このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第4話

 

 

 

 「めぐみん、本当に大丈夫だったの?」

 

 「えぇ、大丈夫でしたよ。……あと、それ聞いてくるの、3回目ですよ?」

 

 「だ、だって、いきなりだったからっ!」

 

 

 

 

 放課後、ゆんゆんが心配そうな顔をしながら、私の顔を覗き込んでくる。

 

 5時間目の授業が終了し、私が教室に戻ってきてから、彼女はずっとこんな調子だった。

 

 私が『ちょっとフラッとしただけなので問題ない』とゆんゆんに言い聞かせているのだが……。

 

 

 全く、心配症な子である。

 

 

 

 

 

 

 そんなことをしている間に、クラスメイト達は家が近所の子達と一緒に帰って行く中、私とゆんゆんだけが取り残されていた。

 

 

 「ほら、さっさと帰りますよ。今日も家に寄って行きますよね?」

 

 「う、うん!」

 

 

 

 

 

 そうして私がゆんゆんと一緒に教室を出て、帰り道を歩いていると、帰り道の途中で喫茶店に寄り道していた、あるえとねりまきの姿が見えた。

 

 喫茶店のテラス席で、お茶と団子を買い食いしていた彼女達がこちらに気づいたのか、2人が手を振ってくる。

 

 

 

 

 「おや、2人とも。今日も一緒に帰っているのかい?」

 

 「最近はいつも一緒に帰ってるって、里の中で噂になってるよ?」

 

 

 

 

 紅魔の里の人口は、里と言うだけあって住人達の関係が密接で、ちょっとしたことでも噂となり、それが話の種になったりするくらいには、『魔法』以外のことに関しての娯楽が少ないのである。

 

 

 

 

 

 「えぇ。ゆんゆんが私の母に用事がありまして」

 

 「そ、そうなの!ゆいゆいさんに、ちょっと用事があって……!」

 

 「「ふーん…………」」

 

 

 

 

 

 ……何だろうか、そのニヤついた顔は。

 

 それに、教室で時々感じた視線に、よく似ているような……?

 

 

 

 

 「そういえば、めぐみん。あの大男くんが近所に住んでから1ヶ月が経つが、彼は実際にどんな感じの人なんだ?いつもこめっこちゃんを連れて歩いているが……」

 

 「連れて歩いてるって言うより、こめっこちゃんのペットみたいだって噂もあるよ?私も2・3回だけ会ったけど、『彼女が行きたい場所に、尻尾を振ってついて行ってる』って印象だった!」

 

 

 「「ぶふっ!」」

 

 

 

 

 私とゆんゆんが、バーサーカーに対するねりまきの感想から、あの巨躯な身体にゴツゴツした顔と筋肉のシルエットに『犬耳』と『尻尾』が付いて、それが飼い主に対して『フリフリ』と尻尾を揺らしている姿を想像し、思わず吹いてしまった。

 

 

 確かに、普段の彼のこめっこに対する態度を見ていると、我が妹にとても甘い為、そんな風に見えないこともない。

 

 

 

 

 「そ、そうですね。確かに、バーサーカーとこめっこは仲が良いですよ?最近は彼が暇なら、いつも一緒に遊んでいるみたいですし。彼が森から持ち帰った食材で、一緒に料理とかもしているので」

 

 「へぇ〜!!あの見た目からして、最初の印象は怖かったんだけど、想像以上に面倒見がいいんだねぇ〜!」

 

 

 

 感心したように呟くねりまきを見て、ゆんゆんもそれに同意した。

 

 

 

 「そ、そうなのっ!!私も最初は凄く怖かったんだけど、ちゃんと私の目を見ながら私の話を最後まで聞いてくれるし、こめっこちゃんを見る目は優しいし!人は見かけによらないんだなっていい勉強になって……っ!!」

 

 

 「ど、どうどう!落ち着いて、ゆんゆん。そんなに一気に早口で喋らなくても、ちゃんと聞くから!」

 

 「そうだぞ?誰も急かしてなんかいないんだから、ゆっくり話すといい」

 

 「う、うぅ……。あ、ありがとう……」

 

 

 

 私以外と会話をするときはいつも緊張しているゆんゆんが、あるえとねりまきの2人に慰められて、少し顔を赤くしながら照れたようにお礼を言っていた。

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 「ほら、ゆんゆん。もうそろそろ行きますよ。家の母を待たせているのですから」

 

 

 「あっ!そ、そうね、めぐみん!あ、あの!ま、また明日!」

 

 「あぁ、また明日な」

 

 「じゃあねー、2人とも!」

 

 

 そう言ってその場から去るときに、あるえとねりまきの2人が私達に手を振りながら、またさっきのニヤついた顔をしてくる。

 

 

 ……本当に一体、何なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいま帰りました」

 

 「ただいま、こめっこちゃん、バーサーカーさん!」

 

 「あっ!姉ちゃん、ゆんゆん、おかえり!」

 

 「■■■■」

 

 

 私とゆんゆんが私の家の近くまで帰ってくると、丁度バーサーカーの家から出てきた嬉しそうに返事を返してきたこめっこと、彼の家の玄関前で片手を上げて挨拶を返すバーサーカーがいた。

 

 

 

 「こめっこ、ただいまです。今日は一日何をしていましたか?」

 

 「今日はね!バーサーカーに文字の勉強をさせて、それから『神社』に遊びに行って、近くの『聖剣が刺さった岩』にあった剣を、バーサーカーが抜いてきた!これでバーサーカーも『選ばれし者』だね!」

 

 「ぬ、抜いてきた??こ、こめっこ、その剣は今、どこに?」

 

 「バーサーカーのお家に、記念でかざりました!」

 

 「「…………」」

 

 

 

 

 ……その聖剣は、この里の鍛冶屋のおじさんが作った、観光客寄せ用であり、剣を抜こうとする挑戦者が丁度1万人目を迎えた時に抜ける魔法がかかっているものである。

 

 確か、『聖剣を作ってからそろそろ2年が経つな!』とおじさんが言っていた記憶があるので、まだ聖剣が抜けるはずがないのだが……。

 

 

 私達は、バーサーカーの家の中にあるその剣を見せて欲しいと頼んだ。

 

 

 彼の家は、その身体の大きさに合わせて、かなり大きな掘っ立て小屋であり、家の中には彼が里の服屋から仕立ててもらった服を仕舞う箪笥と彼のサイズに合わせて作った布団しか家具がないはずだった。

 

 しかし、今日はこめっこが言った通り、その家の中に『聖剣』がアンティークとして飾られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「うわぁ…………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……『聖剣』が刺さっていた岩ごと。

 

 

 

 

 「…………。バーサーカー、これは後で、元の場所に戻しておいて下さいね?」

 

 「■■■……」(コクッ)

 

 

 

 バーサーカーも悪いことをしたと思っているのだろう、申し訳なさそうに頷いてきた。

 

 

 

 ……悪いことをしたと思っているなら、持って来ないで欲しかったのですが。

 

 

 

 恐らく、こめっこに『持って帰ろう!』とせがまれて、断れなかったのだろう。

 

 きっとこれを持ち帰る途中で、里の人達にこの惨状を見られているはずだ。

 

 これはまた、里中に噂が広がるでしょうね……。

 

 

 

 「こめっこも。これは村の大切な里の観光資源の一つですから、持ち帰ってはダメですよ?」

 

 「分かった」

 

 「あと、その近くにある『邪神の墓』にも近づいてはいけませんよ?あそこは立ち入り禁止ですからね?」

 

 「分かった」

 

 

 

 ここ最近は、バーサーカーというペットを得たからか、1日1日の食糧を確保する必要がなくなったから、年相応に外で遊び始めたこめっこに、私は注意をしておく。

 

 

 自分の二の舞にはならないように。

 

 

 私がこめっことそんな話をしていると。

 

 

 

 「あら。めぐみん、ゆんゆんちゃん、おかえりなさい」

 

 「ただいまです、お母さん」

 

 「こ、こんにちは!ゆいゆいさん!」

 

 

 私の家の玄関から、私のお母さんが出てきた。

 

 母が着ている服はいつもの部屋着や仕事着ではなく、激しく動いても破けない、『冒険者時代』に着ていた服だ。

 

 ここ最近ゆんゆんが来るようになってから、よく見る格好である。

 

 

 「ゆいゆいさん!今日もよろしくお願いします!」

 

 「はいはい。じゃあゆんゆんちゃんも動きやすい格好に着替えてらっしゃい」

 

 「はい!」

 

 

 元気よく私の母の言葉にそう返したゆんゆんは私の家に上がり、最近は私の部屋に彼女の服が置かれている箪笥から服を出して着替え、もう一度外に出た。

 

 

 そして。

 

 

 「いきます!」

 

 「いいわよ。いらっしゃい」

 

 ゆんゆんと彼女の『師匠』である母が、魔法における戦闘訓練を始めた。

 

 

 

 

 

 

 きっかけは、バーサーカーがこの里に来てから2週間経ったある日。

 

 彼が里に馴染み始めてから、誰かがこう言ったそうだ。

 

 

 

 

 「バーサーカーって見た目通り、本当に強いのか?」

 

 

 

 

 

 その言葉がきっかけで、里の中で自分の『魔法』の腕に自信がある人達が集まって、簡単な模擬戦という『イベント』をすることになった。

 

 バーサーカーに勝った人は、挑戦者の参加費を合計したものを、そのまま賞金として渡すと言ったもの。

 

 挑戦者は何度でも参加費を払えば挑戦できるし、飛び入りも可能。

 

 

 もちろん、バーサーカーが本気で殴ってきた場合、私達の方が悲惨なことになるのは、『バーサーカー事件』での魔物の死体から分かっていたし、私達も全力で『上級魔法』を使うと、彼の命が危ない。

 

 

 そういうことで、模擬戦の内容が『バーサーカーと彼への挑戦者との距離を空けて、バーサーカーは私達に直接的な攻撃はせず、私達がいる後ろの旗を奪えば勝ち。私達は全力で『上級魔法』は使わず、必ず加減をしながら、彼の膝を着かせたら勝ち』というルールにした。

 

 

 

 

 ……今思えば、彼に挑戦した紅魔族全員は、自分達の『魔法』の実力に驕っていたのだろう。

 

 

 

 

 彼の持つ『スキル』の数々には『魔法耐性』に『自己回復』、『緊急回避』があるのを、ぺぷちどの店に居た私達は知っていた。

 

 しかも、彼の『ステータス』や私自身の経験から、彼がその図体に似合わず俊敏に動けることも知っている。

 

 

 それらのことから、『イベント』の結果は私達にとっては簡単に予想出来たものであり、挑戦者には予想出来ないものだった。

 

 

 

 

 

 ーー私達が魔法を詠唱しようものなら、一瞬で距離を詰められて負ける。

 

 

 ーー使いなれた魔法を無詠唱で発動させても、ほとんどの魔法が直撃させてもダメージが通らないか、魔法そのものを直撃する寸前で避けられてしまい、そのまま距離を詰められ負ける。

 

 

 

 ーー例え魔法が直撃してダメージが通ったとしても、『自己回復(小)」を持っている彼は、かすり傷程度なら即座に治して立ち上がり、そのまま距離を詰められ負ける。

 

 

 

 次第に挑戦者はルールである『上級魔法』の加減をやめていったのに、それでも結果は変わらず。

 

 

 

 

 

 ……最早、彼を止められる者はいなかったのだ。

 

 

 ーーー私の母と父を除いて。

 

 

 特に父よりも凄かったのは、母とバーサーカーとの勝負で、その戦績は母の全戦全勝だった。

 

 

 しかも、母は『中級魔法』以上のものは一切使わずに。

 

 

 両親が昔、冒険者だったことは2人から話として聞いていたが、これほどに強かったとは思わなかった。

 

 

 族長がバーサーカーを私の家の『お隣さん』にしようとする訳である。

 

 

 

 その母とバーサーカーの模擬戦の様子を見たゆんゆんが、『イベント』終了後に、母へ『弟子入り』したいと頼み込んだのだ。

 

 

 

 ゆんゆん曰く、『ゆいゆいさんみたいに経験豊富で、凄い魔法使いになりたい』のだと。

 

 

 そして、その申し出をOKした母は、ゆんゆんの両親との間でも話あって、ゆんゆんに『いつでも家にいらっしゃい』と言い、それから学校終わりには毎日私の家に来るようになったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、今日はそろそろお開きにしようかしら」

 

 「あ、あり、ありがとう、ございました……」

 

 「あらあら。大丈夫?」

 

 「だ、大丈夫、です!」

 

 

 

 

 そんなことをぼんやりと考えながら、2人の特訓を見ていると、今日の分は終わったらしい。

 

 2人の戦闘訓練は、魔法を使った遠距離戦ではなく、近接格闘も用いた接近戦が主流の、魔法使いとしては珍しい戦い方であり、訓練が終われば、ゆんゆんは必ずボロボロになっていた。

 

 

 魔法学校では、『体術』の成績も上位のゆんゆんだが、私の母のそれは、学校でやる『体術』が『おままごと』に見えるくらい激しく、その上、気を抜いたら魔法が飛んでくるため、ゆんゆんもついていくのがやっとらしい。

 

 

 

 

 「さて、それじゃあ、そろそろ晩ご飯にしましょうか。今からサンドイッチの材料を刻んだ物を持ってくるから、めぐみんとバーサーカーさんは、外で火を使う為の薪を持ってきて頂戴。こめっこは、その後サンドイッチを作ってね?ゆんゆんちゃんも、今日は一緒に晩ご飯食べて行きなさいな」

 

 「了解です」

 

 「■■」(コクッ)

 

 「分かった!」

 

 「は、はい!ご馳走になります!」

 

 

 そうして、少し早や目の晩ご飯を食べ、ゆんゆんが私の家のお風呂に入った後は、日が完全に暮れる前に自分の家に帰って行く。

 

 これもまた、最近の私の日常だった。

 

 

 

 「さて、それじゃあご飯もたくさん食べたし、食後の運動も兼ねてバーサーカーさんの特訓を始めましょうか!」

 

 「■■■!」

 

 

 

 

 

 ……食生活が改善されたからって、母は少しハッスルし過ぎでは?

 

 お金は『イベント』の賞金が臨時報酬になって、最近は懐が温かいのも理由かもしれない。

 

 

 

 そんなこんなで、近所に誰もいないことをいいことに、夜に母の魔法の音とバーサーカーの悲鳴がこだまするのも、ここ最近の日常になっていることにも何だかなぁと思いながら、私は明日のテスト勉強をした後、明日に備えて寝ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




本編が日常パートに入っていて、物語の展開が遅いと感じるかも知れませんが、一応伏線なんかを張っているので、そこはご理解下さい(汗

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