黄金の都。三百年と少しの京の時代。
魑魅魍魎が跋扈し、それを祓う武士や法師が僅かばかりの神秘を束ねて表の夜を闊歩したそんな時代。
「よりにもよって、型月時空とは度しがたい」
私――安倍晴明は黄昏に暮れていた。
二千十五年
人類史は焼却され、その一年後には地球上の全ての記録が巻き戻り新しい世界への肥やしとなる。
私は最高位の千里眼持ちではなかったが、星読みには長けていた。
少し目がよかったせいで、善からぬモノまで視られてしまったこともあったが、この瞳のお陰で自己の証明を明確化し、自らが創作の世界にいるという異常性に狂ってしまわぬようにと自制出来た。
仮に私がこの瞳を持っていなければ確実にバーサーカー適正を得ていたのだろうと思う。
幸いにも私にはキャスター適正しかなく、聖杯の力で強引にルーラーへと仕立て上げることでやっと二つのクラスの適正を持つことになる至って普通のサーヴァントだ。
『転生者』という特質性に目を瞑れば……。
魔術的には観測次元から落ちた人間の一人。その魂が母体の中にあった安倍晴明の肉体に憑依し、安倍晴明として生まれ落ちた異端な存在。それが私だ。
故に正史にある安倍晴明とは似て非なる存在だが、この世界で云う抑止力というやつの強制力を受けて、立ち塞がる様々な難解を突破した。
恐らく後世には本来の歴史と寸分違いない偉業が伝わる筈である。
本来の安倍晴明には申し訳ないと感じるが、此方も故意でやったことではないので許してもらいたい。
仮に聖杯戦争に参加する機会があれば本来の安倍晴明を誕生させる為に死力を尽くすので、それで勘弁して貰えると有り難かった。
「さてさて、私が視るにここは特異点と化しているようだが――ふむ、二部五・五章といった所か……」
朱い月の夜だ。
生前には一度として満ちたことがなかった魑魅魍魎が京を暴れまわり、それを退治する武士や法師の質と量が絶望的に足りていなかった。
「確か、特異点で消滅した命は修復しても辻褄合わせがあるだけで死の証明は覆らないのであったか。
……あまり、抑止力を本気にさせるのも困りものだ」
物語終盤であるという事情が重なってか、魑魅魍魎の強さは歴戦の彼らでも手にあまる。流石に不味いと思った晴明は空に五芒星を描くと、光の渦を走らせて近くにいた侍に噛みつこうとする鬼を吹き飛ばす。
更に彼は十二枚の栞を取り出して、
「玄武(げんぶ)、貴人(きじん)、青龍(せいりゅう)、六合(りくごう)、勾陳(こうちん)、騰虵(とうだ)、朱雀(すざく)、大裳(たいも)、白虎(びゃっこ)、大陰(たいいん)、天空(てんくう)、天后(てんこう)」
十二体の式神を召喚する。
「――往け」
夜空に散らばる十二の影。あれらは晴明の宝具の一つだが、真名解放をしなくともある程度操れるので、マスターなき今、鬼道を使うよりも安上がりで堅実的であった。
「さて、本来ならこの物語に『安倍晴明』は登場しないのだが、『
―――天資英明の安倍晴明が人知れず自害するのもそれはそれで一興だが、ここは一つ英霊らしく人理の為にと働いてみるか」
では、霊基再臨の為にこの衣装はとっておこう。
晴明は白い装束を霊子に溶かして、上等な白の着物を纏う。
「第四再臨では、母上の羽衣でも掛けてみるか……フッまさか、この私がイベントキャラとは云うまい」
安倍晴明はそうニコリと笑い、朱い夜道を歩きだした。
安倍晴明
筋力D 耐久D 敏捷C
魔力A+ 幸運C 宝具C~A+
宝具
【十二神将(じゅうにしんしょう)】
ランク:C
種別:対軍宝具
レンジ:1~99
最大捕捉:500人
安倍晴明が使役する十二体の鬼神達。彼が英霊となったことで自我が消失しており、晴明曰く「魔力燃費と引き換えに力の大半を削り落とした」
切り札としては今一火力にかける。
【????????】
ランク:A+
種別:???
レンジ:???
最大捕捉:???