『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!   作:IXAハーメルン

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第八十四話

 身体を通り抜けてしまい攻撃の通用しない狼、上手く攻撃を避ける安心院さん。

 ポーションで多少の回復を見せているとはいえ未だダメージの抜けきらない伊達さんは、彼女の背後から援護を行っている。

 併せて実力は拮抗している……ように見えた。

 けれどこのままではじりじりと体力を削られていき、どうあがいても体格の小さな彼女が最後にはやられてしまうことは誰にだってわかる。

 彼女自身それを理解して風を纏い速攻を仕掛けようとはしているようなのだが、やはり攻撃が当たらなければ体力を削るなど夢のまた夢、体中にかすり傷が生まれ、その制服は確実に切り刻まれていった。

 

 もし彼女が倒れれば次標的になるのは伊達さん、そして私だ。

 

 有効打を紡ぐ方法は……ある。

 こんな時、は想定していなかったが、何か詰まった時のためにSPを全く使わず取っておいた。

 

 だが今何も考えずにレベルを上げて、体がもつのだろうか。

 

 そう思った瞬間、ピリリと幻痛が肩から駆け抜けた。

 

 息が漏れる。

 

 レベルと共に耐久や体力自体も大きく上がったからか、もしくは私が痛みに慣れたからか、攻撃スキルに『スキル累乗』を掛けても以前ほどの痛みに襲われることは少なくなった。

 けれどそれは今のスキルレベルだからだ。

 1上げるだけでも負荷が大きく上がるというのに、この巨狼へ有効打を与えるほどスキルレベルを上げて、私の体は戦いについてこられるのか。

 

「きゃあっ!?」

「安心院っ!? チッ、俺が前に出る!」

 

 巻かれた黒髪の端が飛ぶ。

 悲鳴の主はざっくりと腕を切り裂かれ吹き飛び、草片をまき散らしながら地を転がる。

 

 未だ背中からの出血が収まっていないというのに、彼女をかばうようにして盾を取り出し、銃を片手に援護から護衛へと回った伊達さん。

 されど相手も心得たもの。その巨体に見合わぬ小回りの利いた噛み付きや尾による薙ぎ払いを絡め、執拗に彼の傷口ばかりを狙っていた。

 

「逃げなさい!」

 

 満身創痍の彼女が遠くで叫ぶ。

 

「で、でも……!」

「いいから! 私たちは貴女が離れた後で逃げますわ! だから早く!」

 

 嘘だ。

 二人ともボロボロで、どう考えたって逃げられるわけがない。

 なんで、なんでそんなにまっすぐに、躊躇わずに逃げろなんて言えるんだ。

 単に憐れんで慈悲を施すんじゃなくて、顔のどこを見てもそれはどこにもなくて……私なんかのために命まで投げ捨てて、本当に意味が分からない。

 

 あいつら(・・・・)みたいに真っ先に切り捨てて逃げ出してくれれば、こっちだって気兼ねなく逃げ出せるのに。

 

 琉希だってそうだ。

 私より弱いくせに守るだなんだなんて言って、どいつもこいつも、本当に理解できない。

 ママもパパも居なくなって、何度も他の人にいじめられて、失敗を繰り返して、誰も彼もが嫌な奴らばっかだと思えたのに……どうして今さらになっていい人ばっかり出てくるんだ、なんで私なんかにやさしくするんだ、なんでそんな無条件に人にやさしくなれるんだ。

 もっと醜い本性見せてよ。

 もっと嫌な人間になってよ。

 

 じゃないと……

 

「逃げろ!」

「逃げて!」

 

―――――――――――――――――

 

 

結城 フォリア 15歳

 

LV 13324

HP 20334/26566 MP 3043/66410

物攻 26043 魔攻 0

耐久 79965 俊敏 93227

知力 13324 運 1

 

SP 20520

 

スキル

 

スキル累乗 LV3

悪食 LV5

口下手 LV11

経験値上昇 LV6

鈍器 LV4

活人剣 LV11

ステップ LV1

アイテムボックス LV3

 

Σ∀しょウ 浸食率 1%

 

―――――――――――――――――

 

 

 逃げられる、わけない。

 

―――――――――――

 

スキル累乗LV3→LV4

必要SP:300

 

―――――――――――

 

『スキル累乗がLV4へ上昇しました』

「う……ああああああっ! 『ストライク』ッ!」

「フォリアちゃん!? 何で……早く逃げなさいっ!」

 

 届かない。

 私の攻撃なんて避ける価値がないと、透過させるだけ無駄だと炎狼は鼻を鳴らす。 

 

『スキル累乗がLV5へ上昇しました』

『スキル累乗がLV6へ上昇しました』

 

「嫌だっ! 『ストライク』ッ!」

 

 火の粉が飛び散る。

 でも届かない、まだ足りない。

 

『スキル累乗がLV7へ上昇しました』

『スキル累乗がLV8へ上昇しました』

 

「ううううああああああっ! 『ストライク』ッ!!」

 

『ギャンッ!?』

 

 目の前にある私の腕なんかより太いやつの肉を殴り、初めて感じた手ごたえ。

 ようやく、届いた。

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