BUMP OF CHICKEN『ゼロ』の二次創作です。
ぜひ原曲MVをご覧下さい!

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ゼロ(ショートカット&ナレ足し)(BUMP二次創作)

昔むかし

戦乱の時代、隣り合う国々は、互いに奪い合い、喰い喰われて栄えては滅んでいた。

初めは国同士の争いであっても、人と人とが殺し合えば恨みが募り、個々の理由が更に争いをこじらせ……

峻険な山並みと広大な湖によって周囲から隔絶され、黒い髪と瞳の民族が独自の文化を発展させた『黒の国』と、

その山並みを取り囲むように周囲の国々を飲み込み、急激に国土を拡大する『赤の国』も、

争いは一進一退で数世代に渡っていた。

 

しかし、赤の国の急襲によって王都の防衛を突破され、

黒の国は今、風前の灯火。

 

 

夜明け前 黒の国 郊外

 

 

兵士「居たぞ!こっちだ!」

 

トーチ「クッ、もう見付かったか…。姫様、こちらへ!早く!」

 

ララ「……もう、いや……」

 

タッタッタッ……

 

一度敵の手中に落ち、手枷で互いを繋がれるも、命からがら王都から逃げ出した姫君ララは、

たった一人付いてきた騎士トーチに護られ、励まされながらただただ逃げ惑う。

 

トーチ(ん?アレは…)

 

ララ「ハァ……ハァ……も、もう、私の事など……」

 

トーチ「姫様!もう少し頑張って下さい!」

 

ララ「え……?」

 

トーチ「ここを登った先に、簡単な造りの橋がかかっています!

あそこまで行けば……」

 

ララ「い、や……ハァッ……もう、そんな体力が……」

 

トーチ「姫様!!」

 

ララ「ッ…」

 

トーチ「お願いします。貴方と、共に行かせてください」

 

ララ「ハァ…わか、た…」

 

二人は街道から外れ、薄暗い山道を進む。

敵兵の追撃を躱しながらも、麓からチラリと見えた吊り橋へと向かう。

 

曹長「逃がすな!矢を放て!殺しても構わん!」

 

ヒュン

ドスッ

 

トーチ「っ!……このまま走り抜けますよ。早く!」

 

ララ「ゼェッ……ハァ……」

 

敵兵等は二人目掛けて矢を放ち始めた。徐々に矢の雨は激しさを増していく。

 

ヒュンッヒュンッ

 

トーチ「もう少し…さあ、ここを渡ればっ」

 

ギシッ

 

ようやく辿り着いた吊り橋へと足を踏み出した瞬間、背後の木々の間から敵兵が現れた。

 

兵士「待てぇっ!」

 

ララ「ヒッ」

 

敵兵の剣が姫君に振りかぶられた直後、騎士の剣が敵兵の喉笛を斬り裂く。

 

ザシュッ

 

トーチ「…近付かれた方が余程やり易い。雑魚共が…。

さあ、早く。でも落ちないように、慎重に」

 

ララ「もう……ハァ……」

 

ギシッギシッ

 

トーチ「…よし。ではでは皆様、さようなら」

 

ブツンッブツンッ

 

2人が渡り終えた直後、騎士は振り返ると、躊躇いもなく吊り橋のロープを次々と切り始めた。

元々簡素な作りの橋は、あっという間にひっくり返り、追い縋る敵兵達を谷底へ落として行く。

 

兵士「う、うわぁ!」

 

ヒュー…ボチャンッボチャン…

 

トーチ「ふぅ…コレで暫くは大丈夫でしょう。

姫様、よく頑張って下さいました」

 

騎士が姫君に振り返り、微笑みながら褒め称えた。が、その声をかき消す様に対岸から敵の曹長の怒鳴り声が響く。

 

曹長「黒き髪と瞳の悪魔め!決して逃がさんぞおっ!!」

 

ララ「ヒッ……」

 

騎士は曹長を一瞥するも、直ぐに姫君に向き直り、怯える彼女とともに森の奥へと歩を進める。

 

トーチ「……参りましょう。姫様」

 

スタスタスタ……

 

 

黒の国 山林内山小屋 夜

 

 

トーチ「都合良く山小屋があって助かりました…

さ、火が入りましたよ。姫様、お座り下さい」

 

ララ「えぇ。…うーん。やっぱり手枷は外せないわね…」

 

トーチ「そうですね…流石の俺でも鋼鉄の鎖は…」

 

パチッ…パチ…

 

爆ぜる火を眺めながら、携帯食糧の簡素な食事を口に運ぶ。

何となく居心地の悪い沈黙が、山小屋の中に満ちている。

 

ララ「……もう遅いわ。今夜はここで眠りましょう」

 

トーチ「……えぇ。俺は見張りをします。

姫様はどうぞごゆっくりおやすみ下さい」

 

ララ「…ありがとう。おやすみなさい……」

 

軽く会話と挨拶を交わし、緊張感のあるままに山の夜は更けていった。

 

 

3日後 黒の国辺境 昼

 

 

それからも追手を撒きながら、慣れない山を降り、国境を目指して進む。街に近くなれば歩きやすくはなるが、敵に見つかりやすくもなった。

 

タッタッタッ……

 

ララ「ハァ……ハァ……」

 

トーチ「ハァッ…ハァ…」

 

2人で山中を駆けずり回り、ロクに休憩も出来ず、食事も取れずに消耗し切った身体を引き摺るように動かし続ける。

そんな2人の耳に、無慈悲な敵の叫び声が響く。

 

兵士「居たぞ!捕まえろっ!」

 

トーチ「……っ!しつこい……っ!」

 

騎士が近付く兵士から順に切り捨てていく。手枷で繋がれた姫君は、騎士が動く度に激しく手を引かれ、目の前で繰り広げられる命懸けの戦いを目の当たりにしていた。

 

ザシュッ

ドサッ

ザシュッ

ブシュッ

 

ララ「ヒッ!……」

トーチ「クソッ……キリがない……姫様、1度身を隠さないと……」

トーチ「ひめ、さま?」

ララ「……」

 

優秀な騎士の活躍により一旦敵の猛攻が途切れた隙に物陰に隠れるよう、姫君に伝えようとして、彼女の異変に気付いた。最早限界を突破した彼女の目は虚空を睨み、身体がぐらりと揺れ、そのままゆっくりと倒れ伏した。

 

ドサッ

 

トーチ「姫様!」

 

ララ「……」

 

慌てて騎士が姫君の身体を抱き寄せ、物陰に引きずり込み、必死に呼び掛ける。

 

トーチ「姫様!姫様!!……ララ、様っ」

 

ララ「……あ?私は、今、何を…」

 

やがて、姫君がゆっくりと目を開き、身体を起こすが、

実際に抱えたその身体が如何に儚くなっているか感じ取った騎士はより焦りを募らせた。

 

トーチ「…姫様、こんなに痩せて……お疲れでしょう?

食べ物も丸一日全く食べていないし……」

 

気遣う言葉を優しく掛けたその時、1本の矢が放たれた。

その矢は狙い違わず、姫君の薄くなった身体の中心を刺し貫いた。

 

ヒュンッ

ドスッ

 

ララ「ウッ?!ぐ……あ……」

 

ドサッ

カラン……

 

再び倒れた彼女の身体は弱く痙攣し、傷口からはおびただしい量の血が流れ出る。

当たり前すぎて外す事を試そうともしなかったために気付かなかったが、やせ細った手は、あっさりと手枷の輪から滑り抜けた。

 

トーチ「ララ様!」

 

ララ「ぁ……や、だ……しに、たくな…と、ち…」

 

とっさに騎士が姫君の身体を抱き呼び掛けるが、最期の弱々しい言葉を遺し、彼女の全身から命が消えた。

 

トーチ「……ララ様、良かったですね。

最後に、手枷が、外れました……

こんなに、痩せて……」

 

ヒュンッドスッ

ヒュン……

 

悲しみにくれる騎士にも容赦なく矢の雨が降り注ぐ。

最後の力を振り絞って立ち上がり、腰の剣を振り上げるが、

却って敵の弓兵のいい的になり、あっさりと身体に矢を受ける。

 

ヒュンッドスッ

 

トーチ「ぐ……」

 

ヒュンッドスッドッ

 

トーチ「ぅ……ぐ……」

 

ドサッ

 

耐えて敵に駆け寄ろうとするも、次々と飛んでくる矢を受け続け、やがて騎士の体は傾き倒れ、動かなくなった。

 

曹長「……ふん。やっと死んだか。死に損ないめが……。おい、姫をさっさと回収しろ。全く、とんだ寄り道をさせられたもんだ……」

 

トーチ(……!や、めろ!触るな!ララ様に…汚い手で触るんじゃないッ!やめ、ろ…。ら、ら……様…)

 

最後の騎士の願いも虚しく、姫君の遺体のみが赤の国に運ばれていき、黒の国は完全に終わりを告げた。

 

迷子の足音 消えた

代わりに 祈りの歌を

そこで 炎になるのだろう

続く者の 灯火に……

 

原曲 BUMP OF CHICKEN ゼロ

作詞作曲 藤原基央

編作 シリウス

 

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