魔界の大魔王(笑)として転生したが、ドラクエ世界ではなく恋姫†無双の世界に転生したのはおかしいんじゃないかな!?   作:てへぺろん

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ちょっとした戦闘回ですが、上手く書けているかな?


それでは……


本編どうぞ!




恐怖を拭い去れ!真名はついでに授けておけ!

 「ミルドラース殿……覚悟してもらおう!」

 

 

 趙雲もとい星が手にした「龍牙」をミルドラースに突き出していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……どうしてこの状況になったか。それを今から語ろう……

 

 

 始まりは少し前のことだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミルドラース殿……私と手合わせしてもらいたい!!」

 

 

 趙雲に試合を申し込まれたのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は白蓮に連れられて幽州の居城へと迎え入れられた。迎えてくれたのは白蓮だけだったがな。わかるよ、だっていきなり人外が兵士達と一緒に帰って来たら町の人々何事かと思うだろ?実際そうだったし……大騒ぎだったからな。だけど公孫賛が人々を説得して説き伏せていた……渋々に了承している人々だったが今はそれでいいと思う。俺だっていきなりミルドラースが目の前に現れたら信じられないし、疑うのは仕方ない。だからここは我慢することにした。そして俺が公孫賛呼びから真名である白蓮呼びに変わっているのはここに来る途中で授けてくれたものだ。彼女の真名は知っていたが、心の中でも信頼されていないのに真名を呼ぶのはどうかと思ったからだ。この世界に生きる人達は真名を大切にしているから俺もその想いを尊重しての行動だった。

 ちなみに一日既に経っている。俺のせいで趙雲の馬以外はどこかへ行ってしまい兵士達も白蓮もその日中に帰るのはきつかったので野宿した。みんな疲れているが眠れなかったのだろう……主に俺のせいで。だから想像以上に帰りが遅くなり町が混乱している中での「俺登場!」と言う訳よ。更に混乱したのは言うまでもないよな。それらを説き伏せた白蓮マジスゲー!彼女がこんなに心強いとは思わなかった。しかし俺を見つめる瞳に何か違和感を感じるのは気のせいなのか……気のせいだと思いたいです。

 

 

 そして居城へと足を踏み入れるとみんな俺を避けるようにモーゼの奇跡のように人の群れが二つに分かれる……だって俺ミルドラースだもん……魔王だからこんな対応されても文句言えない……悲しいが仕方ない……悲しいが仕方ないけどね!!大事なことだから2回言ったぞ!!

 心を痛めながらも城の中を案内されながら俺が連れて来られたのは一室の扉の前、その扉の先から声が聞こえてくるのはすすり泣く悲しみに染まった声だった。しかしこの声は何度も聞いたことがあった。恋姫†無双をプレイしたことがあるならば必ず耳に入って来る。そしてここは白蓮の領地ならばもうあのボインボイン娘しかいない。

 

 

 扉が開け放たれ中に居た桃色髪のたわわな果実を実らせた娘が公孫賛の姿を見るなり抱き着いてきた。

 

 

 顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにした美少女の名は劉備。お人よしで情に脆く、武力の程は彼女自身の腕はそれほどでもない天然娘。だがスタイル抜群のボインボインにはお世話になりましたと頭を下げたいぐらいだ。何がだって?想像に任せる。そして彼女の後ろにいる黒髪ボインと虎の髪飾りを付けたペッタンコがいるが、その二人は三国志で劉備の義兄弟……この世界ならば義姉妹になる関羽と張飛だ。関羽は劉備と同じくスタイル抜群で張飛はまだまだ成長途中なお子ちゃまだが、侮ってはいけない。歴史と同じく二人共猛将である故に喧嘩を売らないことをお勧めする。

 

 

 さて劉備たちの気になる反応だが……

 

 

 「白蓮ちゃんぶじでよがっだぁあああああ!!!」

 

 

 汚い……涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。これは近づかれたくない……こらこら女の子がそんな顔しちゃいけません。お嫁に行けなくなるぞ?

 

 

 それに対して公孫賛はと言うとサッと劉備の抱擁を避けた。劉備は一瞬残像を見た気がしてミルドラースも「お前そんなに俊敏だったか?」と思ったが、公孫賛は何事もなかったように振舞う。

 

 

 「私なら大丈夫だ桃香、ミルドラース様のおかげでな」

 

 

 公孫賛がそう言うと劉備こと桃香は首を傾げた。

 

 

 「このお方だ」

 

 「へっ?」

 

 

 今気づいた様子でミルドラースを見上げる形になる。目と目が合い驚かれるかとミルドラースは思っていたが……

 

 

 「おじいさんが白蓮ちゃんを助けてくれたんですね!ありがとうございます!」

 

 

 感謝されてしまった……やっぱり劉備は天然だわ。俺が人外だってことに気づいていない様子らしい……

 

 

 そんな時にミルドラースと桃香の間に割り込んだ影があった。黒髪の女性で手には「青龍偃月刀」が握られている。

 

 

 「桃香様お下がりください!!」

 

 「愛紗ちゃん!?」

 

 

 やっぱりまともな関羽は行動するわな。良かった……これで誰も反応しなかったら蜀誕生する前に滅びてしまっても文句言えないレベルだったぞ。そして残りの張飛は訳が分かっていない様子でボーっとこちらを見ているだけであった。大丈夫かよ……

 

 

 「愛紗ちゃんダメだよ!おじいさんにそんなもの向けちゃ!!」

 

 「桃香様は()()が老人に見えると言うのですか!?」

 

 「えっ?おじいさん……だよね?」

 

 「……鈴々はどう見える?」

 

 「え?おじいちゃんなのだ」

 

 「……」

 

 

 関羽は困惑した……いや、あなたが正しいんだよ。劉備と張飛はアレなだけであって関羽は何も間違ってないんだよ?だから「私がおかしいのか?」って顔しないで!突っ込んでくれる人あなたしかいないんだから!

 俺は関羽を援護してあげたかったが口は閉ざしたままだった。どうしようと困っていると何やら傍に居た公孫賛の肩が震えていた。俺以外の劉備たちもそのことに気づいたのだが……様子がおかしかった。

 

 

 「おい……愛紗……ミルドラース様に向かって()()とはどういう事だ!!?

 

 「なにを……ひっ!?」

 

 

 この場にいる全員が見てしまった。光を失い黒く濁った瞳を関羽に向ける公孫賛は人形と見間違えるような感情無き表情を浮かべ、見るもの全てを凍り付かせてしまう程だった。直接それを向けられた関羽は小さな悲鳴をあげてしまう。公孫賛と劉備は学友だったが、今までこれほどの威圧感を放つ公孫賛を見たことがなく怯えてしまう。張飛も同じで怯えてしまい劉備の影に隠れてしまった。

 

 

 「桃香と義姉妹だからと言って、ミルドラース様に対しての不敬を働くとは……流石の私も見過ごしてはおけない!!

 

 

 関羽に対して飛び掛かろうとした……だが公孫賛の肩を掴み止めた者がいた。

 

 

 趙雲であった。趙雲も共に会議室へとやってきていたのだ。何故かずっと何も語らずただ背後に控えているだけであったが、幸いにも彼女によって阻止することができた。

 

 

 「何をするんだ星!!

 

 

 ギリッと歯を砕いてしまうかのごとく力を込め、睨む姿は今までの気が優しい公孫賛とはかけ離れていた。濁った瞳が趙雲を映して今にも飛び掛かりそうな勢いだ。

 

 

 「白蓮殿落ち着いてくだされ、愛紗に悪気はなかったのです。事情も何も知らぬ故にあのような発言をしてしまった……そうだな愛紗?」

 

 「――ッ!!」

 

 

 関羽は首を何度も縦に振る。それを見た公孫賛が落ち着きを取り戻し濁っていた瞳に光が戻っていった。

 

 

 「……星の言う通りだよな……愛紗、許してくれ」

 

 「え、ええ……ま、まぁ……はい……」

 

 「……」

 

 

 ミルドラースはその光景を静かに窺っていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あれ誰だよ……俺の知っている白蓮はあんな子じゃなかったよ?もっとモジモジして可愛げがあったよ……この人もしかして白蓮の皮を被った張勲なんじゃ……いや、現実逃避はやめよう。白蓮だけれど俺の知っている白蓮じゃないことは確かだ。いや待てよ、これもしかしてヤンデレって奴なんじゃないですかね?俺があの時助けたからそうなってしまったとかそんなんじゃないのよね……そう言えばここに来る途中ずっと俺を見つめていたけど……まさかそんなことがあるわけないと思いたいです。俺は爺さんの姿でそれに人外で魔王ですよ?俺にフラグ立ったとかこれ嘘ですよねドッキリでしたって誰か言ってほしいのですけど!!?

 

 

 俺が内心そんなことを思いながら外見では平静を保っている間に白蓮が事情を話してくれた。劉備たちは大変驚いている様子だったが、お人よしの劉備は「凄いですね」って素直に褒めてくれたし、張飛の方も「いいおじいちゃんなのだ」と受け入れてくれた。この二人はちょろい……だが、関羽は常識人であるため中々受け入れられないようだ。うん、これが普通の反応なんだけどね。それでも一応納得してくれたみたいで俺は公孫賛からお礼と言う名の居候生活を送ることになった。だがここで一人浮かない顔をしている人物がいた……

 趙雲だった。俺と出会った時からずっと俺に視線を送っている……睨む形でなのだが、彼女も一応常識人なので俺に対して考えることがあるのだろう。そんな時に趙雲の方から俺に言葉をかけてきた。それが……

 

 

 「ミルドラース殿……私と手合わせしてもらいたい!!」

 

 

 理由は聞かないでほしいと頼まれた。それも真剣な表情で……俺はそれを断れなかった。何故なら口が勝手に「……うむ」と告げたからだ。俺が言ったんじゃないのに……向こうは肯定と捉えて連れられてきたのは訓練場だった。訓練場に居たまだ会ったことのない兵士達は当然驚く。だがお構いなく訓練場を貸してもらった。そしてお互いに距離を取り、始まりの合図を待つだけだった。

 

 

 当然ながら俺は焦っていた。だがこれはチャンスではないか思った。俺は一度もまだ戦闘していないが、これで自身の実力がどれほどのものかわかるのだから。相手があの趙雲だからヤバいかもしれないが、この先まだまだ趙雲のような武将と対峙するかもしれないのでいい経験になると自身で納得しておく。

 

 

 「星殿、ミルドラース殿……準備はよろしいですか?」

 

 

 関羽が趙雲とミルドラースに問う。趙雲はただ首を縦に振り了承の意を示す。ミルドラースの方もまた「……うむ」とだけ答えお互いに準備が整った。二人の試合を見ようと先ほどまで休憩していた兵士も外へ出て来て辺りは野次馬だらけとなっていた。

 

 

 いっぱいいるな……もしこんなところで無様に負けてしまったら本当に大魔王(笑)と笑われてしまう……それはイヤだ。何としても勝って俺の威厳とこれから先、巻き込まれるだろう戦いに勝利するために負けられない!!俺はもう魔王ミルドラースなんだ!そして俺は真の魔王……大魔王ミルドラースとして生きるのだ!!人間に負けるわけにはいかないのだ!!!

 

 

 戦いの合図は関羽しだい……いつの間にか風の音も鳥が羽ばたく音も消え失せて訓練場は無音の世界の中に居た。

 

 

 「……はじめ!!」

 

 

 その無音の世界に合図が響いた。その合図と共に動いたのは趙雲だった!

 

 

 「ミルドラース殿……覚悟してもらおう!」

 

 

 趙雲の槍「龍牙」がミルドラースに襲い掛かる……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「――ッ!?」

 

 

 だが槍がミルドラースに届くことはなかった。飛んだのだ。ミルドラースは空に舞い上がり槍を避けたのだ。どよめきが辺りから聞こえてくる……それもそのはずだ。ミルドラースは跳躍したのではない……文字通り空に浮かんでいたのだ。ありえない光景を目の当たりにする野次馬……だが目の前の存在が人外であるならばそれも納得がいった。趙雲はすぐさま次の手に移る。

 槍が届かない位置にいる……ならば自分が届く位置にまで行けばいい。槍を地面に突き刺し自身の体を空に浮かせる趙雲はその反動で地面に突き刺さっている槍を引っこ抜きそのままミルドラース目掛けて槍を突き出した。

 

 

 「せいっ!!」

 

 

 だがこれも避けられる。ミルドラースは空を踊るように移動して翻弄してくる。趙雲は空を飛ぶなんて出来ずに地面に引き寄せられ足をついた。

 

 

 「チッ!」

 

 

 舌打ちした。いつもの趙雲ならば格上の相手との勝負で気持ちが昂るはずだが、今の趙雲には余裕がなかった。相手は何を繰り出すかわからない未知なる存在……そして彼が言った「魔界の王にして王の中の王」これが頭から離れなかった。魔界というものがなにかわからなかったが、王の中の王……すなわちどの王よりも上ということを主張していた。ただの妖魔でもただの妖術使いでもない……彼が放つ威圧感が趙雲にはしっかりと見えていた。自分よりも遥かに大きく偉大な存在が目の前にいる。気持ちが昂る余裕すらない緊張感が趙雲のペースを乱しているのは明らかだった。

 

 

 ……ヤバかった……さっきのはヤバかった。ヤバすぎて飛んじゃったよ俺……空飛べない相手に空中に逃げるとか俺セコイ……これで(笑)ポイント1点追加されてしまった気がする……それに舌打ちされた。ごめんなさい趙雲さん今おりますから許してください……

 

 

 ミルドラースは地上へと降り立ち、様子を窺っている。趙雲の方は両手に槍を持ちゆっくりと距離を詰めていく。

 

 

 この形態接近戦得意じゃないんだよな……そうだ呪文だ!呪文のことすっかり忘れていたわ。どれどれ……ゲームのようにステータス画面が出て来てくれるわけないよねそりゃ……ん?だが頭の中に湧き上がって来るぞ。俺は呪文の出し方を知っているらしいな。よし!まずは小手調べでメラゾーマ……は止めておいた方がいいな。最上級呪文を繰り出すのは何かと危険……ならばこれしかない!

 

 

 ミルドラースは片手を星に向けた。そしてこう唱える……

 

 

 『メラ』

 

 

 腕から火球が放たれ趙雲の横を通り過ぎて地面に落下した。

 

 

 ズドンと音を立てて、趙雲が音の発生源へと目を向けると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面が高熱を浴びて燃え尽きたように真っ黒に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今のはメラゾーマではない、メラだ……

 

 

 最高の気分です♪まさかこのセリフを言える日が来るとは……口には出していないけどな。しかしメラのはずなのにこんなに威力高いんですかね?もっとソフトボールが破裂する程度だと思っていたんだけど……意外も意外で地面が真っ黒焦げになった。ヤバない?こんな強いんだ……今のがもし趙雲に当たったら……考えるだけでも恐ろしいな。

 

 

 ミルドラースは視線を逸らして黒焦げた地面を眺めていた……そんな中で趙雲はいきなり槍を構え雄たけびを上げながら突撃して来た。

 

 

 「やぁああああああああああああああ!!!」

 

 

 心の底から振り絞った声が響いく。

 

 

 ヤバいと思い俺は避けた(空中には逃げてない)が趙雲は叫びながら続けざまに攻撃を繰り出してくる。当たればダメージを受けてしまうだろうと俺は確信している。趙雲ほどの武人による攻撃で傷つかない硬い肉体ではないのだから。だが、俺は彼女らしくないと思った。武術とか武人の戦い方など俺が知るわけもないと思うが、単純な攻撃だった。ドラクエで例えるならコマンドで「特技」を憶えているのに「こうげき」しかボタンを押していないような単純な攻撃だった。それも俺が軽々と避けることができるぐらい……趙雲ほどの武人ならば俺の動きを読めてもおかしくないのに……

 

 

 「やぁあああ!!」

 

 「せぇい!!」

 

 「でぇやぁあああああ!!!」

 

 

 何度も振るうが当たらない……ミルドラースは趙雲の攻撃を涼し気に避けているように周りから見えていた。それに比べ趙雲は周りから見ても後がない様子である。ミルドラースが攻撃したのはメラの一度きりであるが、そこから様子がおかしくなったのは誰の目から見ても明らか……まるで恐怖そのものを振り払おうとしているかのようであった。

 

 

 ゲームで見た人をおちょくるような趙雲を感じない……そして武人としての凛々しい趙雲でもない……今の趙雲はただ闇雲に槍を振るう素人に俺の目でもそう見える。彼女の精神に何かしらの問題が起きたと見るしかない……十中八九俺のせいだろう……初めて会った時から何となく感じていたし、試合を申し込んできたのも俺に対して何か思うところがあったんだろうな。俺というミルドラースの存在が彼女を精神的に追い込んでしまった……とにかく落ち着かせないといけない。いけないのだがどうすれば……!

 

 

 そんな時ふっと閃いた。ドラクエ8のシステムでテンションがあった。これは特定の行動やアイテムによってテンションが変化し、テンションが上がれば上がるほど、与えるダメージが増えて受けるダメージが減るシステムなのだが、趙雲の今の状態はテンション効果が付いているのではないかと思った。そしてこのテンションを打ち消す方法を俺は一つだけ持っている!!

 

 

 ミルドラースは槍を避けると距離を取り、腕を出して指先を趙雲に向ける。向けられた趙雲は表情を強張らせて咄嗟に槍で防ぐ形になった。趙雲は先ほどのメラが来ると思っていたようだがそうではない……ミルドラースの指先に不思議な力が宿り……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『いてつくはどう』

 

 

 ミルドラースの指先から凍てつく波動がほとばしる!

 

 

 そう……魔王系ならば誰もが使える特技『いてつくはどう』だ!!補助魔法やらプラス効果マイナス効果も一緒に打ち消してしまう特技でテンションもこれで打ち消すことができた。ぶっつけ本番だが出せてよかった。それにこのブワーッ!って波動が出る演出好きなんだよな♪よし、これでおそらくだが超雲は元に戻って……くれているかな?

 

 

 「わ、わたしは……いったいどうしたというのだ……?」

 

 

 どうやら正常な状態に戻ったようだ。この形態でもこの特技が使えるのは感謝だ。他に使うことがあるのかわからないがとにかく良かった。

 

 

 「……気分はどうだ?」

 

 「あっ……落ち着きました。今のはミルドラース殿が?」

 

 「そうだ。興奮状態だったお前に『いてつくはどう』を放ち、興奮状態を鎮静化したのだ」

 

 

 お口が動いてくれて助かりました。俺は気遣いのできる魔王だと思われたい……本来は部下の働きと努力をバッサリ切り捨てたからね。でも俺はそんなことしたくないし、趙雲とは仲良くしたいと思っているからお口が動いてくれて良かったと思っているが、まだ試合は続きそうかな……?

 

 

 「それで……まだ続けると言うのか?」

 

 「……いえ、私の負けです」

 

 

 趙雲は負けを認め静かに槍を下げた。その表情は暗く俺が知っている彼女の表情はどこにもありはしなかった。だから元気を出してほしかった。

 

 

 「……私の勝ちか。だが、そなたは強い」

 

 

 うまいこと口が動いてくれと願いつつ、それらしい言葉を伝えておく。

 

 

 「敗北は終わりではない。上には上がいる……だが趙雲よ、敗北すれば失う恐ろしさを知れ。失いたくなければもっと強くなるが良い。そしてそなたは誰かを守るための槍となるがよい」

 

 

 俺的にはもっと軽く「今も強いけど、誰かを守れるように更に強くなってね」って言おうとしたら変換されてしまった。誰だよこんなキザなセリフ言ったの!?……俺や。全く本当に不自由だなこの体は!思ったことがそのまま伝わらないのが辛すぎる!!

 

 

 そう頭の中でぼやいていると、趙雲は何故か膝を地に付き、槍を置いて俺に頭を下げた。

 

 

 「この趙子龍、ミルドラース様を守る槍となるべく真名を預かってほしい!!」

 

 

 ………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 ……………………………………

 

 

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 ……えっ?

 

 

 こうして俺は趙雲こと星の真名を預かることになった……どうしてこうなった?

 

 

 ------------------

 

 

 ミルドラース殿の腕から火球が放たれた時から私はおかしくなってしまっていた……

 

 

 火球が傍を通り過ぎ破裂音を響かせて私は振り返った。地面が真っ黒に染まっており、もしあの火球が自分に当たっていたらと思うと血の気が引いてしまった。

 

 

 私はミルドラース殿に試合を申し出た。理由を聞かずにと念を押してまで戦いたいと思ったのは私自身の心に生まれた恐怖心を拭いたかったのだ。初めて会った時から感じていたのは紛れもない恐怖……背を向けて逃げ出したい、白蓮殿や部下を置いて自分だけ逃げてしまいたい衝動に駆られ何とか思いとどまれたが、もしその時思いとどまれずに逃げ出していたら私は……趙子龍は死んだも同然だった。「自らが仕えるに足る主人を見極めたい」と自身で言っておきながら、惨めに逃げ出すことを考えている私は自身が許せなかった。私の中に生まれた恐怖……それを何としても拭い去りたく無理に試合を申し出たが……

 

 

 先ほどの火球を見て私は体の震えが止まらなくなってしまった。視線を戻せばあの異形の瞳が私を睨んでいた……

 

 

 ……こわい……!

 

 

 今までこの「龍牙」と共に戦場をかけてきたが……初めて人を殺めた時よりも恐ろしかった。あの瞳が自分に向けられているものだと実感すればするほど震えが激しさを増そうとした。それを私は拒絶しようとした……その時だった。ミルドラース殿の瞳が私ではなく火球が落下した地面に視線を落としたのは……

 チャンスとは思えなかった。寧ろ更に恐怖が増した……私が戦う相手に値しないと言うのか……!?

 

 

 そこで私ははじけた。恐怖を自身から打ち消すように槍を振るった。その後の事はおぼろげだった……恐怖心に支配され私自身どうかしていた……そんな時にミルドラース殿が腕を前に出して指先をこちらに向けて来た。体が勝手に反応して先ほどの火球が来ると思ったのだろう。必死に生きようと、命を守ろうと体が動いてくれたらしいが、放たれたのは火球ではなく風だった。涼し気な風が通り過ぎたと思ったらいつの間にか感じていた恐怖も焦りもどこかに消えて自然と落ち着けた。

 

 

 「……気分はどうだ?」

 

 

 そう聞いてくるミルドラース殿の瞳を見ても今は何も感じなかった。先ほどの風は何だったのか?私は何をされたのかと思った。

 

 

 「あっ……落ち着きました。今のはミルドラース殿が?」

 

 「そうだ。興奮状態だったお前に『いてつくはどう』を放ち、興奮状態を鎮静化したのだ」

 

 

 よくはわからないが、私を落ち着かせてくれたとのこと……ふっ、自分を笑ってしまう。攻撃は当たらず、自分を見失い更には私を落ち着かせてくれたのだ……私は……戦う意思を失った。

 

 

 「それで……まだ続けると言うのか?」

 

 「……いえ、私の負けです」

 

 

 今の私では勝てない……そう思えてしまった。ここまで圧倒的な差を見せられては納得するしかない……

 

 

 「……私の勝ちか。だが、そなたは強い」

 

 

 御冗談を……そう返したかったが、口が動かなかった。意気消沈としていたのだろうこの時は……だからこそ輝いて見えた。

 

 

 「敗北は終わりではない。上には上がいる……だが趙雲よ、敗北すれば失う恐ろしさを知れ。失いたくなければもっと強くなるが良い。そしてそなたは誰かを守るための槍となるがよい」

 

 

 心が震えた。これは恐怖ではない……感動……ミルドラース殿の姿が光り輝いているように見えたのだ。そして私は遂に見つけた!

 

 

 「この趙子龍、ミルドラース様を守る槍となるべく真名を受け取ってほしい!!」

 

 

 遂に趙雲は仕えるべき主人を見つけたのだった。

 

 

 ------------------

 

 

 趙雲がミルドラースに真名を預ける光景は訓練場にいる全員が見ていた。その中で一人だけその光景を深々と凝視する者がいた。

 

 

 ふふ……星のやつ、ミルドラース様の偉大さにようやく気づいたか。

 

 

 公孫賛だった。彼女はミルドラースに助けられその圧倒的な存在感に魅了されていた。

 

 

 ミルドラース様は私をタスけてクれタ……ゾクどモナンてミルドラース様のアシモトにもオヨばない。星ですラソウだ。このヨはミルドラース様こソガすべテ……いまマデワタシがやっテきたコトなんてビビたるモノダったんダ。ワタシノそんザイカンがウスいノなんテトウぜンだっタ。ナゼナらミルドラース様こそガちゅうシン、ミルドラース様にツカえてテとなりアシとナルのガワタシのウンメイだっタンだ!ようヤクわかっタ。ワタシのイノチもにくタイもココロすらミルドラース様のもの!!ミルドラース様ヲじゃマするものハだれデあろうトようシャしない!!ミルドラース様……ワタシタチヲみちびイテクだサイ!!!

 

 

 影が薄いもの同士で魅かれ合った。それ故に歯車が大きく方向を変え、本来の彼女とはかけ離れた道へと踏み出してしまったことにミルドラースが気づくのは少し先のことだった……

 

 

 「愛紗……白蓮がこわいのだ……!」

 

 「鈴々見てはいけない……」

 

 「白蓮ちゃん……お腹でも痛いのかな?」

 

 「桃香様……それは違います」

 

 

 周りにいた義姉妹トリオは公孫賛から離れるように距離を取っていた。

 

 

質問です。魔王は一匹で十分ですか?

  • もう一匹で十分だ!
  • 最低もう一匹仲間が欲しいぜ!
  • そんなことよりも次話投降しろ!
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