舞台は原作11巻。神野区でオールマイトが戦ってトゥルーフォームを見せた時らへんですね。
ああ嫌だ。なんで俺はこんな不便な個性なんだ…人のためとか自己犠牲とか…俺が一番嫌いなものなのに…だけど…はぁ…まぁ…しょうがない。思っちゃったから。“彼を救けたいって”
少年は、瓦礫に挟まっていた体を起こした。
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いずれは神野区の悪夢と呼ばれる惨劇。並びたつビルは倒壊し、コンクリートで舗装されているはずの道路は黄土色の土が露呈している。攫われた雄英生を救うために極秘音速で試まれた救助は結果として歴史に名を遺す大災害を引き起こすこととなった。その元凶は、たった一人の敵。
平穏に今日を終えようとしていた市民は気づいた。力は正義にのみ宿るものではないと。
超人社会という自分でも異能を持てるこの社会。本来ならば混沌、無秩序となってもおかしくないのだが、平和の象徴がいてくれたおかげで日常が送れていた。
だがしかし、平和の象徴が“個性”で力を得たとすれば、その敵もまた“個性”を持っているということだ。オールマイトが“
だが、それでもだ。それでも彼は依然、平和の象徴。姿は変わろうとも、敵がたとえ師匠の孫だろうと、その心には他者へ救済心が燃え揺らぐ。
「…いよ。守るものが多いんだよオールフォーワン!!」
右手のみが巨腕化する。残り火さえ消えようとしているのがわかる。それでも、後ろの女性、町に住む人々。そしてさらわれた2人の少年を救けるべく、血反吐を吐き彼は笑う。
「だから負けないんだよ」
「…最後の一振りといったところかな?オールマイト…なら…まずは体力を削ろう」
他者から個性を奪い100年生きながらえる敵“オールフォーワン”。5年前腸を撒き散らしながらも自らに致命傷を与えた彼を警戒する。まだ、まだやつの目は生きている。ならば、先に肉体を削いでいこう・
炎、電気、爆発、台風。多数の個性を持つ彼は遠隔攻撃でオールマイトを削る。オールマイトは背を向けない。逃げればその瞬間自分の生まれた意味がなくなるから。振り絞った力を使うわけにはいかない。これが無くなればもう誰も救けられない。どうにか、手は…!!
その瞬間、オールフォーワンは明確に後方の女性を狙う。
走っていても間に合わない。ならば…!!
SSMMAAHH!!
拳での風圧で、移動と反撃を同時に行う。その拳から発生した風圧で烈火俊風は凪ぎ、其の隙に女性を引っ張り上げる。お礼を言う前に避難を命じ安全を確保する。なんとか視認を出さずにここは乗り切った。全ての住民は避難が完了したのだ。
だがしかし、最後の灯火は…消えてしまう。
「やっとだ…やっとだよオールマイト。弟から何代も何代も、僕の前に出てきては殺される。その力は僕にとって喜劇を見せてくれる道具でしか無かった。だが君のおかげで僕は悲劇の主人公のような末路を辿ってしまったんだ」
ペタペタと能面の顔をなでるオールフォーワン。5年前に受けた傷はまだ癒えてないのだ。視覚まで失った。この借りは…ここで返す。
空中にいる彼の腕は分裂していく。それだけではない。一本一本が膨張し、鋭利に、重機的になる。筋肉は裂けたかと思えば合着し異形の腕を形作っていく。
「【筋骨発条化】【瞬発力】×4【膂力増強】×3【増殖】【肥大化】【鋲】【エアウォーク】【槍骨】…確実に君を殺す為に、今の僕が掛け合わせられる最高・最適な“個性”達で」
空中に浮かぶオールフォーワン。しわ一つなく、紳士的なスーツ姿に反し、その右腕は禍々しい狂気となる。“殺意”という概念を表したかのような腕だ。
「君を殴る」
(君の仲にもうワンフォーオールは無い。譲渡後の残りかすも先の攻撃で使い切った。それでも君は避けきれない。なぜなら君はみんなのヒーローだから!誰も君を救けられない。君は平和の象徴だから!1人で平和の象徴となった代償は)
「君の命と
巨大な悪意が迫ってくる。抗うすべはもうない。ワンフォーオールも使い切った。ここまでよく戦った。お師匠も許してくれるだろう。あの世で…先代様もよくやったと褒め称えてくれるだろう…
「…って考える前に!!抗え!!私!!!」
踏ん張る力だって無い。今にも昏倒しそうだ。病人のような細腕。こんな私には誰も期待しないだろう。だが!!それでも!!
「私は平和の象徴だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
上がらないはずの腕を振り上げ、握れないはずの手で拳を作る。どんな巨悪にも打ち勝ち、どんな困ってる人も救ける。そんなヒーローである為に、迫るオールフォーワンに振りかぶる。
「おおおおおおお!!!」
「ぬぅぅぅぅぅん!!!」
DDGGAAAANNNNNN!
どんなに気力を振り絞ろうと0が1になることは無い。客観的に見てオールマイトが勝つ確率は0%。死亡する確率は100%だった。これはAFOの見立てだが、“サーチ”という観察力に優れた個性により算出された数値。間違う余地はなかった。
唯一の誤算は…その場に“ご都合主義”“バグ”に対抗できるものが来ること。
猟奇的なオールフォーワンの拳は、たった一人の少年に受け止められていた。半径30メートルは地面がえぐれるほどのパワー、殺意をこの者は平気な顔をして受け止めている。そして、“サーチ”にかかるその“個性”はあり得ないものだ。
100年生きていてこんなことはなかった。思わず距離を取る悪の首領。
そんな敵に気づかないほど消耗しているオールマイト。立っているのがやっとだ。
一拍間をおいて、衝撃が無かったことに気づく。彼が顔を上げると、教え子が顔をゆがめながら立っていた。
「オールマイト。とりあえずこの辺にいて。もしかしたら力を借りるかもっす…」
「…皆誰少年…なぜ…いや、それよりも逃げるんだ!やつは少年が思う以上の化け物だ!!私が時間を稼ぐ間に」
「“時間を稼ぐ”っていう消極的な案を出すほど、あなたは疲弊してるんでしょ?大丈夫っすよ。最悪なことに、今は、俺の“個性”は使えるみたいなんすよ…」
「どういう…」
そこまででオールマイトの言葉は遮られる。オールフォーワンによる鋲骨暴風が2人を襲ったからだ。鋭く尖った骨骨は、何十もの弾幕となり、容赦なく風穴を開けに跳んでくる。
だがしかし、そのすべてはAにより弾かれる。なにか技を出したわけでもない。ただ、体を硬化し、そして何本も腕を複製しその身とオールマイトを守っただけ。
「痛った…複製椀にも痛覚あるのかよ…ガードの意味ないじゃんか…」
ぼやきながらその個性を解いていく。
自信の遠隔攻撃が全く通用しなかったことに驚くも、なお冷静なオールフォーワン。とにかく様子を見ながら戦うことを選択。【電気】×【増強】での1000万ボルトを放つ。
光の速さでの攻撃を避けきれるわけがない。物理耐性はそれなりにあっても、電気という特殊かつシンプルなものに対してどうするか。対する少年は、その場から一歩も動かなかった。
BBZZZZZZZ!!!
その一身に荒れに荒れた雷を受ける。しかし、今度は痛くもかゆくもない。体内に電気をため込み、放つことができるのだ。雷程度ならいくらでも受けられる。
「お返しっだ!!!」
右手から肘にかけて、氷をまとったテープを放ち、敵の拘束を狙う。パキパキと凍てつきながらも速度を上げる拘束具にオールフォーワンは【燃焼】×3で対応する。炎がテープから伝わりAに迫る。
「あっつ!!!んなろ!!!」
先ほどとは反対に、左手をかざす。指がビキビキと音をたてて痛みが走る。痛みとともに迸るのは熱き焔。さらに集中すると、手のひらからは黒く、そして紅い影が出てくる。
オールフォーワンは再びそれを払おうかとするも、赤黒いそれはまるで生きているかのようにうねり避け、その身を食らう。
右肩に炎の牙が刺さり、さすがに動揺する。特殊攻撃を受けたのは何年ぶりか。急いではがす。
その間にAは距離を詰める。一瞬だ。一秒もかかっていない。その短時間で彼は大地を幾度も踏みしめた。その足にはいつの間にか筒が生え、エンジンをふかしている。
DRRRNNN!!
ひとつ数える間もなくオールフォーワンの顔面に蹴りが迫る。【瞬発力】を常に発動している彼はその程度の攻撃は見切れる。少し首を反らし紙一重で避ける。その避け方は相手に格の違いを見せつける避け方。
確かに攻撃は避けた。なのに…なぜか…なぜかその顔に殴打が入る。
BBBOOMM!
爆発を添えて。
「悪の大将っつったって案外弱いね。こーんな子どもにやられるとか恥ずかしくない?」
振り振りと尻尾を振りながらBOMBOMと爆炎をチラつかせる。蹴りは避けられても、常人には無い尻尾まで計算に入れることはオールフォーワンでもできなかった。
挑発だと分かっている。そこに憤りは感じない。しかしこの状況はいただけない。後継者である死柄木弔がせっせと積み上げたヒーローへの不信用。今回で完全にヒーロー社会を潰せるはずだった。なのに…こんな1人、しかも攫ってきた内の1人の少年に覆されてなるものか。
腕は気味悪く膨れ、またも異形の腕と化す。
もう一度、こんどはフルパワーでお見舞いしよう。先ほどのは【衝撃反転】のための布石。次は違う。正真正銘、自分の中でも最高威力の技。多数個性複合打撃。この世界で自分しかできないこの技は、たとえオールマイトでも滅すことができるだろう。
少年は冷めた目で佇む。
目の前で異形化していくオールフォーワンを見ての感想は気持ち悪いの一言。できれば 戦いたくなかった。いうなれば自分は事件の被害者。今回は救けてもらう立場だ。ヒーローを目指している理由だって、この個性の副作用のせいだ。
一つため息をついて、哀れな敵に声をかける。一応の忠告。
「おーい…今から俺もあんたに本気の一発入れるけど…多分俺が勝つから、今のうちに降伏した方がいいよー…」
案の定聞いていない。聞こえてないのか、無視してるのか。それは敵のみぞ知るといったところだ。
だが忠告はした。もうなにも準備することはない。
一瞬空気が凍り付く。敵のみが準備をしており、少年はただ突っ立っているだけだったからだ。ヘリは空中を飛び回りリポートする。この瞬間、この国の生末が決まる。政治とか、謝罪会見だとか、そんなものじゃない。文字通り、力のみが支配する社会が明日に迫っている。明日も日常が遅れるように、ヒーローが戦っているのだ。そのヒーローはオールマイト、そして、1人の少年。これを放送せずに何がジャーナリストか。
「…」
少年は目を閉じる。ここまで一度に個性を使ったことがない。どんな害が自分に出るかわからない。もしかしたら死ぬのかもしれない。死ぬほど嫌だが仕方がない。誰かのために、オールマイトのために戦わなきゃ、と一瞬でも思ってしまったから。彼の個性はその思いを見のがさない。
ドクンッと心臓が脈打つと、体の細胞一つ一つが変化していく。
少年の右腕には、コンクリ―トが渦巻き、纏われる。その圧迫でブシュブシュと出血していくが、血は宙を揺らいだ後、拳を武装化していく。血が出るたびに体力と引き換えに血を生成することで失血死を免れる。
痛みに耐えながらも、少年は個性を重ねていく。そして思い出したかのように少年はオールマイトに歩み寄る。少年の左手からは桃色の香粉が漂い、オールマイトは痛みが和らぐ。
「皆誰少年…君は…一体…」
「まあまあとりあえず…俺も痛いんで手短にと…」
そう言って真っ直ぐオールマイトの目を見据える。くぼんだ目元の奥にある、水色の瞳を見つめながら少年は口にだす。
「あなたの力、俺に貸して下さい。理由はまた今度ってことで」
【
条件を満たすと、承諾を得た人間の個性が使用可能となる!!一度承諾を得られれば、その使用は幾年も可能!その条件は“誰かのために力を行使した
い”と思うこと!!】
「…ああ。わかった…!!」
【副作用…“誰かのために”という行動を一度考えた時、その行動をとらなければ…死に至る!!】
オールマイトの承諾を得た瞬間、少年の体にOFAが流れ出す。個性の調整なんぞ知ったこっちゃない。ビキビキと痛むし指も折れていくが問題ない。壊れた先から治癒していけばいい。体力が減ろうともこの一打で全てが決まる。出し惜しみなしで体を強化していく。学校の皆、先生、承諾してくれて…ありがとう。
「【セメント】×【操血】×【眠り香】×【治癒】×」
コンクリートや己の血で包まれた右腕とは逆に、左手にはぽっかりと穴が開いている。まるで何物でも吸い込めるような…黒い穴。
オールフォーワンは、その穴からの吸引により踏ん張り切れず、吸い寄せられていく。
「【ブラックホール】×…」
体中から藍色の稲妻、火花が飛び散る。深い青色も発光し逆立つ。彼の光は周囲を薄暗くともす。その光は、皆を照らすものではなく“オールマイト”のための光だ。彼を助けたいと一瞬思った。“誰かのために”と思ったならば、動かなけれな死んでしまう。全く面倒な個性だと思いつつ、彼は拳を振るう。
「【ワン・フォー・オール】!!」
三者三様、各々その意味が異なる。
オールフォーオール。
自分が誰かを救う為にしか、その力は発揮されない。発揮された力は皆の
彼の力は、悪の象徴を打つ為ではなく、誰かの為の力だった。そして、今回その
“誰か”は、自己犠牲を止めない我だった。
いかがだったでしょうか。もし”おもしろい””もっと”と思われた方は感想、評価のほどよろしくお願いします。
主人公の名前とか個性名とかまだちゃんと決めてないんです。仮ですね。
個性についての疑問とか情景とかわからなかったら遠慮なくお願い致します!!