このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第5話

 

 

 

 ーーー『女性が3人集まれば姦しい』なんて言葉は、最初に誰が言ったのか。

 

 

 「でさー、最近、この里に勇者候補の、爽やかイケメンな剣士が、魔王を倒す為の魔法使いを探しに来ててさ!あたし、この前ね、里でばったりとその人と会ってさ!そのときに、一目見て分かったの!絶対あの人って、あたしに気があると思うのよ!」

 

 

 「えぇ〜?本当に?でもこの前さ、ふにふらって『前世で生まれ変わっても一緒になろうって誓い合ったイケメンな相手がいる』って言ってたじゃない。その彼はどうするの?」

 

 

 「そうなのよねー、これって浮気?みたいな?恋多き乙女は辛いわよねー」

 

 

 「そ、そうなんだ!凄いねふにふらさん!」

 

 「…………」

 

 ……この痛々しい会話は、一体何なのだろうか。

 

 

 

 ある日、クラスメイトのふにふらとどどんこが、珍しく私とゆんゆんを昼食に誘ってきたので、教室の中で私達はご飯を食べているのだが、先ほどから、ふにふらが謎の恋バナを振ってきていた。

 

 果たしてどこまで真実なのか分かったものではないが、『彼氏がいる』と言っているふにふら本人と、どどんこは楽しそうに話をしているし、ゆんゆんも話を合わせようと、一生懸命に相槌を打っていた。

 

 

 そんな彼女達の話を、私は適当に聞き流していると。

 

 「そういえば、2人のこういう話ってしたことないけど、どんな人がタイプなの?ねぇ、ゆんゆんはどんな人が好き?」

 

 「えっ!?」

 

 

 どどんこにいきなり恋バナを振られ、驚愕の表情を浮かべたゆんゆんが、恥ずかしそうにしながら答えようとしていた。

 

 

 「わ、私は……物静かで大人しい感じの雰囲気で、私がその日にあった出来事を話す時に、傍で『うんうん』って聞いてくれるような、いつも優しく包みこんでくれる、そんな頼りがいがある人がいいなぁ……」

 

 

 「地味ねぇ……」

 

 「地味だねぇ……」

 

 「まぁ、ゆんゆんは変わり者ですからね」

 

 

 「変わり者!?私って、やっぱり変わり者なの?!」

 

 

 

 私達の感想に何か思うものがあるのか、ゆんゆんが涙目で慌てふためいていた。

 

 

 

 「じゃあじゃあ!めぐみんはどうなの?好きなタイプはどんな感じ?」

 

 

 「私ですか?そうですねぇ……。甲斐性があって浮気もしない、常に上を目指す努力が出来て、借金なんて絶対にしない。そんな、誠実で真面目な人がいいですね」

 

 

 「「「えっ?」」」

 

 

 …………。

 

 

 「……。何ですか、その反応は?」

 

 

 「いや……。めぐみんのことだし、『私の前世は破壊神だから、恋人はいません。ずっと1人で生きていけます』とか言うかと思ったから……」

 

 「そうそう。恋とか愛とか一切興味ない、血も涙もない女だと思ってたわ」

 

 「私も、前は勝負するときに、いつも『弁当をよこせ!』って言ってたから、めぐみんは食い気しかないのかなって……」

 

 

 

 「ぶっ飛ばしますよっ!?」

 

 

 

 

 

 なんて失礼な子達なのだろう、人を馬鹿にするのも大概にして欲しい。

 

 私がそうやって怒りを露わにしていると。

 

 

 

 

 

 「ごめん、ごめん!悪かったわよ。……なら、さ。めぐみんは、恋愛の対象って、男性?それとも、女性だったりする?」

 

 「はっ?」

 

 

 謝りながら突然、ふにふらが意味不明な質問をしてきた。

 

 

 

 

 

 「いや、ほらさ!めぐみんがこういう話に乗ってくるのって珍しいじゃない?だから、もうちょっと深く聞いてみようかな?って」

 

 「いや、それで何で恋愛対象に女性が入ってくるのですか?あり得ませんよ、女性となんて!」

 

 「そ、そうなの?」

 

 「そうです!」

 

 「「そ、そっかぁ……」」

 

 

 ???一体何なのでしょうか?

 

 私は訝しみながら、今日もゆんゆんお手製の弁当の残りを食べることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の学校からの帰り道、今日もゆんゆんと一緒に帰っていると、私の家の前に珍しい人物が立っていた。

 

 

 「おや、ぶっころりーじゃないですか」

 

 「あぁ、めぐみん。お帰り。ゆんゆんも。本当に一緒に帰って来てるんだね。ゆんゆんの家、学校から帰る道だと途中で反対方向に別れるのに」

 

 

 「ぶっころりーさん、先日はお世話になりました!」

 

 「あぁ、いいよ。気にしないで」

 

 

 

 彼は私やこめっこにとって、バーサーカーが引っ越してくる前には一番近所に住んでいると言えた、幼馴染であり兄みたいな存在で、この里にある靴屋の倅(せがれ)である。

 

 

 彼は『バーサーカー事件』でこめっこを洞窟の中まで探しに来てくれた大人達の1人であり、普段は家の靴屋の仕事を未だに継がずにニートをしていた。

 

 

 「今日はどうしたんです?私の家に何か用ですか?」

 

 「あぁ、ちょっとね。今日のバーサーカーくんとの訓練に、俺も参加させてもらえないかと思ってさ。ゆいゆいさんと彼にお願いをしようと思って来たんだ」

 

 「あぁ……。この間の『イベント』で、貴方、ボコボコにされてましたからね。良かったですね?洞窟内でバーサーカーと戦わなくて。何でしたっけ?『別にその怪物のことを、倒してしまっても構わないのだろう?』でしたっけ?」

 

 「言うなよ……。今でもそうなってたらと思うと、ゾッとするんだから……」

 

 「あ、あはは……」

 

 

 

 あの時の自分の言動に反省しているのか、ションボリと落ち込むぶっころりーに、ゆんゆんが苦笑いをしていた。

 

 

 「あ、そうそう。今日はもう一つ、めぐみんに用事があってね。明日は学校は休みだろう?1日空けておいてもらえるか?……。せっかくだし、出来ればゆんゆんも」

 

 「明日ですか?まぁ、別に良いですが」

 

 「わ、私もですか?」

 

 「あぁ、ちょっと相談に乗って欲しいことがあるんだ。若い女の子の方が参考になると思ってさ」

 

 

 私達は、そう言って恥ずかしそうに頭を掻く彼の姿に、顔を合わせたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?相談とは何ですか?」

 

 

 翌日、3人で集まった場所は、喫茶『デッドリーポイズン』。

 

 前にゆんゆんと内緒話をした、店の奥の方の席に座って、ぶっころりーの奢りで頼んだコーヒーを飲みながら、私は彼にそう問いかけた。

 

 

 「あぁ、そうだな。えっと……。実は俺……。好きな人が出来たんだ」

 

 「「えぇっ!?」」

 

 「そ、そんなに驚かなくてもいいだろ……?」

 

 「いや、驚きますよ!ニートな貴方からそんなことを言われたら!」

 

 「ニートは関係ないだろ!?」

 

 

 私とゆんゆんが驚愕していると、ぶっころりーが抗議をしてきた。

 

 しかし、既に私とゆんゆんは彼の話を聞いていなかった。

 

 「こ、恋バナだ!めぐみん、2日連続で恋バナされたよ!」

 

 「まさか、ぶっころりーからそんな話をされるとは……。最近はみんな色気付いているのでしょうか?で、相手は誰なんですか?」

 

 「直球で聞いてくるなぁ。……その、な?俺が好きな人っていうのは……」

 

 

 真剣な表情をしながら口にしたその名前を聞いて、私とゆんゆんは再度、驚愕することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 喫茶店を出た私達は、彼の片想い中の女性がやっているお店へと向かい、彼女は留守にしていた為に一時解散しようとしたが、ぶっころりーに『心当たりがある』と言うので、そのまま彼について行くことにした。

 

 すると。

 

 

 「……ほ、本当にいましたね……」

 

 「う、うん……」

 

 「な?言った通りだろ?ここ最近、彼女を尾……調査していて、大体の行動パターンが分かったんだ!今日は雑貨屋に買い物に行く日だって!」

 

 

 「「…………」」

 

 

 私とゆんゆんは、この変態のストーカーを通報しようか真剣に悩むハメになったが、確かにお目当ての女性はそのお店にいた。

 

 それにしても。

 

 

 「まさか、相手がよりにもよって、そけっとですか。随分と高望みをしましたね」

 

 「おい、良いじゃないか。理想が高くったって、好きな気持ちは誤魔化せないものなんだ。めぐみんだって、そのうち分かることさ」

 

 「そのセリフも、ストーカーじみたことをしていなければ、格好良かったんですがーー」

 

 「おい、ゆんゆん。いくら君が族長の娘だからって、言って良いことと悪いことがあるぞ?」

 

 「いや、貴方のは間違いなくストーカーですよ」

 

 

 私が彼にそうツッコミを入れていると、彼は『いいから、早く聞いてきてくれ』と言わんばかりに指を差しながら、そけっとから遠巻きに隠れるようにして、指示を出してくる。

 

 

 「……まぁ、何にせよ、今は外で、しかもお店の中にいますから、私達が声を掛けても不自然な点はありません、か。ゆんゆん、行きますよ」

 

 「分かったわ。早くそけっとさんの『好みの男性のタイプ』を聞いて、こんな事はさっさと終わらせよう……」

 

 

 ぶっころりーのストーカーっぷりに思わず気が滅入った私達は、そけっとがいる雑貨屋へと足を運んだ。

 

 

 彼女とは、『バーサーカー事件』以来顔を合わせていないので、実に1ヶ月半以上ぶりに会うことになる。

 

 

 私達が近づいてきたことに気づいたそけっとが、私達にヒラヒラと手を振ってくる。

 

 相変わらず、たったそれだけの動作をしただけで、彼女の美人っぷりが分かるのだから、どれだけニートであるぶっころりーと釣り合わないかが、一目見て判断出来るというものだ。

 

 

 

 私とゆんゆんは、自然な感じでそけっとへの最初のアプローチとして、軽快に挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おや、これはこれは。『紅魔族随一の美人(性悪)占い師』のそけっとではないですか。奇遇ですね」

 

 「お久しぶりです、『性悪』さん!」

 

 

 「待って!!今、貴方達、私のこと、凄いあだ名で呼ばなかった?!」

 

 

 

 

 

 おっと、しまった。つい、本音が。

 

 

 

 

 私に釣られて挨拶をしたゆんゆんが『しまった!』みたいな顔をしていることから、無意識に私が彼女に抱いていた『思い』と一致したみたいだ。

 

 

 ゆんゆんとお互いに顔を見合わせて、『仕切り直し』をしようと頷き合い、もう一度そけっとの方を向いた。

 

 

 

 「間違えました。テイク2で」

 

 「テイク2っ?!ま、まぁ、いいけど……」

 

 よし。

 

 私とゆんゆんがタイミングを合わせて、もう一度挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おや、これはこれは。『誰かの未来を支えることが出来るような仕事が、とても素敵に思えた』とロマンチックなことを言いながら、その後、平気で人を騙して『してやったり!』というような顔で笑っていた、『紅魔族随一の美人性悪詐欺師』ではないですか。久しぶりですね」

 

 「ご無沙汰してます、『詐欺師』さん!」

 

 

 「待って待って!!さっきより、悪化してない?!というか、めぐみんに言われるのはともかく、優しいゆんゆんに言われると、凄く傷つくのだけど?!謝るから!あの時のことは謝るから、許して!」

 

 ダメです、許しません。

 

 ……まぁ、話が進まないし、今日はこのくらいで勘弁してあげましょう。

 

 「そんなことはともかく、奇遇ですね。そけっとは何を買いに来たのですか?」

 

 「そんなことっ?!……。まぁ、いいか。さっきの件は、また後日ゆっくりお話しをしましょう。今日は、可愛い小物とかを見に来たのよ。毎週末に雑貨屋に買い物に来るのが、丁度いい気晴らしになってね。貴方達は何か買い物をしに来たのかしら?」

 

 

 そけっとが私とゆんゆんにそう問いかけてきたので、私達は作戦を第二段階へと進めることにした。

 

 ーーさぁ、いきますよ。私に合わせてくださいね、ゆんゆん。

 

 ーー分かったわ!任せて!

 

 目だけで通じ合った私とゆんゆんで自然な感じで会話をしていく。

 

 『あの小物が可愛い』とか、『この小物が素敵』みたいな話から始まり、場が温まってきたところで、ゆんゆんが『こんな小物をプレゼントしてくれる人がいたら素敵だな』という完璧な前振りを経て、本題を彼女に聞いてみた。

 

 

 

 「そけっとは、今好きな人とかはいるのですか?こんな小物をプレゼントして欲しい人とか」

 

 「私?私は今は恋より仕事かな。あんまり恋愛については考えたことないわね」

 

 「「そ、そうですか……」」

 

 「???」

 

 

 

 私達の反応を見て、一瞬『何なのだろう?』と疑問に思った顔をしながら、特に買いたい物が見つからなかったのか、そけっとはそのまま店を出て行った。

 

 

 「ど、どうだった!?」

 

 

 私達の成果にソワソワした期待が滲み出ている彼に、私とゆんゆんは同時に告げた。

 

 

 

 「「前途多難です(ね)」」

 

 「そ、そんなぁ〜!」

 

 

 

 ガックリと崩れ落ちたぶっころりーが居た堪れなくなった私達は、もう少しだけ彼の片想いを応援することになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいま帰りましたよー」

 

 「姉ちゃん、おかえり!」

 

 

 私がゆんゆんとぶっころりーと別れて自宅に戻ると、元気な声で駆け寄ってきたこめっこが出迎えてくれた。

 

 「おや、今日はバーサーカーとはまだ遊んでいると思っていましたが」

 

 「遊んでたけど、途中で家に帰らなきゃいけなくなって、一回戻ったときにね、何か『まけんの勇者』?って人と会って、バーサーカーを連れて行っちゃったんだー」

 

 「そう、ですか……」

 

 

 それは多分、『魔王を倒す為に仲間を集めている』という人だろう。

 

 私もいずれは『爆裂魔法』を習得し、旅に出てから、いろいろな冒険がしたいとは思っているが、バーサーカーは違う。

 

 魔物と戦うのだって、本来はあまりやりたくないと言った感じだった。

 

 この里の鍛冶屋が、以前バーサーカーに『あんたに特注の鎧や武器を作ってやるから、外に俺のことを紹介してきて欲しい』と頼み込んでいたが、彼は断っていた。

 

 

 一撃熊やオーク達をあれだけ虐殺しておきながら、戦闘は避けたいとか、本当によく分からない男である。

 

 

 

 「それで、途中で家に帰らなくてはならないような事とは、何ですか?」

 

 「今日ね、ペットを捕まえたの!その首輪がいるなって!」

 

 「ペット?」

 

 はて、こめっこのペットなら『お隣』に住んでいる筈だが……。

 

 「見る?しとうの末に打ち倒した、きょうぼうなしっこくの魔獣!!」

 

 そう言って、こめっこがそのペットを私に見せたいのか、また走って彼女の部屋に入った後、すぐに彼女が私のところに戻ってきた。

 

 そして、こめっこが抱き抱えてきた物は……。

 

 

 

 「これ!!」

 

 「にゃー……」

 

 

 

 ーーー頭に小さな歯形が付いて妙にグッタリとした、黒い子猫だった。

 

 

 

 

 

 




遅くなりましたが、『メリークリスマス!』です!
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