このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第2話

 

 

 

 バーサーカーとこめっこが主犯であった通称『バーサーカー事件』が幕を閉じ、彼がこの里に馴染んできてから1ヶ月が経つまでに、いろいろなことがあった。

 

 

 彼がこの里に来た翌日、族長が彼と里の大人数名を連れてきて、『今からお前の家の隣に彼の家を建てようと思うんだけど、いい?』と私の両親に提案してきた。

 

 

 なんでも、『彼がこの里の集落や商業地区に住むには図体が大きすぎて、それに合わせた家を作るのは難しいから、そこから少し外れたこの場所に建てるのが理想的』という理由が一つ。

 

 

 そして、もう一つは。

 

 

 

 「あっ!!おはよう、大男の人!」

 

 「■■■」

 

 

 

 家の中から小走りで出てきて、バーサーカーに抱きついたこめっこがいるからである。

 

 私の妹は巨躯な体をした彼相手に怯むことなく、寧ろ非常に彼に懐いていた。

 

 バーサーカーもこめっこを可愛がっているのか、彼女を優しく抱きとめ、片手で彼女の頭を優しく撫でているし、仲が良い知り合いが近くに住んでいる方が、彼にとってもいいだろうということだった。

 

 

 ……一体、あの7日間で何があったのだろうか。

 

 

 常日頃から『魔性の妹』を自他共に認めているこめっこは、実際は『家族以外の人にはあまり懐かない』ということを姉である私は知っている。

 

 

 

 「彼もこめっこちゃんのことを気に入っているみたいだし、頼むよ、ひょいざぶろーさん」

 

 「うーむ……」

 

 「あら、いいじゃない。あなた。こめっこも彼に懐いているみたいだし」

 

 「それが問題なのだが……」

 

 「あらあら、子煩悩ですね。そんなことばかり言ってると、娘に嫌われてしまいますよ?」

 

 「むむむ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちなみに、彼は『もしここに住ませてくれるなら、お隣さんに毎日食糧を提供する』という約束をーーー」

 

 

 「よく来てくれたね!バーサーカーくん!母さん、お隣さんの引っ越し祝いを!」

 

 「おほほ!家には大したものはありませんが、すぐ持ってきますね!」

 

 

 「■■■!?」

 

 

 

 

 ……途中、『初耳だ!』と驚いていたバーサーカーの姿が見えたが、気のせいだろう。

 

 

 そうして、私の家に『お隣さん』が出来たのである。

 

 

 恐らく族長が勝手に言った口約束を、彼は律儀に守ってくれており、毎日森の中に入って、木の実やキノコ、それからウサギやイノシシなどの動物を解体して、私の家に持ってきてくれていた。

 

 おかげで毎日の食生活がかなり改善された。

 

 もう、前までの『お粥もどき』を主食にせずとも良くなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おいしいね!姉ちゃん、バーサーカー!」

 

 「そうですね、いつもありがとうございます、バーサーカー。ほら、こめっこも彼にお礼を言うのですよ?」

 

 「ありがとございます」

 

 「■■■■」

 

 

 

 片手を上げて『気にするな』と言いたげに手を振り、それから焼いた肉を頬張るこめっこを優しい目で見守りながら、彼は自分の肉を食べ始めた。

 

 ……家の近くに住む、どこかのご近所さんにも見習わせたいくらい、純粋な目をしていますね。

 

 一時期は彼のことを『ロリコンではないか?』と心の中で疑ったことがあったが、許して欲しい。

 

 

 

 「姉ちゃん、今日は家にすぐ帰ってくる?」

 

 「えぇ。授業が終わったらすぐ帰る予定ですよ」

 

 「そっか。なら、今日の晩ごはんもいつも通りバーサーカーと作っておくね!今日はウサギ肉とキノコを使ったサンドイッチだよ!」

 

 「ほう、それは楽しみです。今日も一日、気をつけて遊ぶのですよ?バーサーカー、子守の方、よろしくお願いしますね?」

 

 「■■」(コクッ)

 

 

 

 そう言って、朝食を食べ終わった私は、焼いた肉を乗せる為の皿を片付けるために家に戻ろうとすると。

 

 

 

 「あら、めぐみん。おはよう。もう学校に行くの?」

 

 そう言って仕事場から出てきた母に出会った。

 

 「えぇ。今日もゆんゆんを家に連れてきますから、時間を取っておいて下さい」

 

 「えぇ、分かったわ。気をつけて行ってらっしゃい!バーサーカーさん、私のお肉も用意してくれるかしら?」

 

 「■■」(コクッ)

 

 

 

 そうした最近の我が家の朝の風景を横目にしながら、私は学校に行く準備を済ませていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはようー、めぐみん!」

 「おはよう〜」

 

 「おはようございます、ふにくら、どどんこ」

 

 「ふにふらよ!あんた、数少ないクラスメイトの名前間違えてるんじゃないわよ!」

 

 「……冗談ですよ、ふにふら。おはようございます」

 

 「今の間は何!?全くもう!……いいわ。許してあげる」

 

 「そりゃどうも」

 

 

 

 学校に着いた私は、自分の教室に入るためにその扉を開くと、扉の近くにある席で談笑していたクラスメイトと挨拶を交わす。

 

 その後に私は、廊下とは反対の窓際にある自分の席に座り、いつものように朝の二度寝を始めた。

 

 前は余計なカロリーを使わないようにするための毎日の工夫だったが、食生活が改善された今、別に寝ずともクラスメイトの輪に混ざって談笑しても良かったのだが、日頃からのルーティンだったからか、何も考えずに蹲って寝てしまった。

 

 

 しばらくすると。

 

 

 「お、おはよう!めぐみん!」

 

 

 と、挨拶をしてくる声の方を向くと、ゆんゆんが隣の彼女の席に座っているのが見えた。

 

 

 

 「……おはようございます。おやすみなさい」

 

 「待って待って!会話をやめようとしないで!ほ、ほら!トーク!トークをしましょうっ!」

 

 「……何のトークをするんですか?」

 

 「えっ!?えっと……」

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 「き、今日もいい天気だけど、調子はどう?」

 

 「いい天気ですね元気ですよおやすみなさい」

 

 

 「待って待って!!そんな雑に扱わないでよ〜!」

 

 

 

 ……ゆんゆんを見ていると、嗜虐心を煽られる気がしますね。

 

 

 涙目でグスッと落ち込んでいるのをチラッと顔を机に伏せた状態で見てから。

 

 

 

 「……はぁ。今日の授業の予習は済ませてきましたか?ゆんゆん」

 

 「ッ!?も、もちろんよ、めぐみん!!明日は、今日の授業からの問題についてテストをするって言ってたからね!勝負よ、めぐみん!次こそは、学校の成績で勝って見せるわ!!」

 

 「はいはい、朝から元気そうで何よりですよ。……いいでしょう。その勝負、受けて立ちます」

 

 「ほ、本当!?や、やった!」

 

 「…………」

 

 

 

 たかだか私と勝負をする約束を取り付けたくらいで大喜びするゆんゆんに、私はいつも通りに対応出来たであろうか?

 

 今日の朝に見た夢をまだ引きずっているのか、ゆんゆんと会話していると、胸がチクチクと痛むような。

 

 ーーそして、変わらずに私と接してくれる彼女に対して『嬉しい』と感じているような。

 

 

 

 

 「やぁ、君達。学校に来て最初に話題にするのが『テスト』と『勝負』とは、相変わらずだね」

 

 「おや、あるえ。来ていたのですか?おはようございます」

 

 「あ、ある、あるえさん!お、おおお、おはっ!おはよう!」

 

 「はい、おはよう」

 

 

 

 そんなことを考えていると、いつの間にかクラスメイトであるあるえが私達の前の席に座っていた。

 

 いつも気怠そうな雰囲気を出す彼女は、授業開始ギリギリになって来るので彼女が来たら授業がそろそろ始まる合図代わりになっている。

 

 故に、いつも授業が始まる前に学校に着いたら私を起こしてもらうように頼んでいるため、クラスメイトの中ではゆんゆんの次によく話す人物である。

 

 

 

 「おはよう、諸君!それでは出席を取るぞ?……あるえ!」

 

 「はい」

 

 

 あるえが来たのとほぼ同じタイミングで、担任の教師が教室にやってきて、そのまま名簿を片手に出席を取っていく。

 

 この学校は、クラスが男女別になっているため、1クラスに生徒が約10人くらいしかいない為、すぐに私の名前が呼ばれる順番が来る。

 

 

 「めぐみん!」

 

 「はい」

 

 「ゆんゆん!」

 

 「は、はいっ!」

 

 「よし、全員居るな?それでは授業を始める!教科書とノートを開け!」

 

 

 私達の返事を聞いた担任は満足そうに頷くと、すぐに黒板に今日の授業の板書をし始める。

 

 こうして、いつもの私の日常生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よし。今日の授業では、この前の授業でやっていた特殊な魔法についての続きを説明するぞ?その前にまずは、黒板に書いた『初級魔法』『中級魔法』『上級魔法』についての説明からもう一度復習する」

 

 

 

 3時間目の授業である『魔法学』は、私達『魔法のエキスパート』である紅魔族にとって、必修の授業。

 

 当然、クラスの雰囲気も真剣さが、肌でピリピリと感じ取れるくらいには、みんな集中している。

 

 かく言う私も、担任が黒板に書く内容を、無言でノートに書き写していた。

 

 

 その雰囲気に満足そうにしながら、担任が解説を始めた。

 

 

 

 「まず、これらの3つの魔法は知っての通り、私達が身近に使われている魔法の種類であり、我々はどんなに魔法の才能が有っても、『スキル』としてこれらを習得していなければ、魔法を使うことは出来ない」

 

 

 「そして、『初級魔法』を習得してさえいれば、後は日頃の鍛錬や『冒険者レベル』を上げるなどをして『スキルポイント』で『初級魔法』を強化していけば、自ずと『中級魔法』『上級魔法』も習得出来る」

 

 

 「しかし、このやり方では『中級魔法』を習得するだけでも、一般の人々では10年、『上級魔法』を習得するには30年かかると言われている。これは、最初にこれらの魔法を発見・研究してきた人々による記録から分かったことだ」

 

 

 「そこで、私達『紅魔族』は魔法について学び、安全に『上級魔法』を『スキルポイント』を使用した形で、大幅に『習得するまでに必要な過程』を飛び超えて習得するために、この学校に集まり日々学んでいるのだ」

 

 「そしてお前達は、『上級魔法』こそが最高の魔法だと思っていた筈だ」

 

 

 担任は、黒板に更に2種類の魔法を書き出した。

 

 

 「この世には、それらの魔法以外にも『固有魔法』や『儀式魔法』と呼ばれるものがある。『固有魔法』については先日までに散々説明したから簡単にまとめるぞ?『固有魔法』とは、魔法を長年研究し、才能ある者、つまり我々だな?彼等が編み出した特殊な魔法のことを指す。例として、『炸裂魔法』『爆発魔法』それから『爆裂魔法』が挙げられる」

 

 

 「先生!」

 

 「何だね?」

 

 「前の授業では、さっきの3つ、特に『爆裂魔法』はネタ魔法って言ってましたよね?そんなのを覚えても意味ないのでは?」

 

 クラスメイトの1人が、馬鹿にしている訳ではなく、真剣に担任に質問していた。

 

 

 ………………

 

 

 「確かに、『爆裂魔法』はネタ魔法だが、その威力は『固有魔法』の中でもトップの位置にいるのは間違いないのだ。それに、知識としてその魔法を知っているかどうかで戦闘時における対応も変わる。必ず頭に入れておけ」

 

 「は、はい」

 

 

 ……ふぅ。危なかった。危うくブチ切れるところだった。

 

 

 「まあ、『爆裂魔法』はネタ魔法なのは変わらないし、誰もこんな欠陥魔法を習得しようとは思わないだろうがな、ガハハ!」

 

 

 

 おい。

 

 

 

 「め、めぐみんっ!抑えて、抑えて!」

 

 

 ボソッと隣から小声で宥めるような声が聞こえ、授業中ということもあり、私は爆裂魔法を馬鹿にされた怒りを我慢することにした。

 

 ……今度、奴の担任としての素行不良を、校長にチクろう。

 

 

 

 「まぁ、冗談はこれくらいにして。そう言った熟練の魔法使いのみが、初級・中級・上級魔法を凌駕する魔法を生み出し、それを世間一般に広めずにいる魔法のことを『固有魔法』という。つまり、言わばそれは編み出した魔法使いの『人生』そのものといっても過言ではない」

 

 

 「それとは別に、今日やる魔法の授業は『儀式魔法』についてだ」

 

 担任は黒板に書かれていた『儀式魔法』の解説をしながら、その内容を黒板にまとめていく。

 

 

 「この『儀式魔法』はさっきの『固有魔法』とは逆で、数十名、数百名で唱える強力な魔法で、文字通り何らかの儀式や戦争の際によく使用されている魔法のことを指す」

 

「これらは、『新しい魔法を開発する』というよりは、『既存の魔法を用いて組み合わせることで新たな魔法として創造する』というのに近く、一般的に伝わっている『儀式魔法』は『初級魔法』『中級魔法』『上級魔法』の効果をより『増大』させたようなものが多い」

 

 

 「それでは、これからいくつかの『儀式魔法』についての例と魔法の効果、それが使用された背景などをまとめていくので、ノートを取るように。まずはーーー」

 

 

 

 授業に入る前振りを終えた担任が、黒板の前で解説を続けるのを聞きながら、私達はそれらの内容を全部、自分のノートに書き込んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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