このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第5話

 

 

 食糧の調達に行った筈が、巨大な銀狼2匹と死闘を繰り広げ。

 

 そこで負った傷を庇いながら、俺は拠点である洞窟まで帰ってきていた。

 

 帰り道の途中で、噛まれた腕と凍りついた脇腹に出来た怪我の痛みが徐々に、本当に徐々にだが、痛みが少しずつ減っていった気がする。

 

 

 噛まれた腕に出来た咬み傷は、あの銀狼の魔法によって噛まれた場所が凍りついたこともあって、焼ける様な痛みはまだするが、それが咬み傷から流れ出る出血を抑えてくれていたのもあり、見た目ほどの大怪我ではなかったのは不幸中の幸いだった。

 

 それでも、この短時間で、普通なら痛みが引いていく筈がない。

 

 こんなに早く傷ついた身体が治っていくことに、俺の身体は『本当にどうなってしまったんだろうか』と苦笑した。

 

 

 あの女神様の言う通りならば、この異常な怪我の回復速度も『魔獣化』のスキルによる恩恵なのだろうか……。

 

 

 ……このスキルの恩恵で生き延びられたことを考えると、今さら疑問を持っても仕方ない、か。

 

 

 アクア様曰く、「『魔獣化』は俺の魂をベースとして混ざることによって恩恵を得る」って言っていた上に、きちんと「スキルを選んだ後は、もう変更は出来ない」ともハッキリと言っていた。

 

 

 

 よくよく考えると、その説明の仕方は、最早『祝福』ではなく『呪い』の類に近いだろうと、今なら思うのだが。

 

 

 異世界という未知の場所で暮らすとして、もし俺が『伝説級の装備』を選んだとしても、その武器を奪われたら無力化されるし、最悪貰った武器が俺には扱いきれない代物ならば、完全に無駄になるし。

 

 

 何より、『伝説級の武器』や『唯一無二のスキル』みたいな『何かに頼ることで強くなる』という内容のものより、『自分の身体を最大の武器にして強くなれる』という内容が気に入ってこの『魔獣化』のスキルを選んだのだから。

 

 

 こうなった以上、俺はただこのスキルの『恩恵』を全て受け入れるしかない。

 

 

 ……それに『新しい世界』で『新しい人生』を送れるチャンスを女神様から貰ったのに、『前のどうしようもなく弱い自分』のままではいたくなかったのだ。

 

 

 『自分を変えられるチャンス』という名の『糸』が与えられたのだ、そうしたらもう、あとはそれを掴むしかないだろう。

 

 

 

 

 ……よし、決めた。

 

 これから先は、無闇にモンスターへ向かって、俺からは襲い掛からないように注意して行こう。

 

 普段から獣の様にモンスターを倒していると、その内、身も心もかなり早い段階で『獣』なりそうだ。

 

 この世界で新しく『俺』の人生を生きるために、俺は常に理性を保つよう、普段からいつでもすぐ冷静になれる訓練を、毎日する必要性を感じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「??大男の人、さっきから目を閉じて何やってるの?」

 

 「………………」

 

 瞑想中です。邪魔をしないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 異世界生活6日目、腕と脇腹に出来た傷が完治した俺は、ここ最近の日課となりつつある、『こめっこさんを洞窟への送り迎えをする』ことと『ご飯を献上する』こと以外は、この洞窟で基本的に大人しく過ごしていた。

 

 

 朝日が昇る前に外に出て、食糧の備蓄を増やしながら、出来るだけこの洞窟から離れた場所に痕跡を残す。

 

 最近では木を何本か引き抜いてその場に放り投げたり、地面に穴を掘ってみたりと、少しおざなりになってきたが、まぁ大丈夫だろう。

 

 

 モンスターとの戦闘も、極力避けるようにしている。

 

 

 ……というか、ここ最近は何故か俺の姿を見た瞬間に逃げて行くモンスターが増えた気がする。

 

 

 熊もどきなんか、俺を見た瞬間に泣き叫びながら、踵を返して全力で逃げてしまうのだ。

 

 

 ……何だろう、群れがあって、俺のことを情報として仲間と共有しているのだろうか?

 

 

 それとも、前に倒した仲間の血の匂いでも俺の身体からして、それに反応しているのだろうか?

 

 

 

 ……まぁ、川で毎日必ず水浴びしているとはいえ、家に風呂やシャワーがあった前の世界から考えたら、全然衛生的ではないし、仕方ないのかもしれないが。

 

 

 

 

 

 そして、前はモンスターとの戦闘で運動が出来ていたのが、ほとんど戦闘もしなくなり、更に洞窟内に籠城することで、身体が鈍っていきそうだったので、最近は腕立て伏せや腹筋などの体力基礎トレーニングをすることにしている。

 

 

 前の世界では、引きこもり故に不健康が祟り、筋トレなど3〜5回やっただけで、全身が悲鳴を上げていた俺の軟弱な身体だった。

 

 だが、今のこの身体には100〜200回をワンセットとして、いろいろな筋トレの種目を網羅しても、全然汗一つとしてかかない。

 

 ちなみに、こめっこさんは俺が腕立て伏せをしているときに、背中に乗って遊ぶのがお気に入りみたいだ。

 

 ……恐らく、彼女は俺を使って『お馬さんごっこ』をしている気分なのだろう。

 

 

 

 だが、流石に3日間もほとんど洞窟内に籠って2人で長く過ごしていると、やることが無くなる訳で。

 

 

 

 俺は前に『俺は常に理性を保つよう、すぐに冷静になれる訓練』として、『瞑想』を始めていた。

 

 

 前の世界では鉄板的とも言える精神力を鍛える方法であり、その効果は、『注意力や思いやりといった心理的機能の改善を促す』、『怒りの感情をクールダウンさせ、不安や抑うつなどの、負の感情を落ち着かせる』と言った、まさに俺が今求めてやまないものだった。

 

 

 銀狼との戦闘みたいに、高揚感から我を忘れて突撃した結果、命を落としたくはない。

 

 

 とは言え、具体的に『瞑想』と言っても、正式なやり方を知ってるわけではないので、付け焼き刃みたいなものだが、『とりあえずやらないよりはやった方がマシか』と考え、漫画やアニメなどを参考にしてやっている。

 

 

 

 あぐらで座りながら背筋を伸ばし、目を閉じて、鼻から息をゆっくり吸い込みながら、何も考えないようにするだけ。

 

 ついでに、両手を膝の上に乗せて、その親指と人差し指をくっつけて丸を作り、中指残りの3本ずつを揃えてピンっと真っ直ぐ伸ばした、通称『仏様スタイル』である。

 

 

 これをするだけで、ご利益がありそうだ。

 

 

 ……まぁ形だけ真似してみても、全く『無の境地』なんて、一欠片も感じないのだが。

 

 

 まぁ、『瞑想』をし続けていけばその内、様になってくるだろう。

 

 

 

 そう考えて、今日も俺は、時間を許す限り深呼吸をしながら『瞑想』していた訳だが。

 

 

 

 

 

 「聞いてる?」

 

 「…………」

 

 「……ねぇっ!?おーい!」(ペシペシ、ペシペシ)

 

 「………………」

 

 

 

 

 

 「………………………………」

 

 「………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 「…………(すぅ)。起っきろーーーーっ!!」

 

 「ッ!?……■■■■?」

 

 「ひま。あそぼ?」(ペシペシ、ペシペシ)

 

 「■■■…………」

 

 

 こめっこさん、俺の身体をよじ登って、耳元で大声を叫ぶのはやめて下さい。

 

 

 

 最初は大人しくご飯を食べていた彼女だったが、暇になった途端に俺に構って欲しいのか、『遊んで!!』アピールが激しい。

 

 

 彼女がご飯を食べて終わったことにすぐ気がつかなかったことから、俺は自分で思っているより、かなり集中していたらしい。

 

 

 「…………■■?」(首を傾げる)

 

 「えっとね!今日は何してあそびたい?」

 

 「■■■…………」

 

 

 

 

 こめっこさんも、ここで出来そうなやりたいことをやり尽くしたのか、俺に意見を聞いてくるようになった。

 

 

 ……そりゃあ、まあ、毎日毎日ここに来ては、大抵彼女が1人で喋くり倒しているのを、唸り声で相槌を打っているだけだし、話のネタも尽きるだろう。

 

 おかげで、彼女の話によく出てくる『姉ちゃん』なる人物のことにやたらと詳しくなった。

 

 最近では、『いつもカッコ良かった姉ちゃんが、最近まで落ち込んでいたけど、ゆんゆんとお泊まりして元気になった』とか。

 

 

 ……こめっこさんもそうだが、『ゆんゆん』とは、人の名前なのだろうか?

 

 紅魔族って人達は、随分と変わった名前をつけるんだな、と俺は思った。

 

 

 

 

 「ねぇー。何かない?」

 

 「■■■…………」

 

 

 

 

 そんなことをぼんやりと考えていると、また『何かないか』と催促された。

 

 

 

 ……まぁ、確かにここで過ごしていると暇を持て余すのは分かる。

 

 だが、暇を潰せるような娯楽が皆無なのも、また事実だ。

 

 前の世界なら、ネットやゲーム、漫画やアニメを観ていれば無限に時間を潰せたが、そんなものはない訳で。

 

 

 俺は、こめっこさんの要望に応えるべく、必死に時間を潰せる方法を考えた。

 

 

 …………

 

 ………………

 

 ……………………

 

 

 ……あっ。

 

 

 「■■■■■■■■■」(カキカキ)

 

 「ん?お絵描きするの?…………これは、お魚さん?」

 

 「■■■■■!」(片手で絵に向かって、パクパクとした動作をする)

 

 「ふむふむ。お魚さんが食べたいんだね?」

 

 「■■!」(コクッ)

 

 「わかった!なら、捕まえよう!」

 

 「■■■■」(コクッ)

 

 

 せっかくだから、俺はこれからの食生活を豊かにする為、新しい食糧として魚を食べたいと言ってみた。

 

 

 以前は俺1人でなんとか魚を獲ろうとして失敗し続けた結果諦めていたが、天才幼女であるこめっこさんなら、何か魚を獲るいい策を考えてくれるかもしれない。

 

 

 川魚の中でも小さい部類を捕まえて、食べ方は最悪、踊り食いすればいいだろう。

 

 ここは上流付近にあるのだから、川の水は下流よりさらに綺麗なはずだから、衛生的にもマシだろう。

 

 

 後は魚の捕まえ方だけだ。

 

 

 頼みますよ、こめっこさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異世界生活7日目。

 

 太陽の位置から、お昼を過ぎてから1時間から2時間くらい経った頃。

 

 

 「大量だね!」

 

 「■■!」(コクッ)

 

 

 こめっこさんを乗せた肩とは反対側の俺の手には、彼女の家から持ってきたらしいバケツがあり、その中には大量の川魚が泳いでいた。

 

 

 彼女が立てた作戦はこうだ。

 

 

 まず、俺が直接川の中に入って魚を獲ろうとしても出来ないことを彼女に見せた。

 

 すると彼女は、川魚を捕まえるコツである『水の流れがある場所で闇雲に魚を追わない』、『水辺に生える植物の根本に魚はよくいるから、そこを狙う』といったことが、出来てないからだと指摘してきた。

 

 

 さすがです、こめっこさん。物知りですね。

 

 

 そこで、彼女は前に俺が蔓を編んで紐を作っていたのを覚えていたのか、『今日は編んだ紐で簡単な網を作って欲しい』とお願いしてきたので、彼女をいつもの場所に送り届けた後、ひたすら蔓をかき集めて網を作った。

 

 

 翌日である今日、その網の出来栄えに合格を出してもらった俺は、彼女をいつもの定位置である肩に乗せ、洞窟がある場所より更に上流にある川魚の流れが穏やかになっている場所を探し。

 

 

 そこで川辺にある草むらの一部を、半円に囲う様に網を張ってから

 

 「えいやっ!!」(ポイッ)

 

 ポチャ

 

 ブブブブブブッ

 

 「■■■■■!?」

 

 バシャバシャッ(網に魚が突っ込んできた音)

 

 「フィーーーーーーーッシュ!!」

 

 「ッ!?」

 

 彼女の家から持ってきた『音の鳴る魔道具?』の試作品を草むらに向かって投げた。

 

 

 彼女曰く、音の振動で魚を住処から追い出して捕まえれば良いのだと。

 

 さすがです、こめっこさん!いつも、頼りにしています!

 

 

 ……というか、その掛け声、この世界にもあるんだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大量だ!大量だ!……じゅるりっ」

 

 「■■■■!!」

 

 「うん!早くごはん食べよう!」

 

 「■■!」(コクッ)

 

 

 そして、ホクホク顔のこめっこさんと俺は、拠点である洞窟に帰り、

 

 

 

 

 

 「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

 

 「あれー!?姉ちゃん、ゆんゆん!どうしてここにいるの??」

 

 「■■■■■!」

 

 

 

 

 洞窟の奥、俺が寝床にしている場所から突然、こめっこさんと同じ目の紅い黒髪の大人が数人と、この世界に来て最初に会った女の子がいきなり目の前に現れた。

 

 

 ……え?どういうことだ??何が起きた?

 

 

 

 

 

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