筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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例え妖怪であっても目の前で自分の書いた本を読まれると気恥ずかしくなる

今回の戦いを通じ、幻想郷が変わっているということを痛感せざるを得なかった。ルーミアとの出会いは元より、あの白黒箒少女のように、もしくはそれ以上に強い人間というのがごろごろいるのだろう。

 

 

 

あまり戦ってみたいとは正直思わないけれど、私の物書きとしての創作意欲は今までになく掻き立てられている。

らしくない、とは思っている。私はあくまでも寡黙で目立つことを嫌う影の妖怪だ。今更人間と親睦を深めようなんざ考えてない。どうせ話を聞く程度、そのくらいなら私にだって出来るはず。

 

 

それと今回思ったのは、私が自分で思うより感情に流されやすいということだ。こういう内なる部分は、私一人では中々理解が及ばぬもの。対談というのも悪くはないな。

 

 

『ガアー!ガアー!』

『カアー!カアー!』

『バカー!バカー!』

 

 

明らか会話のできない、見飽きた畜生と比べれば。ああ倒れてるだけで、私はまだ生きてるよ。

 

 

こいつらは三羽烏(さんばがらす)ならぬ三馬鹿烏(さんばかがらす)である。そのうちの二羽は烏ではなく鷹と禿鷲だが。

 

 

幻想郷で息絶えた人間や妖怪の肉を啄む質も素行も悪い妖怪トリオ。昔はよく見ていたが、そういえば最近になってあまり見なくなった気はする。

 

 

体長2m程の大柄な鷹、鷹より一回り小さな烏、鷹と烏の間ほどの大きさをした禿鷲のコンビであり、人間の子供や弱った妖怪、またはその死骸を食べているのだ。

 

多分私が死んだと勘違いしてやって来たのだろう。迷惑な話だわ。

 

 

「まったく、もう少し休ませてよ。」

『バk』

 

こいつらの対処はいたって簡単で、地面へ降り立って近づいたところで嘴を思い切り掴んでやること。よく振りほどこうと抵抗しがちだが、彼らの急所は口である。

 

因みに、明確な殺意があって当てる覚悟があるのなら翼でもいい。焦って体力を浪費していては彼らの思うツボである。

 

 

そしてどういうわけか、彼らは常に三羽で行動している。頭の悪い禿鷲が先陣切って自爆すれば、大抵それなりに頭の回る二羽は襲っては来ない。

 

 

「ほらほら、散った散った。まあ折られたかったら来て良いけどさ?」

 

『......』

 

 

烏と鷹が諦めて飛んでいったのを皮切りに、嘴を掴んでいた手を離して禿鷲を解放してやる。慌てて二羽を追って飛んでいった。

 

 

 

 

 

その三馬鹿烏が飛んでいった空を見上げれば、既に日が昇り始めている。

 

 

……黎明。鮮やかな光を放つ太陽は周囲を照らすと共に、遮るモノの形をした影を色濃く残す。

 

 

 

「……そろそろ行くか。」

 

 

 

私はまだ疲れの残る重い腰を上げ、再び人里へと歩を進めることにした。

 

 

─────

 

ルーミアに教わった方角などとっくに忘れ、影を走らせて周囲を見渡して暫く、日が高く昇る前に人里へと辿り着いた。

 

 

人里の朝は早く、まだ早朝だというのに既にかなりの人が出歩いているようである。露店はまだ開かれていないが、建物の外に出て皆が里を行き交っている。

 

 

(確か妖怪だとバレると迫害される……からな。)

 

 

過去の経験則から妖怪と悟られぬよう、私も服装をチェンジしている。黒に近い灰色の着物に身を纏い、あたかも一般の人間であるように振る舞う。

 

 

(にしても、人家と店の区別がつかぬな……)

 

 

 

ここに来たのも本当に数十、下手したら百年くらい前かもしれない。昔のように血が散乱していた様子は今や、欠片も見られなかった。

 

 

(──ポトッ)

 

 

ちょっとだけ影を落として、中を覗かせて貰おう。

 

 

蕎麦屋に花屋に団子屋。豆腐屋と何やらお店が幾つかあるようだ。それに色んな道具が置かれた不思議な店がある。あとそれっぽいのはお茶くらいかな。

 

 

他は民家と寺子屋と……ん?本屋?一階が完全に本だけが置かれている民家があるのが見えた。

 

 

……へえ。この家、危険な妖魔本やら山積みじゃんか。明らか触っちゃいけない人骨の装飾が施された本とか、一般的なものとはとても思えない書物を取り扱っているようだ。

 

 

やっぱり人里とはいっても、妖怪の一匹くらい住んでるもんかn...?

 

 

(あ、え、人間!?)

 

 

 

影が掴んだ視界に思わずぎょっとする。この本屋の店主は普通の人間、それもルーミアと同じくらいの小柄な女の子だったのだ。

彼女は表紙に題の無い黒い本をパラパラと捲り、何やら物思いに耽っている様子だ。

 

 

一般的な妖魔本、と言えども普通の人間が読めるような代物ではない筈なのだが……。もしかして読めているのだろうか。

 

 

……何かを言っているようだが聞き取れん。踏んだ影の視界を共有出来るのは便利だが、あくまで拾えるのは影目線の視界だけであり、私本体が赴かなければ傍聴は出来ない。

 

 

仮に彼女が本を読めていたとして、幻想郷の人間がここまで進歩していたなんて……。

 

いや、いやいやいや。それは流石におかしいだろ。かつてお互いが抗争状態だった時、独自に生まれたのがまさしく彼女が持っている妖魔本に使われている、古典妖怪の言語だ。

それを普通の人間の少女が読めるなんてとても信じられない。

 

 

 

それにあの本、何処か見覚えg……ってそれ私の書いた本─────!!!あああああ!?あー!?あっ!?あっ!あ───!?(崩壊)

 

 

 

 

 

 

 

(少女悶絶中・・・)

 

 

 

あぁ、取り乱したな。えっと、あの少女が持つ本というのも、私がかつて執筆した妖魔本のひとつである。妖怪の書いた本だから妖魔本。実に安直な響きだろう。

 

 

それと悶絶に何の関係がというと、特に無い。ああ、ちょっとした作家の発作ってやつさ。読まれてるのが少し嬉しかっただけ。

 

 

確かあの本...には、一体なにを書いてたっけな?今や黒歴史同然の、書き立ての頃の詩じゃなければ何だって良いのだが……。

 

 

 

チラッ...

 

ああ、『無然妖怪影絵巻』か。幻想郷には特段何でもない、どういう存在理念を持っているか分からず生きている私のような妖怪が無限に転がっている。そんな妖怪達を見てきた私が完全独自に記し手掛けた本だ。

 

 

……かの妖怪の存在の証明と希望を記した偉大な妖魔本とは、比べようもなく低俗な本だがな。

 

 

それにあの本の真意は……と、その話は置いておこう。今しがた彼女に興味が湧いた。

 

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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