このぼっちな少女と狂戦士に祝福を!   作:一雪氏

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第3話

 私は今、人生の中でもトップレベルでめちゃくちゃ焦っていた。

 

 

 

 

 

「森の中に悪魔召喚用の魔法陣を見つけたぞ!」

 

「しかも、上級悪魔さえ召喚出来そうなくらいの、完成度の高い、すごい魔力が込められた魔法陣だった!」

 

「魔王軍だ!魔王軍のせいに違いない!あいつら、本格的に紅魔の里を攻めるための準備をしてやがったんだ!」

 

 

 

 

 私の父ーーーひろぽんを筆頭に昨日森の中を探索していた男たちが、残されていた魔法陣を発見し、よくも家の娘を危ない目に遭わせやがって!といかにもすぐ魔王軍と戦争をするぞと気合いを入れる大人達がいた。

 

 紅魔の里は住んでいる人たちのほぼ全員がアークウィザードであり、上級魔法を扱えるためか、魔王軍だってほとんど攻めてこないような場所だ。

 

 そんな場所だからこそ、おいそれと危険な目に遭うこともないし、本格的にマズい状況になれば手を打つのも早い。

 

 紅魔族は基本、知力が高く喧嘩っ早い性格をしていることもあり、私の父とめぐみんの父ーーーひょいさぶろーさんが中心となって、既に魔王軍討伐部隊が編成されつあった。

 

 

 

 その様子を眺めながら

 

 

 

 

 ……どうしよう。言えない。今更、その魔法陣は私が描きましたなんて言えない……!

 

 と、私は頭の中で大パニックを起こしていた。

 

 というか、昨日の私は何故魔法陣を消してなかったことを忘れていたのだろう。

 

 まぁ、悪魔召喚の魔法を中断してすぐあの怪物が目の前に現れたのだから、ショックで頭からその出来事が抜けたことは仕方のないことだったはずだ。

 

 

 魔法陣だって、呼び出したのが低級の悪魔みたいな、友達として仲良く会話が成立するわけがないものを召喚しても意味がない。

 

 そこで賢い私は、それならと上級悪魔を召喚するため、紅魔の里にある魔法学校の図書館に忍びこみ、禁書の棚からそれに関する書物を調べあげ、数日に渡って準備を整えた。

 

 そのおかげもあり、召喚用の魔法陣は里のみんなに誤解を与えるには十分な代物となるまで完成したのだが

 

 

 

 ……マズいマズい!本当にマズい!昨日嘘をついて誤魔化した出来事から、頭のいい……紅魔族随一の天才であるめぐみんは気付くはずだ。

 

 

 あぁ、バレちゃう。魔法陣を描いたことがバレたら、芋づる式に学校の図書館の禁書を読んだことも、動機が友達が欲しいからなんてアホみたいな動機も全部バレちゃう!

 

 

 しかも、状況証拠が正しいだけに、事態がすごく壮大な勘違いした方向に話が進んで、大事になってるし!

 

 

 これ、どうしよう……

 

 

 

 

 

 ちらっと、今回の件での緊急招集により集まったメンバーの中からめぐみんの方を見ると

 

 「じーーーーーーーー…………」

 

 と、こっちを見つめるめぐみんと目があった。

 

 お前が犯人だろ、と如何にも言いたげな目をしてるので、おおよそ事態を察しているのだろう。

 

 

 ダラダラと冷や汗を流している私を見た父が

 

 「ゆんゆん、大丈夫か?気分が悪いなら家に帰って休んでていいからな?」

 

 と優しく声をかけてくれた。

 

 「そうそう!昨日は大変な目にあったんだし、休んでおけよ!」

 「怪物なんて、俺たちが束になってかかれば楽勝だぜ!」

 「めぐみんも、家でお母さんとこめっこと待っててくれていいんだ。お前も被害にあったからわざわざ集まってくれたんだろうが、後は俺たちに任せておけ」

 「そうだぞ!学生はまだ家でいい子に留守番してなって!」

 

 

 この場に集まっている里のみんなの優しさが、私の心に「罪悪感」という名前の矢として容赦なく突き刺さっていく気がした。

 

 

 「……そうですね。そうさせていただきます。ほら、ゆんゆん。行きますよ」

 

 「え?!で、でも……!」

 

 「ここにいても、私はまだ魔法は使えませんし、あなたは本調子じゃないのでしょう?なら、家に帰って休むべきです。暇なら、私の家に遊びに来て貰っても構いませんから」

 

 

 私が顔を真っ青にして、もうダメだ、お終いだ!いっそのこと全て告白して楽になろうと考えたときに、めぐみんが私に家に来いと誘って来た。

 

 普段の私は喜び勇んでその提案に乗るところだが、あいにく今回はそれに乗ることを躊躇した。

 

 

 何故なら、めぐみんの顔が後で尋問してやると言いたげなものであったからだ。

 

 紅魔族特有の、感情が昂ると目が紅くなることも、上手く里のみんなから見えないように私を引きずりながら見えないように位置取りをしていることから、彼女の本気具合が伺えた。

 

 

 「だ、大丈夫よ、めぐみん!私だってもう子供じゃないんだから!別に1人でだって家に帰れるわよ!」

 

 「遠慮しなくてもいいのですよ?私の家に来てもらえば、こめっこだって喜びますし。昨日は私がゆんゆんの家に泊まらせていただいたのですから、今日はゆんゆんが私の家に泊まっていってくださいよ」

 

 

 私が抵抗しても、めぐみんは絶対に離さないと力強く私の服を掴んでいた。

 

 

 ……ちょっと嬉しいのだけど。えぇ、本当にちょっとだけ嬉しいのだけど。今回はめぐみんに流される訳にはいかない!

 友達って言っておけば、いつでもホイホイと従うようなチョロいマヌケじゃないんだから!

 

 そう思い、キッっとめぐみんを睨み付け、めぐみんのお誘いを断ろうとしたところで

 

 

 「だって、私達は……最高の友達なんですから……」

 

 

 めぐみんの恥ずかしそうに言いながら、掴んでいた手を離し、今度は袖を優しく摘むようにクイッと引っ張りながら上目遣いでウルウルとさせているのを見て。

 

 

 

 私は、ホイホイと流されるままにめぐみんについて行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「自分でやっておいて何ですが、あなたちょっとチョロすぎませんか?ぼっちを拗らせすぎたんですね。詐欺には気をつけるのですよ」

 

 「ぼ、ぼっちじゃないからぁ!それにチョロくもないし!こ、これは、あれよ……そ。そう!せっかくめぐみんが家に遊びに来てと誘ってくれたんだし、こんな機会滅多にないから誘いに乗ってあげただけだし!勘違いしないでよね!」

 

 「……それを世間では、ぼっちでチョロいというのですよ」

 「?!」

 

 

 道中めぐみんといつもの口喧嘩をしながら、私はめぐみんの家の玄関前まで来ていた。

 

 

 「姉ちゃん!おかえり!ゆんゆん、いらっしゃい!」

 

 

 玄関を開けると、トテトテと小走りかつ笑顔でお出迎えしてくるこめっこがいた。

 

 「ただいま帰りましたよ。こめっこ、大人しく家で待ってましたか?」

 「うん!いい子にしてまってた!」

 

 まだ5歳であるこめっこの、無邪気な顔を見て和んでいると

 

 「……大人しく待っていたと言う割には、ローブの裾が泥だらけなのですが。こめっこ。お姉ちゃんは怒りませんから、正直に言いなさい?本当にいい子にしてたんですか?」

 

 「うん!お母さんに外に出たことがバレないようにはいい子にしてた!」

 

 「全然良くないよ?!」

 

 あっけらかんとしたその態度に、私はついついツッコミを入れてしまった。

 

 このバレなきゃ悪いことはしていないみたいな態度はやっぱりめぐみんの妹だなと思うし、いつ見ても大物になりそうな子だなと思う。

 

 「……言っときますが、今のあなたの状況も、私やこの子と大差ありませんよ?」

 

 

 ボソっと小声で私だけに聞こえるように呟いためぐみんにビクっとしていると

 

 

 「ゆんゆんが家に来るなんてめずらしいね!何かあったの?」

 

 と聞いてくるこめっこに

 

 「えぇ。昨日はゆんゆんの家に泊まらせてもらったでしょう?そのお礼と、少し相談したいことがあったので、わざわざ家に来て貰ったんですよ」

 

 「ふ〜〜〜ん………………お礼はともかく、ただの相談ならいつもの公園ですませてたから、他の人にはないしょのお話なんだね!」

 

 

 「……あとで何か私がストックしてる食べ物でもあげますから、大人しくしていてくださいね?」

 

 「わかった!姉ちゃんの部屋の机の、2段目の引き出しの奥に隠してるお菓子をちょうだい!」

 

 「?!?!ま、待ってください!なんで知って……あっ!私の部屋を勝手に漁りましたね?!普通そんなところにお菓子があるなんて分かりませんよ!いつ部屋を漁ったんですか!!」

 

 「あさってません。たまたまです」

 

 「こめっこ?!」

 

 

 お出迎えしてくれたときと同じように、トテトテと小走りで家の奥に走り去って行く姿を見て、ナチュラルに嘘をつかれためぐみんがショックを受けた顔をしていた。

 

 走り去った方向へ手を伸ばしているめぐみんの姿が、また憐れみを誘う。

 

 

 ……こめっこちゃん、恐ろしい子…………

 

 

 まだ小さい子どもなのに、あのめぐみんすら手玉に取っている光景に私が戦慄していると

 

 「あら、おかえりなさい。めぐみん。ゆんゆんもいらっしゃい」

 

 こめっこと入れ違いぐらいで、めぐみんの母ーーーゆいゆいさんが玄関に出てきた。

 

 

 ゆいゆいさんも見た目は私の母と同じく、おっとりとした感じの女性だが、さすがめぐみんの母親と言うべきか、時々かなりエグいことを平気で、しかも笑顔でやっちゃう人だ。

 

 やると決めたら必ず実行するタイプなのだろう。

 

 絶対に怒らせてはいけない。

 

 

 「ごめんなさいね。今ちょっと仕事が忙しいから、昨日家のめぐみんとこめっこを泊めてくれたのに、碌なおもてなしも出来ないわ。一応、後でめぐみんの部屋にお茶を持っていくわね。今日はゆっくりしていってちょうだい」

 

 「い、いえ!お、お構いなく!」

 

 「そうですよ、お母さん。お茶が欲しくなったら後で自分で取りに行きますから。仕事をしててください」

 

 「あらそう?悪いわね」

 

 

 ゆいゆいさんは申し訳なさそうに言って、また仕事場に戻って行った。

 

 

 「さて、いつまでも玄関にいるのも何ですし、さっさと私の部屋に行きますか」

 

 「う、うん!お邪魔します!」

 

 「邪魔するなら帰ってください」

 

 「えぇ?!?!あ、あなたが誘ったくせにそんなことを言う?!ちょ、ちょっと!待ってよ、めぐみん!昨日のしおらしくて可愛い気があっためぐみんはどこへ行った……!まっ、待って本当に置いていかないでぇ〜……!」

 

 

 

 

 

 「さて。それでは昨日のことについてキリキリと吐いてもらおうか」

 

 「ま、待って!ちょっと待って、めぐみん!言うから!言うから部屋に入ってから、私を部屋の隅に追い詰めるようにジリジリとにじり寄って来ないで!怖い!怖いから!」

 

 

 さっきからいろいろと散々な目にあったが、今までのは序の口だったらしい。

 

 めぐみんの部屋に入った瞬間に感情の昂りが抑えられなくなったのか、眼を紅く光り輝かしためぐみんがそこにいた。

 

 体全身で怪しい動きをしながら迫ってくるめぐみんに、私はもう半泣きだった。

 

 「さぁ、さっさと吐け。全部吐け。キリキリ吐け」

 「ごめん!ごめんなさい!ごめんなさい!!嘘ついたことは謝るから許して!」

 

 

 土下座しながら謝る私を見て、めぐみんは、はぁーっとため息を漏らした。

 

 

 「…………別に怒ってませんよ。昨日はあなたが隠し事をしてるってことは気づいてあえて見逃したのですから。えぇ。こんなに大事になることを隠してたことには一切、そう一切怒っていませんとも!」

 

 「怒ってるじゃない!めちゃくちゃ怒ってるじゃない!!まだ眼が真っ赤なんだけど!?」

 

 「問答無用です。さぁ吐きなさい。包み隠さず全部吐きなさい」

 

 「え、えっと、その……どこから話せばいいか頭の中でまとまらなくて!こう、実は私はそんなに悪くないかもと言うか!環境が悪かったかもと言うか!だから、お願い!もうちょっと優しくして欲しいって言うか!」

 

 「吐け」

 

 「………………ハイ」

 

 

 

 めぐみんのあまりの迫力に、私は昨日一体何が起こったのか、何故そうなったのか、その動機まで全てを時間をたっぷりと使って白状したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の出来事を全てを白状し終え、燃え尽きて真っ白になった私を

 

 「…………あなたがぼっちであることは知ってましたが、これほど拗らせているとは思わなかったですよ」

 

 

 目頭を押さえながら、めぐみんは私を憐れんでいた。

 

 

 「うぅ……。ねぇ、めぐみん。私はどうしたらいいと思う?やっぱり、正直に全部話す方がいいよね?そうしたら、これだけの騒ぎを起こしたんだから、もう族長になる資格はなくなると思うけど、仕方ないよね?悪い事をしたんだから、みんなに謝らないと……」

 

 

 「…………………………………………」

 

 

 「…………?めぐみん?」

 

 

 私が力なく弱音を漏らすのを聞いて、静かになっためぐみんが気になり顔を上げてみると。

 

 

 

 そこには目を閉じた、普段は滅多に見られないくらい真剣に考え込んだめぐみんがいた。

 

 

 しばらく熟考したまま動かないままだっためぐみんだが、フッと目を開けて

 

 

 

 「もしかしたら、なんとかなるかも知れません」

 

 

 ニヤッと、いかにもな悪い笑顔を浮かべながら私にそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

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