筆を走らせ三千里─物書き妖怪放浪旅   作:わはかす茶

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今代の巫女

(……え?)

 

そこまで聞いたところで、私はふと何か不穏なものがよぎった気がした。

 

そういえばあの本、古典妖怪の文字で書いたと思うんだけどな。この娘……妖怪の文字が読めるとでも言うのか?

 

 

 

 

こんな普通の小娘がぁ?

 

 

 

 

 

……おっとおっと、思わず本音が漏れかけて変な顔をしてたみたいだ。さっき空飛ぶ人間にボコボコにされたばかりじゃないかまったく。

 

 

 

それにこんな本を集めている物好きだ、正直読めないものを集める変人という考えはそもそもなかったしな……。仮にもしそうだったら、死にたがりなただの馬鹿としか言いようがない。というか今でもまだそう思ってる。

例え読めたところで対処出来なければ焼け石に水。それどころか封印の鍵を開けられる人物となればその結末は容易に想像できる。

 

 

 

「.....。」

 

 

この少女、危険すぎる(確信)。無防備すぎて何に巻き込まれるか分かったもんじゃない。

 

 

 

「本、読めるのか。」

 

 

「はい!私の能力らしいんですけど、ここにある本なら全部読めます!」

 

 

 

ああ、こいつはぁ……死ぬな、多分。

 

 

 

「じゃ、じゃあ私行くよ。求めてたものはなさそうだ……うん?」

 

 

一刻も早くここから退散しようと踵を返そうとした矢先、ぐっと着物を握られ引き留められた。

 

 

 

「お金、払ってください。」

 

「ああ、これ──────」

 

 

 

小鈴は私の手に持つ空白だった本を指差してそう言った。どうやらこの店に置いてある本は一応商品だから、だと。さっき貰っていいか聞いたのだが、彼女も商売人の端くれ。売れるものは売っておきたいのが本音らしい。

 

 

 

 

 

 

結局、銭銅貨5枚でこの妖魔本を買いました。ぼったくり噛まされた気はするが、弁償になるよりはマシだからな。

 

───────

 

 

その後小鈴に見送られ、鈴奈庵を後にした。幻想郷で本は高い。それこそ一般的な家庭にはまず置かれないくらいには。

今回買った妖魔本だって、本来済むなら一厘でもよかったはずなのに。

 

 

……高い買い物だった。暫く本は自分の書く分だけでいいや。それに、『無然妖怪影絵巻』があれほど綺麗な状態で保存されているのが見れて嬉しくはあったしさ。

 

 

それに───

 

 

 

「おいそれ、妖魔本じゃないか!!」

 

「……っ!!?」

 

 

 

唐突に誰かに呼び止められ、反射的にビクッと肩を震わせた。

不味い、まさか妖魔本について知っている人物がこの人里にいるとh……

 

 

 

 

あ?

 

 

 

私は二重に驚く羽目になったらしい。私に話しかけてきた人物というのも、先程私をぼこぼこにしたあの金髪の白黒箒娘だったのだから。

 

 

 

「人間でありながら里でそんなこそこそと、怪しいぜお前!!」

 

「あ……え??」

 

 

既に私の事を忘れているのか、少女はこちらに気づくことなく加えて妖魔本持ちの怪しい人間という、妙な格付けがされていた。

 

 

 

……おいおい、記憶に残らない程弱かったかよ。悪かったな畜生。

 

 

 

「ちょっと魔理沙……そんな急に走り出してどうしたってのよ。」

 

 

 

私をぼこした金髪白黒……魔理沙を追ってか、腋を晒した紅白の巫女服を着た少女がこちらに走ってきたではないか。頭の大きなリボンがチャームポイントな彼女の、妖力とも違う異様な気配と服装から、瞬時に今代の『博麗の巫女』であることが理解できた。

 

 

 

「って、あんた人間…………じゃないわよね。一体何処から湧いた妖怪よ。」

 

 

うっわ、目をつけられたよ。それもあの博麗の巫女さんに。幻想郷に住む人妖の誰もが知っている、この世界最強の巫女、博麗。こんなに小さかったかと改めて記憶を思い返すも、その名前こそ知っていれど姿については記憶にございませんでした。

 

 

「そんなポッと出の人魂みたいな扱いしなくても……」

 

「妖怪なんて怨霊と対して変わらないから別にいいのよ。」

 

「そんなあ……。」

 

 

 

私は再びガクッと肩を下ろした。初対面だというのにここまで酷い扱いがあるものか。魔理沙然り博麗の巫女然り、小鈴も含めて変な人間が増えた気がする。

 

 

「んあ、お前妖怪なのか?」

 

 

 

 

 

ザワッ!!

 

 

 

 

ザワザワ……

 

ザワザワ……

 

ザワザワ……

 

 

白黒が大声でそう言った瞬間、道行く人々の視線がこちらに向いた気がした。やはりおかしいのはこいつらの方だ。未だ妖怪を恐れる文化は、以前ほどではないが残っている。

 

 

 

 

そして魔理沙...か、こいつは今朝倒した相手の顔すら覚えられんというのか……一応人間に化けているとはいえ、顔は全く変わってないぞ。

 

 

 

「……無神経な。」

 

私は再び筆を取りだし、くるくると片手で振り回す。巫女の方も注目を嫌ってか「はあ、」と小さく溜め息を溢していた。巫女に見つかったというだけで死を覚悟する事態なのに、人里に居づらくなるのも勘弁してほしい。

 

 

「……多分小鈴の店でしょうけど、妖怪が人里で妖魔本を買ったという事実は巫女として見過ごせないわ。何をするつもりなの!?」

 

「あー、二人して迫らなくていいから。」

 

 

妖魔本を手にした妖怪、というだけでかなりの警戒心露にし、敵意に近い感情をこちらに向けてきている。別に異変を起こす気も何もないんですがねえ。どうして付喪神を葬っただけでとやかく言われないといけないのか。

 

 

 

 

(少女説明中...)

 

 

とにかく私から伝えるべきことは伝えた。問答無用とばかりに退治される可能性も考えて、ここはするりと影を走らせて保険を立てておく。

 

 

 

「はあ……なるほど?小鈴の店で妖怪化した本を屠ってあげたと。」

 

「それに買った本はこれ一冊なので。盗品でもないし、ちゃんとお金なら払ってますから。」

 

「...なんだ、魔理沙よりしっかりしてるじゃないの。」

 

「盗んでない!借りてるだけだぜ、死ぬまでな!」

 

 

 

 

魔理沙、一般的にはそれを泥棒というんだけど。そんな俳句っぽく言わなくてもいいんじゃない?

 

 

「あと、一応人間に化けてたつもりなので……咎められてもちょっと困るんですけど。」

 

「それ、魔理沙のせいだから。」

 

「むー…………」

 

 

魔理沙は未だ納得できないといった形で私を睨み付けている。妖魔本を買った人間、として私を咎めるつもりだったかは知らないが。

 

 

それと、やはりさっき戦った相手であることは覚えてなさそうだ。服装を変えれば思い出すかもしれないが、ここで変装を解くつもりは毛頭ない。

 

 

「……。」

 

とりあえず、悪さをする気はないってことね。それさえわかれば十分よ。」

 

「は……はい。」

 

 

暫く続くかと思われた沈黙は、博麗の巫女によってかなり呆気なく切り捨てられた。かつては妖怪を目にした瞬間、形相を変えて死に物狂いで追ってくる奴等もいたため、私としては今代の巫女の方針は助かっている。

 

 

「因みに、異変なんて起こそうものなら速攻で退治してやるんだからね。肝に命じときなさい。」

 

 

彼女はそう言い切ると、こちらの返答を待たず何処かへと歩き去ってしまった。掴み所がないというかなんというか……話やすくも取っ付きにくいな。

 

バトルシーンは一話に完結させた方が宜しいですか?それとも会話シーン終了後、戦闘描写を省略して次話に投稿し、見たい人だけ見るかたちにした方が宜しいですか?

  • 一話にまとめて書く
  • 今の形態(分離)でいい。
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