第1話
目を覚ますと、見知らぬ場所で椅子に座っていた。
ここはどこだ?と疑問に思い、あたりをキョロキョロと見回していると
「■■■さん、ようこそ死後の世界へ」
背後から女性の声が聞こえた。
振り返ると、まるで澄んだ川や湖を思わせるほど透き通った青色の髪をした、綺麗な女性がいた。
その女性はゆっくりと歩いて、自分の前にある椅子へと座り
「あなたはつい先程、不幸にも亡くなりました」
「短い人生でしたが、あなたは死んだのです」
と微笑みながら、淡々と説明するように言ってくる。
はて、何故そのようなことになったのか思い返してそうとして
「…………っ?!」
激しい頭痛とともに、ぼんやりと今までの自分の人生と直前までの出来事を思い出した。
「…………………」
「思い出しましたか?」
「……えぇ、まぁ。……ところで、あなたは誰ですか?ここは一体なんなんですか?」
そう女性に問いかけると、まるで女神のような微笑みを浮かべながら
「まずは名前からね!私の名はアクア。日本において若くして死んだ人間を導く女神よ」
……どうやら、本当に女神だったらしい。
確かに女性からなんか後光的なのも見えるし、非現実的だがわざわざ嘘を吐いて、俺を騙す理由が分からない。
……まぁ、人なんてただ騙して人が苦しんでる姿を見るのが好きってやつらも沢山見てきたわけだけど……。
「で、この場所は死んだ人たちに私たち女神が直接会って、これからのことを決めてもらうための神聖な空間なわけね?ここまではいいかしら?」
「はぁ、なるほど?」
とりあえず、女性……女神だからアクア様の説明に頷くと、機嫌が良くなったのかさらに優しく微笑みながら、
「あなたには2つの選択肢があります。ゼロから新たな人生を歩むか、天国的なところへ行っておじいちゃんみたいな生活をするか」
「でもね、実を言うと天国って場所はね。あなた達が想像しているような素敵なところではないの」
「ゲームや漫画の娯楽も無し。そもそも肉体が無いから美味しいものを食べたり、エッチなことだって出来ないし。天国にはなーんもないの。永遠に日向ぼっこみたいな生活をするような場所なの」
みたいな説明をされた。
……それ、生きながら死んでいるのと大差ないのでは?
「そんな退屈なところ行きたくないわよね?」
俺は一度頷いた。
「そこで一つ、良い話があるのよ!あなた、ゲーム好きでしょ?」
まぁ、引きこもりになってからは、暇な時間を潰すためにゲームや漫画みたいなサブカルチャーにどっぷりとハマってたからな。
「実はね? 地球とは違う世界でちょっとマズイ事になってるのよ。
って言うのも、地球のファンタジーゲームに出てくる魔王ってのがいて、その連中にまあ、その世界の人類が随分数を減らされちゃってね」
「で、その星で死んだ人達って、まあほら魔王軍に殺された訳でしょう? もう一度あんな死に方はヤダって怖がっちゃって、死んだ人達は殆どがその星での生まれ変わりを拒否しちゃうの。このままだと、その星は確実に滅びちゃうのよね」
……今サラッと説明されたけど、その星はもうダメのでは……?
「そこで!!別の世界で死んだ人なんかを肉体と記憶をそのままにして、今言った星に送ってあげたらどうかってことになったの」
……それ、何も力がない自分が行っても絶対また死ぬだけなのでは?
そんな思いが顔に出てたのか、アクア様がニッコリと笑って
「だから大サービス!!何かひとつだけ好きなものを持っていける権利をあげているの。とんでもない武器だったり強力な才能だったり」
「あなたは記憶を引き継いだまま人生をやり直せる」
「異世界の人にとっては即戦力になる人がやってくる。ね?お互いにメリットのある話でしょ?」
……。
…………。
…………悪くないかもしれない。
どうせあのままの、引きこもってただただ理由もなく生き長らえてる夢も希望もない未来よりかは全然いい。
俺は完全にやる気満々になっていた。
アクア様は、そんな俺の顔見て決心がついたことを悟り、大きく頷いて
「さあ、選びなさい!あなたに一つだけ、何者にも負けない力を授けてあげましょう!」
能力やら武器やらが書いてあるチラシのようなものを、まるで紙吹雪のようにばらまいたのだった。
ーーーさて、これらの紙の中から自分が一つだけ選び、力として持っていくのだから、慎重に選ばないといけない。
一つ一つ武器やスキルの内容に目を通して、これから第二の人生を悔いが残らないようにしないといけない。
そんな感じで、まるでRPGにおける自分のキャラメイクをしているみたいに少しワクワクしながらやっていると
「……ねえー早くしてー。どうせ、何選んでもそんな変わらないわよ」
……。
「他の死んだ人の案内もあるんだからー、早く早くぅ」
……初めて会ったときの女神としての態度は何処へ行ったのだろうか。そう思わせるほどに目の前の(この姿だけ見れば)自称女神様は、ポテチをパリパリと食べながら文句を言ってくる。
その姿を見て、口から出そうになった言葉を飲み込みながら、真剣に紙に目を通していると
[魔獣化]
というスキルを見つけた。
その紙に書いてある内容について、目の前の椅子に座っているアクア様に質問しながら、どういうスキルなのかの確認作業を進めていく。
そして、スキルを決めて旅立つ準備が出来たことを俺はアクア様に伝えた。
「……いいのね?そのスキルは強力よ。だけど、さっきも言ったけど代償もすごいわよ?あとから変えられないんだけど、本当にいいのね?」
「はい、大丈夫ですアクア様」
「……わかったわ。じゃあ魔法陣から出ないようにね」
そうして俺の足元に、幾何学模様のサークルみたいなものが浮かび上がる。
「では、■■■さんの希望は、規定に則り受諾されました」
この人、今更女神ヅラするのか……。
まぁ、これも仕事の一つなのだろうから、あまり詮索しないでおこう。
「さあ勇者よ!願わくば数多の勇者候補からあなたが魔王を倒すことを祈っています」
本当にそんなこと思っているかどうかも怪しいものだが。
そんなことをぼんやりと考えていると、どんどん俺の身体が地を離れて浮かんでいき、頭上の光へと飛んでいく。
「さすれば神々からの贈り物として、どんな願いでも叶えて差し上げましょう!!」
「さあ、旅立ちなさい!」
こうして俺はアクア様の激励のもと、光の柱の上へ飲み込まれていきながら、第二の人生が始まったのであった。
ーーーここはある里の近くの森の中。
一人の少女が手に持っている小枝で、地面に魔法陣を描きながら鼻歌を歌っていた。
その様子は、ご機嫌なように見えて全く目に光が灯っていないこともあり、非常に不気味だったが、それを指摘してくる人は誰もいない。
「ふんふんふーん♪……これで、よしっと!」
「えへへ、初めてにしては上手く描けたかな、魔法陣♪」
そんな一人ぼっちの少女は、完成させた魔法陣を満足そうに見つめながら
「……誰も友達になってくれないんだもの。仕方ないよね?仕方ないよね?……そうよ、これは仕方ないことなのよ」
そう言って
「……もう、悪魔が友達でもいいかな…………」
魔法陣が黒く凶々しく輝きだす。
そして、いかにも邪悪な何かが出てそうな雰囲気を漂わせ始めた。
しばらく、少女はじっと魔法陣を見つめていると
「……なんてね。紅魔族の長になる者が悪魔召喚なんてダメよね。私ったら何を考えてるのかしら」
はぁー、とため息を吐きながら、独り言をこぼす。
ただ自分は、友達が欲しいだけなのに。
一人ぼっちは寂しいから誰か側にいて欲しいだけなのに、と心の中で呟きながら、深呼吸して気持ちをリセットさせる。
そして、召喚魔法を止めようと、呪文を唱えた。
黒く光り輝いていた魔法陣が、召喚魔法が中断されたことによってゆっくりと光が小さくなっていく。
「これでよしっ、と。……はぁ。今日はもう家に帰ってゆっくり休もうかな……」
今日で何回目かのため息を吐きながら目を閉じる。
明日にはまた、自分のライバルと勝負してどっちが上か競いあったりする学校生活が始まるのだ。
その光景を頭に思い描きながら笑みを浮かべ、明日も一日頑張るぞっと気合いを入れて目を開けると
「……え?」
さっきまで光り輝いていた魔法陣の上に、化け物が立っていた。
その巨人と見紛うほどの巨躯を持った、筋肉という鎧を纏ったという表現がしっくりくる外見。
その鎧はもはや顔にまであると言っていいくらいには、顔つきがゴツゴツした岩みたいであった。
服についても、腰から下を隠す為の服?布?みたいなものを履いているだけでほぼ全裸と変わらない、人の姿をした何かがこちらを鋭い目で見つめていた。
「お、おおお、落ち着くのよ、私!れ、冷静になって考えるの!だ、だって召喚魔法は完成させてないんだから、いきなり何かが出てくるなんてありえないわ!!……そ、そうよ、これは幻覚!と、ととと友達が欲しくて欲しくてたまらなかったからって、げ、幻覚を見るなんて、私ったら、もう!」
顔を引き攣らせながら、まるで自己暗示をするかのように叫び、そのまま自分のほっぺを片手でつねる。
そうやって正気に戻ろうとして
「■■■■■ーーー!!」
目の前の化け物が雄叫びあげたことで、これは現実なんだと理解し
「………………」
そのあまりの威圧感から、もう私はここでこの化け物に殺されるのだと。もう助からないのだと。
そんな、あまりの恐怖と絶望感から悲鳴をあげることすら出来ずに、少女ーーーゆんゆんは立ったまま気絶した。
「このすば」をアニメで知り、そのあまりの面白さからついつい映画まで観てしまうほどハマってしまい、あれやこれやと妄想した内容の一部を小説として書いてみようと思いました。
処女作なので、温かい目で見て下さい。