『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!   作:IXAハーメルン

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アルファとカクヨムにも投稿していますが、せっかくアカウントを作ったのでこちらでもデータ保存用兼新話執筆用として投稿しようかなと
アルファの執筆機能死ぬほど使いにくいんですよね


第一話

 突然隣の山田がナイフを振るい、私の足を浅く切りつけた。

 無様に転び、泣きそうになる。

 

「え……!?」

「それじゃ、あとはよろしく!」

 

 手を伸ばし助けを求めるも、アイツらはニコニコ笑顔で走り去ってしまった。

 奥からはドスドスと強烈な足音を立て、私をぶち殺そうと嬉々として駆け寄ってくるオーク。

 

 死ぬ、のか。

 

 本当は探索者なんてやらず、幸せに暮らしたかった。

 普通の家族と笑ったり喧嘩したりして、友達とスイーツ店巡りをしたかった。

 

 それが現実は、十五になってそうそう、こんな場所で何も出来ずに死ぬ。

 

 はあ……本当に最悪だ。

 拾い集めていた希望の実を一気に口へ放り込み、最後の晩餐を終える。

 

 サクサクと青臭く、苦く、渋く、酸っぱい。

 食べるドブが人生最後とは、我ながら悲しいものだ。

 

 希望の実は食べると一日分の食事が不要になるほど、栄養とカロリーがある。

 その代わり吐きそうなほどまずいが。

 

 希望の実を食べ尽くせば、目の前にいるのは絶望のみ。

 

『グオオオオオオオッ!』

 

 高々と掲げられた石斧。

 ああ、最後にショートケーキ食べたかった……

 

 

「あ……お金ない……」

 

 財布を天高く掲げ、硬貨が一枚たりとも転がり落ちてこないことを確認する。

 なんてことだ。施設から貰った大切なお金だったのに、人生で2度目となる憧れだったショートケーキやら、スイーツやらに全部使い切ってしまった。

 だって夢だったんだ、お腹いっぱい甘いものを食べるの。

 

 夢なら仕方ない、誰も見ていない中一人頷く。

 

 人々があくせくと行き来する中、公園のベンチでこの先どうするか頭を抱える。

 

 私は結城フォリア、現在住所不定の15歳だ。

 色々あって母親から保護され児童養護施設にいたのだが、15という年齢になり多少の金と共に追い出され今に至る。

 名前から分かる通りハーフで、見た目だけは整った外国人に見えるらしい。

 だから何だって話なのだが、そんなことよりお金をくれ。

 

 本当は働き場所も決まっていたのだが、なんだか工場長がねちっこく私を見てくるのが気持ち悪くて、直ぐに辞めてしまった。

 ごめん、誘ってくれた人。

 

 さて、この先どうするかという話だが、いくつか選択肢がある。

 ソープに沈むか、バイトを掛け持ち生き延びるか、命を懸けて探索者になりダンジョンへ潜るかだ。

 

 いやはや、栄養不足で15だというのに小学生ほどの身体をしている私がソープなどに行けば、恐らく数日持たずに死ぬのが目に見えている。

 バイトもそこまで体力が持つとは思えない。

 

 だが、その体力不足を解決するのが、ダンジョンへ潜ることだ。

 詳しいことは知らないが、三十年ほど前に異世界と繋がった? らしく、世界各地にぽこじゃかとダンジョンが生まれた。

 その中で戦えば魔力が染み渡り、どんどん身体が強くなる……らしい。

 

「ダンジョンで鍛えて、体力を付けてからバイトをする……完璧」

 

 ダンジョンでとれるアイテムや素材は高価で取引されるらしいが、私がそこまで強くなれるとも思えないし、最低限の体力をつけれればいいのだ。

 ダンジョン内には食べられるものが生えているらしいし、それを食べれば食費もかからない。

 

 なんて天才的なんだ、自分の考えに拍手を送りたい。

 スニーカーの紐をキュッと結び、気分一新その場から走り去った。

 

 

「えーっと、新規登録……ですか?」

「うん、お金一円もないから」

「……お母さんとか呼んできてくれるかな? 小学生一人だと登録できないのよ」

 

 ようやくたどり着いた探索者協会、受付の女性が眉を顰める。

 カウンター……だと頭しか出ないので、椅子に立って交渉をするが、困った顔で拒絶されてしまう。

 

 なんてことだ、完全に小学生だと思われている。

 お母さんは今どこに居るかもわかりません、多分ソープに沈んでいますとは言えない。

 困った……

 

 するとカウンターの裏から、筋肉モリモリのゴリラっぽいハゲが現れた。

 凄い筋肉だ、ぴくぴくしてて気持ち悪い。

 

「おう、どうした園崎」

「あ、マスター。その、この子が探索者になると言って聞かなくて……」

「探索者にならないと死ぬ。本当に無一文」

「ふむ……《鑑定》 なんだ、もう十五じゃねえか、登録できるぞ」

「嘘ぉ!? 《鑑定》……あ、本当だ……申し訳ありません、今から登録しますね!」

 

 なんと筋肉ゴリラのおかげで窮地を免れることが出来た。

 ありがとう筋肉ハゲゴリラ……ハゲゴリラは失礼かな、筋肉にしよう。

 

 それにしても鑑定、か。

 きっとスキルという奴なのだろう。あまりになじみがなさ過ぎて失念していたが、確認方法があるなら最初からそうしておけばよかった。

 

 スキルという奴は始めてダンジョンに入ると、ステータスと共に必ず付与されるらしい。

 その中でも鑑定は基本的かつ必須なスキルで、真っ先に皆が取ると知り合いの万丈が言っていた。

 私もダンジョンで食べ物を漁るのなら取るべきだろう、お腹壊すと困るし。

 

 名前、年齢、住所は無しと伝え暫く待てば、一枚のプレートが手渡された。

 伝えたことだけが書かれている,簡素な金属の板。だがこれが冒険者の証。

 登録は無料だ。レベルの高い探索者というのは一般人と比べ、絶大な力を振るうことが出来、それを生み出すために各国が躍起になっているから。

 

 なんだか体力をつけるために来ただけなのに、こうやって持ってみれば不思議な実感がわいてくる。

 取り敢えずバイトを掛け持ちできるくらい体力つけて、お腹いっぱい甘いものを食べるために頑張ろう。

 

「お嬢ちゃん」

 

 カードをリュックに仕舞うと、突然筋肉が話しかけてきた。

 

「なに?」

「事情は知らんが探索者は過酷だ。それだけの価値があり、国も目を逸らしているとはいえ、最初の一年で三割が死ぬ……これで包丁でもなんでもいい、身を守れる武器を買ってこい」

「え……? いいの?」

 

 筋肉が手渡してきたのは、一枚のお札。

 ケーキがニ十個位買える、凄い大金だ。

 

 私が二度見するとニカっと白い歯を見せ、陽気に笑う筋肉。

 やっぱりこの筋肉はすごい良い奴だ。


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