このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第3話

 

 

 こめっこと『俺を助ける代わりに、彼女へご飯を提供する』という相互契約を結んだ俺は、彼女が残した地図を頼りに森の中で潜伏生活をすることになった。

 

 

 彼女と契約を結んだ後に、俺が集めた食糧と交換で地図を渡したあと、『今日はこの辺をたんさくするらしいから、近寄らないように!」とアドバイスをくれた。

 

 

 しかし、わざわざ『予備の地図上げる!』とこめっこは言っていたが、普通は地図なんて2枚も持って歩くだろうか。

 

 

 

 ……もしかして、最初から俺に渡すために?

 

 

 そもそも、いくらあの子が精神的に逞しいとはいえ、昨日一緒にいた彼女達も含めて、あんな怖がらせるようなことをした俺がいるのに、昨日の今日で森の中に入ってくること自体、おかしな話……

 

 

 ………………

 

 

 

 ……深く考えすぎ、か…………

 

 たまたま持っていたものをくれた。

 

 そう言うことにしよう。

 

 

 ……にしても、彼女はアドバイスが終わった後に、『日が暮れる前には家に帰らなきゃ!大男の人、明日も朝、ここに集合!』と言って、そのまま走り去って行ったが。

 

 

 ……あれが、『まるで台風みたいな子』という表現をされる子供なのだろうか。

 

 彼女は言葉が話せない俺に対して、『沈黙という時間を与える気はない!』とばかりにずっと何か話していた。

 

 こっちは頷くか、質問に指で○✖️を指すくらいしかしてないのに、よくあんなに話すことがあるものだ。

 

 おかげで、昨日森の中で一日中過ごしたときと比べても、彼女がいなくなっただけで、辺りの静けさが増した気がした。

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 ……もしかして、俺は今、『寂しい』と感じているのだろうか。

 

 

 前の世界にいた頃には、もう無くしてしまった感情だと思っていた。

 

 

 彼女と会う前までに、他人とのコミュニケーションが取れないことに悩んでいたのだって、別に誰かと仲良くなりたいとか、そういう理由ではなかったのだ。

 

 

 ただこの世界で生きていくために必要な、自分の利己的な目的を達成するために、仕方なく考えていただけで。

 

 

 

 もう他人のことで、一喜一憂するのは無駄なことなのだと、あれだけ痛い目に遭ったはずなのに。

 

 

 

 

 「■■■……」

 

 

 

 

 

 ……やめよう。考えるだけ時間の無駄だ。

 

 気分が悪くなる。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、今最優先に考えるべきものは俺の食糧だった。

 

 

 なけなしの『木の実とキノコ』が『地図』に変わったことについてだが、これは見方を変えれば非常に助かることである。

 

 

 何せ、地図にはこめっこ達がまだ食糧を探索していない場所も書かれており、今いる川を目印にすれば、確実に探索範囲が広がるのだ。

 

 そこに行けば、ここよりは沢山の食べ物にありつけるだろう。

 

 食糧を渡した分の利益が返ってくる期待値は、かなり高い。

 

 

 懸念はモンスターの襲撃だが、ここ周辺のモンスターと戦ってみた感じ、俺の強さは女神様に貰ったスキルの恩恵により敵無しと言ってもいいだろう。

 

 

 ただし、オーク。お前はダメだ、強い弱い以前にもう会いたくないモンスター筆頭だ。

 

 

 

 まぁ、会ったら先手必勝して殺すが。

 

 

 

 慢心する気はないが、身の危険についてはこめっこの言っていた『探索隊』だけだ。彼女の一方的な自己紹介を信じるなら、彼女は紅魔族と言われる人々らしく、なんでも魔法のエキスパートらしい。

 

 

 炎を吐くあのトカゲ以外はみんな物理攻撃しかしてこなかったし、トカゲについては最初の様子見以外は口を開こうとした瞬間に頭を潰しているので、魔法の怖さというのが今一きちんと実感が出来ないが、エキスパートと言うからには相当強いのだろう。

 

 

 接近戦ではかなり自信もついたが、大人数に遠距離から魔法で攻撃され続けたら、流石に動けずに負ける気がする。

 

 

 俺はこめっこのアドバイスに従い、探索隊とやらに鉢合わせないよう注意しながら、再び森の中を歩き回ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日、こめっこと待ち合わせをする場所の近くの木をいくつかまとめて地面から抜くことで、集合場所の目印にしてから、しばらく地図を見ながら森を歩いた結果。

 

 今までのことが嘘だったみたいに、沢山の食糧を手に入れた。

 

 

 ……地図を貰えて、本当によかった。

 

 

 森の中を闇雲に歩き回らずに済むことを考えると、昨日と比べてかなり効率的で有意義な1日だった。

 

 

 体力的には全く疲れないのだが、精神的な疲労はやはり溜まっていくので、やはり居場所が明確に知ることが出来るのはありがたい。

 

 

 もう日が暮れ始めたので、俺は昨日と同じように今いる周辺の高い木に登って夜を越すことにした。

 

 

 

 

 

 ……この身体になってからあまり気にならなかったが、今日で徹夜2日目だ。

 

 そろそろ目を閉じるだけの仮眠で済ませていると、森の中で無防備に意識を失うように眠ってしまうかもしれない。

 

 

 そうなったらいくら身体が前の世界と比べて頑丈そうになったとは言え、モンスターに襲われて死ぬだろう。

 

 

 そろそろきちんとした睡眠が取れる拠点が欲しいな。

 

 

 ……というか、実際問題として、俺の身体はどれほど頑丈なのだろうか。

 

 

 モンスターに遭遇する度に基本的にワンパンで倒せる上に、自分からモンスターの攻撃を受けるとか、そんな危険なことはしたくない。

 

 

 だが、自分の攻撃に対する耐久力も把握しておかないと、いざと言うときに困る気がする。

 

 

 そもそもの話、何故俺は異世界に来たときに、上半身が裸で、下半身が歴史の教科書に書いてあるギリシャ人が着ていた服?見たいな布をスカートを履いて、それをベルトで固定しているだけというような格好なのだろうか?

 

 

 一応勇者として呼んだのなら、それこそ勇者や騎士が来ている格好いい鎧とかにしてくれればよかったのに。

 

 

 ……もしかして、女神様流の気の利かせ方なのだろうか。

 

 

 『魔獣化』なんてスキルを好き好んで選ぶ変わり者には、獣らしく服は要らないと?

 

 

 ……今度もし会うことになったら、絶対文句を言おう。

 

 

 

 そんなことをぼんやりと考えながら、明日のこめっことの待ち合わせ時間に遅れないように、今はしっかりと休むことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはよう!大男の人!ごはんちょうだい!」

 

 

 「■■■■■■……」

 

 

 「ありがとう!!」

 

 

 次の日、集合する正確な時間を朝ということ以外決めてなんかいなかったため、早めに昨日の川の集合場所で待機していた俺の側まで走り寄ってきたこめっこが、挨拶しながらご飯を要求してくる。

 

 もしゃもしゃと俺が渡した食糧を朝ごはんとして食べている姿を見て、昨日はあまり興味がなかったため少し聞き流していたが、彼女の家はどれほど貧乏なのだろうか。

 

 彼女と契約した以上、流石に同じものばかり渡すのもどうかと思うし、俺も昨日で木の実とキノコを採取出来る穴場を見つけたため、そろそろ新規開拓したいところだ。

 

 

 とは言え、俺がこの森の中で食べることの出来ると知っている物はかなり限定されている。

 

 

 こめっこがご飯を食べている間は暇なので、俺は何か新しい食糧となる物はないかと考えてみたが……。

 

 

 まず、モンスターや動物を殴り殺し、肉を手に入れたとしても、それを焼く為の手段がない。

 

 そもそも動物の体から肉を解体するやり方なんて知らない。

 

 流石に殺したばかりの、それこそ新鮮な血が滴る生肉を齧りつくのだけは、ごめん被りたかった。

 

 まだそこまで人間を捨てていない。

 

 

 

 また、川魚を捕まえて、生肉よりはマシだろうと踊り食いを決意したのに、全く魚を捕まえることが出来ない。

 

 

 俺が動く度になる地響きのせいで魚が逃げていくのだ。

 

 

 木の実やキノコだって、前の世界と品種や特性、毒の見分け方だって変わっている可能性がある状況で、『少し齧っては様子を見る』を繰り返し、食べても身体が全く痺れたりしないようなものを、一から覚えていったのだ。

 

 

 「…………■■■」

 

 

 そんなことを考えて、拠点の問題といい、食糧の問題といい、異世界生活3日目も、相変わらず前途多難だな、と俺はつい苦笑いをしてしまった。

 

 

 

 

 「ごちそうさま!!」

 

 「■■■■■■」

 

 

 朝食を食べ終わったこめっこに『お粗末さま』と返しながら、今日の予定はどうするのか彼女が話すのを待ってみる。

 

 

 すると彼女は

 

 

 「今日はひみつきちを作ります!さぁ、しゅっぱーつっ!」

 

 

 彼女は俺に屈めと指示を出してきたので、仕方ないなとそれに従い彼女を肩に乗せて、頭をペンペンと叩きながらそんなことを言ってくる。

 

 ……肩に乗るのはもう許すから、足をブラブラと揺らすのはやめなさい。

 

 

 「■■■■■■!」

 

 「ん?あっちだよ、あっち!」(ペシペシ)

 

 「…………■■■」

 

 

 駄目元で注意してみても、流石に俺の言いたいことが伝わらなかったのか、再度指示を出すこめっこを見て、『まぁ、今更もういいか』と思い、彼女の案内に俺はもう黙って従い、移動することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでねー、みんなが立ててた作戦を聞いて思ったの!確かにこーりつ的だけど、それってつまり、一度探した場所はもう探さないんだって!なら、先にみんながたんさくした場所に隠れたら、絶対バレないって!」

 

 「■■■■■…………」

 

 

 こめっこが俺を助ける為に立ててくれたのだろう、嬉しそうに『聞いて聞いて!』と俺の頭をペシペシと何度も叩きながら、彼女が考えた計画を俺は歩きながら聞いて戦慄していた。

 

 

 なんと彼女は、自分の父親が探索隊にいることから、彼らが立てた作戦がいつでも聞けることを逆手に取ってスパイ活動していたらしい。

 

 

 こんな幼女が、しかも実の娘がまさか裏切り者とは思わなかったのであろう、彼女の父親は割と何でもペラペラと喋ってくれたらしい。

 

 

 その内容を聞いて、だったら作戦の裏を突けば大丈夫だと。

 

 

 そう当たり前の様に言ってくる彼女に、何回目になるのであろう驚愕と畏怖を覚えた。

 

 

 将来的に大物になるなんて、とんでもない。

 

 

 

 既に、この子は大物だったのだ。

 

 

 

 しかも、毎日作戦がどうなっているか聞くことが出来るため、作戦を変更されてもすぐにカバー出来ると言う。

 

 

 凄い。本当に凄い。

 

 

 これからは彼女のことを、こめっこさんと呼ぼう。

 

 

 

 

 

 「着いたっ!今日からここを、私達のひみつきちとする!」

 

 「■■■■■」

 

 

 そうして、探索隊の網をすり抜けるように彼女の案内で辿り着いた場所は、地図で確認したところ、俺が最初に発見した川の、おそらく上流付近の斜面にある小さな洞窟だった。

 

 

 川が近くにあるため、水の心配をする必要がなく、洞窟の中はずっと一本道になっているため、洞窟内で迷って困るなんてこともない。

 

 一本道の先、一番奥は少し空間が広いのも拠点として申し分ない。

 

 洞窟につい最近来た探索隊の人たちの足跡がまだ残っていることから、少し湿気ているのが分かる。

 

 

 身を隠すには素晴らしい場所だった。

 

 

 

 ……どうして、こめっこさんはこんな場所を知っているのだろうか?

 

 自分の父親から聞いたとか?

 

 だが、洞窟の場所を聞いただけなら、地図を見ないと案内は出来ないはず……

 

 そんな疑問が頭に浮かぶが、俺からそのことについての質問が出来ない以上、この件についてはとりあえず放置することに決めた。

 

 

 

 「明日からはここで、かくれんぼだね!」

 

 

 ただ。

 

 そう言って、無邪気に俺に笑いかけてくるこめっこさんを見て。

 

 

 この子は、もしかしたら。

 

 

 ……ただ、誰かと一緒に遊びたいだけなのかも知れないな。

 

 

 と、俺はほんの少しだけそう思ったのであった。

 

 

 

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