威力はさることながら、当然爆発したものからも衝撃で飛び散った残り香のような弾幕が降り注ぐ。避けきるのは容易ではない。

 

 

 

 

でも……なんか当たってないな。弾幕が膨張し爆発する仕組みを瞬時に理解し、徹底して被弾しないように努めているようだ。これだから空中戦特化な相手は苦手なんだ。

 

 

 

結構無茶苦茶な軌道で小粒にすら被弾せず、まるで私を弄んでいるかのように悠々と箒で空を飛ぶ。このままこのスペルカードで攻めても当たる気がしない。

 

 

 

瞬時に竜巻を止ませ、一つ目のスペルカードを仕舞った。その間少女を様子を見上げると、何やら七、八程度の角を持つ不思議な道具を握って滑空しているのが見えた。

 

 

───来る!

 

 

″恋符″、『ノンディレクショナルレーザー』!!

 

 

少女の叫びに呼応して、幾つもの直線的なレーザーが空から降り注ぐ。

まあ空……というのも語弊があるが。正確には少女の手に持つあの筒みたいなものからレーザーがポンポン放たれているらしい。

 

いやまず、

レーザーがポンポンってなんだよ。

 

ま、まあ幸い追尾はしてこないから避けるのは難しくないけれども。反撃にしては結構手痛いことしてくるじゃないか……正直ルーミアの件もあって所詮人間だと高を括っていたけど、こりゃあ骨が折れるや。

 

 

 

寧ろ鎌鼬であってくれた方が何倍もマシだった。

 

 

 

「おっと。」

 

「うわ、ズルい!」

 

 

ノンディレクショナルレーザーの1つが私の顔を削り取るように掠めたが、身体も墨や影みたいなものだから掠めた程度じゃ当たってないも同然である。

 

 

「妖術『将夜叉』。」

 

「!!」

 

 

 

足でトントンと地面を蹴り、影を自分の前に走らせる。それは平面なものから少しずつ立体的に、やがて私と瓜二つな少女へと変化した。私と違って眼球も黒く、髪色も薄まった黒ではあるが。

 

 

 

「本体の白髪と分身の黒髪…ちょっと厄介だぜ。」

 

……。

 

 

 

少女……ああ、変な帽子を被った方は苦虫を噛み潰したような顔をして、私と夜叉を交互に睨んでいる。妖術《将夜叉》は自分の分身を作る私の能力である。

こんな一々説明はしないが、久しい弾幕勝負だ。このくらい赦されよう。

 

 

私と夜叉で少女挟み撃ちにし、それぞれ弾幕を放ちながらタイミングを窺っている。

私の弾幕は『黒鉄球の刑』由来の黒く尖ったものと、『箱庭の大暗斑』の時に放った黒い球体の二種類だ。あまり直接的な殺傷力のない能力なので、弾幕は鋭利なものにしようと構想した結果でもある。

 

 

...当たらなきゃ意味がないのは分かっているのだが、形から入ろうとするのが私の性分なのだ。

 

 

 

「「″閉符″、『鎖国のアビス』!!!」」

 

 

囲い込んだ少女目掛けて()(夜叉)の弾幕が襲い来る。

 

 

ちなみに″影符″と″閉符″。どちらも私の用いる基本的なスペルカードだが、手のように気軽に使えて応用が利くのが″影符″なのに対して発動に条件が付いて使い勝手が悪いのが″閉符″だ。

 

 

 

勿論、その点″閉符″は″影符″に比べてより強力な出来になっている。

 

 

 

 

ビュバッ!!!

 

 

球体の弾幕が針に触れ、爆ぜた。墨汁のような液体となって滴り落ち、地面を黒く染めていく。

そして最後の一滴が漆黒の地面に落ちた瞬間、地面から鋭く、竹林の竹の如く延びた針が少女のすぐ真横の空を突いた。

 

 

「───ッ!!?」

 

 

少女が驚く隙すら与えず、剣山の如く針が生え伸びていく。弾幕にムラがあって確実に標的を捉えられないのが難点だが、それでも良い牽制にはなるはずだ。

 

 

 

 

当然ここで弾幕を止める通りはない。地面が針で覆われるまで、このスペルカードは終わらない。

 

 

「ひいぃ~、冗談きついぜまったく!」

 

「そう言う割には結構余裕そうじゃん。」

 

 

実際少女は、初見である筈の『鎖国のアビス』を見切ったのか刺されない位置を探し回るように飛んでいる。

 

 

 

 

……本当に速い奴は総じて苦手だ。

 

 

 

…………。

 

「ああ退いていいよ。お疲れ、夜叉。」

 

 

『鎖国のアビス』を凌がれ、いよいよ意義を無くした夜叉がこちらに視線を送ってきた。私がさっと一言告げると、こくりと頷いてその身体を地面へと沈めていった。

 

 

中々やるなこの人間。ふざけた格好してる割りに、機動力もパワーも並の妖怪より遥かに優れている。

 

 

 

いいな、その力。刈り取ってやりたい。

 

 

 

私はすうっと息を吸って、小さく吐いた。ここまで心臓の鼓動が高鳴っているのを感じたのは、果たしていつ以来だったろう。格下だとみくびっていた人間に、今全てが競り返されそうになっている。

 

 

プライドも、覚悟も、なにもかも────

 

 

恋符、『マスタースパーク』!!

 

影符、『断頭台の狂喜劇』!!

 

 

互いのスペルカード宣言が、同時に高々と響き渡る。

 

 

私が振り子ギロチンを出現させたのと、少女が手に持つアイテムから極太のレーザーを発射したのが同時だった。気付いたときには、私の目前に少女のスペルカードが迫っていた。今から避けるのは最早不可能、加えてまだ展開準備すらままなってないのだ。

 

 

 

 

 

──ああ、このスペルカードじゃ遅すぎたか。

 

 

 

 

そんな私の後悔すら呑み込むように、先程の物とは比にならない程太く、巨大なレーザーが全身を包み込んでいったのだった。

 

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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